書き終えた後
R-15タグを入れるか本気で迷いました。
警告しておきますとそういう回です。
※追記:結局R-15タグを入れました。
清流流れる山の中
冬木市から離れた地にある温泉街
自然で囲まれた和風の街並みの中
イリヤ達は歩いていた。
「わぁ…!」
感嘆の声を上げながら歩くイリヤ
「~♪」
クロエも機嫌が良さげに鼻歌を歌いながら歩き
「…」
「…」
美遊もシロエも無言ではあるが
美遊は物珍しげな表情で辺りをキョロキョロしながら歩き
シロエも無表情ではあるものの美遊同様にあちこちに視線を向けている。
アイリはそんな子供達の様子を微笑ましく見ながら後ろからついていき
士郎とリズが一同を先導する。
そうして歩き続け
「着いた、ここみたい」
目的地である旅館『中沢平六』へと到着する。
三階建ての和風の立派な旅館であった。
「うん、風情があっていいところじゃないか!」
「ええ、そうね。イリヤちゃんとシロちゃんのお陰ね」
福引きにて一等の温泉旅行を当てた娘達を誉めるアイリ
そう。一同は温泉旅行で冬木市から離れ、この温泉街へと来ていたのだ。
「よく当てたイリヤ、シロ。グッジョブ」
「えへへー♪」
「…」
アイリとリズからも誉められ
笑みを浮かべるイリヤと無表情のシロエ
「あの…良かったのでしょうか?わたしまで」
「いいの、いいの♪
福引きを回せたの美遊ちゃんのお陰でもあるんだから」
福引きを回すための抽選券は
イリヤ、シロエ、美遊、クロエ
四人分の買い物で手に入れたため
美遊のお陰でもあるのは確かなのである。
「そうだよ。気にしないでミユ」
「…うん。ありがとう」
美遊の言葉に笑顔を浮かべるイリヤ
しかし
「おとーさんとセラも来れればよかったのにね」
「…まあ仕方ないでしょ。仕事だって言うなら」
切嗣とセラはこの場にはいない。
二人がいれば家族全員で旅行に行けたのに、とイリヤが残念がり
クロエも残念そうにしながらもそれを諌める。
そして
「…………ッ」
切嗣
その名前を聞いたシロエの表情がほんの一瞬
目を細め険しくなる。
とはいえ
すぐに関係のないことだとその感情を棄てさり無表情へと戻る。
「…」
そんなシロエの一瞬の変化に気づいたのはアイリのみであった。
「でも、おとーさんはともかく
セラがいないのは珍しいよね。シロ」
切嗣とアイリは世界中を飛び回り
家に帰ってくることはほとんどないが
セラとリズはイリヤとシロエの世話役として絶えず家に居るため
今回のようにいないというのは珍しいことであった。
「…うん。本当に、
「?う、うん…?」
「…」
妹の含みのある言い方に困惑しながらも
イリヤは頷く。
アイリはそんな娘の様子になんとも言えない表情をする。
「それはさておき……温泉、温泉♪」
「クロ?そんなに温泉好きなの?」
旅館へと機嫌良く近寄るクロエに
イリヤが尋ねる。
「そうねー。いっぺん来て見たかったのよねー♪
…うわ!なにこれ!あはははー♪」
クロエは店頭に置いてある狸の置物を楽しそうに触れながら答える。
「なんだか浮かれてるなー」
「…クロが家に来てから遠出の旅行自体、行ったことがない」
「え…あ」
「初めてなら仕方ないと思う」
「あー…。そう言われてみれば、そうかも」
妹に諭され納得するイリヤ
また、シロエの説明を聞いた美遊が話に入る。
「実は…わたしもなんだけど…」
「…」
「そうなの!?じゃあ、ちょうどよかった!みんなで楽しもうね!温泉旅行!!」
「…うん!」
「シロも!楽しもうね!」
「……………うん」
美遊のカミングアウトに
シロエは神妙な雰囲気になるが
イリヤは明るく振る舞い二人を引っ張る。
そして一同は旅館の中へと入っていくのであった。
