プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

30 / 66
番外編3 保健の先生

 

 

小学校の保健室

外からは初夏ということもあり虫の鳴き声と

小学校ならではのサッカーをしている子供達の声が聞こえてくる。

 

 

「ふう…」

 

 

保健の先生であるカレン先生が

先までお茶を飲んでいたのか

カップをソーサーの上に乗せながら

溜め息を吐く。

 

 

「……………暇ね。

危篤状態の重病人でも運ばれてこないかしら」

 

 

カレン先生が不穏な独り言を言った

その時だった。

 

 

「せんせー、助けてーッ!!」

 

「ボールぶち当たったイリヤが目を覚まさないんだー!!」

 

「あとなぜかクロも!!」

 

 

鼻血を出し気絶している体操服姿のイリヤとクロエを連れ

同じく体操服姿の龍子、雀花、那奈亀、美々、美遊、シロエが保健室へと乗り込んできたのは

 

 

 

 

 

……

………

 

 

「つまらないわね」

 

 

未だに完全に気絶しているイリヤの鼻に絆創膏を貼り、ベッドへと寝かせたカレン先生

 

 

「ただの軽い打撲。

ほとんど外傷らしい外傷もないわ」

 

 

ベッド周りのカーテンを閉めながら

心底つまらなそうに言う。

 

 

「じゃ、じゃあなんで気絶してるんだ…?」

 

「それはほら…」

 

 

龍子の疑問に答えようとするカレン先生であったが

 

 

「脳…卒中…、じゃなくて脳震盪…?

頭打ってどうこうなる系のそんな感じのやつでしょう。どうせ」

 

「こいつ本当に保健の先生か!?」

 

「すっごいフワッとしてるね…」

 

「大事はないと思うし、まぁあったとしてもわたしには関係ないわ」

 

「いやもう人としてダメだ!」

 

「モンペも卒倒する発言だな!」

※モンペ:モンスターペアレント

 

 

子供達がカレン先生の対応に騒ぎ

それがうるさく思ったのか

 

 

「いいからもう出て行きなさい。

健康で元気な人間を見てると吐き気がする」

 

 

箒ブラシをぐりぐりと子供達に押しつけながら

保健室の外へと追い出すカレン先生

 

 

「学校はなんでこんなのを雇ったんだ!?」

 

 

全くである。

それはさておき

元気な子供達を追い出し、扉を閉めたカレン先生は

 

 

「さて…。

そっちの貴女はどうするの?

休みたいならベッドは勝手に使っていいけど」

 

 

処置中に目覚めたため

ベンチに座っているクロエに話しかける。

尚クロエもイリヤと同様に絆創膏を鼻に貼られていた。

 

 

「遠慮しておくわ。

わたしが隣に寝てたらイリヤも気分悪いだろうし」

 

「あら、仲が悪いのね。

見た目はさっき追い出した青目の子も含めて気味悪いくらい似てるのに。

三つ子かしら?」

 

 

カレン先生が普段座っている椅子へと腰掛けながら続ける。

 

 

「不思議ね…。

傷の位置も形も寝ている子とまったく一緒。

青目の子を除けばまるで…

合わせ鏡の像みたい」

 

「……ただの従妹よ」

 

 

的を得ているカレン先生の発言に

クロエが目を逸らしながら答える。

そして

 

 

「授業に戻るわ。

どーもお邪魔しました」

 

 

逃げるように保健室を立ち去ろうとする。

 

 

「本当に休んでいかなくていいの?」

 

 

しかし

 

 

「健気なことね。

そんな…

存在し(生き)てることが奇跡みたいな状態なのに」

 

 

カレン先生の自らの正体を知っているかのような言い回しに

クロエの足が止まる。

 

 

「──…。

あなた、どこの人間?」

 

 

クロエは顔を険しくさせ

カレン先生を問い詰めようとするが

 

 

「どこ?

ここよ。

穂群原学園初等部の養護教諭」

 

 

飄々とした態度を崩さず

クロエの問いを受け流す。

 

 

「まぁ貴女が大丈夫って言うならそれでもいいわ。

怪我や病気ならそれなりの処置はするけど

存在()りかたについては職務の範囲外」

 

 

そう言いながらカップの中の………緑茶に角砂糖を入れていくカレン先生

 

 

「貴女の自由は侵さないわ。

貴女がわたしの自由を侵さない限り……ね」

 

(なんでこの人緑茶に角砂糖を…!?

しかも6個!?)

