「───
場所は冬木市深山町の外れにある円蔵山の地下
「
des Abgeordneten」
イリヤ達がクロエと出会った大空洞である。
「
その大空洞の中央…龍穴にて凛が詠唱を行っている。
「
左手には宝石。そして凛の目の前には一枚の用紙が四本の棒で広げられ、支えられている。
「
そして詠唱が完了し
「
宝石が用紙の上に落とされた。
バシュン
宝石が用紙に触れた瞬間
用紙に黒のうねうねとした太い線…冬木市の地脈図が用紙に浮かび上がる。
「…………これって…」
地脈図を見た凛の目が驚愕で見開かれる。
「嘘でしょ、まさか……。
終わってなかったっていうの──?」
…
……
………
時間は進み夕方
(まずいわね。時間が経ちすぎている…)
エーデルフェルト邸へと向かいながら
凛が一人、トートバッグを肩にかけ
住宅街を歩きながら苦悩する。
(あれから何日経った?二ヶ月弱…?
もしも想像通りだとしたらもはやわたしたちの手には負えないレベルかもしれない…)
そうして思案しているうちにエーデルフェルト邸にたどり着く。
「とりあえず協会に報告。
大師父の指示を……」
凛が門を開けようと左手を伸ばしたその時
「!」
その左手を止める。
「……………。
なに?この空気…」
エーデルフェルト邸から感じる重苦しい空気を感じ
困惑する凛
「(かすかに魔力の残滓…)ルヴィア…?」
重苦しい空気と同時に感じる魔力の残滓
「…………」
凛は躊躇しつつも
ギィ…
門を開けた。
ーーーーーーーーーー
「え?なにか言った?」
場所は変わり衛宮邸のイリヤの自室
勉強机に向かいながらシャーペンを片手に学校の宿題をこなしながらイリヤが尋ねる。
「はい?なにが?」
「なんですか?」
イリヤのベッドに寝転びながら雑誌を片手にクロエと
クロエの近くにて浮いているルビーが
尋ね返す。
シロエは自室にいるためこの場にはいない。
イリヤと同じく宿題をしているのだろうとイリヤとクロエは思っている。
「……あれ?」
「空耳ですかイリヤさん」
「ボケるには早すぎるんじゃないー?」
「うぬぬ…」
ルビーとクロエの言葉に唸るイリヤ
「それより水着は決めたの?
下見に行った時には誰かさんの暴走のせいで結局決めれなかったし」
クロエが雑誌に載っている水着のページをめくりながら尋ねる。
「だからあれは悪かった…っていうかあれはそもそもクロが発端じゃ」
「あらやだ、今度は責任転嫁?」
「うぐっ…」
以前下見に行った時にはクロエがシロエを弄び
シロエのチ◯化によりイリヤの暴走スイッチが入ってしまい
水着を決めることはできないままメイド服のためにエーデルフェルト邸へと移動したのであった。
確かに発端はクロエではあるが主たる原因は自分にあったためイリヤは言い返すことができない。
「ま、まあ良さそうな水着ならある程度絞ることはできたわけだから無意味ってわけじゃなかったし。
シロの競泳用水着はどうにかしないといけないけど…」
「あーうん。確かにあれはどうにかしないといけないわね」
「うん。ただ…」
「ただ?」
「お金が…」
水着を下見に行ったことは無意味ではなかったと主張しつつも買うためのお金に不安があるイリヤ
「セラに頼んで買ってもらえば?」
「それだと『ではそれが誕生日プレゼントということでいいですね?』とか言いそう」
「あはは言うねー。セラってばメイドのくせにケチだから。
じゃあシロから借りちゃえば?
あの子結構貯めこんでるでしょ?」
シロエには趣味と呼べるものがない。
強いて言えば読書やDVD鑑賞であるが
図書館や学校の図書室で借りてきた本やイリヤが読み終え飽きた漫画を借りて読み
DVDもイリヤが誘うことで一緒に見たりする程度である。
さらに言うならば服も最低限着回せる程度しかない。
実際シロエの私室は必要最低限のものしかなく殺風景である。
故にセラからもらうお小遣いはそのほとんどが手付かずで全て貯金されているため
お金に関してはイリヤよりもかなりの余裕があった。
しかしそれ故にスク水しかないという事態となっているのだが…。
「いや妹からお金借りたりなんてしたら姉としてなにかが終わっちゃう気が…」
「もともと終わってる気もするけどねー」
「酷い!?」
終わってない!わたしはシロのお姉ちゃんだもん…!