そうして旅館の中へと足を踏み入れたイリヤ達が
最初に見た光景は
「「あああああぁぁぁぁぁ……」」
マッサージ機に寝転がり、振動により震えた声を上げている
浴衣を身に纏った黒髪ツインテールと金髪縦ロールがそこにはいた。
「「「「……………」」」」
どう見てもあの二人である。
イリヤ達小学生組四人が顔を引きつらせる。
しかし
タオルで目元を被っているからか
士郎達が気づくことはない。
…アイリのみは気づいているかもしれないが、なにも言わない。
四人が固まっている間に士郎達はチェックインを済ませる。
「イリヤー、シロー、行くぞー」
「う、うん…」
「……うん」
イリヤ達はそのままにしておこうという結論に達し
凛達の傍を通り過ぎ、客間へと向かう。
また、その際
「「…………ん?」」
黒髪ツインテールと金髪縦ロール…凛とルヴィアの目元を被っているタオルが少しだけずれ
イリヤ達の存在に気づくのであった。
『山百合の間』
それがイリヤ達に割り当てられた部屋であった。
「うわぁ…!」
「良い眺めじゃない」
「はぁ…」
「…緑でいっぱい」
縁側に立ったイリヤ達が
山々を覗くその絶景に感嘆の声を上げる。
「…こういう所のお茶とか、なんでかおいしい」
「そうねー」
リズとアイリはお茶とお茶菓子を口にし
士郎は一人せっせと荷物を整理している。
と、その時
「「……ん?」」
「…」
客間入口の戸が僅かに開かれ
くいっ…くいっ…
と手招きする手
凛の呼び出しである。
「「うえぇ…」」
「………はぁ」
イリヤとクロエが嫌そうな顔をし
シロエは溜め息を吐くのであった。
…
……
………
「いい。一応言っておくけど、別にわたしたちは遊びに来ているわけではないのよ?」
場所は戻りロビーにて
イリヤ達四人と凛達が
テーブルを挟み椅子に腰掛け説明をしている。
「任務の場所がたまたま、ここだっただけですわ」
「任務って…時計塔の?」
「ええ。そうですわ」
任務と聞き、真っ先にシロエが反応する。
「で?任務ってなによ?」
「ああ、大したことじゃないわよ」
凛がなんでもないとばかりに肩をすくめながらクロエへと答える。
「ここの近くのポイントに魔力的刺激を与えてこいって指示。まったく…面倒くさいったらありゃしない」
「「「ふーん…」」」
「……………そう」
イリヤ達三人はなんとも言えない表情をし
シロエも
少なくとも自分に関わるようなことではないとわかり興味をなくす。
「大体の場所は聞いていますが正確な位置はダウジングで調査する必要があるんですの。
そのために人気がなくなる夜まで待っているのですわ」
「だから、別にさぼっているわけじゃないんだからね」
つまりは
先のマッサージでだらけきっていた姿の弁明をするために
イリヤ達を呼び出したのである。
「さっきの姿はさぼっているようにしか見えませんでしたけどねー。
大した仕事熱心っぷりで!」
ルビーがイリヤの髪の中から、飛び出し煽ると
凛はイラつきながらルビーへと手を伸ばすも
ルビーはシロエの髪の中へと入っていく。
「…なんでわたしの髪の中に入るの?ルビー」
「いやー、たまにはシロさんの中にも入ってみたいなと
あれですよ。毎日同じメニューだと飽きるみたいな」
「なにそのお弁当みたいな喩え…。
でもこんな遠くまで来るお仕事って大変だね。
よくあることなの?」
「…今回は特別よ。表立って協会の人間を使えない理由があるのかもしれないわね」
「その極秘任務をこなす
ポイントアップですわね」
「その俗物的で打算的な発言。さすがはルヴィア様です」
美遊の髪の中から出てきたサファイアはルヴィアを軽く罵倒するもルヴィアは気にしない。
サファイアもまたシロエの髪の中へと入る。
