プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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作者「…」

シロエ「なにか言うことは?」

作者「メリークリスマス」

シロエ「ちゃき」(大剣を構える音)

作者「遅くなってごめんなさい」

シロエ「遅くなった理由は?」

作者「FGOのボックス周回おいしかったで」

シロエ「やっちゃえ、バーサーカー」

作者「遅くなった分長くなったので許して…許して…」

シロエ「…長ければいいってものじゃないし、長いのはいつものことでしょ。……ちなみに何文字よ?」

作者「25000字オーバー」

シロエ「!?」


海の誕生会(前編)

 

 

衛宮邸のシロエの自室

 

 

「…」

 

 

部屋の主であるシロエが

勉強机の前にて無言で立ち尽くす。

 

 

「……」

 

 

勉強机の上にはトートバッグと

その横に綺麗な包装紙で作られた三つの袋が置かれている。

 

 

「………ッ!!」

 

 

シロエは三つの袋を乱暴に掴みゴミ箱へと勢いよく

 

 

「ッ!う…く」

 

 

捨てようとするも

呻き声を上げ、動きを止める。

 

捨てるべきだと結論は出ている………なのに

 

と、その時

 

 

「シロー?」

 

「!?」

 

 

部屋の外からイリヤの声が聞こえ

シロエはその手に掴んだ袋を咄嗟に…トートバッグへと放り込む。

その次の瞬間、イリヤが部屋に入ってくる。

 

 

「もう行く時間だよ?準備できた?」

 

「…………うん」

 

 

シロエの内心は迷いしかないのだが

それをおくびにも出さず無表情で返事をする。

そんな妹の様子に気がつくことなく

イリヤは笑顔を浮かべ、トートバッグを肩に掛けた妹と共に部屋を後にした。

 

 

 

……

………

 

 

「来た来たキターー!!

キタよこれー!!」

 

「ほ…ほんとにやるのこれっ!?」

 

 

八人の少女達が海へと走る。

前回の妄想を形にするために

 

 

「当たり前だ!何のために前回イメージ練習したと思ってる!」

 

「海だーッ!!」

 

 

現在イリヤ達は浜辺ではなく

海へと続く道路を走っている。

道路の両脇は雑木林となっている。

 

 

「タッ、タツコが決め台詞を先走ったよ!?」

 

「台無しだ!!台無しだ!!」

 

 

海がどんどん大きくなっていき

自分達が海に近づいていることがわかり

テンションが上がっていく子供達

 

 

「ええいもう構わん!!

予定通りいくぞーーー!!」

 

 

浜辺の手前には交差点があり

その交差点に差し迫ると同時に

我慢しきれなくなったのか

雀花、龍子、那奈亀、美々の四人が服を脱ぎ捨て、バッグを放る。

 

 

「ちょっと待ってそんなすぐ服脱げな──」

 

 

イリヤとクロエの二人はそれに付き合うべく服に手をかけるが

シロエはショッピングモールにて

姉から雀花達の真似もしくは言うことを聞いてはいけないときつく言われたからか

美遊と同様で脱ぎ捨てたりはせずに隣でただ一緒に走っている。

 

 

「海だ……ッッ」

 

 

イリヤが叫ぼうとしたその瞬間

 

キキィーーッ!!ボンッ!!

 

 

「ぶぼら」

 

「きゃーーーッ!?」

 

「タッツンが車に跳ねられたーッ!?」

 

 

 

……

………

 

 

「いやー、まいったまいった」

 

 

そんなことがありながらも

なんとか全員揃って海へとたどり着く。

既に全員水着となっている。

 

 

「危うくイリヤ達の誕生日がタッツンの命日になるところだったぜ」

 

「シャレになってないから!!」

 

 

雀花の笑えない発言にイリヤが突っ込みを入れる中

 

 

(命日…)

 

 

シロエが自身の…『イリヤ』としての、『猟犬トケ』としての最期を思い出し、無表情の顔が僅かに曇る。

 

 

「…?」

 

 

隣にいた美遊が一人それに気づき訝しむ。

 

 

「轢かれたのが受身だけは天才的なタッツンでよかったよ」

 

「ふはははは、ないてないぞ」

 

「ねぇねぇ」

 

 

クロエが皆の注目を集める。

その手に持っていたのは

 

 

「さっきの運転手せめてお詫びにって一万円置いていったんだけど」

 

「一万だと!?」

 

 

実際のところ、どう考えても雑木林で死角となっている場所から交差点へと飛び出したイリヤ達が悪いのだが…。

それはさておき

小学生からすれば滅多に見ない一万円札に目を見開く一同

 

 

「マジかよ…。世間じゃひと轢き一万が相場なのか…?」

 

「もしかしたらウチらタッツンでひと稼ぎできるんじゃ…」

 

「それは人道的にもタツコ的にも完全アウトだからー!!」

 

「…ドライブレコーダーの使用を前提に入れたとしても歩行者の飛び出しが偶然か故意かを判定するのは極めて難しく一般的に悪いとされてしまうのは大抵はドライバーの方になってしまうけど示談金、慰謝料の相場としては歩行者に怪我がなければ診断費用のみ」

 

「シロ、シロッ!そんな知識出さなくていいから!!」

 

 

妹から吐き出される生々しい知識に押し潰されそうになるイリヤ(尚、理解できなかった模様)

そんな中

 

 

「まったく。道路に飛び出すなんて二度とやっちゃだめだぞ」

 

「怪我がなかったのは奇跡だな」

 

 

イリヤ達の兄である士郎と

その士郎と同い年くらいのメガネをかけた黒髪の青年が

呆れた目で子供達を見る。

 

 

「うう。ごめんなさい…」

 

「…ごめんなさい」

 

「ひと夏の過ちってやつね…」

 

「お?」

 

 

イリヤ、シロエ、クロエの妹三人組が謝る中で

那奈亀が見慣れない青年に訝しむ。

 

 

「イリヤ、シロ」

 

「ん?」

 

「?」

 

「短髪の方がイリヤ兄なのは知ってるけど、隣のメガネ男子はどなた?」

 

「ああ、えっと…」

 

「…お兄ちゃんの友達。名前は」

 

 

イリヤ達が話しているのが聞こえたのか

件のメガネ男子がビーチパラソルを立てている士郎から視線をイリヤ達へと移す。

 

 

「柳洞一成だ。お初にお目にかかる」

 

「みんなを引率するのに俺ひとりじゃ心もとないかと思ってさ

応援頼んだんだよ。

柳洞寺って知ってるか?そこの息子なんだ」

 

 

士郎の説明を聞き

美々と那奈亀の二人は

 

へー。

 

と納得した声を上げるが

 

 

「ほほーう。ほうほうほう…」

 

 

雀花はメモ帳とボールペンを取り出し

 

 

「それでお二人はどのような関係で?」

 

 

顔を赤らめながら突っ込んだことを聞く。

 

 

「「関係?」」

 

(あっこの目は…)

 

 

雀花の質問に士郎と一成の二人は訝しみ

那奈亀は雀花がアレなモードに入ったと覚る。

 

 

「…」

 

 

イリヤもこの先の展開にいやな予感が過り

 

 

「?」

 

 

理解できずにキョトンとしているシロエの背後に素早く周り込み

 

カポッ

 

と妹の両耳を両手で塞ぐ。

 

 

「??お姉ちゃん…?」

 

「なんとなくいやな予感がするからシロはこの先聞かないでね」

 

「???」

 

 

困惑するものの抵抗せず姉にされるがままのシロエ

そんな中

 

 

「関係って言っても…まぁ、普通の友人関係だよな?」

 

「ふむ…普通のひと言で済ませるのもいささか寂しいな」

 

 

士郎と一成の会話が始まるのだが

 

 

「衛宮にはいつも生徒会の雑務を手伝ってもらっていてな

堅実で確実な仕事ぶりにはいつも助けられている。

衛宮がいなかったらと思うと、俺はどうして良いのかわからんよ」

 

 

一成はまるで自分のことかのように

誇らしげに士郎を褒め

 

 

「なんだよ急に…褒め殺しか?

俺は自分ができることをやれる範囲でやってるだけだ。

それに俺がいなかったところで生徒会長(おまえ)がどうとでも仕切れるだろ」

 

 

一成の褒め言葉に士郎は照れくさそうに返す。

 

 

「いや、お前がいなくてはだめだ。

衛宮手製の弁当が食えなくなると俺の士気に関わる」

 

「それかよ…。まぁ張り合いがあっていいけどさ」

 

「衛宮の味噌汁なら毎日飲んでもいいぞ」

 

「毎日はさすがに勘弁だ」

 

 

そんな傍から聞いた人が勘違いしそうな二人の青年のやり取りに

クロエは、うわぁ…。という表情をし

イリヤは兄のその言動に顔を青ざめ妹には絶対に聞かせられないと両手に力が入り

そのシロエはなにも聞こえないからか無表情から変わらず

美々はそういうアレを妄想しているのか顔を赤らめる。

そして

話を広げた当の雀花も

 

 

「アッ…、アッ……、アッ………」

 

 

美々と同様の妄想をしているのか

ヤバい顔をしながら涎を垂らし

メモ帳に凄まじい速度でその妄想を書きなぐり

 

 

「アリガトウゴザイマシタッッ!!!」

 

 

涎を垂らした最高の笑顔でお礼を言う。

餌を与えないでください。

 

 

 

……

………

 

 

「…お姉ちゃん」

 

「あ、うん。もう大丈夫だよシロ」

 

