今回でアニメのお話は終わりですが
番外編で時々書くかもしれませんのでご留意下さい。
「ん…ううん…」
衛宮邸
朝日が見え始めたばかりの早い時間
イリヤは自室のベッドにて身動ぎし
「………トイレ」
眠そうに瞼を擦りながら
起き上がる。
そしてトイレへと行くべく
自室から出る。
すると
ガチャ
隣の部屋…シロエの部屋のドアが開き
自身がプレゼントした服を身に纏ったシロエが
中から出てくる。
「あっ、シロ…」
「……おはよう、お姉ちゃん」
「お、おはよう」
「……起こしちゃった?」
「う、ううん!ちょっとトイレに行きたくて起きただけだから!」
「………そう」
今は誰も起きていないほどの早い時間である。
そう。アイリやセラ達も
「え、えーと…」
「…」
出掛ける直前の妹に会ったのは初めてだったため
イリヤは引き止めるべきか見送るべきか迷い
気まずい空気が二人の間に流れるが
「……ルヴィアさんのところに行くから」
シロエは迷うイリヤを置き去りにすると
階段から一階へと下りていく。
「あ…」
イリヤは手を伸ばしたが
結局止めることはできなかった。
…
……
………
みーん…みーん…。
庭にいる蝉の鳴き声が衛宮邸に響く。
時刻は午前10時
日は天辺へと近づき
気温が一気に上昇していく。
「「あつーい…」」
リビングにて
イリヤとクロエが汗をかきながら
机に突っ伏す。
「ねぇ、セラー。冷房ー」
「ダメです!冷房に頼りすぎると身体が弱ってしまいますからね!」
「えー…」
クロエの要求を却下するセラ
すると庭にて
「なんだ。随分だれてるな」
箒を手に掃除をしていた士郎が
家の中にいるイリヤとクロエに
窓越しで話しかける。
「お兄ちゃん…暑くないの?」
「ははっ。家の中の方が逆に暑いかもしれないぞ?
風が吹かないからな」
「へー」
士郎の説明にそういうものなのかと感心するイリヤ
「そうだ。二人とも」
「ん?」
「なに?」
「暇なら手伝ってくれないか?」
…
……
………
「暑いのは変わらないけど…」
数分後
兄から手伝いを頼まれたイリヤは
当然引き受け、庭へと出ていた。
「確かに家にいるよりかはましかも。気分的に」
麦わら帽子を被り、じょうろを手に
木や花に水をやっていくイリヤ
しかし
「ん?」
同じく手伝いを引き受けたクロエの声が聞こえず
イリヤはクロエへと視線を向けると
「…」
じょうろを手にしたまま
ボーッと突っ立っているクロエの姿がそこにはあった。
「ねぇクロ?クロってば?
ボーッとしちゃってどうしたの?」
「ん?別にボーッとなんてしてないわよ?」
「してたよー」
「んー…」
イリヤに詰問されたクロエは少し悩んだ後
「…シロは?またルヴィアのところ?」
妹の居場所について尋ねる。
「え、うん。そうだけど…シロになにか用事?」
「まぁ、そんなところ」
「?」
イリヤから訝しむ目で見られたクロエは
「あー…ほら、今日って暑いじゃない?」
「う、うん…?」
「だからシロに冷気を出してもらって涼もうかなって」
「シロ冷房代わり!?」
「一家に一台。夏には快適」
「なにその家電のようなキャッチコピーは!?」
「さらにはなんと、かき氷まで作れる優れもの」
「通販みたいになってる!?」
「ただしシロップは作れないからそれは別売りで」
「そして微妙にせこい!?」
誤魔化しを入れる。
さらに