「おやー、サファイアちゃんもこっちに来たんですか?」
「はい。姉さんがシロ様に変なことをしないようにと」
「信用ないですね!?」
「…サファイアなら別にいい」
「ってわたしはダメなんですか!?」
「うん」
「……………そこまではっきりと断言されるとさすがのわたしもへこむのですが」
先日の海の一件でシロエの中の信頼度が
サファイア>>>(越えられない壁)>>>ルビー
と、かなり差がついてしまったのである。
一ヶ月程前の話だがダンスにてサファイアが部分的に力を貸してくれたことも、これに拍車をかけている。
と、そこに
「ん?遠坂にルヴィアじゃないか?」
「「えぇっ!?」」
士郎が通りかかる。
士郎は浴衣を身に纏い、桶とタオルを手に持っている。
急な士郎の登場に慌てる凛達
「奇遇だな。お前達も旅行か?」
「そ、そうね。そんな感じかしら」
「奇遇ですわね…シェロ…」
凛とルヴィアの顔が弛み
借りてきた猫のようにおしとやかな様子となる。
((うわぁ…))
先までの勝ち気な雰囲気が消え失せ
一瞬にして猫を被る二人に
イリヤとクロエは白い目を向ける。
尚、美遊は士郎の方へと視線を向けておりシロエはいつもの無表情である。
「いつも喧嘩してるみたいだったけど
二人で旅行なんて…やっぱり仲いいんだな」
「え……………え、ええ」
「まあ……………」
無印の頃のシロエのようなことを言う士郎であるが
猫被りモードとなっている凛達は特に否定はしない。
「ふふっ…。よし温泉、温泉と」
そんな凛達を不審に思うことなく士郎は温泉へと動き出す。
「あっ、そうだ」
しかし士郎はその歩みを止めると再び凛達に話しかける。
「もし暇だったらでいいからさ、イリヤ達とも遊んでやってくれよ」
「え、ええ」
「勿論ですわ」
「ありがとう。じゃあ」
凛達が笑顔で答えると
士郎は今度こそ温泉へと向かう通路の先へと消えていく。
「はぁ…まさか衛宮くんまでいるなんて…」
「…家のみんなで旅行に来ているんだから、いるのは当たり前」
「それはそうだけど、心の準備というか…」
「シェロとひとつ屋根の下!
なにがあるかわかりませんし後で改めて身体を清めておかなければ!
うふ、うふふふふふふ…」
「な、なにがあるっていうのよ!?バカじゃないの!?」
「「「「はぁ…」」」」
トリップしているルヴィアに子供達四人は大きく溜め息を吐く。
「…とりあえずあんた達も入ってきたら?
気持ちいいわよ?露天風呂」
子供達の溜め息にこれ以上付き合わせるのも悪いと思ったのか
凛が露天風呂に入ってくることを勧める。
「うん!じゃあママ達も誘ってみんなで行こう!」
「…うん」
「そうね」
イリヤは美遊、クロエ、シロエの顔を一人一人見回し、先導しようとし
美遊とクロエがそれに笑顔で答える。
「…」
「ほら!シロも行こう!」
無表情の妹も無論、手を引き
イリヤ達はアイリとリズと合流し
露天風呂へと向かうのであった。
…
……
………
カポーン
桶を床に置いた際の音が鳴り響く。
「んー!やっぱりいいよね!」
場所は変わってイリヤ達は露天風呂に浸かっている。
イリヤは背伸びをし羽を伸ばす。
「ミユはどう?」
「うん、気持ちいい。
でも……やっぱり外で裸になってるみたいで
その…なんだか恥ずかしい」
美遊が顔を少し赤らめながらイリヤへと答える。
「その解放感が醍醐味」
リズが温泉の縁に腰掛け
腕と足を伸ばす。
それによりいろいろな部位が丸見えになっている。
「…セラが居たら怒りそう」
「いいじゃない、他に人もいないんだし。
シロちゃんも気にせずに思いきり伸ばしちゃえば?」
「遠慮しておきます」
アイリからの提案を丁重に敬語で断るシロエ
「やっぱり温泉は違うね。
なんだかピリピリする!