 

兄にそっちの気があるのではと呆けていたイリヤは

妹からの呼びかけに現実へと戻る。

…先の兄のやり取りは問題しかないが妹にそれを聞かせることは阻止できたため安堵するイリヤ

それはさておき

 

 

「それにしても…」

 

「…」

 

「?クロどうかした?」

 

 

クロエが無言のシロエをまじまじと見つめ

それに訝しむ声を上げるイリヤ

 

 

「シロの水着…イリヤが選んだのよね?」

 

「そう…だけど」

 

 

イリヤの水着は

胸の真ん中と両腰に紐が結ばれており

右胸の上部に黄色の花飾りがあしらわれている

水色に白の星型のドットが入ったビキニタイプの水着

下半身には白のミニスカートを身につけている。

 

クロエの水着は

胸にも下半身のミニスカートにもフリルやリボンがあしらわれている

濃いピンクのドット柄のビキニタイプの水着

上から薄いピンク色のキャミソールを纏っている。

 

美遊の水着は

赤色の縁で囲われている白色のビキニタイプの水着

下半身には膝丈くらいの赤のスカートを身につけている。

 

そして

 

 

「あなたのもそうだけど…子供っぽすぎない?」

 

「な!?」

 

「…」

 

 

シロエの水着は

キャミソールの形をした上下が繋がっているワンピースタイプの水着

全体は水色に細かい白の水玉模様、胸部には白の太いラインが横に二重に入っており

左胸の上部には黄色の花飾りが

腰回りにはぐるりとフリルがあしらわれている。

 

 

「そんなことないもん!

シロのはかわいいのを選んだから確かに少し子供っぽくなっちゃったかもしれないけど…!

わたしのはシロのに比べたら少し大人っぽいでしょ!?」

 

「………そう?

色合いといい、花飾りといい、大して変わらないような気が」

 

「ムキーッ!!」

 

 

クロエの言葉にイリヤの怒りが高まっていくが

 

 

「イ、イリヤ落ち着いて…」

 

「…わたしなら気にしないから」

 

 

美遊とシロエに諌められ

冷静さを僅かに取り戻す。

 

 

「はぁ、はぁ…よし。クロなんて放っておいて行こ!

ミユ!シロ!」

 

「ちょっ!?わたしだけ除け者にする気!?」

 

 

イリヤが美遊とシロエの手を掴み海へと走り出すと

クロエも一拍遅れてそれを追いかけるのであった。

 

 

 

……

………

 

 

その後

皆で泳ぎ

素潜りをしたり

水を掛け合い

砂浜では砂遊びをしたり

スイカ割りをしたり

ビーチバレーやそしてビーチフラッグも行った。

 

海を満喫していくイリヤ達

そしてその結果

 

 

「……………」ズーン

 

 

体育座りで落ち込むイリヤがそこにはあった。

 

一通り遊んだ後に

休憩という名目で落ち込むイリヤを連れて

龍子達から少しだけ離れた岩場へと四人は足を運んでいた。

 

 

「イ、イリヤ…。元気出して…」

 

「あーもー。一体いつまで落ち込んでるのよ」

 

「だって…、だって………」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「よーっし。勝負よミユ!」

 

 

時間は少し巻き戻り

砂浜にて四人の少女…クロエ、ミユ、イリヤ、シロエの順で横一列に並んでいる。

 

 

「勝負?」

 

「そう勝負!ビーチフラッグで!」

 

 

四人の前方約50m先には三本の小さなフラッグが砂浜に突き刺さっている。

今から四人でビーチフラッグを行うのである。

 

 

「負けた方はアイス奢りね」

 

「アイスなら家に帰ればストックが2キロくらいあるけど…」

 

「それじゃ意味ないよ!

こういうのは海で食べるからこそおいしいの!」

 

「そういうもの?…了解」

 

「あ、それじゃわたしも」

 

「クロが参加したら勝負にならないでしょ!?」

 

 

クロエは常時英霊の力を身に纏っているため、転身ないし強化魔術を使用しなければイリヤ達に勝ち目はないのである。

 

 

「えー。けーち」

 

 

と、クロエから文句が出るが

イリヤはそれをスルーし振り向く。

 

 

「シロもえーと…がんばろ!」

 

 

フラッグは三本しか用意出来なかったため

八人が一斉に参加するのは少し危ないかもしれないという士郎達の判断から

四人ずつ参加することとなってしまった。

よってこのメンバーではシロエに勝ち目は薄いとイリヤは気遣っているのだが

 

 

「…」

 

 

シロエは変わらず無表情のまま無言である。

 

 

「その…勝ち負けにこだわらなくても全力を出せばきっと楽しいから!ね?」

 

「全力…」

 

「うん!悩みとかがあってもきっと吹き飛ぶよ!」

 

「…」

 

 

そして

 

 

「じゃあ四人共。位置について」

 

 

四人はフラッグから背を向けうつ伏せに倒れ

 

 

「よーい…どん!」

 

 

士郎の掛け声と共に四人は一斉に振り向きながら立ち上がり走り出す。

 

 

(…っ!やっぱりミユ速い!)

 

 

先頭は言うまでもなくクロエ

そこから距離が離れて美遊

その美遊から二、三歩遅れてイリヤが美遊を追う。

 

 

(でも、まだ………!?)

 

 

その時だった。

 

 

「なっ…」

 

 

イリヤを抜き去る白い影

それは

 

 

「シロ!?」

 

 

シロエであった。

シロエはイリヤをあっという間に抜き去ると美遊へと追いつく。

 

 

「!?」

 

 

美遊はシロエが追いついてきたことに

驚きから目を見開きながらもスピードを上げようとするが

 

 

(っ!砂浜がこんなに走りにくいなんて…!)

 

 

砂浜に足を取られ思ったようにスピードを上げることができない。

イリヤも同様の理由で美遊とシロエに追いつけない。

 

 

(シロはなんで…!?)

 

(この程度、雪で慣れてる…!)

 

 

『イリヤ』としても、『猟犬トケ』としても

雪道が当たり前の中で日々を過ごしていたシロエにとっては

雪と砂浜の違いはあれど、悪路での走行は慣れているのである。

そして

 

 

「え、ちょ、待っ…!?」

 

 

順位が確定する。

まずクロエが一位でフラッグを手にし

 

 

「ウ……」

 

 

二位は美遊とシロエ

意地からか美遊はシロエに追いつかれるものの抜かせなかった。

ほぼ同時にそれぞれでフラッグを取る。

即ち

 

 

(ウソでしょーーーッ!!?)

 

 

イリヤが最下位である。

 

 

「イリヤがシロに負けたぁ!?」

 

「あのイリヤがビリだとぉ!?」

 

「大番狂わせだー!?」

 

「勉強だけじゃなく運動でもシロが上回った!?」

 

「欠点がねぇじゃねーか!?」

 

「でもまだ美術とかは…」

 

 

 

騒然となる雀花達を尻目に

イリヤは両手を地面につき、へたり込むのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

場面は戻り

岩場にて休憩中の四人

 

 

「ビリなんて初めて取った…。

ちょっと前まではクラスで一番だったのに……。

ミユに抜かれて、クロは仕方ないにしても………。

さらにはシロにまで……………あ、ダメ泣きそう」

 

「イ、イリヤ泣かないで…。アイスならいらないから、ね」

 

 

唯一妹に勝っていたといっていい運動にさえ負けてしまい

落ち込むイリヤをなんとか励まそうとする美遊

 

 

「…っていうかなんでシロがあんなに速いのよ!

前よりも明らかに速くなってるよね!?」

 

 

砂浜で足を取られ走りにくかったこともあるが

それ以上に妹自身の身体能力が明らかに上がっていることが敗因であった。

ビーチバレーでは美遊やクロエのサポートをいつもの相手チームの動きの先読みを使用することで行い

泳ぎで沖まで競争しようとした時には兄から流されたら危険だからとストップが出たため

妹の身体能力が上がっていることに気がつかなかったのである。

 

イリヤが俯いていた顔をガバッと上げながら疑問を呈す。

 

 

「そりゃあんた…。

毎回毎回戦いの度に前線を張ってあれだけ動きまわってれば足だって速くなるに決まってるでしょ」

 

「ぐっ!?で、でもそれは魔術を使ってるからで…」

 

「イリヤ…強化魔術を使ってたとしてもシロ自身が動いていることに変わりはない。だから基礎となる身体能力も自然と上がると思う…」

 

「うぐぐ…」

 

 

イリヤと美遊はもちろんのこと

凛やルヴィアさえも基本的には後衛である。

クロエが加わるまでの間は前衛をシロエがたった一人で今まで張ってくれていたことをイリヤも当然知っていた。

 

 

「魔術…そ、そうよ魔術よ!きっとさっきも魔術を使って…」

 

「それならわたしだって抜かされてるわよ」

 

「……………うぅ」

 

 

姉の座を賭けたレースの際

強化魔術や転身まで使用し競争した結果

校門までの結果ではあるがシロエが確かにクロエをも抑えて勝っていたことを思い出し

イリヤは納得せざるを得なくなる。

 

 

「まあいいじゃないの。

スズカ達が参加していなかったんだから完全にビリっていうわけじゃないでしょ」

 

「………うん。そうだよね」

 

「わたしたちの中ではビリだけど」

 

「慰めたいのか貶したいのかどっちなの!?」

 

「そんなのわたしが楽しい方に決まってるじゃない」

 

「うがーッッ!!!」

 

 

クロエへと噛みついていくイリヤを見て

少しは元気が戻ったかな…と美遊は判断し安堵する。

 

 

(とはいえ…。身体能力の向上がちょっと急激すぎる気もするけど…。

最近なにかそういう訓練でも始めた…?)