「なによー、文句ばかりつけて。
セラに冷房止められてるんだから仕方ないじゃない。
それにイリヤこそ、外だからって本当は暑くてたまらないんで…」
クロエは水の入ったじょうろを振りかぶり
「…しょ!!」
イリヤへと中身の水をぶちまける。
「きゃっ!?」
水しぶきがイリヤへとかかる。
「ちょっとクロ!なにすんの!?」
「あはは!冷やしてあげてるのよー!」
怒ったイリヤはクロエの用事のことなど
頭から吹き飛ぶのであった。
ーーーーーーーーーー
一方その頃
カチャカチャ…
場所は変わり
エーデルフェルト邸
そのキッチンにて
「ミユ、この皿は?」
「それはそっちの棚の三段目」
メイド服姿のシロエと美遊が
運び込んだ段ボールから食器を取り出し
棚へと移動させていた。
そう。再建が終わったエーデルフェルト邸にて
エーデルフェルト邸の再建が無事完了し
オーギュスト、凛、美遊、シロエの四人は
再建が完了したばかりで中にはなにもない屋敷に
家具や日用品の配置を行っていた。
とはいえ
美遊とシロエはまだ子供であり力も弱く
それでいてシロエに至っては倒壊する前の屋敷の内部の配置など当然知らないため
二人一組で行動し、重量の軽い物を扱っていた。
「…キッチンは終わり?」
「うん。次は…」
二人はキッチンの配置を終わらせ
次の部屋へ行こうとすると
「二人共、少しよろしくて?」
ルヴィアがキッチンへと入ってくる。
「…?」
「なんでしょうか?」
「再建も無事に完了しました。
そのお祝いにパーティを開こうと思ってますの」
「パーティ…ですか?」
突然の提案に驚くシロエと美遊
「ですが、まだ荷物が…」
「残りはオーギュストと駄メイドにやらせますわ。
大まかにはもう終わりましたし」
オーギュストと凛にはこのまま物の配置を行い
美遊とシロエにはパーティの準備を行ってもらう。
その指示をするべくルヴィアは来たのだ。
「美遊はパーティの準備を
シロは…」
ルヴィアが美遊とシロエに指示を出す。
しかし
「家に戻って、ご家族を招待してきなさい」
シロエの動きが停止する。
「ル、ルヴィアさん。招待はわたしが」
「屋敷の中をまだ把握しきれてないシロエでは
一人でパーティの準備をするのは難しいはずですわ」
「そうですけど…でも」
「美遊」
美遊が庇おうとするも
ルヴィアの眼差しに押し黙る。
「できますわね?シロ」
パーティを行う理由が再建祝いということも
その準備がシロエ一人では難しいということも
決して嘘というわけではない。しかし
先日の夏祭りの際のシロエの名を出した時の士郎の反応
それを見たルヴィアは
シロエが士郎と…家族となにかあったのではないか。
という推測していた。
故に
この役割分担はそれを確かめるためでもあった。
しかし
ルヴィアの指示にシロエは
「………はい。問題ありません」
いつもと変わらない無表情で
機械的に命令を受諾するのであった。
ーーーーーーーーーー
「次は裏庭だね」
場面は戻り衛宮邸
裏庭にも水を撒くべく
クロエと共に裏庭へと回るイリヤ
「水道とホースがあるから楽だよー」
「ふーん…」
そうして裏庭へと回ると
「え…?」
「ん…?」
そこには
「あら?イリヤちゃんにクロちゃん。やっほー」
水着を身に纏ったアイリとリズが
ビニールプールに浸かっていた。
「「なにしてんのママ?」」
「だって今日は暑いじゃない?