 

 

カレン先生の得体の知れなさか

緑茶の味を想像した所為か

青ざめるクロエ

 

 

「はぁ。いいわ。

あなたは保健の先生。わたしはイリヤの従妹。

ただそれだけ」

 

「そういうこと。

それじゃお大事に」

 

 

カレン先生に手を振られ

クロエは保健室を後にする。

しかし

 

 

「「あっ…」」

 

 

保健室を出た所で

美遊とシロエの二人と鉢合わせになった。

二人を見てクロエは溜め息をひとつ吐き──

 

 

 

 

 

……

………

 

 

「あら」

 

 

クッキーを食べながら

カレン先生は保健室に入ってきた二人の少女

美遊とシロエを見る。

 

 

「さっきいた子達ね。

まだ何か?」

 

「いえ…」

 

「…」

 

 

二人が思い返すのは

先のクロエの忠告

 

 

『二人共、あの教諭にはあまり近づかない方がいいわよ。

…見透かされたくないことがあるなら』

 

 

美遊とシロエは二人共に隠したい事がある。

故にカレン先生に対して慎重になっていた。

 

 

「その…イリヤの様子を…」

 

「…お姉ちゃんのお見舞いに来ました」

 

「…心配性ね。わたしが信用できない?」

 

「いえ、そうでは…」

 

「…」

 

 

二人が恐る恐るカレン先生と接触していると

 

…どどどどどどどど

 

という足音が聞こえてくる。

しかもその足音はだんだんと大きくなっていき

 

 

「イリヤちゃん目を覚ましてーーー!!」

 

 

保健室の扉が開かれ…否踏み倒され

藤村先生と士郎が飛び込んでくる。

 

 

「ホラお兄ちゃんも連れてきたから!

頑張って!生き返ってーーーー!!」

 

「ちょっ…、藤村先生あんたが先に落ち着───」

 

 

しかし士郎がその言葉を言い終える前に

カレン先生の持つ赤い布が士郎へと巻きつき

士郎は顔を含め上半身全てを拘束され宙吊りになる。

尚カレン先生は左手で布を持ち、そして右手の緑茶を口にしていた。

 

 

(!?)

 

「保健室では静かに」

 

「なむでおれが…。(なんで俺が…。)

ってかなにこのぬの…(ってか何この布…)」

 

「イリヤちゃーーん!!」

 

 

藤村先生の乱入により途端に騒がしくなる保健室

そんな中

 

(……)

 

シロエが士郎を拘束している赤い布を険しい顔で見つめる。

何故ならそれは

 

 

「(礼、装…?それも聖遺物を使って…!?)先生…。あなたは…」

 

「ん?」

 

 

どこからどう見てもそれは魔術の一種であり

しかも聖遺物の使い手であった。

半ば反射でシロエが詰問しようと考えるも

 

 

『あの教諭にはあまり近づかない方がいいわよ』

 

 

クロの忠告を思い出し口を咄嗟につぐんでしまう。

 

 

「……なにかしら?」

 

「っ……なんでもありません」

 

「…そう」

 

 

そんなやり取りの最中

カレン先生が拘束を緩めたのか

士郎がなんとか拘束から逃れる。

 

 

「あっ…、あの…っ!

イ、イリヤは大丈夫です。

ボールが顔に当たっただけで…」

 

「そうそう。体育の時間でドッジボールをやって…。

多分ただの脳震盪…だと思うよ?」

 

「シロ、と君は…イリヤとシロの友達の…」

 

 

もう一人の妹とその友達から事情を聞き

一先ずは安堵する士郎

 

 

「そっか。大怪我とかじゃなくてよかった。

この人が大げさに言うから…」

 

「なっ…心配して何が悪いっていうの!?

それでも兄かこの薄情者ーッ!!」

 

 

士郎も復活しさらに騒がしくなる保健室

そんな中

 

 

「……………」

 

 

カレンが無言のままカップをソーサーへと置く。

しかし

 

 

「やれやれ…」

 

 

その目は美遊とシロエを観察していた。

 

 

(『奇跡』)

 

 

クロエの存在を

 

 

(『偶然』)

 

 

美遊の存在を

 

 

(『必然』)

 

 

イリヤの存在を

それぞれそう評するカレン先生

そして

 

 

(そして……『虚構』)

 

 

それぞれの存在を

心中でそう評し

 

 

(無駄に面倒な子たちがそろってるわね。

意味があるのか。ないのか。

何かが起きるのか。起きないのか…)

 

 

そして背後の窓を開ける。

 

 

「まぁ、どうでもいいでしょう」

 

 

提示報告

20XX年7月4日───

 

本日も異常なし。

 

 

「暇ね……。

半死半生の患者でも運び込まれないかしら」

 

「うう…イリヤちゃんの顔に傷が残ったら

わたしが責任とって士郎のお嫁さんに…」

 

「大げさだっての…ってドサクサで何言ってんだ!」

 

「発言の意味がわかりません。藤村先生」

 

「うっ!なんだか目が怖いわ美遊ちゃん!?」

 

「嘘…。師しょーもお兄ちゃんのお嫁さんに…!?

じゃ、じゃあまさか、師しょーがわたしのお義姉ちゃんっていうことも…!!?」

 

「おーいシロ、騙され…って師匠『も』?

『も』ってなんだ!?」

 

「藤村先生。

シロはこういうことに関しては純真なんです。

シロを誑かさないでください」

 

「あれー。

美遊ちゃんの目が怖さを通り越して敵意が宿っているように見えるのは私の気のせい?」

 

「…」

 

「そこは否定して欲しかったなあ!?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。