 

 

美遊は訝しみながらシロエへと視線を移す。

 

 

「───」

 

 

岩場の縁にて腰掛け

水平線を見つめる無言のシロエ

 

 

(それに…今日のシロってなんだか)

 

 

身体能力の向上も気になるがそれよりも気になることが美遊にはあった。

 

 

「……シロどうかした?」

 

 

美遊は意を決してシロエへと近づきながら声を掛ける。

 

 

「?どうかしたって?」

 

「いつもより…なんていうかその…焦ってる、ようにみえるけど…」

 

 

遊んでいる最中

ビーチバレーの順番待ちなど手持ち無沙汰になった時

シロエは上の空になっているように見えた。

ビーチフラッグの時もイリヤの言った通りに全力で走って悩みを振り切ろうとしているように見えた。

それは一見すると最近見慣れてしまった姿だとイリヤ達は思ったが

美遊にはそれに加えてシロエが焦っているように思えた。

時間が経つにつれてそれは大きくなっていって

まるで考え事に時間制限があるかのように見えた。

しかし

 

 

「……気のせいじゃない?」

 

「…」

 

 

シロエはそれを認めようとしない。

そんなシロエを訝し気に見る美遊

そこで

 

 

「そういうミユは海についた時、物珍しそうにしてたね」

 

 

話題転換を試みる。

自身の話から美遊へと

そしてそれは成功する。

 

 

「あ、うん…。海に来るのは初めてだから」

 

 

先のシロエと同じように

水平線を見つめ自身の過去を思い出しながら話す美遊

 

 

「え?ミユは海に来るの初めてなの?」

 

 

そんな美遊の言葉を聞きつけたイリヤがシロエと美遊の近くに寄る。

クロエに噛みつくのはやめたらしい。

 

 

「うん…。だから海で何をするべきなのかよくわからない」

 

「そんな難しく考えなくていいよー。

自由に遊べばいいだけだって」

 

 

イリヤが美遊に諭していると

 

 

「タツコストラーイク!!」

 

「ぐわああーーッ!!」

 

 

那奈亀が龍子を投げ飛ばし

雀花の背中へと直撃する。

少し離れているにも関わらずやり取りが丸聞こえである。

 

 

「あそこまで自由すぎるのはアレだけど」

 

 

その様子を呆れた目で見るイリヤ

雀花達にやっていた視線を戻し

 

 

「でも珍しいね。こんな海の近い町にすんでるのに」

 

「少し前までは海外にいたから」

 

「海外!?帰国子女だったんだ」

 

「………」

 

 

クロエが足下の蟹をつっつきながら

イリヤ達の会話に耳を傾ける。

 

 

「小さい頃は冬木市に住んでた。

父と兄と…三人で

でも父が病死して…それから海外に引き取られた。

こっちに帰ってきたのはつい最近」

 

「もしかしてそのお兄さんってのが…」

 

「…うん。士郎さんに──よく似てる人」

 

「………そっか…」

 

 

ビーチパラソルの日陰にて子供達の様子を見守る士郎を見ながらの美遊の言葉に

イリヤはなんとも言えない表情をする。

 

 

(……病死した父って…キリツグのこと、よね)

 

 

美遊の抱えている事情に対してある程度の予想を立てていたシロエは

先の美遊の言葉からキリツグのことを思い出していた。

 

クルミの冬芽をキリツグと一緒に探した幼いわたし

自らの理想の成就のために聖杯戦争に参加し、汚染された大聖杯を破壊したキリツグ

その後、何度もわたしに会おうとドイツへと足を運び体調を悪化させ命を落とした。

だけど

この世界のキリツグは自身の妄執染みた理想よりも何故かアイリとお姉ちゃんを選んで、今の奇跡のような光景がある。

 

 

……………………………………………やめよう。

 

 

昔からこれについて考えると

キリツグのことは整理がついていたはずなのに

わたしの中でどす黒いなにかが湧き出してくる。

考えないようにしよう。

いつものように

お姉ちゃん達にはなんの関係もないんだから…

 

 

「…………」

 

 

シロエが無表情の裏でどす黒いなにかに蓋をしているのを尻目に

 

 

(…今日もまた)

 

 

クロエはそんな三人を見て

 

 

(踏み込まないのね。イリヤ

ミユも明らかに何かを抱えてる。

シロなんかどう考えてもその所為で様子がおかしくなっているのは確かなのに

今も雰囲気がおかしいし…。

多分二人が抱えてるものはわたしたちに深く関係してる。

まったく、三人共いつまで棚上げしとくつもりなのかしら)

 

 

「アイスキャンディー」

 

 

(いい加減様子見るのも飽きてきたし)

 

 

 

「いかーーっすかーーっ!!!」

 

 

 

クロエが自身の膝に肘をつきながら内心溜め息を吐く。

 

 

「アイス」

 

 

(もーいっそのことミユもわたしが…)

 

 

「アイスー!!」

 

 

(シロの方も様子がおかしくなってから何度か)

 

 

「キャンディ!!」

 

 

(聞きにいってるけどもっと強く言って…)

 

 

「いかーーーっ!!!」

 

 

「……ってなんなのもー!!

うるさいわ!!」

 

 

徐々に大きくなっていっていくアイスキャンディ販売の声に

堪忍袋の緒が切れたクロエが振り向く。

さらに無視できなくなった大声にイリヤ達三人も何事かと振り向く。

すると、そこには

 

 

「む?」

 

 

メガホンを右手に持ったバゼットがそこにはいた。

 

 

「おや貴女方は…」

 

「バッ……」

 

 

予想外すぎる人物の登場に一瞬呆ける子供達

が、すぐに我に返る。

 

 

「バゼット──!?」

 

「ま…また出たわねバサカ女!!」

 

「ててて転身しなきゃ!!

ルビー!!ルビー!?

いない!?なんでー!?」

 

 

慌てだす美遊、クロエ、イリヤの三人

しかし

 

 

「落ち着いて。三人共」

 

 

シロエは別であった。

シロエは三人とバゼットの間に入り

冷たい表情でバゼットを油断なく見る。

完全に戦闘用へとスイッチが移行している。

そんなシロエの背中に安心感と頼もしさを感じると共に

それに頼りっぱなしになるわけにはいかないと

三人は冷静さを取り戻す。

 

 

「…」

 

 

シロエが見つめるはバゼットの左腕

バゼットの左腕にはギブスが取り付けられ

首からサスペンダーで吊り下げられている。

 

 

「…大丈夫。片腕だけならどう足掻いても負けることは絶対にない」

 

 

とはいえ、既に完治しててブラフって可能性もあるから油断はできないけど

 

 

「…言ってくれますね」

 

「事実でしょ?それとも片腕のみで勝てるとでも言うつもり?

だとしたらそっちの方がよっぽど嘗めてるとしか言い様がないけど」

 

「さすがにそんな思い上がりはしませんよ。

万全の状態だったにも関わらず貴女一人に負けたのですから。

それにそもそもしばらくの間は貴女達には手出ししないと約定を結んだばかりです。

ですからそこまで警戒する必要はありません。

…子供にそういう反応をされるとさすがに少し落ち込みます」

 

「…それならあなたはなんで今ここにいるのかしら?」

 

「…わたしがなぜ今ここにいるのか。

それは今のわたしは…」

 

 

子供達から懐疑的な目で見られ

若干落ち込みながらもバゼットは続けるが

 

 

「ただの

アイスキャンディー屋さんだからですッ!!」

 

 

水着の上に身につけたエプロンを風にたなびかせ

わきには台車に載ったクーラーボックスがあり

そして台車にくくりつけられた旗にはアイスキャンディーの文字が書かれている。

そういった状態にも関わらず威風堂々とバゼットは口にする。

 

 

((((…………。なにそれ))))

 

 

とイリヤ達四人の思考がフリーズする。

 

 

「先日の戦闘行為で発生した被害の修繕費用ですが、なぜか協会を素通りしてわたしに請求が来まして…。

カードは止められ路銀も治療費で尽きました」

 

(ルヴィアさんだ…)

 

(エーデルフェルト恐ろしい子…!)

 

(油断しちゃ…油断しちゃダメなのに…。わたし…)

 

 

転生してからずっと警戒していたはずの時計塔の魔術師…それも封印指定執行者が目の前にいるにも関わらず

油断するわけにはいかないと思いながらも戦闘用のスイッチが切れシロエの目が死んでいく。

さらに

 

 

「ですが大した問題ではありません。

金など日雇いの仕事(バイト)で繋げばいい。

日雇いの仕事(バイト)程度なら片腕だけで充分。

その気になれば道端の草も食べられる」

 

((((この人なんか、ダメっぽいーーーー!?))))

 

 

予想だにしていなかったバゼットの姿に

イリヤ達の顔が引きつる。

 

 

「この前の時と全然キャラ違くない!?」

 

「状況も言動も…心なしか顔つきまでダメっぽく見えるよ…」

 

「これが封印指定執行者…?シロがあんなに警戒してる…?」

 

「…きっと戦闘以外はからっきしなタイプ…なんだと…思う。……多分」

 

 

警戒しすぎだったのではないか?