それにイリヤちゃん達は海に行ったけどママ達は行ってないし」
「実はわたしたちの水遊び欲も刺激されていた。だからこうなった」
「リズまで…」
「呑気なことねー…」
アイリとセラの動機に
呆れるイリヤとクロエ
「気持ちいいわよー。イリヤちゃん達も入らない?」
「わたしは遠慮しとくわ。なんか狭そうだし」
「えー?そこがいいのにー」
「わたしは、お手伝いを済ませてから考えようかな」
「お手伝い?」
「庭の木の水やり!」
イリヤはリズの疑問に答えながら
水道へと近づき繋がっているホースを手に取る。
「ホース使うよ?」
「そういえば水が少し減ってきたわね」
イリヤがホースの使用をアイリ達に伝えると
アイリはビニールプールの中の水かさを気にする。
「イリヤ、ついでに補給よろー」
「はーい」
イリヤは水道の蛇口を捻り
ホースから水を出しビニールプールの中へと水を補給する。
「おお…。新鮮な水…効く」
リズは気持ちよさそうに表情を弛めると
「最…高…」
ビニールプールの縁へと突っ伏す。
「寝たわよ…。本当にフリーダムよね」
「あはは…」
イリヤが苦笑いを浮かべていると
「なっ!?なにしてんだ!?」
裏庭へとやってきた士郎が
アイリとリズの水着姿を不意打ちで目にし
顔を赤らめる。
「あら、シロウ。あなたも一緒に入る?」
「な、なに言ってんだよ…」
「…前言撤回!」
クロエは大好きな兄が来たことにより
テンションが上がり士郎の方へと駆け出し
左腕にピッタリくっつく。
胸を押し付けながら
「お兄ちゃんが一緒ならわたしも入ろうかな!」
「はあ!?」
「狭いところでぎゅぎゅってするのも楽しそうよね!
お兄ちゃんと一緒なら♪」
明らかに兄を誘惑しようとしているクロエの姿に
「ちょっと!?なにしてんのクロ!?」
いつもの如くイリヤがクロエを止めるべく
ホースを放り投げ、駆け出す。
すると
ズボッ
ホースの先端がリズの豊満な胸の中に入る。
「ん…」
寝ているリズは特になにもせず放置する。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。
狭いプールの中なら可愛い妹の体のどこを触っても事故だから♪」
「お、俺はなにも言ってないぞ!?」
「クロ!あなたねぇ!!」
誘惑するクロエと顔を赤らめる士郎
クロエに噛みつくイリヤ
「あらあら……」
そんな三人の子供達の様子を
微笑みながら見ているアイリ
しかし
(シロちゃんも一緒なら……)
口を利いてくれない末っ子がここにいれば
完全にいつも通りの光景になるのにと
微笑みを浮かべる裏側で憂うアイリ
と、その時
グググ……ボッバァーン!!
とリズの胸の中に溜まっていた水が限界に達し
と水を噴水の如く上へと噴き上げ
サッパァーン!!
とイリヤ達三人は水を大量に被る。
「「「…」」」
さすがの三人も言い争うのを止め
顔を引きつらせる。
そしてイリヤが視線をリズへと戻すも
「zzz…」
「…」
寝息を立てるリズの姿に
なにも言えないイリヤ
そこに
(……………ふふ)
イリヤ達の背後から
アイリが気配を殺しながら迫る
そして
「………えいっ!」
「「わっ!?」」
イリヤとクロエの背を
勢いよくプールへと押した。
ーーーーーーーーーー
一方
セラは家の中で
一人黙々と掃除をしていた。
すると
きゃーっ!?
という少女二人分の叫びが聞こえ
「ん…?」
セラは首を傾げる。
「この声は…イリヤさん達ですね」
今度はなにをやったのかと呆れながらも
様子を見に行くべく掃除の手を止めた。
その時
ピンポーン
と家のチャイムが鳴る。
「はい!少々お持ちください!」
来訪者に声を掛けながら
セラはイリヤ達の様子を見に行くのを止め
玄関へと向かう。
そして
ガチャ
と玄関のドアを開くと
そこには
「あなたは…」
ーーーーーーーーーー
バッシャーン!!
