プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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転校生

 

 

「オーーッホッホッホ!!」

 

 

金髪縦ロールの高笑いが響く。

 

 

「相手の宝具に恐れをなして逃げまどった挙げ句子供に助けてもらうなど笑止千万!!

とんだ道化ですわね遠坂凛!!」

 

 

そのどこまでもバカにしている言葉に凛は

 

 

「やっかましぃーーッ!!」

 

「ホウッ!?」

 

 

キレて回し蹴りを後頭部に叩き込む。

 

 

「レ、レディの延髄によくもマジ蹴りを!!

これだから知性の足りない野蛮人はーッ!!」

 

「なにを偉そうに!

後ろからの不意打ちのくせにいい気になってるんじゃないわよ!!」

 

 

そしてそのまま殴り合いへと発展する。

そんな時、地面と空が割れ始めた。

 

 

「ル、ルビー!なんか地面が割れて…うわっ空も!?」

 

「あらー。カードを取り除いたので鏡面界が閉じようとしてるみたいですね。

さっさとしないとまずいですよ。

凛さん、ルヴィアさん脱出しますよー。聞いてますかー?おーい」

 

 

しかし二人は喧嘩に夢中で聞いていない。

 

 

「…サファイア」

 

「はいマスター。半径6メートルで反射炉形成。通常界へ戻ります」

 

 

地面に魔法陣が浮かび上がり喧嘩をしている二人を巻き込み一同は鏡面界を後にした。

 

 

……

………

 

 

「ふう。ひとまず一戦終了ですね」

 

「も、戻ってきたの?」

 

 

とりあえず無事に戻れたことに安堵する。

そんな中もう一人の魔法少女がわたしと…特に俯いているシロを見ていた。

 

 

「……?」

 

 

その視線に気づき訝しむイリヤ

 

 

「ち…!この(ワタクシ)が攻めきれないとは…

生意気にも攻撃の精度が上がってきてますわね貴女」

 

「単純なタックルがいつまでも通用するとは思わないことね

来るとわかってれば対応策はある…!」

 

「そこの魔術師のお二人。肉体言語で語り合わないでください」

 

 

ルビーの制止の中、尚睨み合う二人。

 

 

「仲が悪い…ってレベルじゃないねコレ」

 

「いつもこんな感じですよ」

 

 

ここまで険悪だともはや呆れるイリヤとルビー

 

 

「…それで?ルビーを持っている赤い目の子も気になりますが事情は大方察します。それよりもそっちの…」

 

「ええ、そうね。それに関してはわたしも聞きたいわね」

 

 

二人は睨み合うのをやめると俯いている少女、シロエに目を向ける。

 

 

「…いつまで俯いているのかしら?説明が欲しいのだけど?」

 

「…」

 

「あの敵を凍らせた魔術、わたしたちには理解できない術式だったわ。どこであの魔術を習得したの?」

 

「…」

 

「そもそもこの町に魔術師が住んでいるなんていう話は聞いたことがないわ。あんたは何者?」

 

「…」

 

「…そのまま黙っているつもりなら時計塔に連行することになるけど?」

 

 

何を聞いても黙り込むシロエに対し苛つきながら凛が脅しに掛かる。

 

 

「やめて!!シロに酷いことしないで!!」

 

 

話していることはわからないけどシロエに何かしようとしていることは理解したイリヤはシロエを庇い間に立つ。

イリヤの妹を護ろうとする姿にかつての自分の妹を思い出す凛。

余計な感情と頭を振り言葉を重ねようとする。

そこに

 

 

「私情」

 

「ん?」

 

 

イリヤの後ろにいるシロエが閉じていた口を開く。

 

 

「私情に流され大師父より与えられた礼装を喧嘩に使用。同様に与えられた重要任務よりも優先して」

 

 

しかし発された内容は

 

 

「喧嘩は発展し超がつくほどの危険物質であり封印する対象であるはずのカードを使用」

 