とシロエの心中でよぎるほどにダメっぷりをみせるバゼット

 

 

「とまぁそういうわけですので」

 

 

そんな子供達の視線に気づいていないのか

バゼットはクーラーボックスを開け

 

 

「一本三百円です」

 

 

アイスキャンディーを四本分右手で掴みイリヤ達に突きつける。

押し売りである。

 

 

「お買い上げありがとうございます」

 

((((ボッ…約束された観光地価格(ボッタクリ)ー!!

しかも強制ッ!?))))

 

 

 

……

………

 

 

「あれ?」

 

 

海から上がってきた美々が困惑する。

その視線の先には

 

 

「……落ち込んでる人数が増えてない?

え?どうしたの?」

 

 

ビーチパラソルの下でアイスキャンディーを食べながら項垂れているイリヤ達四人がいた。

落ち込んだイリヤの励ましのために休憩に入ったにも関わらず美遊達まで落ち込んで帰ってきたため困惑しているのである。

 

 

「なんか…ダメっぽい人の押し売りに遭っちゃって…」

 

「ふーん…?」

 

(お金…貯めなきゃいけないのに使っちゃった……。

しかもよりにもよって時計塔の魔術師相手に………)

 

 

バゼットの思いもよらないダメっぽさを見てしまい

戦闘用のスイッチが切れ、思考が停止。

最近の日常の意志薄弱の状態となってしまい

我に返った時には既に片手にアイスキャンディーが握られていたため

最近のシロエにしては珍しく落ち込んでいる。

一本三百円だったため実害はないに等しいが

原因となっている時計塔の魔術師に支払ったため精神的ダメージが大きいのである。

しかし

 

 

「よし。それじゃそろそろ会場に移動するか」

 

「!!」

 

 

士郎のその一言によりシロエの頭からバゼットのことが吹き飛ぶ。

 

 

(まずい…。まだ…)

 

 

シロエが心中で焦っていると

 

 

(…?シロちゃん…?)

 

 

美々がそのシロエの変化に気づき訝しむ。

 

 

「会場?なんの?」

 

「ウチら疲れたからもう帰ろうかと思ってるんだけど」

 

「ちょっと!?今日の趣旨忘れてない!?」

 

 

しかしその妹の変化に気づかないイリヤは

完全に誕生会を忘れている雀花達へと噛みつく。

 

 

「ほ…ほら!今日はイリヤちゃん達三人の誕生日で…」

 

「あ……あーあー…」

 

 

美々がシロエのことはとりあえず後回しにし雀花達に耳打ちし思い出させる。

 

 

「すまんイリヤズ。

ぶっちゃけ誕生会とか海に来る名目でしかなかったから半分忘れてた」

 

「ちょっとは歯に衣を着せてよー!!」

 

「しかし自分から『誕生日祝ってくれ』とか言うのもどうかと…」

 

「そんなはしゃぐ歳でもあるまいし」

 

「う…、うわあああーん!!」

 

 

雀花と那奈亀の溜め息交じりの言葉にイリヤがマジ泣きする。

 

 

「ま、まぁそう落ち込むなよ。

店は俺が予約しといたからさ」

 

 

士郎が涙目になり震えているイリヤの頭を撫で慰める。

…尚その後ろでクロエがすごい目でそれを見ている。

 

 

「そう大したもてなしはできないけどささやかな誕生会をやろう」

 

 

そうして士郎は荷物を手にし一成と共に子供達を会場へと先導する。

それに子供達も後ろから各々でついていく。

 

 

「……………」

 

 

ただ一人、シロエはその場で立ちつくす。

その手には自宅から持ってきたトートバッグ

遊んでいる間はビーチパラソルの下に置いていた。

 

 

(わたしは………)

 

 

シロエはトートバッグの口を開け

捨てようとしていた三つの袋を凝視する。

そして

そのシロエのすぐ後ろにて

 

 

(包装された三つの…袋?)

 

 

美々が影の薄さを生か…ゲフンゲフンシロエに気づかれないように背後から

シロエが凝視しているトートバッグの中身を覗き見る。

服や携帯などが入っていたがその中でも目を引くのは

綺麗な包装紙で作られた三つの袋

 

 

『シロちゃんはイリヤちゃん達になにかプレゼントとかってするの?』

 

 

…………。

もしかしてシロちゃん───

 

 

 

……

………

 

 

シロエと美々が少し遅れてイリヤ達についていき

誕生会の会場である「海の家がくまざわ」へとたどり着く。

そう。察しの通り龍子の家がやっている店である。

偶然にも士郎が予約した店は龍子の家がやっている店であった。

父「嶽間沢豪兎」、母「嶽間沢ステラ」

長男「嶽間沢黎一」、次男「嶽間沢凱介」

嶽間沢家一同の突然の登場に雀花と那奈亀の突っ込みが入ったりと騒がしくなるものの

 

 

「………」

 

 

シロエは無言のままそれに一切関与しない。

そして

 

 

「せーの…。

イリヤ&クロ&美遊

お誕生日おめでとーー!!」

 

 

誕生会が開かれる。

いくつものクラッカーが鳴り響く。

イリヤとクロエは嬉しそうな顔で

美遊は困惑した顔で

その祝いの言葉を受け取る。

そしてイリヤ達の目の前のテーブルには美味しそうな料理がいくつも並べられており

その中央には

 

 

「なんかすごいね。これ」

 

「カキ氷とアイス?」

 

 

大きなカキ氷とそれを囲むようにアイスが皿の上に置かれている。

 

 

「海で普通のケーキはキツいかと思ってさ

特別に作ってもらったんだ」

 

「やるな海の家がくまざわ…」

 

「えー本日はお暑い中皆様にお集まりいただきまして…」

 

「イリヤ、そういう挨拶いらないから」

 

 

そうして各々が料理に手をつけていく。

そんな中美遊は困惑しながらもジュースを一口飲むと

 

 

「………イリヤ」

 

 

隣にいるイリヤに話しかける。

主役であるイリヤ達三人は上座に

シロエはその向かいに美々達と座っている。

 

 

「ん?」

 

「誕生会って…なにをするものなの?」

 

「んん?」

 

 

質問の意図がわからず訝しむものの

アイスを口に運びながらイリヤは答える。

 

 

「誕生会なんだから誕生日を祝うものでしょ?」

 

「誕生日って祝うようなものなの?」

 

 

美遊のその発言に

 

 

「「「え…?」」」

 

 

一同の動きが止まる。

 

 

「え、えーと………っていうかその台詞どっかで………」

 

 

イリヤが聞き覚えのある台詞に幼い頃の記憶を掘り返していると

 

 

「ず、ずいぶん根本的な質問するなぁミユッチは…」

 

「今まで祝ってもらったことないのー?」

 

 

雀花と那奈亀がこの凍ってしまった空気をなんとかするべく美遊に尋ねる。

しかし

 

 

「……ない」

 

「(あっ…やば!地雷質問だコレ!)え…ええっと…」

 

 

美遊の返しにさらに空気が重くなる。

と、その時

 

 

「っかーーー!!ファンタうめーーー!!

世界一うめーーー!!」

 

((ナイスタッツン!KYスキルもたまには役立つな!))

 

 

龍子がその空気を吹き飛ばし笑う。

そしてその話しにくい空気がなくなったことにより

 

 

「あー…そうだな。シロもよく聞いてくれ」

 

 

士郎が誕生日について説明する。

しかし皆の頭の中に

 

なんでシロも…?

 

と疑問に出てくる。

そんな皆の疑問に気づき士郎は

 

 

「その…シロももっと小さい頃に同じ質問をしてきたからさ」

 

 

その兄の言葉にイリヤは

 

 

『誕生日って祝うものなんですか…?』

 

 

という幼い妹の台詞を思い出す。

美遊もそうなの?と言いたげに視線をシロエに送る。

 

 

「さすがにもう覚えてはないかもしれないけどな…」

 

「…覚えてる」

 

 

シロエが無表情のまま兄へと答える。

 

 

「わたしの…最初の誕生会の時のことでしょ。

記憶はある」

 

「…そっか。

あの時は有耶無耶になったのもあって答えてやれなかったからな」

 

 

士郎は無表情の妹に少し困ったように笑いかけ

美遊とシロエに話し始める。

 

 

「誕生日ってのはさ…

生まれてきたことを祝福し

生んでくれたことに感謝し

今日まで生きてこられたことを確認する。

そんな日なんじゃないかって

俺はそう思うんだ」

 

 

その士郎の考えに

一成がフムと納得し

 

 

「祝福と、感謝と、確認…」

 

 

美遊が士郎の言葉を噛みしめるように呟く。

シロエは

 

 

「…」

 

 

無表情のまま

別段変化はない。

それもそのはず

 

 

(………()()()()()()()()には…

既にもう終わっている私には……

それは当てはまらない)

 

 

と、そう考えてしまっていたからだ。

 

 

「………でもまぁそんな堅苦しく考える必要もないぞ。

誕生日を祝われる側はさ美味いものを食べて適当に騒いで…」

 

 

そしてそんなシロエの心情に気づける者など今ここにはいない。

士郎は自身のバッグを漁り

 

 

「プレゼントを受け取る」

 

 

綺麗にラッピングされた三つの箱を取り出す。

 

 

「やることなんて、それでいいんだよ」

 

 

そうして笑顔でイリヤ達三人に差し出す。

 

 

「三人とも。お誕生日おめでとう」

 

 

イリヤとクロエはそれに嬉しそうに笑みを浮かべ

美遊は驚いた表情を浮かべる。

 

 

「なんだそれ!?

甘いヤツか!?甘いヤツが入ってるのかー!?」

 

「ちょっ…タツコ!!