場面は戻り裏庭では
イリヤとクロエが
ビニールプールの中へとその身を突っ込み
顔をプールの底へと沈めていた。
「…ちょっとママ!?」
「…なにすんの!?」
イリヤとクロエの二人は同時に振り向き
母親へと苦言を呈する。
「いいじゃない♪愛する子供達と水遊びしたいの♪」
「「えぇー…」」
母親からの言い分に
げんなりするイリヤとクロエ
「ほら、シロウも」
「あ、いや…なんていうか、その…。
せめて、着替えてから…」
士郎はイリヤとクロエの二人から目を逸らし顔を赤らめる。
「「?」」
そんな兄の様子に訝しむイリヤ達は
視線を自身の身体へと向ける。
するとそこには
水を頭から大量に被り
身体のラインがくっきりと浮かび
薄手の服を着用していたため
いろいろと透けてしまっている
自身の姿を確認する。
「きゃあっ!?」
「あらー♪」
イリヤは赤面し身体を丸めながら
両腕で自身の身体を隠し
クロエは楽しげな声を上げ
隠す様子は全くない。
正反対の反応を見せるイリヤとクロエ
すると、そこに
「騒がしいですね。いったいなにが…」
セラも裏庭へとやってくる。
そして、この惨状を見たセラは
「シーローウー…」
拳を握り締めながら
とりあえず士郎へと近づく。
そして
「な、なんでさ…ごふぁあっ!?」
セラの拳が顔面へとめり込む。
完全にとばっちりである。
…
……
………
「まったく…水遊びならちゃんと水着を用意してからにしてください!」
「「は、はい…」」
私服のままプールへと浸かっているイリヤとクロエを叱るセラ
左脇にはボロボロになり気絶している士郎を抱えている。
そんな時だった。
「…お話し中、失礼します」
聞き慣れた声がセラの背後から聞こえる。
セラの後ろに目を向けると
「シ、シロ…」
メイド服を身に纏った
無表情の末っ子が…シロエがそこにはいた。
「…楽しんでいるところ邪魔してしまい申し訳ありません。
先程セラ様にお知らせしました招待に対する返答をしていただきたいがために割り込ませてもらいました」
その違和感しかない
どこまでも他人行儀の話し方に
顔をしかめる一同
「…セラ?招待っていうのは?」
「は、はい!
なんでも向かいのルヴィアさんの屋敷の再建が完了したため
それを祝ってお昼にパーティを開くそうなので
もしよろしければと」
アイリからの問いに焦った様子で報告するセラ
「すみません。先程のやり取りでシロさんを待たせていたことを忘れてしまって…」
「そう…」
セラからの報告を受け取ったアイリは
シロエへと目を向け、優しく微笑む。
「お知らせありがとね、シロちゃん。
お仕事、ご苦労様」
「………仕事ですので」
およそ家族に対する言葉遣いではないが
口を全く利いてくれないよりかは遥かにマシである。
アイリは笑みを絶やさないようにしながら返答する。
「招待、受けさせてもらうわね」
「わかりました。ではルヴィアお嬢様にはそのように」
アイリからの返答を受け取ったシロエは
一礼し、その場を後にしようとするが
「…シロちゃんもプールに入っていかない?