身体に良さそう」
「うん。美肌効果と成長を促す作用がある」
リズがそれを口にすることで
ある部位に対して妙な説得力が生まれるが
「そうなの?成長ってなに?」
「…かもしれない。言ってみただけ」
イリヤは気づくことなく聞き返し
リズは適当に言っただけだと返す。
(…わたしが成長した姿ってあまり想像できない)
『イリヤ』が子供の状態で成長が止められ
そして終わってしまったため
いまいち大人の自分が想像できないシロエであった。
ーーーーーーーーーー
一方の男湯では
「まずは内風呂で身体を流すか」
士郎がタオルを肩にかけ
脱衣室の戸を開け浴場へと入ろうとすると
「な……」
エーデルフェルト邸の老執事
オーギュストがそこにはいた。
オーギュストは内風呂に浸かっており
途轍もない威圧感を放ちながら、こちらをジッと見ている。
エーデルフェルト邸の浴場での出来事を思い出した士郎の目から光が消え
士郎はゆっくりと戸を閉める。
そして目が疲れているのかと目元を揉んだ後
再び戸を開ける。
「え……」
すると内風呂に入っていたはずのオーギュストが
洗い場へと移動していた。
風呂椅子に腰掛け、背中を流す準備をしている。
さっさと入ってこい。
そう言っているようである。
士郎は顔を引きつらせ、内風呂から逃走した。
ーーーーーーーーーー
「それじゃ、私達は先に上がってるからね♪」
「んー…」
若干のぼせ気味のリズを伴って
アイリは露天風呂を後にする。
「はーい」
イリヤの元気な返事と共に
シロエの髪がもぞもぞと動き
「いえーい貸しきり状態!
これでわたしも温泉を堪能できます!
いい湯ですねー!わっほーい!!」
「姉さん、湯船で泳いではいけません。
マナー違反です」
ルビーとサファイアが飛び出し
ルビーは泳ぎはじめ
サファイアは美遊とシロエの間で静かに浸かりながらルビーを嗜める。
「ステッキにもそれ適用されるのかな…?
………えい!」
「むぐっ」
イリヤは泳いでいるルビーを捕まえ頬を膨らませる。
が、なにか違和感を感じたイリヤはルビーを離す。
「さっきから気になってたんだけどさ、わたしたちなにか忘れてない?」
「そういえば…クロは?」
「ああ、そっかクロは…」
イリヤの違和感に美遊が疑問を呈することで
イリヤが納得する。
クロエがいつの間にかいなくなってる、と
それに対し
クロエの行動を見ていたシロエが答える。
「……クロならさっきあっちでコソコソなにかやってたみたいだったけど」
「あっち?」
妹の指差した方向を見ると
そこには
仕切りが立っている。
「「……………」」
「?」
仕切りの向こうは当然、男湯である。
そして今、男湯には兄がいるであろう。
((ま…まさか………))
「???」
イリヤと美遊の嫌な予感が一致し
シロエは姉と友達の顔がどんどん険しくなっていくのに対し首を傾げる。
そして
美遊はシロエに説明を行い
その間にイリヤはさすがにそこまではしないよねと祈りながら男湯に聞き耳を立てた。
そして───
ーーーーーーーーーー
「はぁ、気持ちいいなぁ。
こりゃあ疲れも取れそうだ」
オーギュストのいた内風呂から逃走した士郎は
予定を変更し、露天風呂へと入浴していた。
「そうねぇ。思ったよりもピリピリする感じだけど、こういうものなの?」
そこに凄く聞き覚えのある少女の声で士郎へと
隣から話しかけられる。
「そういう成分なんだろ。身体に悪いってことはないと思うぞ?」
「ふーん…。まあ慣れれば、これがいいのかもね」
「そういうこと………ん?うおあぁっ!?」
ようやく士郎が
文字通り隣にいるクロエに気がつき
悲鳴を上げ、波を立てながら赤面し思いっきり距離を取る。
「クロ!?なにしてんだ!?ここは男湯だぞ!?」
「あーそうなんだー。間違えちゃったー」
「間違えって…」
どう見ても確信犯にしか見えないクロエの言葉
士郎は慌てて背を向け股間を隠す。
「わ、わかったから速く出ないと」
「えー!いいじゃん!
せっかくだから背中流し合いっこしようよー!お兄ちゃん!」
他に誰もいないことをいいことに
平泳ぎを行い士郎へと近づくクロエ
「そ、そんなわけにいくか!誰か来たらどうするんだ!」
近づいてくるクロエに士郎は湯船から上がろうとする。
「あ……えーいっ!!」
クロエは逃がさないとばかりに湯船から飛び出し
士郎の背中へと抱きつく。
「ねぇ、こっちを見て?お兄ちゃん。
今なら誰もいないし…」
士郎がクロエの言葉に惑わされまいと目を瞑った。
次の瞬間
「ぴえええぇぇぇい!?」
タオルにくるまったルビーが
悲鳴を上げながらクロエへと飛来した。
「っ!?」
クロエは咄嗟に回避。
結果
「ほぶっ!?」
ルビーの悲鳴に思わず振り返った士郎の顔面へ直撃した。
士郎は湯船の外にて大の字に倒れ
ルビーを包んでいたタオルが顔面に被われる。
「こらーッ!!クローッ!!!
