プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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何故か長くなってしまったので二つに分けます。


姉の座(前編)

 

 

ピピピッピピピッピピピッ

 

 

衛宮邸の一室にて

目覚ましのデジタル音が鳴り響く。

 

 

「ん………。朝か…」

 

 

部屋の主である士郎は

 

 

「昨日は遅くまでドタバタしてたから

まだ眠いな…」

 

 

愚痴りながら()()()()()()()()()から手を伸ばし目覚ましを止める。

 

 

「ん?」

 

「んっ…」

 

 

寝ているクロエがなにに反応したのか

ピク…と反応する。

 

意識がようやく覚醒してきた士郎は

目の前の異常に…

自身の目の前に薄ピンク色の下着が広がっていることにようやく気づく。

そして

 

 

「イリッ…いやシロッ」

 

 

動揺している士郎は目の前の少女が

自身の家族の誰か判断がつかない。

と、そこに

 

スパーン!!

 

気持ちのいい音と共に部屋の扉が開かれ

目を吊り上げたイリヤが乗り込んでくる。

またその音で目覚めたのか

 

 

「んぃー…。おはようお兄ちゃん」

 

「ってクロか!」

 

 

クロエがその目を開けたことにより

目の前の少女がクロエだとようやく気づく士郎

 

 

「お兄ちゃんって寝てる時、抱き癖あるのね。

ちょっと苦しかったわ」

 

「はぁ!?い、いや違うぞイリヤ!?

これは勝手にクロが入ってきて…」

 

 

しかしそんな士郎の申し開きは

イリヤの耳には届かず

 

 

「ふ…不潔!!!」

 

 

その時衛宮邸に

 

バッシィィン!!

 

というビンタの音が鳴り響いた。

 

また別室にて

 

 

「あら、クロちゃんがいない」

 

 

と一緒に寝ていたクロエの姿が見当たらず

アイリがぼんやりと呟くのであった。

 

 

 

……

………

 

 

時間は進み

朝食の時間

仕事でいない切嗣を除く

衛宮家の一同が

食パンとスープ、サラダという洋食を

各自摂っていると

 

 

「立場をはっきりさせておくべきだと思うの!」

 

 

イリヤが皆の視線を集める。

 

 

「はぁ。立場…とは?」

 

「もちろんこの

ちゃっかりわたしとお兄ちゃんの間に割り込んで座ってるヤツに関してです」

 

 

起床時の事が許せないのか

自身の右隣に座って朝食を摂っているクロエを半目で睨みつけるイリヤ

またそのクロエの右隣に座っている士郎は

 

 

「フケツ…フケツ…」

 

 

と、右頬にビンタの痕をつけ落ち込んでいた。

それはさておき

 

 

「クロも家族になったのなら家庭内のルールを守るのはもちろん。

お互いの力関係についても最初に取り決めた方がいいと思うの。

じゃないとまたお兄ちゃんといかがわしいことを……!

シロにも悪い影響与えそうだし……!」

 

「だっ…だからあれは…」

 

「ふむふむ一理あるわね」

 

 

弁明しようとする士郎をスルーし

アイリが

 

 

「じゃあ、とりあえず現在の上下関係から確認しましょうか」

 

 

いつの間にか手に持っていた

ノートサイズのホワイトボードに上下関係の図を描く。

そして描き終わり

 

 

  ①アイリ

───神の壁───

  ②キリツグ

───親の壁───

  ③イリヤ

───姉の壁───

  ④シロ

──お嬢様の壁──

  ⑤セラ リズ

──メイドの壁──

  ⑥シロウ

 

 

という図が一同の前に提示される。

 

 

「おお…。さすがママ。

悪びれもせず自分を神に!」

 

「っていうか何気にお兄ちゃんの扱い酷くない?」

 

「いいんだよ俺はもう…」

 

 

クロエが呆れた表情で言い

士郎はその扱いに涙を流し既に諦めている。

 

 

「でもたまに上下逆転するよね」

 

「否定はできないわね」

 

 

二人のメイドはその図が絶対ではないと指摘する。

 

 

「で、もちろんクロは一番下!」

 

 

とイリヤが

 

 

  ⑥シロウ

───兄の壁───

   クロ

 

 

一番下に描き足す。

 

 

「兄の壁ってずいぶん低いところにあるんだなぁ…」

 

「横暴ねぇ。酷い階級構造だわ」

 

