「来た来たキターー!!
キタよコレー!!」
「来たしか言ってないね!!」
澄み渡る青空の下
八人の少女達が走る。
「来てしまったもんは仕方ない!」
「うっ…、ううっ…、うううみみみみっ…!!」
「早まるなタッツン!それはこの次だ!!」
八人の少女達…
イリヤ、美遊、クロエ、シロエ
美々、雀花、龍子、那奈亀
の八人である。
「タイミングあるのっ!?」
「トーゼン!!いくぞ───」
そうしてたどり着く目的地
目的地に着くと同時に
脱ぎ捨てる服、放り投げるバッグ
そして
「「「「「海だーーーーーッッ!!!」」」」」
水着姿の少女達が砂浜にて歓喜の声を上げた。
ーーーーーーーーーー
「───というのをやってみたいんだ」
「あれっ!?今の妄想!?」
イリヤが三人の妄想に突っ込みを入れる。
先のは雀花、龍子、那奈亀の妄想である。
当然八人とも水着ではなく私服である。
そんな八人がやってきたのは
「いやいや未来予想図だよ。
そのためにみんなで水着買いに来たわけだろ」
以前水着の下見に足を運んだショッピングモール
その水着店の前にイリヤ達はいた。
今回は水着の下見ではなく買い求めるためにイリヤ達は来た。
ふざけながら店内に入っていく雀花達。
それを若干の呆れた表情で溜め息をひとつ吐くイリヤ
そして振り返り
「わたしたちも行こ。シロ」
そこには
「………うん」
無表情のわたしの妹…シロがいた。
あれから、わたしはシロの笑顔を見ていない。
イリヤは妹の無表情に対して
気にしないとばかりにニコリと微笑み
妹と共に店内へ入る。
あの戦い…バゼットさんと戦ってからというもの
シロは笑うことが一切なくなった。
出会ったばかりの頃に戻ってしまったかのよう。
…ううん少し違う。
あの頃とは違って、なにか壁のようなものをシロとの間に感じる。
受け答えはしてくれるけど、どこかよそよそしく一線を踏み越えない。
以前のようにふざけたりなんてことは絶対にしない。
そしてそれはわたしだけじゃない。
ママやお兄ちゃん、それにクロやミユに対しても同じ態度だった。
それこそ…『拒絶』されてるかのようだった。
あの時の…シロから突き飛ばされた時の…決定的な光景が頭から離れない。
シロが静かになった分
今までのようにシロに振り回されることもなくなって
わたしの負担も少なくなったとは思う。
でも………。
わたしにはそれがいいことだとはどうしても思えなかった。
昔はどうやってシロを笑顔にしたんだっけ。
………思い出せない。
シロが家にやってきて何ヵ月か経って
ふと気がついたら急に笑顔を浮かべてて
それどころか冗談まで言うようになって
最後にはくだらないことで喧嘩までする仲になった。
……………ダメ。
やっぱり肝心のシロが笑顔になったところが思い出せない。
…ルヴィアさんの下でメイドとしてシロが研修を始めて
最初は上手くやっていけるのか不安だったけど
ルヴィアさんに聞いてみたら想像以上に上手くやっているみたい。
一度指導すれば寸分違わず全く同じ出来映えの仕事をする。
それこそまるで機械のように
家の建て直しが済めばリンさんよりもよっぽど良い仕事をしてくれそう、とルヴィアさんは上機嫌に教えてくれた。(リンさんはルヴィアさんの後ろで凄い顔で歯ぎしりしながら睨み付けてたけど)
それはともかく
メイドの研修をしているから一緒にいる時間が極端に減ってしまって
その所為で避けられていると…『拒絶』されていると感じてしまってるだけかもしれないけど……。
シロのこの変化に
すぐに戻ると思っていた家族や
またわたしと喧嘩でもしたのかと思っていた友達も
数日経ってもまるで元に戻る兆しがなかったから
いったいどうしたのかとシロへと聞いた。
でも
『別に…いつも通りだけど』
誰に対してもそう返した。
ママやお兄ちゃん、先生やミミ達、それにクロにも
いろいろな人が聞いても答えは同じ。
追求したとしても答えは変わらなかった。
先生なんかはほとんど毎日のように放課後にシロを呼び出している。
…なんで場所が剣道場や体育館なのかはわからないけど
わたしとミユは………聞いていない。
ミユがなんで聞かなかったのかはわからないけれど
わたしは………怖かったから。
だってこれじゃあ本当に
以前の楽しそうな姿は全部嘘偽り。
シロはわたしを騙していたかのようで───
違う。
認めない。
認めたくない。
イリヤは笑顔の裏でその考えを振り払う。
その様子をなんとも言えない表情で見ながら
美遊とクロエもイリヤ達の一歩後ろからついていった。
…
……
………
「でもほんとにどれ選んでもいいのミユッチ?」
那奈亀が水着を一着、手に取りながら美遊に聞くと
「(ミユッチ…?)うん。ルヴィアさんからみんなへのプレゼントだって」
那奈亀からの呼び名に訝しみながらも
美遊はポケットに入っていた財布の中から
「これを出せば店ごと買えるって」
「何だその虹色に光り輝くカードは!?」
「店ごとはいらないですからー!!」
取り出された明らかに大富豪が持つようなカードを前に
「いやーほんと美遊様と友達になれてよかったですぅー」
「ずっと友達でいてくださいねぇー」
ひれ伏し土下座する雀花達三人
…龍子のみうつ伏せで大の字に倒れているが
「やめてー!!それはどう見ても友達の画じゃない!!」
「あなたたちと友達になった覚えはないんだけど」
「そんな曇り無き眼で!?」
「…」スッ
「シロ?なんで膝を曲げてるの?