なにやってんのーッ!!!」
イリヤが男湯と女湯の間にある仕切りの上から
上半身を出し腕を振り回しながら叫ぶ。
「イリヤ!?」
クロエがイリヤの名を叫ぶと同時
バシャッ!バシャッ!
と変身時のマントのみをそれぞれ身に纏った美遊とシロエが
クロエの両脇へと手を繋ぎながら
男湯の湯船に音を立てて降り立つ。
「うわっ、二人ともなにそれ?裸マント?
お風呂で転身したらそうなるの?」
「…うるさい」
「黙って!」
裸にマントという格好が恥ずかしいシロエと美遊は
赤面しながら両脇からクロエを抱え、飛行し女湯へと戻る。
「クロ!!これは本当に反則級にダメだよ!!レッドカードだよ!!!」
イリヤは女湯に連行されたクロエに振り向きながら一喝し
「あと、お兄ちゃんのエッチィーッ!!!」
「な……なんでさ………」
…
……
………
「裁判を開始します!!!」
湯船にて腰に両手を当て仁王立ちし
激怒しながら裁判の開始を宣言するイリヤ
その目の前には当然、湯船に浸かっているクロエ
「ふん…」
激怒するイリヤに対し
そっぽを向くクロエ
「まずは動機!どうしてこんなことをしたのか…」
「だってせっかくの温泉旅行だしー。
気になる人との距離を縮める大チャンスだって雑誌に書いてあったし」
「むむむ。悪びれない!反省の色ゼロ!!
どう思いますか!!ミユさんシロさん!!!」
まるで反省の色がないクロエにさらに激怒しながら
友達と妹に意見をもらうイリヤ
「わたしはイリヤの判断に従う。
さすがにクロに弁解の余地はないと思う」
「その………ごめんなさい」
「!?な、なんでシロが謝るの!?」
頭を下げた妹に慌てて顔を上げるように言うイリヤ
「………クロの不審な行動に気づいていたのに、なにも言わなかったから」
「…シロは悪くないと思う。予想できたとしても実際に行動まで移すとは考えにくい」
「そ、そうだよ!わたしだって実際にクロの声を聞くまで半信半疑だったし!!」
「あ、じゃあこの話はこれでおしまいってことで」
「う、うん……って、なんでクロまで許されてるみたいになってるのよ!?」
どさくさに紛れて裁判を無罪で終わらせようとするクロエだったがイリヤに見破られる。
「うん。シロは悪くないけどクロの判決はまだ下ってない」
「えー、シロばっかりズルーい。わたしに味方いないの?
じゃあさ、いっそのこと四人でいかない?」
「な、なななななにを言ってるのクロ!?」
イリヤはさらに赤面しながら一歩、後ずさり
美遊とシロエは二人揃って首をブンブンと横に振る。
「いいじゃん。どうせ…イリヤ、も……」
クロエが湯船から立ち上がるが
クロエは突然、膝に両手をついてしまう。
「ク、クロ?」
「もしかして…」
「…魔力切れ?」
「そうみたいね…でも……これは、なんだか……普段より……」
辛そうな顔で息を荒く吐くクロエ
余裕が全然ないように見える。
「ちょ、ちょっと………あーっもう」
「…お姉ちゃん、わたしも手伝う」
「うん、お願いシロ。とりあえずこっちに」
イリヤとシロエがクロエに近づき
両脇からクロエを持ち上げながら歩き、湯船から出た。
次の瞬間
ギラリ
とクロエの眼光が光り
「え…………っ!?」
イリヤを床へと押し倒し
イリヤと唇を重ねる。
イリヤの顔が真っ赤に染まる。
「痛っ……お姉ちゃん!?」
「イリヤ!?」
クロエが突然動き出したことにより尻餅をついてしまったシロエが
イリヤとシロエに急ぎ近づきながら美遊が
それぞれ赤面する。
「んっ……んんっ………んんんっ」
イリヤとクロエの舌が絡みあい
濃厚な水気の音が響く。
しかし