気持ちいいわよ?」
アイリからの言葉に
シロエは一瞬足を止めるも
「………仕事中ですので、失礼します」
アイリからの誘いを断り
今度こそ、その場を後にする。
「…」
アイリはなんとも言えない表情で
シロエが消えた先をしばらく見た後
「お昼まではまだ時間があるから
みんなでプールで遊びましょうか!」
重くなった雰囲気を吹き飛ばすように提案する。
「ほら!セラも一緒に!」
「わ、わたしもですか!?」
「そうよ?入りたくないの?」
「う……。み…水着を持ってきます」
「ほらほら!イリヤちゃんとクロちゃも!」
「い、いやまだ手伝いが…」
「その格好のままでもいいけど…」
「着替えてきます!!」
セラとイリヤがアイリから急かされている間は
クロエは
(再建が終わったということは………。
時間がもうないわね…)
再建が終わった。
それが意味することを考え
シロエが消えた先をジッと睨みつけるのであった。
…
……
………
時間は進みお昼時
イリヤ達はプール向かいにある
エーデルフェルト邸の庭にあるテラスとやってきていた。
テラスには長机やパラソル、食事用の丸テーブルと椅子が設置されており
長机の上には豪華な料理がこれでもかと並べられていた。
「ようこそいらっしゃいました」
「いらっしゃいませ、皆さん」
「…いらっしゃいませ」
ルヴィア、美遊が笑顔で
シロエは表情を固くし出迎える。
ルヴィアはドレスを着用し
美遊とシロエは私服となっている。
「こ、こんにちはー」
妹から母親達への他人行儀の姿に
思うところがあるものの
イリヤが挨拶を行う。
「再建、おめでとうございます。
この度はお招きに預かりまして…」
「いえいえ今まで騒音などでご迷惑をお掛けしましたから、せめてお昼くらいは振る舞わせて下さいませ」
続けてセラがルヴィアに挨拶し
「ホームパーティなんて久しぶりねぇ」
「招待大歓迎」
アイリとリズがのんびりとした様子で
笑みを浮かべる。
その一方で
美遊がシロエを連れて
イリヤとクロエへと近づく。
「外でご飯を食べるのってなんか楽しいよねー」
「…そうだね」
「うん」
「結構いろいろありそうねー」
いつもの四人となり
先までの他人行儀の様子はなくなったシロエ
その妹の様子にイリヤは複雑な気持ちになるが
それについて言及したりはしなかった。
一方で
士郎がルヴィアへと
お礼を言うべく近づく。
「ありがとうな。ルヴィア」
「!!」
その士郎の屈託のない眩しい笑顔に
(ああ…シェロ、シェロ!なんという…)
ルヴィアは士郎から少し離れ
トリップし始める。
(家族ぐるみの付き合い!アットホーム!!
これは最早人生を共に歩んでいる間柄だと言っても過言ではありませんわ!!!)
過言だと思います。
「うふ…うふふ……うふふふふふふふ………」
ルヴィアが笑い声を上げていると
「おおっと!!」
「ふぁっ!?」
メイド服姿の凛が
飲み物を入れたグラスを載せたお盆を持ち
ルヴィアへと衝突する。
ルヴィアは尻餅をつき
さらに飲み物が入ったグラスを一つ頭から被る。
「なにをするんですの!?」
「あ、ごめーん。あんたの縦ロールで目が回っちゃってさー、真っ直ぐ歩けなかったわー(棒)」
「この…白々しい…!!」
ルヴィアは凛へと噛みつこうとするも
凛はそれを無視し鼻歌を歌いながら士郎へと近づく。
ルヴィアはこのままでは士郎の前に出れないと急ぎ顔を拭うべくハンカチを探す。
「なんていうか…相変わらずだな…」
凛はお盆に残っているグラスを士郎へと渡す。
「おお、悪いな」
「べ、別にバイトだからやってるだけよ。
あんたの為にやってるんじゃないんだからね!」
そんな二人の様子を見ていたイリヤ達
「うわぁ…テンプレ…」
「ミユとシロはお仕事はもう大丈夫なの?」
「うん。給仕の仕事は凛さんが…。
ちょっと、申し訳ないけど…」
「…ルヴィアさんからお姉ちゃん達と食事を楽しむように言われたから」
「そうなんだ!じゃあ一緒に食べようね!」
「「うん」」
イリヤの笑顔での言葉に
美遊とシロエが返事をする。
そして
「ともあれ、みんな揃いましたわね」
ルヴィアがハンカチで顔を拭った後
「それじゃあ、パーティの開始といたしましょう!