もしかしなくてもスズカ達の真似しようとしてる?
違うからね?これは友達のやることじゃ…違うってば!?」
妹が膝を着く寸前で
意図を察したイリヤが慌てて
後ろから抱えて持ち上げ
妹の土下座を阻止する。
一方その頃
「ふぅ…」
イリヤ達から少し離れた位置にて
以前下見した際にピックアップした複数の水着を手に取り
深い溜め息を吐くクロエ
そんなクロエに気づき声をかける美々
「クロちゃんどうしたの?」
「んん…。なにがー?」
「なんだか今日ずっと元気ないみたい。
…やっぱりシロちゃんのこと?」
「んー。まぁそんなところかな」
「本当にどうしたんだろうね。シロちゃん…」
美々達からすれば
なんの前触れもなく突然にシロエが豹変してしまったため困惑しているのであった。
昔やアサシン戦後の時と違い、イリヤの有無に関わらずこの様子なため尚のことである。
もっとも、クロエとの戦いの時から歯車は狂っていってしまっていたのだが
それに気がつけたのはイリヤと美遊のたった二人のため、クロエですら決定的な瞬間はわかっているものの美々達と同じく突然に豹変したと感じていた。
(でも…こんな時になんだけど…。
やっぱり…転校したばかりの頃の美遊ちゃんと少し雰囲気が似てる気がする…)
転校したての
表情が固くて、話しかけづらかった
あの頃の美遊ちゃんに───
美々がそう考えていると
ふぅ…。
再び溜め息が聞こえ、美々は意識を戻す。
するとそこには
妹を心配して溜め息を吐くクロエが
(あれ?でも顔色が少し…)
クロエの顔色が少し悪いことに気づく美々
…もしかして
シロちゃんが心配なのもあるけど体調が…?
「クロちゃ」
「やーーーーー!!!」
美々が再びクロエに声をかけようとしたが
突如発せられた大声に呑み込まれる。
驚いて大声がした方へと美々が視線を向けると
「ムリムリムリ!
そんなの着れるわけないでしょ!!」
試着室にてイリヤが
水着を試着しようとしていたのか裸の上半身を洋服で隠しながら蹲り
顔を赤らめながら叫んでいた。
その理由は
「いいから試しに着てみなって。
意外とイケるかもしんないよ」
「イケないよ!!
わたしが知ってる水着はそんなVの字してない!!」
那奈亀が持つ水着が原因である。
その水着は文字通りVの字をしており
前面も背面も必要最低限、大事な所のみしか隠していない。
ちょっとした衝撃で簡単に見えてしまいそうである。
どう見ても海に着ていく水着ではない。
「ダイジョウブダイジョウブ。
全然痛くないから…」
「そのカメラはなに!?」
イリヤが雀花の構えるデジカメに突っ込みを入れた。
その時
シャッ
イリヤの隣の試着室からカーテンが開く音がした。
と同時に
雀花と那奈亀は目を驚愕で見開き、隣の試着室へと釘付けとなりその身体を硬直させる。
「?」
隣の試着室は…シロが使ってるはず
わたしと一緒に試着室に入ったんだから間違いない。
そしてシロもわたしと同じように……スズカから水着を渡されて───
そこまで思い出すと
イリヤの頭に途轍もない嫌な予感が過る。
(まさか………いやいやさすがにそんなことあるはず………ない………よね………?)