「はうっ……ぅん……うぷっ…………ク、クロ…」
「…絶対おかしい。足りない」
いつものように魔力(唾液)を取り込んでいるにも関わらず
何故か全然足りない魔力にクロエが焦る。
このままでは本気でまずい、と
そして、そんな焦っている時に
「……………へ?」
クロエはすぐ隣にて尻餅をつきフリーズしている
もう一人の妹と視線がぶつかる。
そして
ニッコリ…
と微笑む。
「!?ダ、ダメ……シロ、逃げ」
クロエの思考を読めたイリヤが
力が抜けてる状態にも関わらず妹に逃げるように促すが
「!あうっ……………あ」
クロエは尻餅をついていたシロエをも押し倒し
かつて初めてイリヤ達と戦闘した時と同じように
シロエの首へと腕を回し
今度はイリヤの左頬とシロエの右頬をくっつける。
ここまでくればシロエにも
美遊とともにクロエに唇を奪われた時のことを思い出し
シロエの顔が真っ赤に染まる。
「ク…クロ、んっ…!」
クロエはシロエと唇を重ねる。
当然、舌も入れて唾液を取り込む。
「!!ク、クロ、わたしがやるからシロには…んっ!!」
イリヤの文字通りすぐ真横にて
妹のあられもない姿を間近で見たイリヤが慌てて自分が全部やると妹を庇おうとするも
クロエに唇を塞がれ、イリヤからも唾液を採取する。
「ん…んんっ……ぷはっ、お、お願いクロ、シロには……んぐっ!む、むぐ……んあ」
「はぁ…はぁ……んっ!…ぅ、ん…あ……んんんっ……んぐ……はぁっ!お、お姉ちゃ……ふぐっ」
以前の美遊とシロエの時と同じように
イリヤとシロエの交互に口の中に舌を入れているため
イリヤとシロエの喘ぎ声と濃厚な水気の音の所々にイリヤとシロエの声が漏れ出る。
そして
「ぷはっ…ク、クロ…?」
「お…終わったの…?」
「………」
突如動きの止まったクロエに
姉妹は終わったのか、と
一縷の望みをかけて尋ねる。
しかし
「……足りない」
「え」
「まどろっこしい……!!」
「ク…ロ…?」
姉妹は知らなかった。
ここからもっと酷い展開になるということを
「きゃっ!?」
「ひゃっ!?」
クロエは押し倒しているイリヤとシロエの身体の向きを変え
イリヤとシロエを向かい合わせる。
そして
ぐいっ!
「「!?」」
イリヤとシロエの頭をそれぞれ押し
二人の唇を重ね合わせる。
「んーッ!?んんーッ!!?」
「むーっ!?むむーっ!!?」
物心がつき始めた時から
人生の半分以上を一緒に過ごした妹と
こんなことをする日が来るとは夢にも思わなかったイリヤが
そして
先日の間接キスでも意識してしまったにも関わらず
今回は完全に姉と唇を重ね合わせることになってしまったシロエも
姉妹は顔を耳まで真っ赤に染め上げ涙目となり
必死に手足をバタつかせ離れようとするも
ガッチリ、と
クロエは両手で姉妹の頭を押さえつけ
両足も姉妹の腰に巻きつかせているため
離れることができない。
さらに
「ほら、どっちでもいいから舌を入れて唾液を混ぜて」
「「!?!?!?」」
な、なななななな…、なに言ってんの!?クロォーッ!?
イリヤが心の中で絶叫する。
「そしたらそれをわたしが取り込むから…出すまで離さないわよ」
「……………ッッ」
シロエは気づく。
見た目以上にクロエの魔力がまずいことになっているということに
だからこそ余裕もなく、こんな強行手段に出ていると
故に
「ん、んんッッ!!?(シ、シロッッ!!?)」
シロエは姉の口の中に舌を入れる。
妹の舌が入ってくることを感じたイリヤの目が大きく見開かれる。
しかし
(ダ…ダメだよシロッ!?
わたしたち姉妹なのに、こんな………って、うん?)