「ま、わたしもお小遣いで好きなの
いっくらでも買えるけどー」
「え"っ!?」
シロならわかるけど…。
クロの金遣いはわたしと同じくらい…ううん、もっと多いはずなのに…!?
「ど、どういうこと!?
なんでクロまでそんなにお金持ってるの!?」
「ちょっと前までお金持ちの家の子でしたからー?」
「ルヴィアさん!?」
「月のお小遣いとして十万円もポーンと渡してくれたわ」
「じゅうまんっ…!?」
十万という小学生には大金すぎる額にイリヤは愕然とするがさらに
「ミユはもっとすごいわよ。メイドの給料があるからね。
もう三百万以上貯めてるんじゃないかしら」
「さんっ…!!?」
三百万というテレビぐらいでしか見たことのない超大金に押し潰されるイリヤ
「………」
「「………」」
そして
「わたし…ミユと友達になれてよかった」
「あなたそれ今言うには最低のセリフよ」
「魔法少女にあるまじき現実主義ですね」
イリヤのいい笑顔での発言に引くクロエとルビー
「はぁ。まぁいいや。ルヴィアさん家のお金持ちっぷりは今に始まったことじゃないし。
水着はセラの機嫌がいい時におねだりしてみる方向で」
「殊勝なことねー。まぁ頑張りなさい」
イリヤのベッドにてゴロゴロしながらクロエが言うと
「それよりクロ。あなた人の部屋でゴロゴロしてるけど宿題はやったの?」
イリヤが半目でゴロゴロしているクロエを見て尋ねる。
「人の部屋っていうかわたしの部屋でもあるんだけど」
「まだ言うか…」
「宿題なら後でシロに写させてもらうし」
「ダメだからね!っていうかそこはわたしじゃないの?」
今、目の前で宿題をやっている自分ではなく妹の名前が出てきたためイリヤが訝しみながら尋ねる。
「だってシロの方が頭いいし」
「ぐっ!?い…いつか勝ってみせるもん!!」
「えー。毎回当たり前のように満点を叩き出してるのに?
勉強だけでいえばミユと同レベルでしょあの子」
「ぐぐぐ…」
イリヤは呻き声を上げた後
はぁ…。
と溜め息を一つ吐く。
(シロ…)
そして最近のシロエについて思いを馳せる。
ミユに言われてからシロのことを注意深く見てたけど
確かに…少し様子がおかしいように感じる。
一見するといつも通りに見えてたから気づくのが遅れちゃったけど
誰も見ていない所…話に混じっていない時なんかにはなんだかボーッとしているように思えた。
さらにはお兄ちゃんへの抱きつき…。
その後のシロの発言からつい流しちゃったけど。
抱きつく直前のシロのあの不安定な雰囲気…。
…なにか悩みがあるのかもしれない。
けど、それを聞く決心がつかない。
原因となっているのはシロのあの言葉
『わたしのことなんて何一つ知らないくせに』
……………。
最初はクロに言ったと思ってた。
わたしに言ったわけじゃないって…。
でももしも…もしもわたしとシロがずっと一緒にいた記憶をクロが持っているとわかった上であの言葉を言ったんだとしたら…。
もしかしたらあの言葉はわたしにも……。
……わたしはシロの戦闘中の様子を初めて見てから今まで
シロにはああいったわたしには知らない一面があったんだって
わたしは思った。
でもそうじゃないのかもしれない。
シロの本当の姿が戦闘中のあの様子であって
わたしが今まで見てきた普段の楽しそうな姿は偽りだったんじゃ…?