イリヤがギギギ…と音を立て首を動かす。
すると
隣の試着室には
那奈亀の持つ
Vの字型の水着を身に纏った
無表情の妹が
「シロオオオオォォォォォォォォッッ!?!?」
「?」
当たってほしくない嫌な予感が的中してしまい
妹の名を叫ぶイリヤだが
当のシロエは首を傾げる。
「なんでそんなの着ちゃってるのシロ!!?」
「……着ろって言われたから」
「い、言われたからって……。
~~ッ、ちょっとスズカ!?ナナキ!?」
「いや、冗談で言ったんだが…」
「まさか本当に着るとは…」
雀花と那奈亀としては以前のように
シロエから突っ込みなりふざけ返すなり
してくれればという期待を込めて渡した面もあったのだが…。
…まあ、これはこれでアリだな。
と結論に内心では至っていた。
てなわけで
「よし!せっかくだし、とりあえず一枚」
「撮っちゃダメーッ!!?」
間一髪
雀花のデジカメがシロエに向けられた瞬間
隣の試着室に凄まじい速度で乗り込み、妹を抱きしめ自身の背中を盾にし守るイリヤ
…傍から見ると半裸の姉妹が抱き合っているように見えるが、そんなことを気にしている余裕はイリヤにはない。
「ちっ」
「舌打ちしないでよ!?とにかく着替えるよシロ!!」
「……うん」
前言撤回。
振り回されることがなくなって負担が少なくなったって思ったけど
そんなことはない。
今のシロも違う意味で手がかかる…!
イリヤが現在の妹への評価を改めながら
妹に服を着せるために試着室のカーテンを閉める。
と同時に
「俺これ買うわ」
雀花と那奈亀が選んだVの字型の水着ではないが
それに劣らない紐状の水着を身に纏った龍子が
店内を堂々と歩く。
無論、雀花と那奈亀から言われたわけではなく
龍子が自分でそれを選び着ているのだろう。
「タツコちゃーん!?」
「しまったシロに気を取られた隙に!!」
「あの露出狂を止めろー!!」
シロエのように試着室内に収まらず
堂々と店内を闊歩していく龍子の姿に
さすがの雀花と那奈亀も止めようとする。
「この歩く児童ポルノ製造機が!!」
「ぬわーなにをするきさまらー!!
そうか、ついに俺の魅力にやられて…!!」
「うっさい!キモいんだよお前!!」
「あ"あ"あ"あ"ー」
その後
店員に怒られる雀花と那奈亀と龍子(例の水着を身に纏ったまま那奈亀にうつ伏せに踏みつけられている)の姿がそこにはあった。
一方その頃
試着室内では
「もー…。いやなことはいやってはっきり言わないとダメだよ?シロ」
「…」
見るからにアレな水着を脱ぎ、下着を身につけている無表情の妹に
自らが以前プレゼントした服…フリルがあしらわれた水色のトップスと青色のスカートを渡しながら
妹へと言い聞かせるイリヤ
「その…前はちゃんと言えてたでしょ?」
「…水着」
「え?」
「性能じゃなくて見た目を重視するとなると
わたしには…なにがいいのかとかわからないから」
「い、いやでもかわいいのがいいとか
そういうのないの?」
「どういうのがかわいいのかわからない」
「えぇー…」
マジかー…。
とイリヤは思いながらも
しかしそれならばと
「それなら…仕方ない、かな」
「…」
「仕方ないからわたしが選んであげる!」
「…!」
自身がトップスとスカートをプレゼントした時のことを思い返す。
その時も選ぶのを躊躇っていた妹に対して自分が選んだものをプレゼントしたということを
遠慮してたのかと思ってたけど、あの時も似たような理由だったのかな…?
どちらにしても、それなら今回もわたしが選んであげればいい。
…もちろんできることなら、自分で選べるようになってもらうのが一番いいんだけど…ね。
そして
また服をプレゼントされた時と似たような状況になったためか
シロエは目を細める。
「でも…お姉ちゃんだって自分の見なくちゃいけないんじゃないの?」
「あ、それなら大丈夫。この間の下見でいくつか絞ることができたから」
「…」
姉からの返答を聞き、押し黙るシロエ
それがまるで、断る理由を探しているみたいと
イリヤは少し悲しくなる。
「…わたしが選んだ水着だといや?」
「…いやってわけじゃない」
明らかに気落ちした姉に対して
そういうわけではないと否定するシロエ
それを聞き、完全に拒絶されてるわけではないと
安堵したイリヤは笑顔を取り戻す。
「ほんと?…じゃあ着替え終えたら一緒に見ていこうね!」
「……うん」
そして
私服に着替え終えた姉妹は試着室から出て
二人で水着を見ていく。
一方その頃
「……………………」
顔色がさらに悪くなり
青ざめて俯くクロエ
そしてそれを見かねた美々が
「クロちゃん…やっぱり体調が悪いんじゃ…?
ほんとに大丈夫…?」
「………」
美々からの気遣う声にクロエは
「…ダメっぽいわ」
「えっ!?」
強がるでもなく正直にまずそうだと言い残し
クロエは駆け出す。
「クロちゃん!?」
クロエが駆け出した先は
「イリヤちょっと来て」
「あうっ?」
妹と共に水着を見ていたイリヤの下であった。
水着を見ているイリヤの背後より襟を掴み引っ張る。
「なに?今、シロの水着を選んでる最中なんだけど」
「それは悪いとは思うけど…」
クロエは付近にいるイリヤとシロエの二人以外には聞こえないように声を潜める。
「…魔力が切れそうなの」
「!」
「えっ!?切れそうって…ええ…っと
それってまさか…」
シロエは無言であったが僅かに目を見開く。
そんな一方でイリヤは驚き、その後に続きそうな言葉に顔を赤らめる。
そして
「補給……お願い」
「…………(まじですか)」
予想を裏切らない言葉にイリヤは顔を引きつらせる。
(っていうかなんで今ここで!?