ここは空気読んでくれないかな!?」

 

「やっぱダメだこいつ!!」

 

 

龍子が空気を読まずにテーブルの上を滑りプレゼントへと向かうのをイリヤはプレゼントを手にしながらそれをかわす。

やれやれと思いつつプレゼントの箱を三人が開ける。

そこには

 

 

「これ…ブレスレット?」

 

 

ブレスレットが入っていた。

黒色の紐の先には

イリヤのは五芒星が

美遊のは六芒星が

クロエのはハート型が

それぞれあしらわれている。

そして

 

 

「!!」

 

 

それを見たシロエは

目を驚愕で大きく見開いた後

 

 

「………」

 

 

無表情へと戻るが

なにかが冷めたかのように

僅かに俯き顔には影が差す。

 

 

「かわいいかわいい!気に入ったわ!」

 

 

しかし

大好きな兄からプレゼントをもらったイリヤ達はそれに気づかない。

 

 

「やるじゃないお兄ちゃん!

こういうの選ぶのヘタなイメージあったんだけど見直したわ」

 

「あー…実は選びきれなかったから遠坂に協力してもらって…」

 

 

凛の名前が出てきたクロエとイリヤは

どんよりとし

 

 

「ここで他の女の名前出すあたりがお兄ちゃんだわー…」

 

「ほんとにねー…」

 

「急にテンションが下がった!?」

 

 

妹達のテンションが下がった理由がわからず

困惑する士郎を尻目に

 

 

「うん。でも」

 

 

クロエとイリヤは左手首に士郎からのプレゼントのブレスレットを身につけると

 

 

「ありがとう。お兄ちゃん」

 

「きっと大切にするよ」

 

 

笑顔で兄に御礼を言う。

そして

 

 

「ほらミユも!」

 

 

一緒に身につけようと美遊を引き寄せるイリヤ

しかし

 

 

「でも、あの………シロのは」

 

「あ…」

 

 

シロエのみブレスレットがないことを気にする美遊

そして

兄からのプレゼントの嬉しさから仲間外れとなってしまっている妹のことに気づくことができなかったイリヤはばつの悪そうな顔をする。

 

 

「えーと…」

 

「あー…シロのは」

 

「ミユ。今日はわたしの誕生日じゃない」

 

 

ばつの悪そうなイリヤに代わり士郎が発言しようとするがそれを遮り

シロエが無表情で美遊に諭すように話す。

 

 

「そ、そうだけど…」

 

「私のことは…考えなくていい。

今日はただミユが楽しんでくれればそれでいい。

それにお姉ちゃんも」

 

「え?」

 

「なんでそんな顔してるの。毎年のことでしょ」

 

 

確かに毎年のことではある。

わたしとシロの誕生日は違ってて

別々の日に祝われるのは

だけどいつも心につっかえるものがあって

それに

今年はミユとクロがいる。

わたしたち三人とシロ一人

普段からのクラスでの席の位置といい

疎外感を感じないわけがない。

そう考えると

心がもっと苦しくなって

なにより

今の状態のシロにそんなこと感じてほしくない。

 

しかし

 

 

「これは当たり前のこと。

わたしとお姉ちゃん達は……違うんだから」

 

 

いっそ冷たさすら感じるシロエの無表情

イリヤはそんな一見いつもと変わらないように見える妹の姿に

 

 

「そ、そうだ!

その肩に掛けてるバッグってなにか入ってるの?

預けずにずっと持ってるけど」

 

 

どうしても仲間外れとなってしまう誕生会の話から話題を逸らしたかったのか

とりあえず目についた妹のトートバッグについて言及する。

しかし

 

 

「別になにも。服や携帯とかが入ってるだけ。

盗難に遭ったら困るから自分で管理してる」

 

「そ…そう…」

 

 

妹にあっさりと話題を打ち切られる。

しかし

 

 

(え………)

 

 

美々はそんなイリヤとシロエのやり取りに反応する。

なぜならあのトートバッグの中身を美々は知っているからである。

 

 

(シロちゃん…?)

 

 

なんで…?

と美々はシロエの顔を見る。

 

 

「…」

 

 

いつも通りの無表情

その傍らにはなんとか妹も仲間に入れようと四苦八苦しているイリヤの姿

イリヤはなにも気づかないが

しかし美々には

シロエの瞳の奥から深い哀しみが伝わってきた。

 

 

「っ」

 

「?どしたミミ?」

 

 

美々が顔を歪めたのに気づき

龍子が暴れないように那奈亀と押さえつけながら

雀花が美々に尋ねる。

 

 

「スズカちゃん…。あのね──」

 

「?」

 

 

美々が雀花の耳元にて小声で話すと

雀花の目が僅かに見開かれシロエを見る。

…変わらず無表情であり、()()をする様子は一切なさそうに見える。

その様子を見た雀花は

 

 

「………オーケー、それなら…。

タツコ、ナナキちょっと耳貸せ」

 

「お?」

 

「なんだなんだ?」

 

 

龍子と那奈亀も加えて

四人で囁き合う。

そうして十数秒後

 

 

(…ス、スズカちゃん…。

それって上手く行かないような気が…。

というか作戦っていうのかどうかすらも…)

 

(任せとけって!泥舟に乗ったつもりでいろって!)

 

(泥舟じゃ沈んじゃうよ!?)

 

(あれ?泥舟じゃなかったか?)

 

 

それを言うなら大船である。

 

 

(…まぁいい。とにかくやるぞ!)

 

((おぉーっ!!))

 

(…大丈夫かなぁ)

 

 

そして

その作戦とやらが実行される。

のだが

 

 

「あー!?あんなところに空中を泳ぎながら無機質な瞳で『あそぼ』と迫ってくる鮫が!!」

 

「突然なに!?そんな鮫いるわけないでしょ!?」

 

「スズカちゃん…。やっぱりそれは無理があるって…」

 

 

雀花の突然の奇行にイリヤが突っ込みを入れ

口から出まかせにも程があると美々が顔を引きつらせるが

 

 

「!?」

 

「引っかかった!?」

 

 

違う世界線のカルデアからおかしな電波を受信したのか

寒気を感じたシロエが勢い良く振り返り

姉を名乗る不審者を探してしまう。

 

 

「今だ!!かかれぇー!!!」

 

 

シロエの注意が逸れた瞬間

龍子、雀花、那奈亀が

一拍遅れて美々が

シロエへと飛びかかった。

 

 

「なっ…」

 

 

突然の襲撃に驚愕しながらも

わけもわからず応戦を始める。

 

 

「この…!おとなしくしろって!」

 

「いや意味がわから」

 

「おとなしくそのバッグを寄越せー!!」

 

「!!」

 

 

龍子の叫びから四人の目的がバッグにあると

気づいたシロエの抵抗が増す。

 

 

「スズカ達には関係ないでしょ…!」

 

「けどお前、そのバッグの中身」

 

「うるさい。それ以上余計なこと言うならホッチキスで口を留める」

 

「はん!そんな見え見えの脅しで俺が止まるかー!!」

 

 

ポカポカポカポカと五人の少女が取っ組み合う。

 

 

「な、なに?なんなの?」

 

 

突然の展開に置いてけぼりになっているイリヤ達三人

その時

 

ポーン

 

と、問題のシロエのトートバッグが宙を舞い

 

 

「あ…」

 

 

イリヤの手元に収まる。

 

 

 

「「「よっしゃーーーっ!!!」」」

 

「や、やった…!」

 

 

目的を達することができたと歓声を上げる雀花達

その瞬間

 

 

「…!!!」

 

 

シロエの雰囲気が一変

背筋が凍る程の重圧を放つと同時

 

 

「おわっ!?」

 

「ぐえっ!?」

 

「へぶっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 

一対四にも関わらず

人間とは思えない程の凄まじい速さと動きで

雀花達四人をあっという間に組伏せる。

そして

雀花達の上へと乗り、手だけでなく膝なども使い

四人全員の重心を完璧に押さえ

一切の抵抗を封じる。

 

 

「ぐごごご…。う、動けねぇ…」

 

「四対一だったのに…嘘だろ…!?」

 

「っていうかなんだ今の…!?

やっぱりイリヤよりも運動能力高いんじゃ…」

 

「それだけは絶対にないっ!!!」

 

 

組伏せられながらの雀花の訝しみに

イリヤが否定を行う。

しかし

 

 

「お姉ちゃん。バッグ返して」

 

 

それらのやり取りの一切を無視してシロエが

バッグを手に持つ姉へと要求する。

 

 

「え、う、うん…」

 

 

最近の妹には珍しい強い口調での要求に困惑しながらも

特に拒否する理由もなかったためイリヤが頷くが

 

 

「返しちゃダメッ!!イリヤちゃん!!」

 

「ミ、ミミ…?」

 

 

雀花達とは違い人の物を勝手に取ったりなどそういったことは一切しない美々からの

意外すぎる言葉にイリヤはますます混乱する。

 

 

「だってその中には」

 

「ミミ」

 

 

必死な美々の言葉を遮るように

シロエが静かに美々の名を呼ぶ。

その冷たすぎる目が言っている。

黙れ、と

しかし

 

 

「だ…、黙らないもん!!」

 

 

美々はなけなしの勇気を振り絞る。

ここで退いたら誰よりも…シロエが一番傷つくことになるとわかっているからだ。

そして美々が

 

 

「その中に入ってるのって…」

 

 

トートバッグの中身を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イリヤちゃん達への誕生日プレゼントなんでしょ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────え。

誕生日、プレゼント?