そう思った理由は
弱気。
わたしはシロがこの家に来てから一度もシロが泣いている所はもちろん弱気になった所、弱音を吐いた所さえも記憶がなかった。
5年ちょっとの間一度も。
もちろんシロが来たばっかりの頃、わたしはまだ幼かったからそこまで鮮明には覚えてない。
けどそれでも、シロのそういったエピソードが一個も出てこないのは異常だって、わたしにもわかる。
だから……今までのわたしが知っているあのシロは偽りだったんじゃないかって……わたしは思っちゃった。
違う。そんなはずはない。
そう思う度にわたしは自分の中でそう否定してきた。
だって…もしそれが真実なら…。
シロはわたしのことをずっと騙していた。
ということになっちゃうから
(………わたしはシロのことを
血が繋がってなくても…誕生日が違っていても
双子の妹のように思ってる。
でも…シロはわたしのこと───)
イリヤの中に疑念が生まれるが
その疑念を振り払うべく
気分を変えるためにクロエへと話しかける。
「…とにかくちゃんとしてよね!
クロとシロが怒られる時ってなぜかいつもわたしもセットにされるん……だ…から…」
その時
イリヤの耳に再び
妙な音が届いた。
「?なに?」
「やっぱり聞こえた…!ヘンな音!」
「は?何も聞こえなかったわよ。
また空耳…」
イリヤが椅子から立ち上がり
クロエが怪訝に思いながら否定しようとした時
ズン…
二人の耳に鈍く重い振動音が届いた。
「………。これって…」
二人が震音の発生元と考えられる場所へと
窓を通して目を向ける。
「ルヴィアさん家から………?」
ーーーーーーーーーー
その頃エーデルフェルト邸では
「ぬうっ…」
老執事であるオーギュストが血を吐きながら呻き声を漏らす。
壁へと叩きつけられたのか背後の壁が陥没しており部屋中に瓦礫が散在している。
「オーギュスト!!」
ルヴィアが心配そうな声を上げる中
「抵抗は無意味です。
貴女方では相手にならない」
この惨状を作り出した人物が口を開く。
「おとなしくカードを渡しなさい。
これ以上怪我はしたくないでしょう」
その人物は邪魔にならないショートカットの髪にキッチリとしたスーツを身に纏った女魔術師であった。
凛とした雰囲気でルヴィアへと要求する。
しかし
「…ずいぶんと無作法ですこと。
自分から
ルヴィアは要求を突っぱねながら戦慄する。
(冗談じゃないわ…)
「生憎そういった教育は受けていません」
(なぜ…今になって………!!)
「わたしには」
女魔術師は邪魔だったのか転がっている長椅子を片手で軽く持ち上げ、後ろへと放り投げる。
そんな女魔術師をルヴィアは知っていた。
その名は
「不要なものです」
(バゼット・フラガ・マクレミッツ!!
協会一線級の戦闘屋、封印指定執行者…!!)
放り投げた椅子がズンッと重い音を立ててバゼットの後ろに落ちる。
(……どういうこと?)
バゼットが空けたのか壁に空いている大穴から凛が外から外壁を背に覗き込み思考する。
アレの狙いはカード…?
おかしい…。
回収任務は大師父に委譲され
所持・解析権は代理人たるわたしたちにあるはず
(それを今さら横取りしようってわけ…?)
まともにやりあって勝てる相手じゃない。
ルヴィアには悪いけど…囮になってもらうわよ。
「しかし些か拍子抜けですね」
「!」
「貴女にはゼルレッチ卿から特殊魔術礼装を渡されたと聞いていたのですが……使わないのですか?