 

その図を見て士郎とクロエが文句をつける。

しかしそこまで本気にしておらず

呆れた目で図を見ていたのだが

 

 

「てことは、イリヤはクロとシロのお姉さん?」

 

 

リズの食パンを食べながらの一言で火が着く。

 

 

「「…姉?」」

 

「姉───。そう、それは…」

 

 

愛娘二人の視線が互いに交錯する中

アイリがさらに姉の強権について説明する。

 

 

「それは年長者にして権力者。

弟妹が発生した瞬間からその上に立つことを宿命付けられた上位種である。

家庭内ヒエラルキーにおいては男親を超越した権力を有することすらあり

特に弟妹に対しては生涯覆らない絶対的な命令権をもつ。

彼の者曰く…

『姉より優れた妹などいねぇ!!』

 

 

ドッジボールにてシロエが持ち出した説を

殊更に強調し説明を終えるアイリ

 

 

「姉……。あぁ姉…!!

何度聞いてもなんていい響きなの…!!

シロっていう手のかかる妹をちゃんと面倒見てあげれてるし

もう一人妹が増えても問題ないよね!」

 

「ちょ…ちょっと勝手にわたしまで妹にしないでくれる!?

姉の定義もシロが言ったものよりなんか偏向がひどいし!」

 

 

姉という響きに酔いしれているイリヤに対して

クロエが机を叩きながら立ち上がりイリヤへと噛みつく。

 

 

「だいたい生まれた順番で言えばあなたの方が遅むもがっ…」

 

「はいはーい。ネタバレ厳禁ね」

 

 

なし崩し的に生まれた時の事を話そうとしたクロエの口に食パンに放り込み発言を遮るアイリ

 

 

「あっ、そういえば以前一回だけわたしのこと『お姉ちゃん』って呼んでた!」

 

「あれは…っ!皮肉ってものがわからないのあなたは!」

 

 

イリヤの指を差しながらの指摘に

クロエが放り込まれた食パンを噛み砕きながら反論する。

 

 

「一回呼んだからには責任取ってよね!

わたしが姉ですー!決定ー!」

 

「そういう子供っぽいところがふさわしくないって言ってるの!」

 

「仲がいいわねぇ。美しいわ」

 

「わたしには醜い争いに見えますが…」

 

 

イリヤとクロエの言い争いを見て

微笑むアイリとげんなりするセラ

 

 

「ねー!シロもクロよりわたしの方が姉に見え──」

 

 

イリヤが自身の左隣にいるシロエを味方につけるために振り向く。

しかし

途中で気づくべきだったのかもしれない。

先の一連のやり取りに妹が全く入ってこなかったことに

 

 

「───シロ?」

 

 

そこには

視線は下へと落ちピクリとも動かず

憂いを帯びた表情をし

虚ろな目で虚空を見つめ続ける

今まで見たことのない姿の自身の妹がいた。

 

 

 

 

 

……

………

 

 

皆がイリヤの発した話題にくいついている中

シロエは一人考え事をしていた。

それは

 

 

(なんでわたしまだ…存在してるんだろ……?)

 

 

使い魔とは術者が魔術を行使することで生み出され

生み出された後は術者から継続的に魔力を供給されることにより存在を保つことが出来る。

 

それはわたしも例外ではなく

猟犬の精神に『イリヤ』の一部を混ぜ込んだ後、わたし(マスター)の魔術により肉体を生成し外付けした。

そうして生み出されたのがわたし

 

逆に言えば魔力供給を止めることも出来る。

即ちどんな時間どんな状況であっても、術者の意思一つでいとも容易く消えてしまう存在

 

そしてわたしはわたし(マスター)の明確な敵だと思っていたクロを殺すことが出来なかった。

勿論最終的には殺さなくても問題はなかったし、今の結果に満足はしてるけど

それはあくまで結果論

本来ならあの時…敵であると判断した時に殺しておかなきゃいけなかった。

 

なのに、わたしは………。

お姉ちゃんの本心を聞いて安堵したと同時に殺したくないと思ってしまった。

しかも一瞬ではあるけどお姉ちゃんにわたしのことを話したいと…話して受け入れてもらいたいと思ってしまった。

話せばわたし(マスター)の身に対する危険度が上がると理解していながら…。

 

これらはわたし(マスター)に対する立派な裏切り。

だからわたしが消されるまでそう時間はかからないだろうとそう思ったのだけど…。

未だにわたしは消されていない。

いや、それどころか…。

 

 

(増え…てる?わたしの身体に宿る魔力が…?