シロが………わたしたちに?

 

 

美々からの予想だにしていなかった言葉に三人が

特に

今までずっと一緒にいながらも妹から誕生日プレゼントをもらった記憶などないイリヤとクロエが

トートバッグをまじまじと見る。

今の状態のシロエがそんなものを用意しているなど

思いもよらなかったのだ。

そして

 

 

「そ、そうなの…?シ──」

 

 

イリヤがトートバッグから妹へと視線を戻すと

 

初めに視界に映ったのは

涙目になり手足を必死にバタつかせ

 

んーっ!?んーっっ!!?

 

と呻く美々の姿

そして

そんな美々の唇をシロエは左手でつまみ上げ

シロエの右手には

ギラリと

刃から鈍い輝きを放つホッチキスが───

 

 

「シローーーッッ!?

ステイ!!ステーイッ!!!」

 

「いや犬じゃないんだから、イリヤ」

 

 

※犬です。(元は

それはともかく

光のない瞳で真顔にて

ホッチキスをカチカチと鳴らしながら美々の唇へとゆっくりと近づけるシロエ

半ばホラーである。

 

 

「初志貫徹、有言実行。

わたしはやると言ったら最後までやりきる」

 

「それは立派な心掛けだけど!今だけは曲げてもらいたいかな!?」

 

「大丈夫。ミミの次はスズカ達もちゃんとその口を留めてあげるから」

 

「わ、わたしたちもかぁ!?」

 

 

 

……

………

 

 

その後、士郎の介入もあり

シロエをどうにか宥めることに成功したイリヤ達

渋々といった形だが雀花達も解放されている。

そして

 

 

「プレゼントっていうのは…これだね」

 

「…」

 

 

俯いている妹を尻目にトートバッグを開き

イリヤはバッグの中から包装紙で作られた三つの袋を取り出し、クロエと美遊にも渡す。

 

 

「っていうかプレゼントがあるなら最初からそう言いなさいよ」

 

「うん。シロからのプレゼントならわたしは喜んで受け取るよ」

 

「…」

 

 

クロエと美遊の言葉に対しても

黙りこむシロエ

 

 

「「…?」」

 

 

そんなシロエの姿に訝しむ二人

 

 

「まあまあ。とにかく開けてみよ?」

 

 

イリヤがプレゼント袋を一緒に開けようと促す。

妹からの初めてのプレゼントに嬉しさが抑えきれていない。

そして

プレゼント袋を開け、プレゼントを取り出す。

それは

 

 

「………ブレスレット?」

 

 

ブレスレットであった。

細い金属製の輪の先に六角形の氷の結晶がシンボルとしてあしらわれている。

輪もシンボルも雪を思わせる純白色である。

それが三つ分、全く同じデザインの物が三人それぞれの手のひらの上にあった。

つまり、何が問題なのかというと

 

 

「あー…。被っちゃったのね…」

 

 

士郎のプレゼントともろに被ってしまったのである。

シロエがプレゼントを渡そうとしなかった理由のひとつを知り、なんとも言えない表情となる三人

しかし

三人の気持ちはひとつ。決まっている。

 

 

「…そうだよ。それにお兄ちゃんのと違って三人共同じものだし」

 

 

そんなイリヤ達の気持ちに気づいていないのか

先まで黙っていたシロエが口を開く。

そして

 

 

「だから速く返し──」

 

 

シロエがイリヤの手の上にあるブレスレットに右手を伸ばす。

 

パシッ

 

イリヤはもう片方の手で妹の手をはたき落とす。

 

 

「…」

 

 

シロエははたき落とされた右手をポカンと見つめ

数秒後

めげずに今度は左手を

 

ペチッ

 

…またしてもはたき落とされる。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

シロエの目つきが鋭くなっていき

手を伸ばす。はたき落とす。手を伸ばす。はたき落とす。手を伸ばす。はたき落とす………

幾度となく繰り返す。

そして

またしてもシロエの左手が伸ばされる。

イリヤはそれをはたき落と──

 

ヒュンッ

 

 

「!?」

 

 

──そうとしたがそれはフェイント

もろに引っかかったイリヤの隙をつき右手をブレスレットへと

 

ガッ!

 

 

「………」

 

「………」

 

 

触れようとしたが美遊がそれを防ぐ。

視線が交差する。

そして

伸ばす。落とす。伸ばす。落とす。フェイント。防ぐ。伸ばす。落とす。フェイント。防ぐ………

今度は美遊も混じり繰り返す。

 

ヒュンッ

 

またしてもフェイント

イリヤがそれに引っかかり美遊がそれをカバー…

 

ヒュンッ

 

二連続のフェイント

美遊の反応が遅れる。

 

 

(まだ間に合──!?)

 

 

伸ばされる左手

しかも狙いを変えてイリヤではなく美遊のブレスレット

 

 

(速───!?)

 

 

向上し美遊とほぼほぼ同等となった身体能力と

以前から得意だった動きの先読みを駆使して

美遊の手を掻い潜り、シロエの左手が美遊のブレスレットへと

 

バシィンッ!!

 

触れる刹那

クロエが英霊の力を以てシロエの手を力一杯はたき落とす。

その顔はニッコリと笑っている。

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 

そして

 

ヒュッ!パシッ!ヒュンッ!!パァンッ!!ガッ!ガガッ!!バッ!!シュバババババババッ!!!

 

 

凄まじい速さでの攻防が繰り広げられ

その姿はまるで

 

 

(((((な…、なんだこの千手観音×4は…)))))

 

 

傍から見ると速すぎて四人の手が無数に見え千手観音像に見えるのである。

 

 

「手が痛いんだけど。さっさと返してくれない…!」

 

 

ブレスレットへと伸ばす手を止めずにシロエが言うが

 

 

「やだ!」

 

「ダメ…!」

 

「いやよ!」

 

 

三人共に拒否する。

 

 

「二つもブレスレットを貰っても困るだけでしょ…!」

 

「右手と左手、両方に着ければ…いい話でしょ!」

 

「というか…人の物を勝手に取るのは、犯罪だから…!」

 

「わたしたちへのプレゼントなら……所有権はわたしたちにある……!」

 

「だから…渡すつもりはなかったって…!

お兄ちゃんからプレゼントを貰ったんだから……わたしのなんていらないでしょ!?」

 

「いるに決まってるよ!?シロが初めて用意してくれたプレゼントを…無駄にするなんて、できるわけないでしょ!!」

 

 

まさに千日手

手がどんどん加速していく中で互いが互いを言い負かそうとする。

しかしそれでもシロエは止まらない。

手をブレスレットへと伸ばし続ける。

 

 

「なんでそんなに強情なのよ!?

折角用意してくれて…!わたしたちのために!!」

 

「そうよ!お金だって結構かかったでしょ!このブレスレット…」

 

「お金なんて使ってない!!」

 

 

……………あ。

 

勢いに任せて余計なことを言ってしまったとシロエは思わず攻撃を止め両手で自らの口を塞ぐ。

が、時は既に遅く

 

 

「……お金がかかってない?

え?じゃあこれどこで…」

 

「…イリヤ、多分だけどこれ」

 

 

美遊が感づいてしまう。

 

 

「シロの手作り…だと思う」

 

「────へ?」

 

 

イリヤはまたしても驚きブレスレットに視線を落とす。

クロエも同様であり、口にした美遊すらも信じられないという思いであった。

それくらいに手元にある純白色のブレスレットはとても綺麗で

シンボルとなっている結晶の部分においては細かく精巧に

そしてなによりも丁寧に作られており

店に置いてあってもなんら違和感はなかった。

 

 

「こ、これ…シロが作ったって…え?ホントに…?」

 

「……………っ」

 

 

シロエが俯き沈黙する。

しかし

その沈黙が答えであった。

 

 

「す、すげぇーっ!?」

 

「え、こんなの普通に店に置いてあってもおかしくねぇじゃねーか!?」

 

「これシロちゃんが自分で…!?で、でも加工とかどうやって…」

 

(………多分魔術を使ったんでしょうけど…それを差し引いても…)

 

 

十二分に妹の想いが込められている。

手の中のブレスレットを大切に握りながらクロエはそう感じた。

 

 

「…やっぱり返すことなんてできないよ。シロがわたしたちのためにそこまでしてくれたんだから」

 

「…でも」

 

「でもじゃないわよ。たかがプレゼントが被ったくらいでそこまで頑なになる必要なんてないでしょ。

渡されるわたしたちがいいって言ってるんだから」

 

「………それだけじゃ…ない」

 

「…え?」

 

 

妹の俯きながらの思わぬ言葉にクロエが訝しむ。

他にも理由があるのか、と

そして美遊が思い至る。

シロは今日の朝から…士郎さんのブレスレットが出てくる前から…悩み焦っているようであった、と

 

 

「だって───」

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───やっぱりおかしいよ。わたしが…よりにもよって()()()なんかが誰かにプレゼントを渡すなんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────。

今、この場には

ミユやミミ達といった『友達』が

わたしやクロ、それにお兄ちゃんといった『家族』もいる。

それなのに

私にはシロが一人ぼっちに

この世界でたった一人でいるように

この世界に

自分の居場所はどこにもないと思っているように

そう、見えた。

 

 

誰もが、なんて声をかけていいのかわからない。

 

 

「シロ。それは違うぞ」

 

 

たった一人を除き

士郎がシロエに声をかける。

 

 

「……違う?」

 

