「
イリヤが後ろに下がりながら魔力弾を放つが
ガンッ!
バゼットは左手で弾きながら下がったイリヤを追う。
「
距離を詰めさせまいと威力は低いが無数の散弾を放つ。
しかしバゼットは両腕を顔の前で交差しただけで大した効果はない。
「
しかし本命はこっちといわんばかりに魔力の斬撃をバゼット目掛けて放つ。
が
ギャゴン!
左手で魔力の斬撃を地面へと叩きつけ
力づくで無効化する。
「うそ…!?」
イリヤは驚くがそんな暇はない。
距離を詰めたバゼットがイリヤ目掛けて右ストレートを放つ。
しかしイリヤはギリギリでバックステップ。
さらにルビーで右ストレートを受け止める。
「うひゃあぁぁーーーー……」
イリヤが悲鳴を上げながら後方に吹き飛ばされるが大したダメージはない。
「………。
なかなか良い反射だ」
「あっぶな…!」
攻撃が全く通じない!
この人やっぱり…強い…!
ううん。っていうか…
「わたしが弱いんだね!
わかってたけど!!」
「いやー全く持って出力が足りてません。
主人公にあるまじき弱さですね!」
わかっていたこととはいえ
ルビーにはっきりと言われ少しへこむイリヤ
「しかしある意味好都合です」
「へ?」
イリヤがルビーの言葉にへこんでいると
ルビーから予想外の言葉が紡がれる。
「彼女に対して『大技』や『切り札』といった類の攻撃は絶対にしてはいけません!」
「ええ!?
それってどういう…」
イリヤがルビーに言い募ろうとした時
バゼットが再び開いた距離を一瞬にして潰す。
「!!」
イリヤは星形の障壁を前方に展開。
バゼットの連撃を防ぎ、バックステップをする。
「説明している暇はないですね。
とにかく応戦を!」
「応戦って言ったって…!」
しかしバックステップした瞬間
バゼットが加速。
バックステップ中のイリヤの後ろに一瞬で回り込み
「やっ…!!」
バゼットが殴打。
イリヤはかろうじて障壁で防ぎ、回り込んだバゼットを視界に捕らえようとするも
(速っ…)
既にそこにバゼットはいない。
再び背後から…否
(拳が…全方位から…っ!!)
凄まじい移動速度から放たれる拳により
全方位からほぼ同時に拳がくり出される。
ルビーの判断により障壁がイリヤを包むようにドーム状に張られ拳をなんとか防ぐが
「全魔力を防御にまわしてます!
ですがこのままではいずれ…!」
「まるで亀だ。…ならば」
バゼットは右拳を開き手刀にすると同時
そして
バギャァン!
手刀で障壁を突く。
イリヤを守っていた障壁は割られる。
「破られました!イリヤさ…」
「終わりです」
バゼットは左手も同じく手刀にし
イリヤ目掛けて
ゴギギギィィ…!
突いたがイリヤは障壁を幾重にも展開。
障壁は大多数が割られるが肝心のイリヤにはギリギリ届かなかった。
「なんとまー…!」
「悪あがきを…ッ」
バゼットが顔をしかめる中でイリヤは思考する。
(これじゃダメ…!
まだ…
ギリギリで防げたにも関わらず障壁が多いと思考するイリヤ。
その理由は
(防御に魔力を使ってちゃ勝てない!
もっと的確に効果的に…!
そう────)
イリヤが極限まで集中すると同時
バゼットが右の手刀を放とうとする。
その手刀をイリヤは見ながら
(あそこだ)
ガキンッ…
そんな音と共にバゼットの右の手刀が止まる。
バゼットが右腕に視線を向けると
そこには
先まで攻撃を遮断していた星形の障壁が
自身の右腕を縫い止めていた。
「(物理保護壁による拘束…!)