 

自らの失態であり

 

 

「結果として礼装の判断により使用はされず、しかしその果てに礼装が魔術師を見限るという魔術師としてはあり得ない事態が発生」

 

 

時計塔にバレたくないものであった。

 

 

「そして礼装は一般人の手に。魔術の秘匿に喧嘩を売るような事態となる。おまけにその重要任務を一般人に肩代わりしてもらう」

 

 

それを無表情で淡々と話すシロエ

 

 

「…わたしを時計塔に連れていくならこれらの内容を洗いざらい全て包み隠さず報告させてもらうけど?」

 

「あんた…。何でそれを知って…」

 

「…脅す気ですの?」

 

 

その場にいなかったはずのシロエの言葉に驚愕しながらも脅している事実に顔をしかめる二人

 

 

「脅す気も何も事実だし、先に脅したのはそっちでしょ?

それにあなたたちが犯した失態を知られればあなたたちもただじゃすまないと思うけど?

理由も完全にくだらない私情だし」

 

 

吐き捨てるように言うシロエ

喧嘩を見ていた時にも思っていたことだが

使い魔として任務よりも自らの感情を優先した二人が心底気に入らないのだ。

その結果こんな面倒な事態になってしまったのだから尚更である。

 

 

「…」

 

「わたしの素性について話すつもりはないけど、別に何か企みがあるわけじゃないのよ?わたしはただお姉ちゃんを護りたいだけなんだから」

 

「…それを信じろと?」

 

「信じてほしいけど納得できないなら───」

 

 

そう言うとシロエの服装が変わる。

青みがかった白を基調とし、どこかの民族を思わせるようなデザインをした服。

頭には帽子を被り、腰には剣を差している。

イリヤ達は知る由もないがそれはシトナイの第三再臨の姿そのものであった。

 

突如として姿が変わったシロエを見て

まるで雪の妖精みたいと場違いのことを思うイリヤ

しかし

 

 

「───殺すしかないね」

 

 

しかしそれは姿が変わると同時に放たれたシロエの絶対零度の殺気により吹き飛んだ。

無論、自分に向かって放たれているわけではない。

しかしもうすぐ夏だというのにも関わらず周囲の温度がシロエの殺気に呼応して一気に冷え込み、空気が重圧となりのし掛かってくる。

 

 

(これ、下手したらさっき戦った敵よりも…!)

 

 

素人ながらもイリヤはそう感じた。

その通りといわんばかりにもう一人の魔法少女も殺気を向けられていないにも関わらずステッキを構え、険しい顔をしている。

それを直接向けられている二人は冷や汗を流しながらもシロエから目をそらさないでいる。

 

 

「シ、シロ…」

 

「…」

 

「…わたしたちを殺しても時計塔から新しく人員が派遣されるだけよ?」

 

「ええ、そうね。だから、あなたたちはカード回収任務の際敵を倒すも受けた傷が大きく名誉の殉職。そういう風に偽装させてもらうわ。

そもそも時計塔は任務優先で人の生き死になんて気にしないだろうしね」

 

「人数差ではこちらに利がありますわよ?」

 

 

金髪縦ロール…ルヴィアが向けられる殺気に抗うように挑戦的な目でシロエを見る。

それに対しシロエはというと、キョトンとした顔になり

 

 

「なにか勘違いしてない?」

 

「…何ですって?」

 

「わたしにとって重要なのはわたしの素性について誰にも知られないこと」

 

「?」

 

「つまり───」

 

 

そして自分の考えを伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───わたしが死ぬことになっても構わないということ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………え?

イリヤはシロエが発した言葉の意味が一瞬よくわからなかった。

死ぬ?…死?