タイミングおかしいでしょ!?)
(バゼット戦でほとんど使っちゃったのよ!!
我慢してたけど、たった今限界きちゃったの!
しょうがないじゃない!!)
(だからってーー!!)
(…)
姉達が小声で言い合いをしているのを無言で見ているシロエ
しかし
小声で話してるイリヤ達を訝しみ
那奈亀が話しかける。
「どしたの。イリヤズ」
「へうっ!?」
(イリヤズ…。
………わたしも一応『イリヤ』ではあるから間違いではないけれど…)
「いや、ええと……トイレ!
ちょっとクロとトイレ行ってくるね!」
イリヤはシロエをその場に残し
とりあえずクロエと共にその場から一旦引くこととした。
「ごめんシロ!戻ったらまた一緒に水着を見てあげるからね!」
「う、うん…」
「ミユ!悪いけどそれまでシロのことお願い!
スズカ達から変なことされないように守ってあげて!」
「任せて」
「ひっどい言い草だな!?」
イリヤからの頼みに美遊は力強く頷き
雀花と那奈亀からは文句が飛び出す。
それを尻目にイリヤとクロエはその場を後にした。
「………」
美々が心配そうな顔で見ていたことに気づかずに
…
……
………
そうしてイリヤ達がやって来たのは
ショッピングモールの非常階段
一般的にはエレベーターを使用する人が大多数のため人気はないに等しい。
その踊り場にて
「……ねぇ」
クロエが気恥ずかしそうに顔を赤らめ
「キス…するなら、早くしてよ…」
イリヤから視線を外し
そっぽを向きながら急かす。
…………ちょっと。
そんな滅多なことでは見ないクロエの姿に
イリヤの内心では凄まじく動揺していた。
なになになに!?なんなのこの空気!?
おかしくない!?どうしてクロってばこんなにしおらしいのよ!?
ダメダメダメ!!こんなんじゃできるわけないって…!
そしてそんなクロエが作り出した空気に
尻込みしたイリヤは
「ク…クロからしてよ…。
いつもそうやってたじゃない…。
この前だってお風呂でシロに…」
キスではないが
美遊が宿泊した際、浴室にてシロエの胸を揉み
更にはもっとすごいことをしようとしたことを思い出しながら
イリヤもまた顔を赤らめ、唇に手を置きクロエからするように言う。
しかし
「──…っ。シロの時は……その……勢いで、つい……」
クロエは更に赤面し、顔を大きく逸らしながら消え入りそうな小さな声で弁明する。
あ……あっれーーー!?
な…なんか言い方間違った気がする!
ますます空気がおかしく…っていうか雰囲気でちゃってないこれ!?
っていうか勢いってなに!?勢いって!?
あの時ものすごく楽しそうだったくせに!
い、いやとにかく今はシロのことよりも…。
まずいわまずいわ。だってこんなの…
傍から見たらそういうアレにしか見えないんじゃないかしらーッ!!
イリヤは目をぐるぐる回しながら
内心で絶叫している。
そして
「………」
そんなイリヤとクロエがいる踊り場よりも一つ上の踊り場にて
(イ…)
階段の折れ曲がりからひょっこり顔を出し、覗き見ている
(イリヤちゃんとシロちゃんとクロちゃんって
そういうアレだったんだー!!)
美々の姿がそこにはあった。
美々はクロエの様子が気になってしまい、心配で二人の後をつけていたのだ。
そしてその結果、このような場面に出くわしてしまった。
(キ、キ、キスって…従姉妹や姉妹で!?
シロちゃんともこの間お風呂でって…。
えっ、えっ、これってもしかして所謂三角関係!?
い、いや聞いてるかぎりだと知った上でやってるっぽいから三角関係とは少し違う…?)
顔を赤らめ汗をかきながら
目をぐるぐると回し動転する美々
さらには
(……………はっ!?
じゃ…じゃあまさか……。
シロちゃんの様子がおかしかったのってそれが原因で…!?)
とんでもない方向へと勘違いを重ねていく。
なぜそうなる。
そんな覗き見している美々に気づかないまま
会話を進めていくイリヤとクロエ
「そ…そもそもっ!
どうしてキスじゃなきゃいけないわけ?
魔力供給ならもっと他に方法あるんじゃないの?」
「…ないこともないけど、絶対了承しないわよあなた」
イリヤの指摘にクロエは言いにくそうな顔をするが
「やっぱりあるんじゃない。どんなの?」
イリヤは構わずに聞き出す。
美々は
魔力…?
