プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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美遊vsバゼット

 

 

「ん……」

 

 

衛宮邸。

そのシロエの自室。

勉強机に突っ伏していたシロエが

身じろぎし

その青い目を開ける。

 

 

(………あぁ、そっか。わたし寝ちゃって)

 

 

シロエはその身を起こすと

身体にかけられていた毛布がずれる。

 

 

「……?毛布…?」

 

 

自分で用意したわけではない毛布の存在に

訝しむシロエ

 

 

「誰か来たの…?……………あっ!?」

 

 

シロエは寝てしまう前

自分があるものの製作をしていたことを思い出し

慌てて机の上を見る。

そしてそれらを手に取る。

 

 

「………よかった…。ちゃんと出来てる」

 

 

自身の身体の下敷きになってしまっていたそれらを

どこにも損傷はなく、最後まで完成させていたことを確認すると安堵するシロエ

 

シロエはあるものの製作をしていた。

しかしその製作に神経を

前世や生前を含めて過去最大まで集中させて行っていた。

それもこの一日だけではなく一週間程前から

無論、雪見ホワイトチョコの製作や宿題と並行して。

しかしそのため疲れが溜まり完成と同時に糸が切れたように寝てしまったのだ。

幸いというべきかイリヤ達がシロエを呼びに来た時

シロエの身体の下敷きとなりそれらが見つかることはなく、かつ勉強机に向かっていたことから

勉強中だったとイリヤ達は思ったのだが

 

シロエはそれらを大切そうに胸の前で

優しく抱きしめるように握る。

その時

 

ズシン!

 

シロエの耳に大きな振動音が響いた。

シロエは目を大きく見開き

急いで音が聞こえてきたと思われる場所…エーデルフェルト邸を窓から見つめる。

 

 

「………今のは」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ズシン!

 

地下の避難路にいる凛達に

凄まじい揺れが襲う。

 

 

「!!なに!?この揺れ…!

バゼット……?」

 

「………」

 

 

凛がバゼットの仕業かと考える一方で

ルヴィアは別の可能性を感じていた。

 

 

「いえ…この感じ…。応戦している?

だとしたらこれは

まさか───」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ゴォッ!!!

 

青白い閃光がバゼットへと

凄まじい速度でぶつかる。

バゼットはそれを両手を交差させ受け止めようとする。

その様子をイリヤとクロエの二人は目を見開き見ている。

 

ギャゴォォォォ…!!

 

青白い閃光は防御しているバゼットを

その勢いのまま弾き飛ばし

上空へと翔け上がる。

 

 

「……ッ!!」

 

 

弾き飛ばされたバゼットは

地面を転がるも両手両足に力を込め

四つん這いとなりなんとか停止する。

 

 

「いったい…何が起きているの…?」

 

「これは…カードを通してライダーの英霊を。

わたしが以前やったのと同じ…」

 

 

イリヤは目の前の光景にただただ驚愕し

クロエは何が起こっているのか理解する。

 

 

「桁違いの突進力…。そうかそれが……」

 

 

バゼットもまた理解した時

上空の青白い閃光が停止し

その正体がわかる。

それは

 

 

「クラスカード『ライダー』の真の力……!!」

 

 

美遊であった。

魔法少女の姿ではなく

かつて戦ったライダーを思わせる

黒の衣装に不気味な眼帯

そして閃光の正体である

青の燐光をその身から放つ真白の天馬に跨がっていた。

 

 

「ライダーの英霊。その真価は幻獣の召喚と騎乗だったようですね」

 

 

驚愕しているイリヤを尻目に

ルビーが感心したように話す。

 

 

「いやはやー。初戦の相手がまさかこんな隠し球を持っていたとは。

あの時シロさんが割って入ってくれなかったら完全にデッドエンドでしたよこれは」

 

「どういうこと?何か知ってるのルビー!?」

 

 

そのルビーの言い方に

何が起こっているのか知っているように感じたイリヤが尋ねるが

 

 

「知りませんよ?

…いえむしろ、イリヤさんの方が知っているのでは?」

 

「……!?」

 

 

ギャゴォ!