 

 

「シ、シロ何言って…」

 

「勿論最良はあなたたちを殺すことだけど、それが叶わなくてわたしが殺されることになってもわたしとしては構わないの」

 

「…本気、みたいね」

 

 

そう。これは本心である。

シロエにとって一番大事なものはマスター…シトナイである。

使い魔としてマスターに危害が及ぶ可能性が僅かにでもあり、その可能性を自身の命と引き換えに潰すことができるなら、喜んでそれを差し出す。

使い魔としてそれが正しい行動だとシロエは本気で信じている。

 

そして

 

 

「…はあ、わかったわ。とりあえず目的についてはそれで納得しておいてあげる。素性も言わなくていい」

 

「ちょ!?遠坂凛!?」

 

「…そう。よかった」

 

 

そうシロエが言うと殺気が霧散し、姿も元の私服に戻る。

 

 

「そのかわり!カードの回収任務には力を貸してもらうわよ。それが黙殺する最低条件!」

 

「うん。いいよ。わたしとしてもお姉ちゃんを護りたいし」

 

 

シロエがその条件に同意すると

ルヴィアが凛の傍に行き耳打ちをする。

 

 

「わかっていますの?これで何かあったら…」

 

「ええ。責任は私が取る」

 

 

凛がそういう結論に達したのは理由があった。

シロエのイリヤを…姉を護りたいという想いに嘘を感じなかったのだ。

敵の宝具発動時、イリヤと敵の間に割り込んだ。

私達に目撃されるリスクを顧みずに

その行動の目的は姉を護るということ以外ないと思えた。

 

なにより結果的ではあるけれどイリヤだけでなくわたしも助けられた。

その借りを返すという意味合いもある。

 

よって凛はシロエを信じることに決めた。

 

 

「それならいいです。

イレギュラーはありましたが…しかし勝つのは(ワタクシ)ですわ

覚悟しておくことですわね遠坂凛!」

 

 

そう言い放つとルヴィアはもう一人の魔法少女を連れて去っていった。

 

 

……

………

 

 

「…ったくあのバカは…カード回収任務を勝負とはき違えているわ」

 

 

ルヴィア達と別れた凛達は帰路に着いていた。

そんな中、凛はルヴィアのことをぼやいていた。

 

 

「でもそう言う割りには勝負に付き合ってるよね。リンさん」

 

「はあ!?あのバカが仕掛けてくるから仕方なく応戦しているだけよ!」

 

「そう?あれじゃない?」

 

「あれ?」

 

「同族嫌」

 

「ふん!!」

 

 

シロエが言い終わる前にチョップが脳天に落とされた。

 

 

「おぐっ!?」

 

「あいつとわたしを一緒にするんじゃないわよ」

 

「舌、舌噛んだ…」

 

 

舌を出しながら涙目になるシロエ

 

すっかりいつもの調子に戻っていた。

まるでさっきの出来事などなかったかのように

その様子に安堵しつつも、モヤモヤした複雑な気持ちになるイリヤ

 

 

「結局あの子が誰なのか聞きそびれちゃいましたねー。

サファイアちゃんの新しいマスターさんですし気になるところです。

まあ空気的に仕方なかったですが」

 

「…え、何。わたしの所為?わたしの所為だって言いたいの?」

 

「ソンナコトナイデスヨー」

 

「その棒読みからそこはかとなく悪意を感じる…!」

 

 

モヤモヤしている理由はわかっている。

でもそれについて追求するとまたシロがさっきの雰囲気に戻ってしまうかもしれない。

イリヤはそれを恐れて追求することを諦めてしまう。

そして結局モヤモヤをそのままにし会話に入っていくことにした。

 

 

「うーん…」

 

「?どうしたの?お姉ちゃん。」

 

「いやー…何となくの勘なんだけど

あの子わたしたちと同じくらいの歳だったよね」

 

「ですね。それがなにか?」

 

「パターンでいくとこれってさ…」

 

 

……

………

 

 

「美遊・エーデルフェルトです」

 

「はーい。みんな仲良くしてあげてねー」

 

 

次の日、学校の朝礼にて

イリヤの予想通りというべきか

 