皆様!存分にお楽しみください!!」
パーティの開始を宣言し
「「「かんぱーい!!」」」
一同は乾杯を行う。
そして始まるパーティー
リズは骨付き肉にかぶりつき
セラは衛宮邸の食事に生かすべく料理をメモし
「あー…ん!」
美遊はフォークを使い
イリヤの口へとグラタンを持っていき食べさせ
「もぐもぐ……んー!!」
イリヤは美味しそうに笑顔を浮かべ
頬を抑える。
それを見た美遊もまた笑顔を浮かべた後
続けて
「シロも…食べよう?」
「………うん」
隣で無表情で黙り込んでいるシロエにも
イリヤと同じように食べさせる。
そんなこんなで
各々が食事を楽しんでいると
「やっほー」
アイリがルヴィアと凛に話しかける。
「あ、どうも!」
「ご満足いただけていますか?」
「ええ。とても美味しいわ。
ごめんなさいね、シロのお礼もまだしてないのに」
シロのお礼
メイドとして世話になっている件である。
「いえ!お礼だなんて、とんでもありませんわ!
シェロのお母様!!」
「なにかお返しをしたいところなんだけど…。
えーと…」
アイリが自身のポケットを探る。
「いえ、本当にいいですから…」
「ええ、お気になさらず…」
アイリからのお礼を断ろうとするルヴィアと凛
しかし
「じゃーん!偶々持ってたシロウの写真くらいしかないわ!!」
スイカにかぶりつく士郎
お腹を出し寝ている士郎
果ては
風呂上がりでタオル一枚の士郎
絶対に偶々ではないと思われる。
「「!!!」」
心が大きく揺れ動くルヴィアと凛
「いるかしら?」
そんなアイリの問いに
「…いえ、お母様。やはりこういうのはよくないと思いますわ。昨今はプライバシーの問題がいろいろと…」
ルヴィアがその言葉とは裏腹に
右手が士郎の写真へと伸びる。
「この手はなによ!?」
当然、凛がルヴィアの手を抑える。
「このままでは風に飛ばされてしまうかもしれませんし、悪用されないように保護させていただこうかと」
「見え透いた嘘を…!
あんたが一番悪用しそうだわ!」
「いい子ぶるんじゃありませんわ遠坂凛!
あなただって…!」
いつもの喧嘩を始める二人に
「罪な子ねぇ。シロウ」
元凶のアイリは微笑みを浮かべるのであった。
一方、その士郎はというと
「さーて、次はなにを食べさせてもらおうかな」
次の料理をお皿に取るべく
長机の前へとやってくる。
その時
グサ!!
「?」
刃物の音が聞こえ
士郎が訝しみながら
音が聞こえた方向へと目を向けると
そこには
シャキン
指の間にナイフを挟み
複数のナイフを両手に持ったオーギュストの姿がそこにはあった。
オーギュストの前には大皿に載った巨大な骨付き肉
それを
ズバズバズバズバッ!!!
超速で切り分けていた。
「…さ、さーて次はなにを」
士郎は見なかったことにし
オーギュストから背を向ける。
しかし
「私の肉は食べられないと?」
圧迫感のある声に
士郎は
「いえ、いただきます」
即座に回れ右をする。
ズババババババッ!!!
再びナイフを振るうオーギュスト
士郎にナイフの切れ味を見せつけるかのように
「お気をつけ下さい。
このナイフは獰猛なアメリカバイソンすら一撃で絶命させる切れ味を持っています。
それに比べればお嬢様に近づく悪い虫…おっと失礼、人間なんて一溜りもありません」
「そ、そう…ですか…」
そして
士郎はタワーのように高く積み上げられた肉を載せた皿を手に
げんなりとした表情でオーギュストから離れるのであった。
一方で
場面は戻り小学生組
「「…」」
ボーッと無表情で皆の様子を見ている美遊とシロエ
(…はぁ)
そんな二人の様子に内心溜め息を吐くクロエ
そこに
「…よいしょっと」
料理を取りに行っていたイリヤが
シロエ達のテーブルに戻ってくる。
「なんだかいいね、こういうの。
平和って感じで」
「…」
「……うん」
無反応のシロエと
かろうじて返事をするものの表情が固い美遊
「?」
二人の様子に訝しむイリヤ
しかし
「忘れたの?イリヤ。
屋敷の再建とだいたい同じくらいになるって話してたでしょ」
「あ…」
クロエの説明で思い出すイリヤ
再建と同じく工事も完了し
そしてカード回収の作戦に移ると
「ええ。パーティが終わったら作戦会議をしますわよ」
ルヴィアと凛が近づき
イリヤ達へと話しかける。
「美遊と遊ぶ約束があるとか言って残ってもらえる?