イリヤは困惑する。
シロエの舌の動きがどこかビクビクしているからだ。
クロエのような強引さなど微塵もない。
明らかに不安がっている。
加えて
「う……うう……ッッ!!」
舌を入れてきた妹の目はきつく閉ざされており
その目尻からは透明な液体が溜まっている。
それでも懸命に舌を動かすが、頼りなくたどたどしい上やはりどこかビクビクしているように感じる。
(シ、シロ……)
妹の舌から、触れ合っている身体から伝わってくる。
妹が怖がっている理由
これが終わったらお姉ちゃんに嫌われてしまうのではないか。
と
「……ッッ!!!」
それを感じたイリヤは
「ん、んぐっ!?(お、お姉ちゃん!?)」
妹の口の中に舌を入れる。
姉の思いもよらない行為にシロエは驚愕する。
無論、死ぬほど恥ずかしい。
しかし
妹を安心させたい。
わたしがシロを嫌うことなんて絶対にない。
それを伝えたいがためにイリヤは、いつの間にか舌を動かしていた。
そして
イリヤとシロエそれぞれが懸命に舌を動かし
唾液が混ざり合い、それをクロエが自身の舌を使い絡めとる。
何故かいい話風になったが、酷い絵面である。
さらに
「口からだけじゃ……皮膚からも、できるだけ吸収しないと……」
スリッ…スリッ…ペロッ…
イリヤとシロエが唾液を出すのを待つ間に
クロエは自身の身体を二人の身体に擦り合わせ
二人の汗を身体に馴染ませ、さらには舐め取る。
「ん……んん………ひうっ!?」
「う……んあっ………にゃうっ!?」
クロエのその行動により
イリヤとシロエの身体も敏感に反応。
さらにその反応により二人の身体の敏感な部分も擦り合わせられる。
そしてそれによりまたしても反応……悪循環である。
「……ぁ……クロ!クロやめて!!」
大好きな二人の絡み合いに目が釘付けになっていた美遊であったが
ようやく我に返り慌ててクロエを羽交い締めにし止めにかかる。
「…んっ…なによミユ」
クロエは美遊の制止に二人の拘束を一旦解き、立ち上がる。
クロエのその様子に美遊も羽交い締めをやめる。
「ふへー……」
「はふー…はふー…」
二人は力が抜けた状態で
ゴロリ、と
それぞれ仰向けになる。
目はグルグルと渦巻き
顔は完全に真っ赤
舌をだらしなく出している。
しかし
「わたしは命が掛かってるの。止めないでよ…」
クロエはまだ足りないと続けるべく
倒れている二人へとしゃがみこむ。
それを見た美遊は躊躇いながらも
「あ………わ、わたしが代わりにするからイリヤとシロにはもうしたらダメ……」
自身が身代わりになると申し出る。
その顔は赤く染まってる。
「魔力が供給出来ればいいんでしょ……。
抵抗しないから、わたしを……」
「……ふーん?そうなんだー…。健気ー」
それを聞いたクロエは再び立ち上がり
美遊へと
「ダ……ダメ……」
近づこうとするも
クロエの手を掴む手
それは
「わ、わたしはまだ…できるからミユには…」
シロエの手であった。
シロエは息も絶え絶えになりながらも美遊を庇おうとする。
その様子にクロエは驚きから目を見開く。
(………結構、魔力をもらったはずなのにまだこんなに)
見たところ体力を多く消耗しているだけで
魔力自体にはまだまだ大量に余力があるように見えたからである。
現に隣にいるイリヤは完全に伸びており意識があるかどうかも定かではない状態である。
「シ、シロ…」
「…驚いた。確かにまだまだ余裕がありそう」
「う、うん…。だから」
「でもダメよ。シロ一人じゃ、ね」
「え…。そ、それってどういう…」
「あー、つまりね…」
クロエが
シロエの魔力の濃度の関係上、誰かの魔力と混ぜないと吸収できないことを説明。
「…」
「そういうわけだから、その手を離しなさい」
「シ、シロ。わたしなら大丈夫だから…」
「ま、待って!そ、それならせめて…」
シロエは恥ずかしそうに視線を逸らしながら
「………ミユと一緒にその……わたしにもして」
「へー…」
「ミユ一人だけで………こんなこと、させたくない………」
「シ………シ…ロ…」
「あ…で、でもミユがわたしと一緒が嫌なら」
「ううん。嫌なんかじゃない」
美遊はクロエの脇を通り過ぎ
倒れているシロエへと跪き
シロエの左手を両手で包み込む。
「ありがとう、シロ。わたしはイリヤかシロ、その二人なら絶対に拒まない」
「ミユ…」
「シロの方こそ、そ、その……わたしと一緒でも」
「う、うん。わ、わたしもお姉ちゃんかミユなら、その……い、いやじゃないから……」
「シロ…」
両者共に恥ずかしがりながら自らの想いを口にする。
それをすぐ横で見ていたクロエはその二人の友情(?)に胸を打たれ───
「…………………」イラァ
───るということはなく
唐突に自らを置いてけぼりにし二人の世界を作られ
少しイラッとくる。
そして
「きゃっ!?」
「ミユ!?」
美遊をシロエの左隣に押し倒し
美遊が悲鳴を上げ、シロエは驚きの声を上げる。
そして
シロエの左頬と美遊の右頬をくっつけるクロエ
「ク、クロそんないきな…んぐっ!?」
クロエに物申そうとする妹の口を塞ぐ。
当然唇で
「シ、シロ!?」
「ん………んあっ………」
「………ふうっ、なーにわたしを蚊帳の外にして二人でイチャついてるのかしら?」
「ク…クロには関係な……んっ、んんんっ」
続いて美遊の反論もやはり唇で塞ぐ。
塞ぎながらも舌も入れて
「………関係ないってことはないでしょ?