……………わけがわからない。

わたし(マスター)はこのことに気づいていない…?)

 

「───!」

 

 

いやそれはない。

わたし(マスター)は暇潰しにわたしをこの世界に送ったわけで

この世界に来る前にずっと見てると、そう言ってたし…。

 

 

(いやそもそも…。

なんでわたしはクロを殺せなかった?)

 

「───ロ!!」

 

(この世界に来る前の…わたし(マスター)の下で戦っていた頃のわたしなら間違いなく殺していた。

殺しても何も思わなかった。断言できる。

なのになんで…)

 

「シロってば!!!!」

 

「!?」

 

 

イリヤの大声にシロエは身をビクッと震わせ意識を浮上させる。

 

 

「もうなにお姉ちゃん。耳元で…」

 

「な、なにって…」

 

「?」

 

 

姉の歯切れの悪い返事にシロエは周りを見渡す。

すると家族の皆が全員自分へと視線を送っているのに今更ながらに気づく。

そしてその視線に心配の色が混じっていることに気づいたシロエは

 

 

「…あーごめん。寝不足でね。

ボーッとしてた」

 

「そう…なの?」

 

「あははははは。ごめんごめん」

 

「なんだ。まだ小学生なんだからちゃんと速く寝ないと大きくなれないぞ」

 

「むっ!お兄ちゃん!子供扱いしないでよね!!」

 

「なーに言ってんだ。まだまだ子供だろ」

 

「むーっ!!」

 

 

士郎の言葉に頬を膨らますシロエ

そうしていつものようにテンションを高めに保ち会話へと入っていく。

 

 

「………」

 

 

そんなシロエの様子を

神妙な顔でアイリは見ていた。

 

 

「それで?なんだっけ?」

 

「え?」

 

「いや、なにか用があったから話しかけたんじゃないの?」

 

「あ、えーとね…」

 

 

イリヤが今までの会話の流れをシロエに説明する。

 

 

「…はあ。なんだそんなこと?」

 

「いやそんなことって」

 

「そんなの三人共上下関係なし。対等でいいじゃない」

 

「うっ…」

 

「…うーん」

 

 

シロエの先のおかしな様子を見てしまったイリヤとクロエの姉に対する熱はすっかり下がってしまっていた。

加えて今のシロエの提案を無下にすることはなんとなく憚られた。

故に

 

 

「…仕方ないわねぇ。シロに免じてここは」

 

 

クロエが矛を収めようとした。

その時

 

 

(…ん?()()()…?)

 

 

クロエは先のシロエの言葉に引っかかりを覚えた。

そして気づく。その言葉の意味を

 

 

「そう、だね…。じゃあシロの言うとおり対等ってことでいいかな」

 

「ま、待ちなさいイリヤ!これは罠…」

 

「へ?」

 

「計 画 通 り」

 

「!?」

 

「顔っ!顔自重しなさい!!」

 

 

某新世界の神になろうとした男の如く

悪い顔で笑みを浮かべるシロエ

 

 

「えっ、えっ!?いったいなにが…」

 

「イリヤ!シロはこう言ったのよ。

()()()対等だって!」

 

「うん…、うん?」

 

「そう。つまり…」

 

 

シロエが悪い顔のまま

ホワイトボードを修正する。

 

 

  ③イリヤ

───姉の壁───

  ④シロ

 

 

から姉の壁を消し

 

 

③イリヤ シロ クロ

 

 

へと

 

 

「んなぁーッ!!?」

 

 

自分とクロエが対等となり

シロエの立ち位置は変わらないと思っていたイリヤが

女の子が出してはいけないような奇声を上げる。

そして再び二人に火が着く。

 

 

「ずる!ずるよ!!汚い!!!」

 

「汚いは…褒め言葉よ…!」

 

「褒めてないよ!?なに忍者みたいなこと言ってるの!?

っていうかもしかしてさっきのはこの展開に持ち込むために考えてたの!?」

 

 

心配して損した!!!