任意座標への展開をここまで精密に…!」
ルビーが驚嘆するのを尻目に
ガキン
「……ッ!!」
左腕も拘束する。
「弱くたって…」
わたしにはシロのような強さはない。
「出力が足りなくたって…」
わたしにはミユほどの出力はない。
それでも
「戦い方はある!」
イリヤはルビーをバゼットへと向け
「
全力で魔力弾を放った。
ーーーーーーーーーー
「か…ッ」
仰向けに倒れたルヴィアが血を吐く。
「ルヴィア!」
「お嬢様…!!」
「………ここは…?」
目覚めたばかりのルヴィアが状況を把握しようと問いかける。
三人が今いる場所は
「地下の緊急避難路です。
屋敷の倒壊直前になんとか逃げ込みました」
「まったく無茶しすぎだわ。
屋敷だってほとんどあんたの攻撃のせいで壊れたようなものよ」
凛の苦言にルヴィアは
血を吐いたせいか青ざめながら
「フ…。けどいい
「…やっぱり。わたしがいること知っててやったのね」
そう。
ルヴィアとバゼットが戦い
結果、当然のようにルヴィアはボロボロにされたが
止めを刺すまさにその瞬間
凛がガンドをバゼットへと背後から放った。
そして宝石魔術はあらゆる魔術の術式を
宝石に込めることができる。
その性質を利用しバゼットへとある魔術…呪術を仕掛けたのだ。
そしてその試みはなんとか成功していた。
(おかげで呪いを施すことはできた…けどあのままじゃ意味はない。
でもどうやって…?)
呪術を発動するにはガンドが当たった場所…今回の場合はバゼットの首筋を直接触れなければならない。
ガンドのように飛び道具ならまだしも
あのバゼットにしかも直接…。
凛がその難度の高さに悩んでいると
「くっ…」
ルヴィアが苦悶の声を上げながら、その身を起こした。
「お嬢様!?動いてはいけません!」
「寝ている場合ではありませんわ。
あの女の目的はカード…。
なら次に狙われるのは…!」
(…………!)
凛の頭にバゼットの次の標的であろう子供達が浮かぶ。
「急ぎますわよ。
手遅れになる前に…!」
(イリヤ、シロ──。
どうか無事でいて…!)
ーーーーーーーーーー
一方その頃
イリヤの渾身の魔力弾がバゼットの腹部に当たる──。
その刹那
バゼットが右腕の拘束を力づくで壊し
そのまま身を捻りギリギリで魔力弾をかわした。
「避けた…!?
あの状態から…!!」
魔力弾が服をかすめ、服は破れバゼットが回収したカードが散らばるが
イリヤにそれを気にする余裕はなく、驚愕に目を見開く。
「拘束が二重だったら貴女の勝ちでした」
左腕の拘束を壊しながらバゼットが言う。
「ならっ……!!もう一度…!!」
イリヤがもう一度バゼットを拘束すべく
集中力を高めバゼットの動きを見極めようとするが
バゼットが左手を足元の芝生へと突っ込み
ゴバッ!
芝生を引っくり返す。
「ちょっ──」
突如現れた障害物にイリヤはバゼットの姿を見失う。
当然拘束などできない。
そして
ドッ!!!
引っくり返った芝生を突き抜け
バゼットの左拳がイリヤへと突き刺さった。
イリヤは血を吐きながら吹き飛ばされ
そのまま地面へと墜ちた。
「…………ッ!」
腹部の激痛に苦悶の表情でなにも言えず震えるイリヤ
「イリヤさん!!
(直撃…!これはちょっとヤバいですよ…!)」
ルビーがイリヤのダメージに戦況の悪化を覚る。
そんな中バゼットはイリヤの左太ももにあるカードケースに入っているカードへと目を向ける。
「…やはり。貴女もカードを持っていたようですね」
そして倒れ伏すイリヤへと近づき
「あっ…」
カードを持ち上げる。
当然イリヤも一緒に持ち上げられ
スカートがめくれ、下着が丸見えとなるが
そんなことは気にしない。
そして
イリヤの重みにカードケースを固定するバンドが耐えきれずバチンと外れる。
「あうっ…!」
地面へと落ちるイリヤ
「『ランサー』。これで残り三枚…」
バゼットが『ランサー』のカードを
ケースから取り出し手に取る。
その瞬間
「!!」
気絶したはずのクロエが双剣を両手に
バゼットへと斬りかかった。
しかしバゼットはその攻撃を手で受け止める。
「先ほどの少女…!
もう復活しましたか」
「もう少し寝てたかったのに。
誰かさんのボディブローで叩き起こされたわ」
クロエは右足で回し蹴りを放ち
バゼットをエーデルフェルト邸周囲の瓦礫へと叩きつける。
「クロ…!!」
「カードを拾って、イリヤ!