「ああ、違う。シロ、お前はさ…なんでイリヤ達にプレゼントを渡そうと思ったんだ?」

 

「それは……お姉ちゃん達に……」

 

「…喜んでほしかった。そうだろ?」

 

 

………その通り、だけど…。

でも…『道具』がそんなことを考えるなんて…

 

 

「それは間違いなんかじゃない」

 

「!」

 

 

シロエが内心驚く。

まるで心の内を見透かされたのような士郎の言葉に

 

 

「…シロ。

俺はお前がなにに悩んでいるのかは知らない。

お前が自分のことをどう思っているのかも、な」

 

「…」

 

「でもな、誰かが誰かを想う心っていうのはそれはとても美しいものの筈だ。

プレゼントっていうのはその想いを形にして、それを伝えるためのもの。

…それが間違っているなんてことは絶対にない」

 

 

士郎が

諭すように、それでいて強い言葉で

妹へと語りかける。

しかし

 

 

「…わたしに想いなんてものは…ない」

 

 

『道具』である自身に

想いなんてものがあるはずがない。

シロエが否定する。

 

 

「…シロ。想いってなんだと思う?」

 

「…?」

 

「想いって…どうやって生まれるものだと思う?」

 

 

士郎からの問いに

シロエは数秒考えた後

 

 

「生物が…所謂心の中から感情を出して…

類似した感情同士がまとまって強くなって…想いになる…?」

 

 

シトナイから渡された知識

または

シロエになってから本を読んだりし、そこから得た知識から

自分なりの所感を士郎に伝える。

しかし

士郎は優しく笑みを浮かべ

 

 

「想いっていうのはさ…誰かと誰かが触れあって初めて生まれるものだって俺は思うんだ」

 

「触れあう…」

 

「ああ、お前だって覚えがあるはずだ。

お前とイリヤはいつだって一緒だったからな。

お前はイリヤの想いをいつだって…感じていたはずだ」

 

「…」

 

 

シロエが反応しないことにイリヤが内心不安に駆られるが

そうではない。

士郎の言葉を否定することができなかったからだ。

 

 

「…想いっていうのは人一人じゃ完結しないんだよ。

それを受け取る誰かがいて、初めて想いを感じ取ることができる」

 

「…」

 

「つまりさ…受け取り手が想いを感じたっていうのなら

そこに想いは確かに込められてるんだよ」

 

 

士郎がシロエの頭に手を置き

 

 

「俺が断言する。シロ、お前にだって想いを生み出すことはできる。

お前がくれた雪見ホワイトチョコ。俺は確かにお前の想いを感じた」

 

 

妹の頭を優しく撫でる。

そして

士郎は自身のバッグを手元に持ってきて

 

 

「だからさ…俺の想いも受け取ってほしい」

 

「…!」

 

 

中からラッピングされた箱…イリヤ達に渡した箱と同じ箱をもう一箱取り出す。

 

 

「…お兄ちゃん。わたし、今日誕生日じゃない」

 

「ああ、もちろん知ってる。

これは誕生日プレゼントじゃない。

雪見ホワイトチョコ…お前の想いへのお返しだ」

 

 

士郎はあの時

イリヤを勝者として選んだ。

決め手はイリヤからの愛情

幼い頃の自身の料理の失敗を思い出しながら

しかし

あの時、失敗した自身の料理を食べてくれたのはイリヤだけじゃない。

シロエも食べてくれていたのだ。

にも関わらずイリヤだけにご褒美を与えたことに

士郎は後ろめたさを感じていた。

だからこそ…今回プレゼントを一緒に用意していたのだ。

それに

 

 

「それに…あのクロが持ってきたパウンドケーキ。

材料を計量したのはお前だろ?シロ」

 

「!!」

 

「やっぱりな。シロは変な薬品とか料理に入れるけど分量とかはいつも完璧に計るからな。

作ったのは違う子だろうけど」

 

「…」

 

「あの時、なにもしてやれなくて悪かった。

遅くなっちまったけど…受け取ってほしい」

 

 

士郎はシロエにプレゼントを差し出す。

シロエは無言でそのプレゼントを見つめる。

 

 

「…わかんない」

 

「?」

 

「お兄ちゃんはなんでわたしに構うの?」

 

「…」

 

「今に限った話じゃない。孤児院にいた時も

自分で言うのもなんだけど相当に気味が悪い子だったと思う。

実際、全員から距離を取られていた。

たった一人…お兄ちゃんを除いて」

 

 

その言葉にイリヤ達は驚く。

そんな話は聞いたことがなかったからだ。

しかしそれは事実であり

シロエは孤児院にいた頃

誰とも接しようとせず

窓辺で図書館から借りてきた本を読んで過ごしていた。

それも大人でも理解するのが難しい本を

無表情で静かに

片手で数えることのできる歳の幼い子供がだ。

他の子供はおろか院長ですら

不気味に思ってしまうのは当然のことである。

 

 

「なのに、なんでお兄ちゃんは…」

 

「なんで…か。それはな──」

 

 

たった一人、士郎だけは

シロエから距離を取らず、それどころか他の子達の輪に入れようと苦心していた。

その理由は

 

 

「お前に……お兄ちゃんって呼ばれたからだ」

 

 

士郎のその理由に

シロエは

 

 

「────え?」

 

 

理解できずに困惑する。

しかし

 

 

「家族を失って傷心して、塞ぎこんでいた俺に

孤児院で最初に話しかけてくれたのはお前なんだよシロ」

 

 

それは…無論覚えている。

塞ぎこむお兄ちゃんを見て

なんとなく話しかけなくちゃいけないって

多分、『イリヤ』としてのわたしがそうさせたんだと思う。

そしてわたしは

かつて『イリヤ』がシロウに初めて声をかけた時と同じように

お兄ちゃんと呼んだ。

 

 

「一度でもお兄ちゃんなんて呼ばれたら兄貴なんだ」

 

「…」

 

「そして…俺は兄貴だからな。

兄貴は妹を守るもんなんだ」

 

 

士郎のその言葉に

美遊が目を大きく見開く。

とても聞き覚えのある言葉だったからだ。

もっともシロエのことに気を取られているイリヤ達は美遊のその様子に気づかないが

そしてシロエも

士郎の言葉を胸の内に反芻しており気づく様子はない。

 

 

───この世界のシロウは…お兄ちゃんは

わたしの知っている…『イリヤ』の世界のシロウとは

境遇も価値観も

多くのものが違いすぎるから

あまり参考にはならないって

判断してたけど……………うん。

 

 

「『わたし』がなんでシロウとの殺し合いをやめたのか…なんとなくわかった気がする」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「ううん。なんでもない」

 

「?」

 

 

……………。

やっぱりお兄ちゃんはすごいなぁ。

さっきまであんなに冷たい空気を纏っていたのに…

シロの雰囲気が柔らかくなってる。

 

 

無表情であることに変化はないが

妹の他人を寄せつけない雰囲気が緩み

悩み事も少し楽になったように感じ

イリヤが感嘆する。

そして妹へと近づく。

 

 

「…プレゼント。開けてみよ?シロ」

 

「…うん、そうだね。お姉ちゃん」

 

 

まだ迷いはある。

わたしが誰なのか、何なのか、答えは出ていない。

けれど

そんなわたしからでも感じ取ってくれる想いが本物だと言ってくれるのなら

なにより

こんなわたしであっても感じることのできるお兄ちゃんからの想いを無駄にしたくない。

 

 

シロエが士郎からプレゼントを受け取り開ける。

その様子に安堵した美遊とクロエもシロエの近くに寄る。

中身は

 

 

「…うん。やっぱりわたしたちと同じブレスレットだね」

 

「まあ、このタイミングならわたしたちと同じなのは当然っちゃ当然でしょ」

 

 

シロエの手にある

黒色の紐のブレスレットを見て

イリヤとクロエが感想を言う。

 

 

「わたしは同じでも───!?」

 

 

続いてシロエが

ブレスレットに対する感想を言おうとしたが

 

 

「──────」

 

 

シロエはそこで硬直する。

 

 

「?」

 

 

不審に思ったイリヤが妹の視線をたどる。

視線の先には当然ブレスレット

もっと言えば

そのブレスレットの紐の先

あしらわれているシンボルに目が釘付けになっている。

そのシンボルは

 

 

「…変わった形の星だね」

 

「これは…七芒星だよ。イリヤ」

 

 

七芒星であった。

七つの角を持つ星型多角形

それがシロエに渡されたブレスレットのシンボルとなっていた。

 

 

「へー。わたしとミユのはよく見る気がするけどシロのはあんまり見覚えがないかも」

 

「そんなことはないよ。

五芒星や六芒星に比べると目にする機会は確かにあまりないけど…。

例えばヨルダンの国旗とかそれに」

 

 

しかしそれのなにがシロエを硬直させたのか

それは

 

 

「現在の北海道の旗にも使われてる」

 

 

北海道

すなわち

『猟犬トケ』の故郷である。

 

 

「…っ」

 

 

思いもしないところから

自身の…『猟犬トケ』の故郷の名前が出てきて

シロエの目が揺れる。

 

 

「……シロ?」

 

「…ううん。なんでもない……よ」

 

(………?