とイリヤは憤慨する。

 

 

「イリヤはともかく、わたしは同意してない!!」

 

「ぶっぶー。

投票数二対一によりこの案は可決されましたー。

よってクロの異議申し立ては棄却されまーす」

 

「なによそれ!?多数決の暴力反対!!」

 

「クロがそれ言うの!?」

 

 

ついこの間

多数決の暴力に散々屈してきたシロエがクロエに憤慨する。

 

 

「わたしだって賛成してないもん!」

 

「え?いやいやさっき言ってたじゃない対等でいいかなって」

 

「そんなの口が滑っただけじゃない!

こんなの詐欺よ!無効よ!!」

 

「証拠だってあるよ?ほら

『そう、だね…。じゃあシロの言うとおり対等ってことでいいかな』」

 

「携帯で録音!?なんでそんなに用意周到なのよ!?

お姉ちゃんはそんなずるいことをするような子に育てた覚えはありません!!」

 

「育てられた覚えもないよ!?」

 

「いやそもそもあんた。わたしのこと『クロお姉ちゃん』って呼んだでしょ!」

 

「あれはクロが無理矢理…」

 

「その前よ!」

 

 

その前…?

シロエが記憶を掘り返すと

クロとの戦闘の最中で確かにそんなことを言ったような気がした。

…あまり覚えてないけど

 

 

「あれは…」

 

「あれは!?」

 

「そのー…、そう!カタカナ表記で読みにくかったから無効!!」

 

「カタカナ表記ってなに!?」

 

「なにわけのわからないこと言ってるのよ!

しかも何気に『クロ』って呼び方で定着してるし!

イリヤと同じように『クロお姉ちゃん』って呼びなさいよ!!」

 

「『クロ』の方が短くて呼びやすい。却下」

 

「はあ!?呼び方一つで横着してるんじゃないわよ!!

大体それを言うなら『お姉ちゃん』より『イリヤ』の方が呼びやすいでしょ!?」

 

「あ、じゃあこれからは『イリヤ』って呼んで」

 

「断固拒否!!!それだけは絶対に認めないよ!!?」

 

 

自身へと飛び火した火を消すべくイリヤが叫ぶ中

痺れを切らしたクロエがホワイトボードを手に取る。

 

 

「とにかく!

一回でも呼んだならそれは有効よ!!

つまり…こうよ!!!」

 

 

クロエがホワイトボードを

 

 

  ③クロ

───姉の壁───

④イリヤ シロ

 

 

と修正する。

 

 

 

「いやなんでわたしまで!?

クロのそれが通るんだったらクロだってわたしのことお姉ちゃんって呼んだじゃん!!

だから…こう!!!」

 

 

 

イリヤが

 

 

  ③イリヤ

───姉の壁───

 ④クロ シロ

 

 

とさらに修正する。

 

 

「だ・か・ら!!あんたは子供っぽくて姉にふさわしくないって言ってるでしょ!!!」

 

「なんですってー!!

そういうクロだってわたしと同じ理屈を使ってるんだから子供でしょ!!!」

 

「まあまあ、ここは間を取って…」

 

 

シロエが

 

 

   ③シロ

───姉の壁───

 ④イリヤ クロ

 

 

とさらに修正する。

というか修正だらけでぐちゃぐちゃになっている。

 

 

「ど・こ・が!間よ!!!」

 

「しかもさっきより酷くなってるし!?」

 

「だって二人共、ドッジボールわたしより先に退場したじゃない。

そして私は最後まで生き残った。

Q.E.D。証明完了」

 

「全然証明になってないわよ!?

大体あれは、わたしとイリヤが闘ってたのをあんたは見てただけでしょうが!!」

 

「漁夫の利って言葉を知らないのー?」

 

「いやだいたいシロ!!

わたしよりも誕生日後じゃないのよー!!!」

 

 

小学生組が激しい姉のマウント合戦を繰り広げている傍らで

 

 

「………三人揃うと仲の良さがさらに際立つわね!」

 

「泥沼になってるようにしか見えないのですが…」

 

 

当のシロエが何も言わずにいつも通り振る舞っているため

同じく何も言わずに笑顔を浮かべるアイリと

争いにシロエが加わりさらに騒がしくなりげんなりするセラ

 

 

「早くオヤジ帰ってきてくれないかな…」

 

「パパ恋しい?」

 

「いや男女比の問題でな…」

 

 

現在の男女比1対6という圧倒的な女子比率に肩身が狭い士郎と

我関せずと黙々と朝食を口に頬張るリズであった。

 

 

 

……

………

 

 

時間は進み、場所は小学校のイリヤ達の教室

なのだが

 

