始まり
シロエと士郎が迎え入れられてから年月は経ち
私立穂群原学園小等部5年1組の教室
その放課後
今日も終わったと席から立ち、伸びを行う。
そしていつも通りのんびりと帰り支度を行っていると
後ろに気配を感じ振り返る。
「シロ。準備できた?」
そこには姉であるイリヤが帰り支度を済ませ立っていた。
「まだだけど、お姉ちゃん速いね。今日何かあったっけ?」
それを聞いたイリヤは少し不機嫌になる。
「今日はお兄ちゃんの部活が無い日だから一緒に迎えに行こうって朝言ったじゃん。忘れたの?」
「…そうだっけ?」
「そうなの!速くしないと置いてっちゃうよ?」
そう言うとイリヤは教室から出ていこうとする。
「ちょっ!?待ってよ、お姉ちゃん」
シロエは慌てて教科書を鞄に放り込むとイリヤを追う。
「ごめんってば、怒らないでよ」
下駄箱で漸く追い付いた妹にやれやれと思いつつ手を繋ぐ。
「まったくもう…。ほら行くよ」
そして手を引っ張り兄のいる学校へ向かう。
あれから一緒に小学校に入学して今では小学5年生
今となってはお姉ちゃん呼びが定着してしまっていた。
いや、わたしだってされるがままじゃなかったんだよ?
あれは…小学3年生の時だったかな?試しにイリヤって呼んでみた。
口をきいてくれなくなった。
いやそんなに…!?って思いましたよ、ええ。
その後、結局わたしが折れてお姉ちゃん呼びに戻した。
解せぬ。
そんなことを思い出していると兄のいる学校に着いた。
「あっ!お兄ちゃん!」
「おっ。お前らも今帰りか?」
「というかお姉ちゃんが迎モガ」
迎えにきたというのは秘密だったのか、口を塞がれる。
「ん?どうした?」
「ううん!何でもないよ。一緒に帰ろ、お兄ちゃん」
「いいけど、俺自転車だぞ?」
「大丈夫!わたし走るの得意だから!」
「いや、わたしは苦手だから止」
「よーし、それじゃ家まで競争だ」
「あっ!?ちょっとお兄ちゃん!?…待てーーーッ!!」
「いやお姉ちゃんも待って!?」
わたしは別に運動音痴というわけではない。
むしろクラスの50m走では平均よりもちょっと上くらいだ。
なら何故苦手と言ったのか?
イリヤがクラスで一番速いからだ。
そんなイリヤと自転車に乗ったお兄ちゃんに勝てるわけがない。
…魔術を使えば別でしょうけど
アイリ達に拾われてから結構経ち、さすがに気づいた。
アイリ達が極力魔術を使用しないようにしているということに
おそらくイリヤに配慮してのことだろうと思っている。
だからわたしもそれに倣って魔術の使用を控えている。
まあつまり
「シ、シロ、遅ーい」
「ぜぇはぁ、お、お姉、ちゃん、が、速すぎ」
「ははは。大丈夫か?二人とも」
ビリになるのは当然なわけで
…前世なら余裕なのに
というかイリヤだって肩で息してるじゃん
…わたしほどじゃないけど
「「「ただいまー」」」
「お帰りなさい。三人揃って帰ってくるなんて珍しいですね」
家に入るとセラが洗濯物を片手に出迎えてくれた。
「あ、そういえばイリヤさん。先ほど宅配便でDVDが届きましたよ。」
「DVD?あっ!そっかもう届いたんだ!」
「?お姉ちゃん何か頼んだの?」
「うん!マジカルブシドーのDVD!一緒に見よ!」
マジカルブシドーとは少女がステッキを持ち魔法少女に変身する女児向けのアニメである。
シロエはイリヤに勧められてから、よく一緒に見ている。
「本当?じゃあ、見よっか。リビングかな?」
リビングに向かうとリズが先に件のDVDを見ていた。
「あー!?リズお姉ちゃん勝手に見てる!」
「お、イリヤ、シロお帰り」
「えー…待っててくれてもよくない?」
「そうそう!先に見てるなんてひどい!」
「いや、お金払ったのわたしだから」
お金を払ったのリズなの?それなら
「それなら仕方ない…かな?」
「シロ!?」
「あっ、いや。じゃあせめて、せめてさ最初から見よう?ね?」
「えー。どうしようかな」
「お願い!リズお姉ちゃん!」
「リズ…」
そう言い姉妹二人揃って頼み込む。
シロエが来てからよく見る光景である。
そしてこの後
「いいよ。別に」
リズが了承するまでが一連の流れである。
「わーい!ありがと!」
「ありがと。リズ」
「うん。」
この後三人仲良く並んでDVDを見て過ごした。
…
……
………
「イリヤさーん、シロさーん。お風呂空きましたから入っちゃってくださーい」
…DVD後少しで終わるんだけど
「…シロ、先に入って来ていいよ」
「…いえいえ、ここは年功序列ということでお姉ちゃんからどうぞ」
「姉の愛は素直に受け取っておくものだよ」
「それを言うなら妹の愛だってあると思うよ」
「…」
「…」
「「じゃん!けん!!」」
…
……
………
「お姉ちゃーん、お風呂出たよ」
…察しの通り負けた。ピエン
「あ、うん。ちょうど観終えたから今入るよ」
そう言うとイリヤはお風呂の方に歩いていった。
…途中で観るのを中断されるとまたでいいかなってなる人いると思う。少なくとも今のわたしはそれ。目も痛くなってきたし。
わたしは自分の部屋へと戻る。
自分の部屋に入ると同時僅かに地響きが聞こえた。
…?地震かな?