っていうかむしろわたしが中心になってるはずだし
なのになんかわたしを悪者みたいにしてくれちゃって」
「そ、それはクロの被害妄そ…むぐっ!?」
「………本当はあと一舐めくらいで危険域は脱してたんだけど
ちょーっとイラついたからガッツリともらうことにするわね♪」
「なっ!?そ、それならもうとっくにやる必要は…んうぅっ!?」
二人に反論を許さずに一方的に言葉を紡ぐクロエ
「当然、覚悟はしてたのよね?自分から言い出すなんて。
むしろされたいのかしら?意外に好きものなのね、ミユは」
「そ、そういうわけじゃ……んぐ…ひゃうぅっ!?」
「シロも。いやじゃないっていうより、されたくてされたくてしょうがないんじゃない?
すっかり受け入れちゃってるじゃない。
純真だからこそ、こういう未知なことに興味津々なのね」
「そ、そんなことあるわけ……ぅん…みゃあぁっ!?」
「ウソ、二人ともやらしい」
「「~ッッ!?」」
クロエはまたしても二人から出た汗を自身の身体に馴染ませる。
その際二人の敏感な部分が擦りつけられ、二人は反応してしまう。
おまけに言葉で責め立て羞恥を煽る。
二人の顔がどんどん赤く染まっていく。
「ん、んんんっ!はぁ…はぁ…ク…クロ…も、もう許して…んあっ……あふ……ひ、う……」
「シ、シロ…!ク、クロ、シロはさっきのでもう…ふぐっ……ん、んんっ……あ、ぅん……」
「「……んんんーーッッ!!!」」
そして
「………ふうっ。とりあえず、この辺りで…許してあげ……る………」
いいかげん限界だったのか、それとも危険域を脱した安堵からか
クロエはパタリと力尽きたように倒れる。
当然
シロエは体力の限界で
美遊はガッツリと魔力を取られ
それぞれ伸びており
後に残ったのは
三人は顔を真っ赤にし涙目となり涎を垂らし
残る一人は満足げな表情で
全身から汗をかき全裸で組んず解れつの状態で横たわる四人の少女
死屍累々である。
そして
「あらまー♪」
「姉さん!」
それを湯船から見ていた二本のステッキであった。
尚、この数分後
「美遊!?シロ!?」
「ちょ、ちょっとあんた達どうしたのよ!?」
士郎のために再び入浴にきたルヴィアと凛
しかしこの死屍累々な状態を見て驚愕する。
ルビーとサファイアから話を聞き安堵と共に呆れるが
この状況を放置し一般人に目撃されるわけにもいかないため
まず真っ先にルヴィアが身内も同然である美遊とシロエを
それに対し凛は残ったイリヤとクロエを
それぞれ回収し自分達に割り当てられた客間へと急ぎ戻るのであった。
設定的に仕方ないとはいえ
2wei!以降だとやっぱりこういう話が増えますね。
クロが悪いんだよ(シャミ子が悪いんだよ風)
………書いた後に気づきましたが、何気に美々の妄想が現実になりましたね。美遊も被害に遭いましたが