ドドドドドド…

 

廊下より誰かが走る音が聞こえた

次の瞬間

 

 

「「「どりゃあーーーーー!!」」」

 

 

イリヤ、クロエ、シロエの三人の少女がヘッドスライディングで廊下から教室へと飛び込む。

 

 

「うおぉ何事だーッ!?」

 

 

突然の出来事に雀花が驚く。

尚三人が飛び込んだ際、不幸にも入口付近にいた龍子がはねとばされていた。

廊下は走らないようにしましょう。

 

 

「くっ…。同着か」

 

「微妙にわたしの方が早くなかった!?わたしが姉じゃない!?」

 

「転身までしておいて寝ぼけないで」

 

「校門までならわたしが一番早かったのに…。ゴールしてから教室に変更するのはずるだと思うの!」

 

「あんたも強化魔術使ったからおあいこ…っていうかなんであんたは強化魔術の上がり幅がわたしやイリヤよりもそんなに大きいのよ」

 

 

本来シトナイ(シロエ)の敏捷はAランクだからね。仕方ないね。

 

 

「三人とも何してるの…?」

 

「あ、おはようミユ」

 

「おはよー」

 

「いやちょっと姉の座を賭けたレースというか…」

 

 

イリヤが若干遠い目で見て話しかけてきた美遊に説明しようとした時

 

キーン、コーン、カーン、コーン

 

朝礼を知らせる鐘が鳴ることでその場は流れた。

 

 

 

……

………

 

 

「誕生会?」

 

 

朝礼が終わり一時間目が始まるまでの休み時間

クロエは雀花達に話しかけられる。

 

 

「そう。

7月20日にイリヤの誕生会を海でやろうと思ってるんだけどさ。

クロも来てくれないかなって」

 

 

内容はイリヤの誕生会のお誘いである。

それに対しクロエは

 

 

「ふーん…。

ちょうどいいわ。

実はその日わたしも誕生日なの」

 

 

唐突な爆弾発言をする。

 

 

「「「うええっ!?」」」

 

 

当然驚く雀花達

 

 

「顔だけじゃなく誕生日まで一緒なのかよ!」

 

「あんたら本当に双子じゃないのか!?」

 

(ちょっとー!!どどっ…どういうつもり!?)

 

 

イリヤが小声でクロエに問いただす。

 

 

「どういうも何も…。

あなたが誕生日ならわたしだって誕生日でしょ?

なんら不思議なことじゃないわ」

 

「うううっ…。そうかもしれないけどっ…」

 

「あの…」

 

 

イリヤとクロエが話し合う中

美遊がおずおずと手を上げる。

 

 

「イリヤの誕生日って7月20日なの?」

 

「え?そうだけど…」

 

 

突然割り込んできた美遊に訝しむイリヤ

そして

 

 

「わたしも同じ日…。誕生日…」

 

 

さらなる爆弾発言を行う。

 

────。

 

頭が真っ白になる一同

そして一拍おいて

 

 

「三人が同じ誕生日!?どうなってんだ!?」

 

「前世で繋がりでもあるのかお前らー!?」

 

「おおお俺も同じ誕生日だぜ!!」

 

「嘘つけー!!」

 

「『乗るなら今だ』みたいな顔すんな!!

今それを言って通りそうなのはシロくらいだろ!!」

 

「うん?わたしは違うよ?」

 

「おう!!知ってる!!」

 

 

途端に騒ぎ出す友達に混じりながらもシロエは

 

 

(…偶然?いや、でも…)

 

 

普通なら偶然で流してしまうところをシロエは引っかかる。

その理由は

以前頭の中に出てきた平行世界の単語がシロエの中に過っていたからである。

 

 

(お姉ちゃんとミユの誕生日が同じ…。

つまり…お姉ちゃんとミユは世界を越えての同一の存在…?)