 

(マジで来たし…しかも同じクラス)

 

 

内心そんなアニメみたいな展開になるわけが

と思っていたシロエにとっては驚愕の一言であった。

 

 

「席は窓際の一番後ろね。イリヤちゃんの後ろのとこ」

 

「えっ!?」

 

(あーもう。ここまで来るとアニメなのかな?この世界)

 

 

アニメである。(元は

まあそれはさておき

イリヤの後ろの席へと移動する昨日の魔法少女…美遊

 

 

「…」

 

(じー)

 

(な…なんか見られてる!?このプレッシャーはなに!?)

 

(メンチで負けてはいけませんよイリヤさん!)

 

(緊張してる。緊張してる。遠目で見てわかるほど緊張してるのがわかるよイリヤ)

 

 

……

………

 

 

授業が終わり休み時間

ガヤガヤと子供達の声が賑わう。

すると当然

 

 

「さっそく囲まれてますねぇ」

 

「まあ転校生なら当然の光景だよね」

 

 

そう。今日転校してきたばかりの美遊の下に子供達が集まることとなる。

 

 

「いろいろ聞きたいことはあるけど…これじゃ無理だね」

 

「じゃあこっちに聞く?」

 

「こっち?」

 

「はい。代わりにわたしがお話を伺います。」

 

 

イリヤが訝しむと美遊のステッキであるサファイアが現れる。

 

 

「わっ!?」

 

「あらあらサファイアちゃんも来たんですねー」

 

 

このままでは見つかってしまうと廊下の窓際へと移動する。

 

 

「紹介がまだでしたよね。

こちらわたしの新しいマスターのイリヤさんとその妹のシロエさんです」

 

「サファイアと申します。姉がお世話になっております。」

 

「はぁ、ども…」

 

「よろしくねー」

 

 

ステッキが自己紹介を行う光景にシュールな絵面だなぁと思うイリヤ

 

 

「ステッキって2本あったんだね知らなかった」

 

「ええ。わたしとサファイアちゃんは同時に造られた姉妹なんですよー。

魔力を無制限に供給しマスターの空想を元に現実に奇跡を具現化させる。それがわたしたちカレイドステッキの機能です」

 

 

…説明だけ聞くと聖杯みたい

と思いはするが口には出さないシロエ

 

 

「先日まではルヴィア様にお仕えしていたのですが、故あって」

 

「乗り換えたのがあの子ってわけね」

 

「でも美遊さんも大したものですねー。初めてなのにいきなり宝具を使うなんて」

 

「宝具…?」

 

 

話題は変わり宝具の話になる。

 

 

「そうですねー。無事初戦も切り抜けられましたし、お話しましょうか。

…シロさんはもう知ってるかもしれませんけど」

 

「あはは。やだなー。一般人のわたしが知るわけないじゃん。

…次にお前はもしかしてそれはギャグで言ってるのか?と言う」

 

「もしかしてそれはギャグで言ってるのか?…はっ!?」

 

「姉さん…」

 

 

サファイアは二人のやり取りに呆れた声を出す。

 

 

「え、とそれで宝具って?」

 

「はい。わたしたちの目的であるクラスカード

そのカードはなんの前触れもなく突如この冬木市に出現したんです。

異常な魔力の歪みを観測した協会は調査を開始…

今から約2週間ほど前のことです」

 

「2週間…」

 

「魔術協会は2枚のカードを回収し分析をしましたが…

製作者不明、用途不明、構造解析もうまくいきませんでした。

ただひとつわかったのは…

このカードは実在した英雄の力を引き出せるらしい…ということ」

 

「英雄…?」

 

「神話や昔話に出てくるアレですよ」

 

「偉業を成し英雄と認められた者は死後に『英霊の座』と呼ばれる高次の場所へと迎えられます」

 

(まあそんな大層な場所じゃないけどね。ただただ退屈だし)

 

 