そう思っていると視界の端に何かが光った気がした。
その光の発生源を探る。
…外で何かが光ってそれが窓から入り込んでいる?
というかこの光って…前世でよく見た…
魔術の光
そう判断した後は速かった。
シロエは視覚と聴覚を共有した氷でできた小鳥型の簡易使い魔を作成、隠蔽魔術を使用した後外へと飛ばす。
元々時計塔の魔術師がいつ動いてもいいように常に警戒していたのだ。
その警戒がシロエの行動を速くしていた。
(どういうこと!?この世界に来てからわたしのことを誰にも話していないのに!それでばれるはずが…!)
自分への刺客かもしれないと思う反面ばれるはずがないと困惑する。
そして使い魔がその魔術の主を視界に捉える。
黒髪ツインテールと金髪縦ロールが争っていた。
口汚く罵り合いながら。
……黒髪ツインテールの方にはなんとなく見覚えがあるような気がするけど…………まあ、いっか。
記憶を漁ればなにか出てくるかもしれないけど。
というかこの二人の格好…きつくない?
赤と青のヒラヒラした服、獣耳、そして喋るステッキ
どう見ても魔法少女の服装である。
…まあ趣味は人それぞれだし
どうやら任務の奪い合いをしているみたい
カード?大師父?
うーん…。肝心の任務の内容がわからない。
…ステッキから愛想尽かされてるし、まあステッキの言ってることは正論だから仕方ないね
飛行していたのはステッキの力だったのか落ちていく二人の魔術師
少し迷ったけどステッキじゃなく魔術師を監視することにした。
まあ意思があるといってもステッキだし。
うまく怪我無く着地したツインテと縦ロール
重力軽減魔術を使ったみたい…そのまま死んでくれれば手っ取り早かったのに
また言い争ってるよ。
あ、こんなことしている場合じゃないってステッキを探しに行くみたい
ってまた別行動?…どうしよう。
悩んだ結果適当に黒髪ツインテールを選んだ。
っていうかここまでバラけると監視も何もあったもんじゃない気が
うん?何かこの人の進んでいる道に見覚えが…?
黒髪ツインテールが一件の家屋を前に立ち止まる。
っていうか
「わたしの家じゃない!?」
わたしは使い魔を消失させると一階に降り外へ出る。
いない?…いや、家の裏手から声が聞こえる。
声のする方向へ向かう。
そこには
「…何やってるの?」
「あっ!?シ、シロ!?」
「げっ、一般人がまた…」
「おや、イリヤさんにそっくりなロリっ子がもう一人。もしやこれは…?」
黒髪ツインテールがステッキを鷲掴みにして引っ張り
そしてステッキの柄を持っているのは
「…お姉ちゃん、大丈夫だよ。お姉ちゃんがどんな趣味を持ったとしてもわたしは妹としてそれを生暖い目で応援するから」
魔法少女の服を着たイリヤの姿であった。
イリヤ…魔法少女にはまり過ぎてコスプレの方向に行っちゃったんだね…。
大丈夫。そっちの人よりかは似合っているよ。
「いや違うから!?これはこのステッキが勝手にやったことであってわたしの趣味じゃ…!そんな目でわたしを見ないでーッ!!」
「やはり!妹さんでしたか!!わたしお姉さんをマスターにさせていただいておりますマジカルステッキのマジカルルビーちゃんです。突然ですが魔法少女に興味はありませんか!?姉妹で魔法少女というのも乙なものですよー!!」
「あっ、間に合っています。察しの通り、妹のシロエ・フォン・アインツベルンです。魔法少女が大好きな姉ですがよろしくお願いします」
「違うからね!?違うからね!!?」
「えっ、お姉ちゃん魔法少女嫌いなの?あんなに一緒にマジカルブシドー観てたのに…」
「うーむ、それはいけませんねぇ。妹さんの返答もいまいちでしたし。ここはお二人にわたしが魔法少女の素晴らしさをもっとよく説明して…」
「いやそうじゃなくて!?確かにマジカルブシドーは好きだけど!?あーッ、もう!!」
「って何呑気に自己紹介してるのよ!一般人にまた目撃されちゃったし…!とにかくルビー!さっさとマスター登録を元に戻しなさい!」
とりあえず一般人呼ばわりされてるしわたしが目的じゃないみたいと安堵した。