 

 

それはつまりミユは………。

 

 

(……………はぁ。誕生日ひとつで穿ち過ぎよね)

 

 

シロエが考え込んでいると

 

 

「でも、それならみんな一緒にお祝いできるよね」

 

「そうだなぁ。まとめてやっちゃおうか」

 

 

美々の発言で話はまとまる。

 

 

「というわけでみんな

誕生会にかこつけて親からお金もらって海で遊ぼうぜー!!」

 

「少しは本音隠してくれないかな!」

 

「楽しみだわー。わたしとミユの誕生会。ねー」

 

「えーと…」

 

(っていうか誕生日といい席といい、ますます疎外感が酷く…)

 

 

美遊がクロエから目を逸らし

シロエが内心疎外感を感じている中

 

 

(うううう…。別にいーけど。別にいーんだけど。

なんというか──)

 

 

 

……

………

 

 

「姉の威厳がない!」

 

 

時間は進み昼休み

 

 

「あん?威厳?」

 

 

女子トイレにてイリヤは雀花達に相談を持ちかけていた。

 

 

「そう何を隠そうわたしはシロとクロの姉的存在なわけなんだけど。

どうにも姉っぽい威厳がなくて…」

 

 

しかし真面目に聞いているのは雀花と美々の二人のみであり

龍子はイリヤの頭に登りガジガジと噛みつき

那奈亀はイリヤの首にブラーンブラーンとぶら下がっている。

 

 

「なるほど見るからにないな」

 

 

イリヤのその様子を見てそう断じる雀花

 

 

「しかしなんでまた急に」

 

「えー…。ワケあって今家庭内の権力争いが微妙な時期で…。

シロもこれ幸いと下克上を狙ってくるし…」

 

 

いたたまれなくなったのかイリヤが視線を逸らし顔をひきつらせる。

 

 

「と、とにかくわたしもちゃんと姉らしく振る舞ってシロとクロに認めさせたいの!」

 

 

イリヤが真剣な表情で宣言する。

 

 

「みんな確か姉妹いたよね?どうすれば姉っぽくなれるか教えて!」

 

「姉っぽくなぁ…」

 

 

イリヤが両手を合わせてお願いすると

皆が考え始める。

 

 

「んーそうだねぇ…」

 

 

すると最初に那奈亀が自身の姉について語る。

 

 

「たとえばウチのねーちゃんの場合だとモテカワっぽいふんわり美人だよ。

なんか最近転校してきた帰国子女のツインテと金髪ドリルにお株を奪われてるけど下級生からはお姉様とか呼ばれてるらしい」

 

「ツインテにドリルって…」

 

 

もの凄く覚えのある特徴にイリヤが顔をひきつらせる。

 

 

「まぁ容姿は大事だよな」

 

「ゆるいカールとか大人っぽいよねー」

 

「イリヤ、メモ!」

 

「はっ、はいぃっ!」

 

 

那奈亀に言われメモを取り始めるイリヤ

それを尻目に次は雀花が自身の姉について語る。

 

 

「ウチのおねぇはそれに比べていいもんじゃないなー。

ベタとかトーンとかコキ使うくせにちょっと気に入らないとガスガス蹴ってくる。

まぁ…機嫌がいい時はたまにプリンとか買ってきてくれたりするけど」

 

「ベタ?トーン…?」

 

 

聞き慣れない単語にイリヤは訝しむ。

 

 

「知ってるぜ!『()ンデレ』ってんだろそれ!」

 

「『ツンデレ』な」

 

「安易なカテゴリ分けはあんま好きじゃないけど…。

まぁそうなるか」

 

 

雀花が頭を掻くと

次は龍子が兄について語る。

 

 

「ハハン!みんなあめーな!

何より重要なのは力だろ、力!

兄貴は強ぇから兄貴なんだよ!!」

 

「姉の話なんだけど…」

 

「でもまぁ一理あるわな」

 

「年長者は強くあるべきだね」

 

 

姉ではなく兄の話になったが

一理あると納得する一同

次は美々が弟について語る。

 

 

「わたしはひとつ下の弟がいるから、わたしがお姉ちゃんってことになるんだけど…。

うーん…、あんまり姉の威厳とかはないと思う…。

『姉ちゃんはなんか危なっかしい』ってよく心配されるし」

 

「しっかりした弟かー。

なんか少し羨ましいな」

 

「今度ミミんち行っていい?泊まっていい?」

 

「ど…どうして急に!?」

 

 

雀花が何を妄想したのか鼻息荒く美々へと迫る。

 

 

「で」

 

「どうよイリヤ」

 

「参考になった?」

 

 

那奈亀、雀花、龍子、美々。

それぞれの兄弟姉妹の様子を話し終え

 

 

「うん………」

 

 

イリヤに尋ねるが

その時のイリヤの目は

 

 

「とりあえず。

全部やってみる」

 

 

ぐるぐると渦巻き

とち狂っていた。

 

 

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