 

美遊が再び青白い閃光と化しバゼットを襲う。

バゼットは先のように受け止めず横っ飛びで回避する。

美遊はそのまま上空へと昇る。

 

 

「──礼装に英霊の武具を宿すのではなく

自身に力を宿し英霊と化す。

…過去に二度イリヤさんが『アーチャー』でやったことです」

 

「………わ」

 

 

二人が戦って最中

ルビーが今の美遊の状態を説明し

セイバー戦にてイリヤがやったことだと思い出させるが

 

 

「わかんないよ。あれは…クロがやったんだもん…!」

 

「………………」

 

 

そう。あれはクロがやったこと。

わたしはクロじゃない。

だから

シロのあの言葉もわたしに向けての言葉じゃ…。

 

イリヤが自分はクロエじゃないと思い込もうとしている一方で

 

 

「……仮説はありました」

 

 

バゼットがボロボロになったスーツの上着を脱ぎ捨て

 

 

「礼装を媒介として英霊の力の一端を召喚できると判明した時…。

ならば人間自身をも媒介にできるのではないかと。

しかしカードに施された魔術構造は極めて特殊で複雑。

協会はいまだ解析に至っていない。

それをいとも容易く…」

 

 

天馬に騎乗し空を翔る美遊を見上げながら

感嘆の声を上げる。

 

 

「一つだけ、答えて」

 

 

そんなバゼットに対し

美遊が初めて話しかける。

 

 

「ルヴィアさん達の姿が見えない。

…どこへ行ったの?」

 

 

美遊が戦場に到着した時

ルヴィアと凛

そしてなにより

イリヤと同じく大切な友達であるシロエの姿が見えなくて

美遊は内心「まさか…」と焦っていた。

その後シロエに関してはイリヤから

そもそもここに来ていないことを知らされ

美遊は心の底から安堵した。

しかしルヴィアと凛に関してはわからないままであった。

 

 

「…」

 

「答えて!」

 

 

バゼットは美遊に詰問され

その答えを言う。

 

 

「そこの、瓦礫の下です」

 

 

最悪の答えを。

その答えを聞いたイリヤは愕然とし

クロエは目に敵意が増す。

そして

 

 

「…………そう」

 

 

美遊の中に怒りが生まれる。

 

 

「なら、手加減は」

 

 

美遊は眼帯を取り外し

 

 

「しない!!」

 

 

その魔眼を開く。

 

 

「!!?(これは…魔眼!!)」

 

 

魔眼の効果により

バゼットに重圧がのしかかり

身体が重くなる。

 

 

(しかもこの干渉力…。

黄金…いや宝石級か!?

抵抗(レジスト)しきれない……!!

これが奥の手…否!!)

 

 

そう。

これはバゼットの回避を封じるための下準備である。

そしてバゼットはそのことにすぐに気づく。

 

 

(これは足止め。本命は──)

 

「!美遊様…!!」

 

 

美遊の持つライダーの武器である鎖のついた杭が

手綱へと変化し天馬へと装着される。

天馬の纏う青の燐光の輝きが増す。

 

 

「天馬の力が倍加しました!!」

 

「光の手綱…。あれがライダーの…!?」

 

 

その感じられる力の大きさに感嘆の声を漏らすイリヤ

紛れもなく宝具の発動である。

しかし

 

 

「いけません美遊様!!

彼女相手に宝具は…」

 

 

サファイアがその宝具の発動を止めるように進言する。

しかし怒り心頭の美遊の耳には届かず

 

 

騎英の(ベルレ)──」

 

「美遊様ッッ!!!」

 

手綱(フォーン)!!!」

 

 

宝具を発動させ天馬と共に一直線に突っ込む。

その姿は流星の如し。

今までの突進とは段違いの速さである。

 

 

(この、瞬間を)

 

 

しかしバゼットは

まさにこの宝具発動の瞬間を

 

 

(待っていた)

 

 

バゼットの荷物である

地面に置き去りにされた筒状のケースがひとりでに震え

 

バゴン

 

蓋を跳ね上げ

中から鉄球が飛び出し

バゼットの右拳にくっつく。

 

 

「!?」

 

 

突然の武器らしい存在の登場に

クロエの目が見開かれる。

 

迫る流星。

しかしバゼットに焦燥感に駆られた様子は微塵もない。

 

 

強化のルーンを組んだ手袋(グローブ)

限界まで練り上げられた格闘術も

あらゆる攻撃に耐え抜く肉体も──

 

 

その時

天馬の迫る暴風により

バゼットの短い髪が揺れ

 

 

(血…?)

 

 

イリヤの目に

バゼットの首筋に仕掛けられた

血の呪印が映る。

 

 

それは敵を屠るためではなく

 

 

後より出でて先に断つもの(アンサラー)──」

 

 

鉄球から一振りの剣が出現する。

そして迫り来る流星へと

剣が生成された鉄球が装着された右拳を構えて

 

 

ただ、この一撃に繋げるための────…!!