と聞き慣れない言葉に困惑しながら事の様子を見ている。
「えーと…」
クロエはイリヤの耳もとに口を寄せて
その方法をモニョモニョと口にする。
その結果
「……っ!!………っっ!!
へっ…変態!!変態変態変態…ッ!!」
なにを聞いたのか
階段の段差に顔を突っ伏すイリヤ
「だから言ったのに…」
「不潔よーッ!!」
イリヤの不潔という言葉に顔をしかめるクロエ
「不潔とか…。清純ぶるのはやめてほしいわ。
そういうのはシロだけで十分よ」
「わ、わたしだって清純だもん!?」
「どうだか…。あなただって
『わたしも将来するようになるのかな…』
とか思ったことあるでしょ」
「ぎゃーー!!やめてー!!
お願いだからこれ以上この話を広げないでー!!」
「シロはそっち方面の知識は皆無だから絶対にないでしょうけど
………いっそのことわたしが知識として教えてあげた方が」
「やめて!?シロをそっちの方向に引きずり込まないでーッ!!」
………。
叫び疲れたのか床に手をつき
無言になり息切れするイリヤ
しかし
「そもそも!」
「まだ抵抗する気!?」
少し休んだ後
顔をガバッと上げ反論を再開するイリヤに
若干呆れの色が見えるクロエ
「魔力供給が必要だとしても
必ずしもわたしがしなくちゃいけない理由はないわ!」
「…確かに他の人相手でもいけるけど」
(他の人でもいける!?)
クロエの言葉に隠れている美々がさらに赤面する。
が、そんなことは無論気づかないクロエは続ける。
「ひとつは効率の問題ね。
どういうわけかあなたとは高効率なの。
一般人と比べてざっと10倍くらい?
それにあなたならルビーがいるからすぐ魔力回復できるし」
ひとつめはイリヤでもまだ理解できる範疇ではあったが
「それからふたつめ。
あなたがしてくれないなら
それを補うためにわたしはシロとミユにキスするわ」
「なっ…」
(えーーっ!?)
ふたつめに上げられた内容は
イリヤには到底認めることができない内容であった。
「なに言ってんのー!!」
「仕方ないでしょ。生きるためだもの」
「うっ…。で、でもなんでよりにもよってシロとミユなのよ!?」
クロエと敵対していた際の
妹と友達、二人と同時に唇を重ねていた
あの場面を思い出し、絶対に阻止しなければならないと考えるイリヤであったが
「それは…さっきも言ったけど効率の問題。
イリヤの次に効率がいいのはあの二人なの」
「二人の効率が…?」
「…正確には
ミユも相性はよかったけどシロの方が特に相性がいいわ。
……それこそイリヤと同じくらいにね」
…?
でもそれならわたしじゃなくてシロでもいいってこと?
いやそれを認める気はないけど
イリヤの訝しみが伝わったのか
クロエはそれには問題があることを伝える。
「でも、なんていうかその………
「濃い?」
「ええ、魔力の濃度がとんでもなく。
魔術師だとしてもありえないってくらいに
あれじゃあまるで……」
「………まるで?」
思わぬところで美遊とシロエの情報が飛び出し
若干真面目な空気が流れたが
「カル◯スの原液をそのまま飲んでるような感じだったわ」
「わー、わかりやすいけどすっごく体に悪そう」
他ならぬクロエにより粉微塵にされる。
「まあそういうわけだから
ミユの魔力で希釈して、ようやくシロの魔力を取り込めるのよ」
「ミユ水役!?」
「ミユもあなたとシロほどじゃないけど相性はいいし
二人の魔力ってすごい混ぜやすいんだもの。
…理由はわからないけど」
尚、クロエが二人と同時に唇を重ねていた時も
「とにかく!
あなたがするか、シロとミユに任せるか
どちらか選びなさい!」
「うぐっ!?」
クロエに突きつけられた二択に
苦悶の声を上げるイリヤ
とはいえ選択の余地はないに等しい。
よって
「………………わかった」
イリヤは自身が犠牲に…もとい魔力供給を行うことを了承する。
「で、でもこれは一種の医療行為だからね!
なんの感情もなく淡々と行うこと!……いい?」
「ほんとは気持ち込めた方がもっと効率いいんだけど
まぁ……いいわ」
「そっ…それじゃいくわよ…」
「うん……」
途中の魔力云々の話は理解できずに
困惑していた美々であったが
(わっわっわっ…。
ウソ…ほんとにしちゃうの…!?)
近づいていく二人の唇に
心音がどんどん大きくなっていく美々
そして
(きゃ~~~ッ!!!)