転生前にいた何もない空間を思い出し内心苦笑いを浮かべる。

 

 

「そうして英霊と成った者はそれぞれが力の肖像たる武装を持っています。

通常の武具を超えた奇跡を成す強力な兵器…それが宝具です」

 

「わたしたちはカードを介することによって英霊の座へとアクセスし英霊の持つ宝具の力を一瞬だけ具現化することができるんですよ」

 

「昨夜美遊様が敵を仕留めたのがそれです。

刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)

放てば必ず心臓を穿つという必殺の槍です」

 

(刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)…これもやっぱり聖杯戦争の…)

 

「どうもカード一枚に対し英霊ひとりが対応しているようで…ってちゃんとついてきてますかイリヤさん!

もうちょっと続きますよ!」

 

 

横を見るとイリヤが頭から煙を出していた。

 

 

「だっ大丈夫…!7割くらいは理解してるよたぶん…」

 

「簡潔にまとめると

英霊は偉業を成した英雄のことで

宝具はその英霊の武器ってこと

…だと思うよ?お姉ちゃん」

 

「…まあ細かい部分を省くとそうですね」

 

「では続けましょうか」

 

(クール…)

 

「もうおわかりかもしれませんが昨夜戦った敵…

あれもまたカードによって引き出された英霊の力の一部なのです。

いえ英霊そのものと言っていいでしょう」

 

(…そうかなぁ?そのわりに知識にあるライダーより弱かったような…)

 

「とは言えどうやら本来の姿から変質してる上に理性も吹っ飛んじゃってるみたいですけどねー」

 

(ですよねー)

 

「英霊はカードを包むように実体化しており英霊を倒さねばカードを回収できません。

アーチャーとランサーは協会が派遣した魔術師たちによって打倒されたのですが…」

 

(それはそれですごいな)

 

 

協会の戦力を改めて再認識したシロエ

結果やはりバレるわけにはいかないと思うのであった。

 

 

「ライダーについてはそうはいきませんでした」

 

「それは…なんで?」

 

「彼女には魔術がまったく効かなかったのです。

おそらくは対魔力Bクラス以上…

『魔術を無効化する』という概念的な守りを持っていた…はずなんですが」

 

 

そこまで言うとシロエを見る。

 

 

「何故貴女の魔術は通ったのですか?」

 

「さあ?何ででしょう?」

 

 

まあ現代の魔術と神代の魔術じゃ文字通りモノが違うからね。マスターの加護も乗ってるし

言う気はないから黙ってるけど

 

 

「…まあいいです」

 

「そこで白羽の矢が立ったのがわたしたちだったってわけですねー。

魔術に頼らない純粋な魔力射出の攻撃ができますから」

 

「それでいろいろあって凛さんとルヴィアさんがマスターになったわけですが…

まあその後はゴニョゴニョあって今に至ると」

 

「最後すっごい尻すぼみな解説だね…」

 

「すごいはしょった感じがする…」

 

 

というかそういうのって戦う前に話す情報じゃ…

済んだ後だから言わないけど

 

 

「協会が感知したカードの反応は全部で7つ、残りは4枚です。

わたしたちも全力でサポートしますので美遊様と協力してのカード回収にどうかご協力ください」

 

「うん…イマイチ自信はないけど頑張ってみるよ」

 

「一般人のわたしでよければ」

 

「まだ言いますか…

あ、そうそうちょっと聞きたいんですがサファイアちゃん

美遊さんのあの苗字って…」

 

 

話しているうちにミユが近づいてくるのに気づく。

イリヤは気づいていないみたいだけど

 

 

「サファイア、あまり外に出ないで」

 

「いっ!?」

 

 

案の定というかビクッてなったね。

 

 

「申し訳ありませんマスター

イリヤ様とシロ様にご挨拶をと思いまして」

 

「誰かに見られたら面倒。学校ではカバンの中にいて」

 

「あ…あの…」

 

 