 

 

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!!!」

 

 

勢いよく撃ち抜いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「水羊羹ん~ッ!?」

 

 

エーデルフェルト邸の地下通路

凛は走りながら呆れた表情でルヴィアを見る。

 

 

「それを買いに行ってた美遊が

戻ってきたのかもしれないってこと!?

つーかアンタ金持ちのくせにそんなもん頼んでるんじゃないわよ!!」

 

「う…うるさいですわね!!

セブンの水羊羹はアジアの神秘ですわ!!」

 

 

ルヴィアは恥ずかしいのか赤面しながら凛の言葉に言い返す。

と、その時

 

 

「……っ!」

 

 

バゼットから受けたダメージの大きさから

凛の隣にて同じく走っていたルヴィアの膝が折れその場に倒れこむ。

 

 

「お嬢様!」

 

「ルヴィ──」

 

 

オーギュストが倒れたルヴィアを介抱するべく立ち止まり

凛も同じく立ち止まろうとした。

しかし

 

 

「先に行きなさい!!」

 

 

子供達が心配なルヴィアは凛に先に行くように促す。

 

 

「…」

 

 

凛は一瞬だけ逡巡するが

子供達が心配なのは凛も同じである。

よってルヴィアとオーギュストをその場に残し

再び走り出す。

 

 

上で戦っているのは美遊?イリヤ?それともシロ?

誰にせよ今回ばかりは相手が悪すぎる…!

宝具は通用しない…いやそれどころか

もしバゼット相手に宝具を使ってしまったら──

 

()()()使()()()()()()()()…!!

 

 

(どうか…間に合って…!!)

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

──停止していた。

流星の如き眩い燐光も

大地を抉った暴風も

突進の慣性力すらも

攻撃の事実そのものが消されてしまっていた。

 

そして

停止している天馬の左胸に空けられた小さな風穴。

 

何が起こったのか理解出来ず

目を驚愕で見開くイリヤとクロエとそして美遊。

その隙だらけの美遊の左頬を

バゼットは殴りつける。

地面を転がる美遊

さらに

 

 

「うっ…」

 

 

美遊が呻き声を上げると

その胸からライダーのカードが排出されてしまう。

それと同時に魔法少女の姿に戻る美遊

 

 

「敵の切り札より後に発動しながら

時間(運命)を遡り切り札発動前の敵の心臓を貫く。

…わたしも見るのは初めてです」

 

 

バゼットが落ちているライダーのカードへと

悠然と歩みを進める。

 

 

「フラガが現代まで伝えきった神代の魔剣

宝具(エース)を殺す宝具(ジョーカー)

逆光剣フラガラック。

…勝機はないと言った理由がこれです」

 

 

ライダーのカードの下へとたどり着き

そのまま何事もなかったかのように拾う。

 

 

「通常攻撃は通用せず

宝具を使えば必ず負ける…。

これは最初から詰んでいる勝負だったんです。

もうこれ以上は……」

 

 

ルビーが降伏するべきだと

イリヤに進言している中

 

 

「何が起こったの…!?」

 

「あ…危ないところでした…!

使用者自らが振るうタイプの宝具だったら

心臓を貫かれていたのは美遊様の方です…!」

 

「!!ミユ!後ろ…!!」

 

 

サファイアがなんとか起き上がろうとしている美遊に

何が起こったのか説明しようとしたその時

クロエが焦った声を上げる。

 

グッ

 

美遊の左足を掴む手

無論バゼットである。

 

 

「あ……っ!!」

 

 

美遊もまた焦るが既に遅く

バゼットは掴んだ右手を振り上げ

 

ズドン!!

 

地面へと思いっきり美遊を叩きつける。

地面が割れる。

そして美遊は気絶し動かなくなった。

その様子を見ていることしかできなかったイリヤとクロエの顔色が再び悪くなる。

 

 

「これで」

 

 

バゼットは美遊からイリヤと同じように

カードケースに入っていたセイバーのカードを回収すると

 

 

()()()。次は──」

 

 

アーチャーのカードをその体内に宿しているクロエへと目を向ける。

 

 

「………ッ」

 

 

クロエは急いで戦うため立ち上がろうとするも

ダメージの色濃く身体は震え

なかなか立ち上がることができない。

一方でイリヤは

 

 

(……()()()?)