ーーーーーーーーーー
「見ろタッツン」
場所は変わり
雀花、那奈亀、龍子の三人が
店前を通りすぎる女性が持つ
花束に注目している。
「百合の花束だ…」
その百合の花束を見た三人は
いい笑顔で
「綺麗だな…」
「ああ…。とても…綺麗だ…」
ーーーーーーーーーー
意味深な場面から戻り
イリヤ達がいる非常階段
「んっ…」
「………ッ。………」
二人の少女の喘ぎ声が響く。
「……はっ…」
「……」
その二人は当然イリヤとクロエであり
二人は
(のっっ…)
唇を重ねていた。
二人の喘ぎ声と共に
チュルッ…チュバッ…チュルルルル…
というなにかを吸うような水音が
二人の口元からしている。
それを目撃した美々は
(濃厚ーーーーッッ!!!)
という感想と共に
(キスなんて挨拶みたいなものってクロちゃん言ってたけど…
アレは絶対そういうレベルじゃないよー!!)
隠れながら床に倒れ込み
両手で顔を覆いながら
足をバタバタさせる美々
さらには
(シロちゃんともこれと同じようなことをしたの!?
しかもお風呂で!?裸で!!?
キャアアアーーーッ!!?)
イリヤとシロエとクロエの三人が
浴室にて一糸纏わずに
そういうアレをしている光景を妄想してしまい
美々の足のバタバタが加速する。
(それじゃあシロちゃんの様子もおかしくなって当然だよー!!)
美々の勘違いもさらに加速していく。
「ちょ…ちょっとタンマ…!
もっ…もういいでしょ…」
「だめよ。全然足りない。
もっと唾液ちょうだい…」
「んっ…!?」
(唾液てーーッ!!?)
美々が床をゴロゴロと転がり
壁に激突する。
なにしてるんだこの娘
「……っ。ク、クロっ…!」
「?…なに?」
「……これ。一回…したら、どのくらいもつの?」
イリヤが息継ぎの瞬間を見計らい、クロエに疑問を呈す。
「戦いとかで消費しなければずっともつんでしょ?」
「………。そうでもないわ」
イリヤが半ばそうあってほしいとばかりに聞くものの
クロエはそれを否定する。
「ただ生活してるだけ…ただ存在してるだけでも
少しずつ魔力は消費されていくの。
補給しなくちゃいずれは
わたしはそんな…」
その時クロエは思い出す。
『そんな──
保健室にて
正体不明のカレンが放った言葉を
「……あなたやシロ達がいないと生きられないってこと。
いろんな奇跡が重なって…かろうじてわたしはここにいるのよ」
「奇跡──」
なら…その奇跡は
いつまで続くの…?
クロの中にカードがある以上
バゼットさんは必ずまた回収しにくる。
毎回毎回シロに頼るわけにはいかない。
あの時のようにシロが間に合うとは限らない。
それに回収って言ったらリンさん達だって同じ目的だったはず…。
下手したらシロ達とリンさん達が戦うことだってあるかもしれない。
わたしはどうするの……?
クロエとの魔力供給を再開しながら
イリヤはそんな不安に駆られていた。
(『あなたやシロ達がいないと生きられない』とかーーッ!!
す…すごいよ…。すごいテクニックなのねイリヤちゃん!!
それにシロちゃんもいつの間にそこまで…!!
で、でも意外…わたしてっきりイリヤちゃんとシロちゃん少なくともどっちかは…)
濃厚なやり取りを見るのに夢中になっていた美々は
背後から近づいてくる二人の少女に気づかなかった。
(名探偵コ◯ン風)
「なにやってるの?」
「覗き?」
「!!?!!」
二人の少女…シロエと美遊に背後から声をかけられたが
叫び声をギリギリで上げずに押し留める美々
「シッ…シシシシロちゃん美遊ちゃんッ!?」
「…趣味はやっぱりストーカー?」
「ち、ちがっ!?これはその、あのたまたま」
「……!」
美遊が転校してきた初日もこうして覗き見していたことを思い出したシロエの
無表情での問いに美々が必死に弁明しようとしてる中
美遊が下の踊り場にて行為に及んでいる二人を見て状況を察する。
「…彼女達の邪魔はしないで。
…それとここで見たことは忘れて」
(忘れられるわけがーっ)
美遊の言葉に必死にコクコクと頷きながらも
忘れられるわけがないと内心思う美々
と、そこに
「…消す?(記憶を)」
「消っ!?」
「…消せるの?(記憶を)」
「…うん。一人だけならそこまで手間じゃない。
(精神に干渉するから)勿論リスクはあるけど」
(怖い怖い怖い!?消されちゃうのわたし!?
目撃者は消すとかそういうアレ!?)
二人共に真顔で話しており
ふざけてるようには到底見えないため
怯える美々
無論友達故に、本当に消されるとまでは思っていないが
なにをされるのか全くわからないからである。
「………必要ないと思う」
美遊は少し悩んだ後に
リスクがあると言われたからか
シロエの申し出を断る。
美々は安堵しかけるが
「とりあえず今は。
あまり騒ぐようならその時に、ね…」
「………わかった」
そのやり取りで美々は決心する。
このことは絶対に自身の胸にしまっておくことを
…元々言いふらすつもりなどなかったが
それはそうと
「みっ…美遊ちゃんとシロちゃんはいいの?