イリヤが話しかけようとするもミユはそのまま去っていった。

 

 

「…コミュ力の塊であるお姉ちゃんが話しかけられないって珍しいね?」

 

「いや、なんか…声かけづらくて」

 

「うーん…なかなか気難しい人みたい」

 

 

第三者の声が聞こえ、そちらに振り向く。

そこには教室の扉の影に隠れこちらを見ているクラスの友達

桂美々、栗原雀花、嶽間沢龍子、森山那奈亀

の四人がいた。

 

 

「…何してんのみんな?」

 

「…ストーカー?」

 

「ち、違うよ!?」

 

「観察よ観察!」

 

「美遊ちゃんとお話しようと思ってみんなでいろいろ質問とかしてたんだけどね」

 

「なんかキョトンとした感じで何も答えてくれなくてさー」

 

「そしてしばらくしたら急に立ち上がって…」

 

 

『少しうるさいね』

 

 

「…って」

 

「わあ…」

 

「余裕で想像できるね…」

 

「でもそういうシロも最初は話しかけづらかったよな!」

 

 

美遊の話をしていたら何故か矛先がこちらに向いた。

 

 

「えっ。そ、そうだっけ?」

 

「そうね。イリヤとはすぐ仲良くなれたけど」

 

「同じ顔でここまで違うものかと」

 

「うーん。確かにシロちゃん無口でイリヤちゃんの傍からなかなか離れなかったなぁ」

 

「あー。あの頃のシロ可愛かったなぁ」

 

 

……仕方ないじゃない。

友達なんて作ったことなかったし

イリヤと比べたら誰だってコミュ力雑魚になるもの。

 

 

「でもイリヤちゃん経由で話しかけたら後は速かったね」

 

「うむ。ちょろかった!」

 

「ちょろッ!?」

 

「美遊もシロと同じツンデレってやつか?」

 

「そうね。一度落とせば尽くしてくれるでしょ」

 

「頑張ってフラグ探そうかー」

 

「ウチのクラスは平和でいいねー…」

 

「ほんとだね…」

 

「ちょろい…ちょろい…」

 

 

ひとまずみんなに倣って美遊の観察をすることにしよう。そうイリヤは決めた。

 

 

……

………

 

 

算数の時間

ミユが当てられ黒板の前に立っている。

 

 

「…図より外接半径と線分OBの比はcos(π/n)

内接半径は線分OBに等しい。

このことから外接半径と内接半径の比はcos(π/n)となり面接比はcos²(π/n)

よってこの場合の面接比は4倍…となります」

 

「…いや、あのー…美遊ちゃん?

この問題はそんな難しく考える必要はなくて…

cosとかnとか使って一般化しなくていいの!」

 

「?」

 

「いやそんな不思議そうな顔されても!

もっとゆとりを!心にゆとりを持ちなさい!

円周率はおよそ3よ!文句あんのかコラァーッ!!」

 

 

どうやら学力は高いみたい。

マスターからの知識で理解できる。

でもそれより

 

 

「師しょー!円周率は3.14では?」

 

「シロちゃん!3でいいって言ってるでしょうが!

後、師匠じゃなくて先生!」

 

 

…昔から藤村先生のこと師しょーって呼んじゃうんだよね。

理由は不明。

 

 

……

………

 

 

図工の時間

ミユがピカソのような絵を提出する。

 

 

「こっ…これは…」

 

「自由に描けとのことでしたので形態を解体して単一焦点による遠近法を放棄しました」

 

「自由すぎるわ!つーかキュピズムは小学校の範囲外よ!」

 

「?」

 

「いやだからそんな顔されてもー!」

 

 

美術力もすごいみたい

 

 

「シ、シロちゃん。これは何?」

 

「鹿の死骸」

 

「死骸!?いや自由とは言ったけども!鹿に見えないし、せめて生きている状態を描いて!?」

 

 

知識はあっても芸術はわからない。

ちなみに鹿の死骸なのは生前一番見慣れたものだからである。

 

 

……

………

 

 

家庭科の時間

ここでもミユは高級レストランで出てくるような料理を複数作りだす。

 

 

「いや…だから…

なんでフライパン一個でこんな手の込んだ料理がー!?