 

 

バゼットが呟いた五枚目という言葉に引っかかりを覚える。

 

 

そういえばわたしがランサーのカードを取られた時

 

『『ランサー』。これで残り()()…』

 

それに最初の時も

 

『…すでにこの屋敷からは()()のカードを回収しました』

 

……………。

リンさん達から三枚のカード。

わたしから『ランサー』のカード。

ミユから『セイバー』のカード。

そしてクロの『アーチャー』のカード。

これで六枚。

 

 

 

 

 

なら、あと一枚は…?

……………。

まさか────

 

 

 

 

 

イリヤが思考に没頭している最中にも

バゼットはクロエへと歩を進める。

クロエは必死に近づいてくるバゼットを見ながら立ち上がろうとする。

と、その時

バゼットを見ていたクロエの目が大きく見開かれる。

そしてゆっくりと目を閉じると

 

 

「……確かにあんたは強いわ。それこそ理不尽なくらいに」

 

「…」

 

「でもわたしは知ってる。あんたと同じように理不尽な強さを持ったやつ…妹をね」

 

「…なにを」

 

 

バゼットがクロエの言っている意味がわからず聞き返そうとした時

 

ゾクッ!

 

自身の背後から鳥肌が立つほどの殺気を察知し

すぐさまに振り返りながらガードを上げる。

そして

 

ドガァッ!!

 

上げた両腕に乱入者の右足の蹴りが入りバゼットはその場から弾き飛ばされる。

しかしガードの上であったためダメージはなく、すぐに踏みとどまる。

そして乱入者をその目に捉える。

 

 

「来たわよ。そのヤバーい妹が」

 

「…また、ですか。いったい何人いるんですか」

 

 

乱入者はまたしても子供だった。

アーチャーのカードを持つ少女、ランサーのカードを持っていたピンクの魔法少女

その二人の少女と同じ顔

青い瞳と僅かに青みがかった長い銀髪

どこかの民族を思わせる白の装束

…先のアーチャーの少女の発言からして件の妹なのだろう。

 

件の少女…シロエは無表情かつ冷たい目でバゼットを見ていた。

 

 

「シ、シロ…」

 

 

イリヤの中に助けに来てくれたという安堵感と

戦いに来てしまったという不安が

それぞれ入り混じり複雑な気持ちになる。

 

 

「…なんでわたしを呼ばずに二人だけで行っちゃったのかとか

いろいろ聞きたいんだけど」

 

「だ、だって…」

 

「仕方ないじゃない。呼びに行っても寝てたんだから」

 

「………うん、そうね。

こんな状態になるまで気づかなかったわたしが悪いのは確かね。

ごめんね」

 

 

自分の非をあっさりと認めた妹に対して驚くイリヤとクロエ

しかしこれは本心であった。

なにも言わずに戦場に向かったお姉ちゃんとクロに対して思うところは確かにある。

しかしそれ以上に

ここまでの事態になるまで呑気に寝てた自分に対して何よりもいらついていた。

そんな妹の心情を察したクロエは

 

 

「…冗談よ。来てくれてありがとシロ」

 

「シロ…」

 

 

イリヤがなにか言いたそうにしていたが

シロエは会話を切り上げ周囲を見回す。

腹部の痛みで顔色を青くしているイリヤ

地面に叩きつけられ気絶している美遊

瓦礫に突っ込み頭から血を流しているクロエ

姉と友達のボロボロの状態を一人一人見回したシロエは

 

 

「…一応聞くけど、これをやったのはあなた?」

 

「…ええ。その通りです」

 

「そう。じゃあ、殺すね」

 

 

酷薄に告げられたその言葉と共に叩きつけられる殺気

バゼットはその殺気に目を僅かに細める。

そんなバゼットを尻目にシロエは徐に懐に手を伸ばす。

 

そして取り出したのは───一枚のカード。

クラスは…『バーサーカー』。

 

 

「最後の、カード…!!」

 

「『バーサーカー』!!

やっぱりシロが…!!」

 

 

バゼットが最後の目標の登場に目の色を変え

途中で薄々感づいていたイリヤが声を上げる。

 

 

「やっちゃえ。バーサーカー」

 

 

そして

 

 

夢幻召喚(インストール)

 

 

シロエは光に包まれた。

 

 

 




やめて!今まで出番がなかった恨みを
バーサーカーの怪力で叩きつけられたら
バゼットが挽き肉になっちゃう!

お願い、死なないでバゼット!
あんたが今ここで倒れたら、上層部から与えられた命令はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。
シロエさえ倒せばカードは全て揃ったも同然なんだから!

次回「バゼット死す」。デュエルスタンバイ!
※嘘です。
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