一枚もこいつに渡さないで!」
イリヤが痛みで涙目になりながらもクロエに呼びかけ
クロエはイリヤへと指示を出す。
「させません…!」
しかしそれをさせないべくバゼットがクロエへと襲いかかる。
「うくっ…!!」
イリヤが倒れ伏しながら痛みに呻く中で
バゼットとクロエが戦闘を始める。
バゼットがクロエへと距離を詰め
クロエが剣を投影する。
痛覚共有でイリヤの激痛をその身に味わいながら
「………ッ。カードを…」
イリヤが痛みで地面を這いずりながら
地面に散らばるカードを求め動き出す。
「今のうちに…。
カードを拾わなきゃ…!」
「ダメですよイリヤさん!!
まだ受けた傷が癒えていません!
(これは治癒に専念しないと命取りになりかねませんよ…!)」
ルビーがイリヤのダメージから
治癒に専念しなければ最悪命に関わると判断するが
「治癒なんて…待ってられないよ…!」
しかしイリヤは止まらない。
止まるわけにはいかなかった。
「みんなで…命がけで…集めたカード…。
クロが足止めしてるうちに…」
「イリヤさん…!」
「一枚でも…!」
イリヤが散らばっている4枚のカードのうちの一枚へと
震える手でカードに触れる。
しかし
ダンッ!
その手を踏みにじる足
「い………ッ…!!」
イリヤが更なる痛みに
目にさらに涙を溜める。
「──子供ながら、よくここまで持ちこたえたものです」
その足の主は当然バゼット
戦っていたクロエは
「ぐ……、うッ……!」
再び瓦礫へと叩きつけられていた。
叩きつけられた瓦礫には血の跡が残り
クロエの周りには逆に利用されたのか投影された剣が突き刺さっていた。
「クロ…ッ!!」
「無理もありません。
イリヤさんが受けている激痛を
クロさんも共有しているんですから。
あれだけ動けたのが異常なんです」
ルビーが冷静にクロエの敗北を分析する中
「…カードから手を離しなさい」
バゼットが冷たい表情で
イリヤを見下ろしながら勧告する。
「……ッ。やだ!!」
しかしイリヤは当然拒否し
「手加減をしてあげているのがまだ理解できませんか。
その気になれば貴女の手首ごとカードを奪うことだってできます。
…意地を張るなら」
それを受けバゼットが
「このまま骨を踏み砕きましょうか」
イリヤに脅しをかける。
その目は本気であった。
「……。ごめん、なさい…」
「………。渡す気に…」
イリヤの
うつ伏せに倒れ顔は見えなかったが
小さく呟かれた言葉に
バゼットはようやく心が折れたかと思った。
しかし
「ごめん…。ごめんねクロ…」
「!」
「せっかくクロが
時間つくってくれたのに
カード奪い返せなかった…。
けど
一枚だけ
せめてこの一枚だけは…」
そして
イリヤがその顔を上げる。
「絶対に渡さないから…!!」
その顔はまるで折れてはいなかった。
痛みに涙目になりながらも
渡す気はさらさらない。
そう強い瞳でイリヤは言う。
「───…ッ。
いいでしょう。ならば
覚悟を決めなさい!!」
子供故にやりたくはなかったが
バゼットは足を振り上げ
イリヤの手の骨を踏み砕こうとする。
イリヤがやってくるであろう痛みに目を瞑る。
その時だった。
バゼットの背後より美遊が現れ
ドン!
魔力を込めたサファイアをバゼットへと振るった。
「……くっ!!
次から次へと…!!」
バゼットはサファイアが当たった右の二の腕を負傷しながらイリヤから弾き飛ばされ、悪態を吐く。
「あは♪
やっと来たわね。
こわーいお姉ちゃんが」
やって来た援軍に頬を緩めるクロエ
そんなクロエを尻目に
来る途中で既に転身していたのか
魔法少女姿の美遊は
「イリヤ」
血を口から一筋垂らしながら
痛みに涙目になり
うつ伏せに倒れ伏すイリヤへと
膝を曲げ話しかける。
そんな美遊にイリヤは
「負けちゃった…。
わたしも、クロも
多分ルヴィアさん達も…。
シロは…ここに来てない。
けど…」
震える手で
唯一取り返すことができたカードを
美遊へと差し出す。
「……うん」
美遊はそのカードを受け取り
「大丈夫。あとはわたしに任せて。
シロの分もイリヤは──」
敵へと突き付けカードを中心に魔法陣が浮かぶ。
「わたしが守る!」
シロエ「圧 倒 的 疎 外 感」