しかもウメェェーッ!?

なんちゅうものを喰わせてくれるのかーッ!!」

 

「先生少しうるさいです」

 

 

なんというか万能である。

 

 

「師しょー!出来ました!」

 

「だから先生だって…

…うーん。不味くはないんだけど…美味いかと言われたらそうでもなく…何この微妙な…」

 

 

渡された知識に料理なんてないからね。

仕方ないから化学の知識を代用して作るんだけど

いつもこういう微妙な反応される。

まあ、お兄ちゃんの料理を食べてるからなんとなくわかるけど

 

 

……

………

 

 

体育の時間

 

 

「というわけで頼んだお姉ちゃん」

 

「何がというわけなのか全くわからないんだけど」

 

 

何って?そんなのは決まっている。

 

 

「この調子だと体育…短距離走も得意そうだから一つくらい勝ちたいなぁと」

 

「うん。まあその気持ちはわかるから頑張るけど」

 

 

そんな事言いながらやる気満々であるイリヤ

そして同じ組であったイリヤとミユの番となり

結果

 

 

「ろ…6秒9!?」

 

「スッゲー!!」

 

「イリヤが負けた!?」

 

「お姉ちゃんが走りで負けるところ初めて見た…」

 

「無敵キャラだーッ!?」

 

(あ…ありえないーッ!?)

 

 

イリヤの内心の絶叫と共にミユの観察は終わった。

結果としては…うん。

超ハイスペックである。

 

 

……

………

 

 

「お姉ちゃん。帰ろうよー」

 

「…お願いだからちょっと黙ってて」

 

 

放課後、人影の少ない帰り道にて黄昏るイリヤ

 

 

「いつまでいじけてるんですかイリヤさん」

 

「別にいじけてないよ…

ただ才能の壁ってのを見せつけられたっていうか…」

 

「それをいじけてるというんじゃ…」

 

 

そうしていじけている姉に付き合っていると

件の少女、ミユが通り掛かる。

 

 

「…なにしてるの?」

 

「おや美遊さん」

 

「いやー、お姉ちゃんが短距離走で負けちゃったからいじムグ」

 

 

余計なことを口走ろうとする妹の口を塞ぐ。

 

 

「こ、これはどうもお恥ずかしいところを…

ミユさんにあらせましては今お帰りで?」

 

「…なんで敬語?」

 

「なに卑屈になってるんですかイリヤさん!

美遊さんは同じ魔法少女の仲間です。

学校の成績なんて関係ありません!」

 

 

私は魔法少女じゃないけどね。

 

 

「仲間…そっか」

 

「あなたたちも…ステッキに巻き込まれてカード回収を?」

 

「う…うん。成り行き上仕方なくっていうか

騙されて魔法少女にさせられたというか…」

 

「そう…」

 

「「…」」

 

(かっ…会話が続かない…!)

 

 

ホント珍しいね。イリヤが会話を続けられないって

いやそんなことよりも…

 

 

「…それじゃあなたはどうして戦うの?」

 

「え…?どうして…って?」

 

「ただ巻き込まれただけなんでしょ?

あなたの妹…シロエはあなたを護りたいって言った。

でも、そのあなたには戦う責任も義務もない」

 

「だ…だってルビーが…」

 

「本気で拒否すればルビーだって諦めるはず」

 

「う…うーん…ホントのこと言うとね…

ちょっとだけこういうのに憧れてたんだ。

ホラこれっていかにもアニメとかゲームみたいな状況じゃない?」

 

「ゲーム…?」

 

 

………。

 

 

「うん。まほーを使って戦うとか…ヘンな空間にいる敵とか…

冗談みたいな話だけどちょっとワクワクしちゃうって言うか…」

 

 

イリヤ…ライダー戦の後でもまだ…

 

あ、いやそうだけどそうじゃなくて

 

 

「せっかくだからこのカード回収ゲームも楽しんじゃおうかなーって…」

 

「もういいよ」

 

「…え?」

 

「その程度?そんな理由で戦うの?