イリヤちゃんとクロちゃんがあんなことしてて…
そ、それにその…」
美々はシロエに視線を送る。
それは途轍もなく意味深な視線であった。
しかし
「「?」」
美々がなにを言おうとしているのか
なぜこちらを見ているのか
わからない二人は訝しむ。
「あっ、ううん!
別にそのっ女の子同士がいけないって意味じゃなくて!
従姉妹や姉妹がそういう関係になるのはいけないって意味でもなくて!
(むしろアリだと思うんだけど!)
わたしてっきりそういうアレは美遊ちゃんと、イリヤちゃんかシロちゃんどっちかとだと思ってて…!!」
美々としては
バーサーカー戦後の三人がくっついていた姿を知っているため
美遊はイリヤとシロエの両方…少なくとも片方とはそういう関係なのだと思っていたのだ。
それにもしかしたらイリヤとシロエの二人も…という疑念はこの時からほんの少しあったのだが、今回の一件で疑念は深まっていた。
しかし
「…??」
「…言ってる意味がわからない」
「えっとだから…」
二人揃って首を傾げるのを見た美々は僅かに冷静さを取り戻す。
「…平気なの?
イリヤちゃんがキ……キス…してるの…。
それに…シロちゃんもお……同じことを…」
「「…」」
美々のその問いに
まず美遊が
「……クロを無条件に認めたわけじゃない。
でも向こうが事を荒立てない限り干渉しない方針でいる。
結局はイリヤが決めることだから。
……そしてアレは必要だからしてるだけ。
シロが同じことをしても私は気にしない。
それも…シロが決めることだから。
わたしが口を挟むことじゃない」
次にシロエが
「……ほとんどミユが言った通り。
お姉ちゃんとクロがアレをしているのは必要なことだから。
仮にお姉ちゃんがやめたとしてもわたしがクロとやるだけのこと。
もちろん、クロがわたしの方がいいって言い出したのなら私はそれを受け入れる。
そこにいやという感情はない」
クロエが誰とやったとしても
自身がやることになったとしても
それを全て受け入れる、と
実際には
シロエ単独では濃すぎて摂取することは難しいのだが
そんなことは知らないシロエ
そうして二人は美々に背を向けて店へと戻ろうとする。
(……おっ)
そんな二人の背中に美々は
(大人だーーーッ!!!)
頭から煙を出しながら
壁に頭をくっつけゴリゴリゴリと
頭を引きずりながら二人の後を追っていく。
(なんということでしょう…!
あの純真だったシロちゃんまで大人の階段を上ってしまって…!
ミユちゃんも三人のことを了承して……
まさか四人がそこまで深くて複雑な関係だったなんて…
三角関係どころか四角関係だったなんて…
お手上げです。もう、わたしにどうこうできる事案ではありません)
勘違いを確信へと持っていく。
さらには
(わたしにできるのはせいぜいこの経験を活かして小説に書き留めることくらいしか…)
どんどん堕ちていく美々
目はぐるぐると渦巻き
なにを妄想しているのかブツブツと呟く。
とそこに
「ところで…」
美遊がトリップしている美々に話しかける。
「えっあっ…はははいッ!?
なんでしょうっ」
「どうしてわたしやイリヤ、シロ達の名前を知ってるの?
あなた誰?」
「……………………」
その美遊の言葉に美々の表情が死ぬ。
そして
「まだ覚えられてなかったのーーー!?」
「?同じ学校の人?シロ知ってる?」
「…桂美々。
おとなしく礼儀正しい優等生。
わたしたちのクラスメイト」
「シ、シロちゃん…」
美遊の記憶に残っておらずショックを受ける美々であったが
シロエから説明が入り、僅かに救われる。
が
「以上。特筆すべき点はない」
「シロちゃん!?」
「そう…」
「強いていえば影が薄い。地味」
「うわーーーん!!!」
シロエの無感情による分析結果という止めを刺され
上げて落とされた美々の泣き声が辺りに響くのであった。
…
……
………
「…」
店へと戻った美遊は水着を見ていきながら
隣にいるシロエをちらりと見る。
…相変わらずの無表情である。
シロがなぜこうなってしまったのか。
決定的な瞬間はやっぱりあの…イリヤを突き飛ばした瞬間
それは間違いないと思う。
問題は
シロがあの時なにを思ってあんな行動をしたのか、だけど…。
それは…正直わからない。
そして
わたしとイリヤはそれを聞くことさえできていない。
イリヤは何故聞かないのか
それはわからないけどわたしは…約束、したから…。
…シロがこうなった理由は少なくともシロが抱え込んでいる秘密が関係しているのは間違いないと思う。
だから、わたしが聞いてあげることは……できない。
でも………
思い出すのは
不安定を通り越し今にも崩れ落ちそうな…消えてしまいそうなシロの姿
本当に、このまま放っておいていい…?