北海道なんて行ったことないはずなんだけど……)

 

 

あきらかに北海道という地名に反応している妹に対し

訝しむイリヤ

 

 

(……多分お姉ちゃんの五芒星、ミユの六芒星ときて

そのまま七芒星を選んだのでしょうけど…)

 

 

偶然なのはわかりきっているが

どうしても『猟犬トケ』の一生を思い出してしまう。

 

 

(……いろんな意味でわたしに合ってるブレスレット…ではある、かな)

 

 

そう自身に言い聞かせる。

と、丁度その時

 

 

「…シロ。ちょっといい」

 

「ん?ミユ…?」

 

 

美遊がシロエに囁く。

その内容にシロエは

暫し逡巡した後、了承する。

そして

 

 

「…生まれてきたこと」

 

「…今日まで生きてこられたこと」

 

 

美遊とシロエが交互に話し出す。

 

 

「イリヤに会えたこと」

 

「お姉ちゃんに会えたこと」

 

「シロに会えたこと」

 

「ミユに会えたこと」

 

「「みんなに会えたこと」」

 

 

語りかけている相手は

今この場にいる全員に対して

 

 

「………士郎さんに会えたこと」

 

「………お兄ちゃんに会えたこと」

 

「「その全てに───」」

 

 

戸惑うイリヤ達だが

それでも二人共に止まらず

 

 

「「…感謝します。ありがとう」」

 

 

最後まで感謝の言葉を言いきる。

二人の手には六芒星と七芒星のブレスレットが握られている。

 

 

──どうしてだろう。

ミユはほんの少しだけど笑みを浮かべてるし

シロはいつも通り無表情なのに

そう言ったミユとシロの表情が

わたしには

泣いているように見えた。

 

 

「お…」

 

「!?」

 

「…」

 

 

シロエの件から完全に空気と化していた雀花と那奈亀が

我慢の限界とばかりに美遊とシロエへとにじり寄り

美遊はそれから逃れるようにイリヤに近づき

シロエは料理に手を伸ばす

 

 

「重ーーーい!!」

 

「感謝の言葉が…プレゼントを渡そうとしなかった理由が…重すぎるわー!!」

 

「きゃーー!?」

 

 

テーブルをひっくり返す。

皿やコップ、箸が宙を舞うが

 

 

「…」

 

 

雀花達の空気からある程度予想していたのか

巨大なかき氷やアイスが載った大皿、手つかずの料理の皿がシロエの両の手に載せられている。

ひっくり返す直前で出来る限り回収したのだ。

 

 

「結婚式のスピーチかと思ったわ!!」

 

「っていうかシロもなんだ!そんな陰キャじゃねーだろお前!!」

 

「そんならウチらからのプレゼントも受け取れ!

そんで感謝しろー!!」

 

「なっ…これタツコが着てたヒモ水着じゃない!?

いらないわよ!!」

 

「あーっ!!わたしらの想いをー!!

こうなったらシロにプレゼントして着させてや」

 

「それやったら怒るからね!!?」

 

「ああコラあんまり騒ぐなって…!」

 

 

水着店にて龍子が試着した紐状の水着が宙を舞う中で

 

 

(「イリヤ」と「みんな」と「お兄ちゃん」ね…)

 

 

自身の名前が上がらなかったことに嘆息するクロエ

と、その時

 

ドガガガガガガガガガ

 

と、店の外から重機の激しい駆動音が

騒音となりイリヤ達の耳へと叩きつけられる。

 

 

「うるさっ…!!」

 

「なんの音…!?」

 

 

イリヤ達は騒音の出所を確かめに外に出る。

 

 

(重機の音…工事?ビーチで?…もしかして)

 

 

シロエはその重機の音に心当たりがあったが

イリヤ達の後についていくのであった。

 

 

 

……

………

 

 

「………シロ」

 

 

騒音の出所へと向かいながら

美遊が速度を落としシロエの隣に並び話しかける。

 

 

「?どうしたのミユ」

 

「あのね…このブレスレット」

 

 

美遊が右手首に身につけた純白色のブレスレットをシロエに見せる。

言うまでもなくシロエがプレゼントしたものである。

 

 

「…?」

 

「できればその…わたし、シロとイリヤ二人とお揃いにしたい」

 

「……うん」

 

「だから…もしシロがよかったらなんだけど…もう一個シロ自身の分も作ってほしい」

 

「…」

 

 

沈黙したシロエを見て不安になる美遊

 

 

「あの…もし作るのが難しいなら…。作り方を教えてくれればわたしが」

 

「あ、ううん。そういうわけじゃなくて…ね」

 

「?」

 

 

その時美遊には

シロエが悩み、迷っているように見えた。

実際

時間さえ貰えればおそらく可能ではあるのだ。

しかし

 

 

(これ……わたしには()()()()の…?)

 

 

()()()と聞かれたら間違いなく()()

でも………

 

 

「………ごめん。ちょっと考えさせて」

 

「………うん」

 

 

 

……

………

 

 

そんな会話をしている内に

イリヤ達は騒音の出所へとたどり着く。

そこでは

 

 

「工事…?こんなビーチのすぐそばで…」

 

 

大規模な工事が行われていた。

大型の穴堀り用の重機が鎮座しており

地面へとドリルを突き立て縦穴を掘っているようであった。

当然ではあるが侵入できないように背の高い白の金属製の柵で工事現場が囲われている。

イリヤが訝しんでいると

 

 

「あら?イリヤ達じゃない」

 

 

工事現場の傍にいた凛とルヴィアがイリヤ達に話しかける。

 

 

「えっ…?あっ!」

 

 

凛とルヴィアの姿をイリヤが焦る。

なにも知らない兄と友達が今現在行動を共にしているからである。

しかし

 

 

「あれは…遠坂にルヴィアじゃないか」

 

「あっ!」

 

「こんなところで何を…?」

 

 

あっさりと士郎と一成に気づかれる。

さらに

 

 

アイスキャン…む?」

 

「あうっ……!?」

 

 

アイスキャンディーを販売しているバゼットとも鉢合わせする。

 

 

(………………………。

なんだろう。このカオスな組み合わせ…)

 

 

この後の展開に嫌な予感しかしないイリヤであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「なあところでよ」

 

「うん?」

 

 

騒音の出所へと向かいながら

雀花達がイリヤに尋ねる。

 

 

「雪見ホワイトチョコ…ってなんだ?」

 

「なんかすっげぇ甘くてうまそうな名前だよな!」

 

「あー…、ほらあれだよ。パウンドケーキの調理実習の時にシロがみんなにも配ってた白い…」

 

 

イリヤが美遊にもあげたという妹の話を思い出しながら

雀花達に説明する。

 

 

「?そんなもん貰った覚えねーけど?」

 

「え」

 

「あたしもあたしもー」

 

「俺もだぜ」

 

「わ、わたしも…」

 

 

雀花達四人共に貰った覚えがないという

イリヤの表情が固まる。

 

……………ま、まさか……

 

 

「……シ、シロ?」

 

「なに?」

 

「もしかしてだけど……スズカ達には渡してないってことはない、よね…?」

 

「?学校でならミユにしか渡してないけど」

 

 

予想通りの答えが返ってきてイリヤの表情が強張る。

 

 

「えー!美遊だけかよ!?」

 

「ずるくねぇ!?」

 

「俺にも食わせろぉ!!」

 

「あ、いやその……!

な、なんでミユにしかあげてないの!?シロ!?」

 

「だって…」

 

 

当然のように雀花達から文句が出てイリヤが慌てるが

シロエは無表情のまま理由を告げる。

 

 

「あれは…特別な人にしか作らないから」

 

 

………特別な人。

そう話すシロの表情はどこか寂しげで

 

 

「ってわたしたちは特別じゃないってことかぁ!?」

 

「え、あ、シ、シロ!スズカ達にも今度作って」

 

「無理」

 

「な、なんで!?」

 

「メイドの研修と藤村先生からの呼び出しで時間がない」

 

「うぐ…、そ、そうかもしれないけど!!

わたしも手伝うから、そこをなんとか…」

 

「…」

 

「うわぁすっごい嫌そうな顔!?

ミ、ミユからもなにか言って…」

 

 

美遊からも頼んでもらえれば断らないだろうと

美遊に話を振るイリヤ

しかし

 

 

「特別……わたしがシロにとって特別……」

 

「ミユーッ!?嬉しいのはわかるけど!戻ってきて!!」

 

「?シロの友達はわたしだけでいい。他の人なんてどうでもいいでしょ?」

 

「またその理論!?よくない!全然よくないよ!?」

 

 

首を傾げる美遊を見て援護は期待できないとイリヤは再び妹に視線を戻す。

 

 

「と、とにかく!わたしも手伝うから今度一緒に作ろ!!ねっ!!」

 

《絆レベルが不足しています》

 

「絆レベルってな…今の声どこから聞こえてきたの!?」

 

 

明らかに目の前の妹からではない声に

イリヤが周囲を見回す。

 

 

《ファミチキください》

 

(こいつ直接脳内に・・・!

って脳内?脳内なの!?)

 

《まあバレンタインイベントに絆レベルは関係ないんですけどねー(笑)》

 

「じゃあいいじゃん!!

っていうかバレンタイン!?今七月なんだけど!?

そしてあなたは誰なのよー!?」

 

「イリヤ…?」

 

「一人でなにやってるの…?」

 

 

イリヤの突然の奇行に心配そうな視線を向ける美遊とシロエであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一方

別の世界線のカルデア

 

 

「ミョンミョンミョンミョン」

 

「……ルビー?突然アンテナを出してなにやってるの?」

 

「いやぁ、別の世界線のイリヤさんからなにやら面白そうな電波を受信したのでちょっとお返事を、と」

 

「なにやってるの!?別のわたしにまで迷惑かけないでよ!?」

 

 

 

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