遊び半分の気持ちで英霊を打倒できるとでも?」

 

 

その場を去りながら美遊が言い募る。

 

 

「妹が可哀想。

…あなたたちは戦わなくていい。カードの回収は全部わたしがやる。

せめてわたしの邪魔だけはしないで」

 

 

そしてミユは去っていった。

 

 

「な…なんで怒ってるの…?それにシロが可哀想って?」

 

「わかりませんが…なーんか地雷踏んじゃったっぽいですねー。

…それはそうと」

 

「ん?」

 

「そろそろ離してあげないとヤバいと思いますよ?」

 

 

そう言ったルビーの羽の先にはイリヤに口とついでに鼻を塞がれ息が出来ず顔色が青くなっているシロエが

 

 

「わ、わわっ!?ごめん!シロ!」

 

「げほっ!げほごほっ!!…はぁはぁ…」

 

 

涙目になりイリヤを睨むシロエ

 

 

「え、と…大丈夫…?」

 

「大丈夫なわけあるかーッ!!危うく死ぬところだよ!この馬鹿!!」

 

「ばっ!?なによ!元を正せばシロが余計なことを言おうとするのが悪いんでしょー!!」

 

「だからって窒息させていいことにならないでしょうが!?」

 

「無事だったんだからいいでしょ!」

 

「よくない!」

 

「あのー。お二人とも喧嘩はその辺にして速く…」

 

「「ルビーは黙ってて!!」」

 

「(´・ω・`)」

 

 

……

………

 

 

イリヤとシロエが喧嘩しながら帰ると玄関前にセラがいた。

 

 

「あ、おかえりなさいイリヤさん、シロさん。

…喧嘩でもしました?」

 

「それは放っておいて。それよりどうしたの?なんで外に?」

 

「ええとですね…あれを…」

 

 

そう言うと指を家の向かいを指す。

それに促され向かいを見るイリヤとシロエ

そこには豪邸が建っていた。

 

 

「なっ…なにこの豪邸…!?

こんなのウチの前に建ってたっけ!?」

 

「今朝から工事が始まったと思ったら…

あっという間にお屋敷ができあがったんです」

 

「昨日まで民家が並んでいた住宅地が……

……なんということでしょう?」

 

「いやビフォーア○ターでもこうはならないよ!?」

 

 

喧嘩していたことさえ忘れるほどの衝撃を受ける二人

とそこに

 

 

「あ…」

 

「あっミユさん」

 

「えっ?」

 

 

つい先ほど別れたばかりの美遊と鉢合わせになった。

 

 

「「…」」

 

「いや何か喋ろうよ?」

 

「無茶言わないで!?」

 

「…」

 

 

気まずいのか美遊は無言のまま件の豪邸の門を開き中へ入ろうとする。

 

 

「あ!ちょっと!!え?入っていくってことは…

この豪邸…ミユさんの家…?」

 

「…まぁ、そんな感じ」

 

 

そして美遊が中に入ると門は閉じられた。

 

 

「なんだかおかしなコトになってきたね…」

 

「まぁ気まずいのはわかるけどね」

 

「しかし、ついさっき喧嘩別れしたばかりというのに…

なんとも間が悪いというか、カッコつかないですねー」

 

「でもどっちにしても…ね」

 

「うん。今夜また会うだろうしね…」

 

 

そう言うイリヤの手には手紙が握られていた。

放課後、下駄箱にまたしても入れられていたのである。

手紙には

 

 

〈今夜0時、橋のふもとの公園まで来るべし〉

 

 

と書かれていた。

 

 

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