……手はある。
思いついてる。
でも、それは……
わたしの…シロが聞き出さないでいてくれてる…わたしの事情を話した上で、シロが抱え込んでいるものを聞き出す。
それなら…もしかしたら、だけど
話してくれる可能性があるかもしれない。
少なくとも、シロのことを第一に考えるのならそれが最善。
それは確か。
わかってる。
わかってる………けど
………一歩が、踏み出せない。
踏み出せない自分がいやになる。
シロが信用できないってことは
ないはず……なのに……。
…………もう一つ、引っかかることがある。
シロの最近の様子…。
魔術や戦闘の話なら、いつも通り…ううん。冗談を言ったりしない分いつも以上に真剣に対応してくれるんだけど
それ以外の何気ない日常生活
例えばさっきの水着の騒動、それにこの間のお風呂場での出来事
無表情に気を取られがちだけど、それだけじゃない。
以前と比べて…投げやりになってるというか…自我が薄い…そう、自分の意思が薄くなってるような気がする。
そしてわたしは
シロのその様子に、どこか既視感というか…見覚えがある気がする。
でも、いったいどこで───
「ミユ、シロ!おまたせ!」
「!」
思考に没頭していた美遊は
魔力供給が終わったのか、戻ってきたイリヤに話しかけられビクリと体を震わせる。
…思考に集中しすぎて、かなりの時間が経っていたようである。
「…」
「待たせちゃってごめんね。
ミユ、シロのこと見てくれてありがとね。
迷惑とか掛けなかった?」
「あ…う、ううん。おとなしくて静かだったから、ずっと」
シロエが無言のためか
美遊に対してシロエの様子を聞くイリヤ
それに思考の海から浮上したばかりの美遊は慌てて応える。
「そっか…。じゃあ約束通りまた一緒に水着見て行こっか!」
「…うん」
美遊の答えを聞き
良かったような、良くないような
複雑な気持ちになるイリヤであったが
それをおくびにも出さない。
「ほら、ミユも!」
「う、うん…」
そうして美遊達は水着を選び
会計を済ませるのであった。
その頃には
美遊の考え事は
心の奥底へと沈んでいってしまった。
そしてそれを
深く後悔することとなる。
…
……
………
「盛夏の候、皆様いかがお過ごしでしょうか」
数日後
イリヤ達の教室
「夏空がまぶしい季節ですが皆さんは暑さにも負けず元気いっぱいの姿を見せてくださいました」
(おいおいどうしちまったんだタイガーは…)
(最後くらい真面目に締めたいんだろ)
放課後前の学級会にて
教壇に立った藤村先生が珍しく真面目に
学級会を締めくくろうとしている。
「蝉の声が岩に染み入るのならばこの校舎には皆さんの声がたくさん染み入っていることでしょう」
(こんなしゃべり方できたんだ…)
もっとも、普段のタイガー…藤村先生を知っている子供達からしてみれば違和感しかない。
とはいえ
「今、皆さんはどんな気持ちでしょうか」
この話が終われば
楽しみにしていた日々の始まりのため
雀花は機嫌が良さそうであり
「わたしは少し寂しくもあり」
美遊は初めてだからか
想像が出来ずいつも通り表情が乏しく
「一ヶ月後が楽しみでもあります」
その美遊の隣でクロエは
藤村先生の話が退屈なのか欠伸をし
「この夏に皆さんがどんな経験をし」
美々は経験という単語に
ショッピングモールでの出来事を思い出し顔を赤め
「何を見」
龍子は今にも行われるであろう宣言に
ガクガクガクガクと身体を大きく震わせ
「何を知り」
その龍子を
おちつけと那奈亀が諌め
「何を成すのか──」
イリヤは皆で海に行くのが楽しみなのか薄く笑みを浮かべている。
…美遊とそしてシロエの抱えているものについて考えないようにしながら
「二学期、また皆さんに会えるのを楽しみにしています」
そしてそのシロエは
もはや見慣れつつある無表情で虚空を見つめている。
「それでは皆さん……」
そして藤村先生が
「夏休み開始だオラーーー!!!」
夏休み開始の宣言を行う。
と、同時に
バターン!
という音がする。
「タッツンが倒れたー!!」
「イっちまったか…」
「夏休みでテンション上げすぎたんだ…」
白目を剥きながら
口から涎を垂らし
床に大の字で倒れている龍子
それをいつも通りの呆れた目で見る雀花と那奈亀であった。
「あっ、シロちゃんはこの後またお話ね。
今日は剣道場。
夏休み中も来てもらうからそのつもりでね」
「…はい」