それとも……使えないのですか?」
図星である。
特殊魔術礼装…ルビーとサファイアは今ここにはないのだから
「……フン」
しかしルヴィアはそれをおくびにも出さず
「必要ない…が正解ですわ」
自身の周囲に無数の宝石を浮かばせ
不敵な笑みを浮かべながら断言する。
しかし
「…なるほど。エーデルフェルト家の娘は誇り高い。
ですがわたしに言わせればそれは」
バゼットはまるで怯まない。
厚手の
「ただの驕りです」
そして
ルヴィアが宝石を全てバゼットへと放ち
バゼットはそれを正面から迎え撃ち
隠れていた凛が動き出す。
ーーーーーーーーーー
「あれー?なんともないね…」
エーデルフェルト邸の門の前にてイリヤが不思議がる。
それも当然である。
門の隙間から見えるエーデルフェルト邸はあれだけの大きな振動音にも関わらずいつもと変わらない様子だからである。
「この家には認識阻害の結界が張られているから外からじゃわからないわ。
中で何か起こっても普通は外の人間に気づかれることはないの」
クロエがエーデルフェルト邸に施されている結界について説明するが
それでは先の振動音が聞こえた説明がつかない。
「じゃあさっきのは…」
「想定以上の『何か』が起きた。
…ということでしょうか」
「「………………」」
ルビーの言葉にイリヤとクロエが深刻な顔をし沈黙する。
「…ねえ、やっぱりシロを連れてきた方が…。
あの子がいれば…」
シロエと一対一で戦ったクロエは誰よりもシロエの戦闘力の高さを理解していた。
…認めたくはないがあのまま戦っていれば殺されていたのは自分だっただろう、と
しかし今この場にはシロエはいなかった。
「…呼びに行ったけど寝てたんだから仕方ないよ。
多分疲れてて、勉強中に机に突っ伏してたし…。
それに…」
「それに…?」
…なんでだろう。
うまく説明できないけど…。
予感がする。
これ以上シロに戦わせちゃいけない。
戦わせたら取り返しのつかないことになる。
そんな予感が───
「……ううん。とにかく行こう。
本当に何かが起きてるんだったら
今から呼びに戻ったら間に合わないかもしれない」
「…わかった。じゃあ開けるよ」
そしてクロエが先頭で門を開けた。
ギギィ…。
そして二人が見たものは
無惨にもボロボロになり、あちこちの壁に大穴ないし陥没し
その家の周囲には瓦礫が山のように積み重なり
柱が折られ支えきれなくなったためか家全体が傾きひしゃげ
あの見る者を圧倒したエーデルフェルト邸は倒壊していた。
美しかった庭もまた、あちこちに大なり小なりのクレーターが出来
木々はそのほとんどがへし折れている。
そして
「…侵入者の警告音が鳴りませんね。
見たところ子供のようですが
貴女達も関係者のようだ」
倒壊したエーデルフェルト邸を背後に
筒状のケースを肩にかけ
こちらへと静かに歩みを進めるバゼットの姿
「援軍だとしたら、一足遅い」
その冷たい表情とそして感じる重圧に
(なっ…なに…!?この人…っ!?)
戦くイリヤ
しかしそんな暇はなく
次の瞬間
バゼットがケースを置き去りにし
イリヤ達に襲いかかった。
「!!」
それに反応したのはクロエ
黒白の双剣を投影し
ゴギンッ!
バゼットの攻撃をなんとか受け流す。
しかしその攻撃は
「……ッ!?素手…!?」
「──ほう」
武器を使わない素手での攻撃であったが
その攻撃の重みに警戒度を最大まで上げる。
「イリヤ!ボサッとしない!
こいつは敵よ!!」
「うっうん!!ルビー!!」
クロエが赤の外套を身に纏いながらイリヤへ呼びかけ
イリヤはそれに応え転身を行おうとするが
「………」
「…ルビー!?」
ルビーは動かない。
目の前の人物に対し戦闘するべきか迷っているようであった。
そしてそうしている間にもバゼットがクロエに襲いかかる。
拳をクロエに連打し、クロエはそれを双剣でなんとか防ぐ。
「こいつ…!」
クロエは連撃の間を狙い右手の白剣を振るうが
バゼットはそれを左手で受け止め、右ストレートを振るう。
しかしその右ストレートを読んでいたのかクロエは突き出された右手を足で踏みつけ、そのまま空中で一回転。
双剣を手放す。
そして
ドカカッ!
「!!」
バゼットの前方にクロエが新たに投影した7本の大剣が突き刺さりバゼットの前進を止めるが
バギン!
バゼットは右拳を横薙ぎに振るい大剣を全て破壊。
しかし
大剣を破壊した先でバゼットが見たものは
「バイバイ」
弓矢を構えるクロエの姿
そして矢が放たれ
矢は一直線にバゼットへと向かうが
「その戦法は、
そんなバゼットの不穏な台詞と同時に
ギャキィッ!
高速で飛来する矢を左手で鷲掴みにする。
「デタラメ…すぎるわ」
驚愕に顔をひきつらせるクロエとイリヤ
しかしバゼットの行動はそれで終わらない。
「返しましょう」
その言葉と共に掴んだ矢を右手に持ち変え
クロエへと投げつける。
自身へと返ってくる矢
その速度は凄まじいの一言で
クロエはかわすことが出来ず
なんとか防ごうとするもその矢の勢いに負け
ドコォン!