いよいよ動くわよ」
イリヤ、美遊、クロエの三人は真剣な表情となり頷き
シロエもまた真剣な表情ではあるが
「…」
凛を見るその目は
警戒の色が混ざっていた。
…
……
………
時間は進み
アイリ達は家へと戻り
エーデルフェルト邸の一室にて
「はい。じゃあ、お祝いムードはここまでということで」
ホワイトボード前の凛が手を叩き
注目を集め
「八枚目のカード回収作戦会議!」
会議の開始を宣言する。
パチパチと拍手するイリヤとクロエ
「屋敷の再建と同時に工事も完了。
地中深くに眠っていたカードの元へとようやくたどり着いたわ。
あとはこれまで通り、鏡面界にジャンプしてカードを回収するだけ!」
凛がホワイトボードに現実と書かれたトンネルから
鏡面界と書かれたトンネルへと矢印を引っ張る。
「…バゼットさんはどうなったんですか?」
「…うん。それが問題その1ね」
バゼット戦後
バゼットに手を貸すよう要求した件について
美遊が尋ねる。
「彼女も同行することにはなったわ」
凛の言葉に手を貸してくれることとなったのかと
イリヤ達は思ったが
「でも仲間じゃない。
どちらが先にカードを手にするか…競争相手ってところね」
「…」
「えー?拘束を解いてあげたのに?」
シロエが無言のまま眉を吊り上げ
クロエが不満そうに話す。
「わたしも正直業腹だけど
シロのことを話してない以上
上はそもそもバゼットが敗けたとは考えていないからね…。
八枚目の情報で戦闘を中断させたと考えているわ」
つまりは
バゼットが敗けたとは考えていないため
まだまだこちらが優勢であり
凛の要求を呑む必要性も
上層部は感じていないのである。
「競争かぁ…」
イリヤが溜め息混じりに呟く。
「なら、とにかく速攻ね!
あっという間にケリをつけて、あの筋肉女よりカードを回収!」
「事はそう簡単じゃないわ」
クロエが方針を告げるも
凛がそれには問題があると伝える。
「どういうこと?」
「問題その2。
八枚目のカードはこれまでの比じゃないほど魔力を吸ってる」
「…地脈の本管の真ん中に現れたからね」
「…ええ。しかも二ヶ月半という長期間にも渡って
途方もない量の魔力を吸収し続けている」
「地脈が収縮するほどの吸収量…ですか」
「………いったいどんな化け物になっているのか想像もつきませんわね」
敵の強大さに
深刻な空気が一同の間に流れる。
しかし
「ですが……ならばこそ
クロさんの仰ったように一瞬で終わらせるべきでは…?」
「!」
「…その通りね」
ルビーの提案に
賛同する凛
「正体不明にして、おそらく過去最強の敵…。
そんな相手に取れる作戦は一つだけよ」
そして
凛が作戦を告げる。
「最大火力をもって初撃で終わらせる!!」
凛のその作戦に
しばし無言となる一同
張り詰めた空気が部屋に満ちる。
そんな中
「………あ、あの…」
イリヤがおずおずと手を挙げる。
一同の視線がイリヤへと集まる。
なにか質問でもあるのかと
しかし
「質問、っていうわけじゃないんだけど……」
「イリヤ…?」
「?どうしたのよ?」
言いにくそうにしているイリヤに
訝しむ美遊と
先を促す凛
「その………」
そして
イリヤが提案をする。
「シロは……もう戦わない方がいいと思う」
最近の文字数から今回の話が短く見える…。
最近の文字数がおかしいだけですけど