倒壊したエーデルフェルト邸へと叩きつけられる。
「クロ!!」
イリヤが呼びかけるも
クロエは気を失ったのか、うつ伏せに倒れ動かなくなった。
「ルビー!!ルビーどうしちゃったの!?
早く転身してクロを助けなきゃ!!
ねぇってば!?」
イリヤが涙目になりながらルビーの羽を引っ張りながら呼びかけるも
ルビーは動かない。
「
どうやらそれがゼルレッチ卿の特殊魔術礼装のようですね」
そんなイリヤにバゼットが
「なぜ貴女が持っているのかわかりませんが…。
抵抗しなければ身の安全は約束しましょう」
威嚇のつもりか拳の関節をゴキゴキと鳴らしながら警告を行う。
「あなたは…いったい……」
「…彼女の名前はバゼット・フラガ・マクレミッツ。
わたしたちがやってきたカード回収任務…その前任者です」
イリヤの疑問に対しルビーがその回答を行う。
「前任者…って?」
「不思議に思ったことはありませんか?
わたしたちが回収任務を始めた時
最初から手元に二枚のカードがあったでしょう。
『アーチャー』と『ランサー』…。
それを仕留めたのが彼女です」
「…………!!」
ルビーの説明に目を見開くイリヤ
「そう。カード回収の任務はわたしが請け負っていました。
ですが回収開始後まもなくゼルレッチ卿が介入。
わたしは任を外されました」
「任務は凛さんとルヴィアさんが正式に引き継いだはず…。
それがなぜ今になって貴女が出てくるのですか?」
「上の方でパワーゲームがあったということです。
…すでにこの屋敷からは三枚のカードを回収しました。
しかし」
バゼットが両拳を突き合わせ
「足りません」
ガキン
という硬い鉄のような音が響く。
「残りのカードを持っているのなら渡しなさい。
抵抗するならば強制的に回収を執行します」
そのバゼットからの勧告にルビーは
「…クロさんとの戦いを見ましたね?
彼女は素手で英霊に匹敵する正真正銘の怪物です」
イリヤを説得しようとするが
「ルビー、転身お願い」
イリヤは静かな口調で転身をルビーに要求する。
「正直言って今のイリヤさんに勝算はありません!
彼女の目的がカードだというのなら素直に渡すのが──」
「ルビー!!」
尚も言い募るルビーに
イリヤが今度は強い口調で呼びかける。
そして
「今まで何度も危ない戦いがあったよ。
ミユとシロなんかボロボロだったのに
たった二人で死地に残ったこともあった」
バーサーカー戦
戦場へと駆けつけた時
凛とルヴィアしか現実世界にも戻っておらず、友達と妹が負傷した身体にも関わらず鏡面界に残っていることを知り
青ざめた時のことをイリヤは思い出す。
「わたしたちは命がけでカードを集めたんだ。
それを前任者だか知らないけど
勝手に持っていかれるなんて納得いかない」
「イリヤさん…」
「それに、なによりも…」
イリヤが倒れ伏すクロエへと視線を向ける。
その視線によりルビーが気づく。
イリヤの覚悟に
「やれやれですね」
そしてルビーはステッキ状となり
そのルビーをイリヤが掴む。
イリヤが転身する。
「友達を傷つけた。
それだけは許せない!!」
そうしてイリヤの転身を目の当たりにしたバゼット
「…先ほどの少女の力。
あれは間違いなくアーチャーのものでした。
そして貴女はゼルレッチ卿の礼装を使う…。
なにやら事態は協会の認識以上に混沌としているようですね。
しかしなんであれ」
確かに
見知らぬ子供がルビーを所持していることは
バゼットにとって予想外ではあった。
しかし
「わたしの仕事は変わりません」
そんなことは些事である。
バゼットのどこまでも冷たい表情は
そんな心情を物語っていた。
「さぁ、始めましょうか」
シロエ「あれ、出番は?」
美遊「わたしもなかったよシロ」
シロエ・美遊「「…」」
(^^)人(^^)