ギスギスした本編に耐えきれず番外編です。
それはさておき
今回の話もクロエが衛宮家に来る前の話です。
ただしクロエが現れる前ではなく
ドッジボールの後くらいです。
「…」
場所は衛宮邸
その浴室前の脱衣室
「……………」
入浴を済ませたタオル一枚のセラが
無言で目を見開き
視線を自身の真下へと向けている。
「…………………………」
視線の先には………体重計。
セラは自身の体重を見て絶句しているのである。
暫し絶句したセラは
体重計から降りた後、考え込み
そー…
と片足つま先立ちでゆっくりと
出来る限り体重が掛からないように乗る。
セラがそんな無駄な抵抗をしていると
「セラ太った?」
いつの間にか脱衣室へと入ってきていた
もう一人のメイドであるリズが
体重計の数値を見ながら
セラが目を逸らしたかった事実をあっさりと口にする。
「な…ッ!!」
「え!セラ太ったの!?」
「セラまで太っちゃったの?」
「ちょっ!?」
「ちょっとシロ。
そしてなんでわたしの方を見てるの?」
「だってお姉ちゃん。あの時、重か」
「また噛みつかれたいの?シロ」
リズの言葉を皮切りに
脱衣室へと乗り込む姉妹
自らの体重事情がどんどん周りに広まり
慌てるセラを尻目に
クロエを捕まえる際のやり取りを持ち出した妹に
イリヤは歯をカチカチと鳴らしながら威嚇する。
そんな姉の威嚇にシロエはここまでにしとこうと大人しくなる。
「もうっ!そこまで言うなら体重比べてみる?
ちょうど体重計も出してあるし!」
「えー?(同じ身体なんだから体重だって同じでしょうに…)」
結果などわかりきってると
シロエは姉の提案に乗り気ではない。
しかし
「あ!シロ、自信ないんだー?」
「む…。いいよいいよ、やろうじゃないのよ」
イリヤの煽りにのるシロエ
のってしまう。
そして
その結果
「う……嘘………」
「ほら!シロの方が重いじゃない!!
シロのポッチャリー!!」
シロエの方が5キロ程重く
イリヤは勝ち誇り
あの時の仕返しとばかりにシロエの悪口を言うが
「…」
「…シロ?」
いつものように言い返されず
呆然としている妹に
イリヤの悪口が止まる。
そんな時だった。
「ん、なに?セラとシロが太っ…」
士郎が脱衣室を覗いた。
次の瞬間
メキドゴォッ!!!
士郎の顔面にセラの回し蹴りが
腹部にシロエの右ストレートが
それぞれ突き刺さり
士郎は壁へとめり込む。
尚、セラはバスタオルのまま回し蹴りを放ったため
どことは言わないが丸見えとなっている。
そして
意識を失い、倒れる士郎と
士郎の無惨な姿とセラの見えてはいけない部分が見えてしまい
ビビりながらも顔を赤らめるイリヤを尻目に
(く…。同じ身体なのにどうして…!?
これが運動が得意なお姉ちゃんと本ばかり読んでたわたしとの差だとでもいうの!?
マスターと同じ姿でこんな…ッ!)
シトナイと同じ姿で
とんでもない醜態を晒してしまったと
猛省するシロエと
(迂闊…。あるまじき油断…ッ!
ここ十年維持し続けた体重がこんなあっさりと崩壊するなんて…!)
十年間という長きの間
不変であった体重が崩れてしまい
同じく猛省するセラ
そして
二人は視線を交わらせ
意を決した表情で頷く。
「………認めない」
「え?」
「いったい誰が許可したのでしょう?
わたしたちは入国を許した覚えはありません」
「シ、シロ?セラ?」
二人の反応に
戸惑うイリヤだが
二人はどんどんヒートアップしていき
「自分の身体は自分で護る!」
「
「目指すはお姉ちゃんの体重!!5キロ減ッ!!」
ダイエットの開始を宣言する。
…
……
………
セラとシロエがダイエットを決意した翌日
「パンチ!」
「パンチ!」
「「キック!!」」
セラとシロエがリビングにて
テレビの前でDVDを見ながら
テレビから流れる指示に従い
拳や蹴りを虚空へと繰り出す。
「シ、シロー…。お菓子あるんだけど、こっちに来て一緒に…」
「やだ!」
「セラもうっとーしい…。後ネタが古い」
それをソファで座りながら見ているイリヤとリズ
手にはポテチが握られており
イリヤは遠慮しているがセラは容赦なく頬張っている。
「普段からお姉ちゃんの方がお菓子たくさん食べてるのに…」
「そ、そんなこと言われたって…」
「セラも間食して…。
見てないで参加したらどうですか?」
「い、いやー…わたしは、いいかなー…」
「んー…。わたしも大丈夫。だってホラ」
リズもまたイリヤ同様に断りながら
胸を大きく張り
「栄養貯めとく袋あるし」
胸部にあるその大きな袋を見せびらかす。
結果
「キック!!」
「お」
「パンチ!!」
「よっと」
セラの蹴りとシロエの拳がリズを襲うが
リズは余裕そうに受け止める。
「セラ、シロ。痛い…」
「ふふふ…。胸のことは成長期だから大丈夫だとしても、いくら食べても大丈夫って…?」
「不思議だわ…。どうして姉妹でこうも違うのかしら」
リズがセラとシロエに苦言を呈すが
二人は聞いていない。
二人の威圧感が増していく。
「しかし贅肉!!所詮は贅肉なのよ!!」
「そう!!それはただの脂肪の塊!!!
つまり、そこに栄養がいったとしても太ってることに変わりはない!!!
それどころか肩こりを考慮すると害でしかない!!
だから、羨ましくなんてない!!!」
「その通りです!!一刻も早くソイツも強制送還すべきです!!」
「ふ、二人共。圧が、圧がすごい」
「セラシロ怖い…」
詰め寄るセラとシロエに
少し引くリズとイリヤ
そして
「隊長!!わたしたちに力をー!!」
「脂肪の塊に打ち克つ力をー!!」
「セラーッ!?シローッ!?」
「ん。受けて立つ」
隊長(DVDに映っているエクササイズしている人)を盲信しながら
リズへと繰り出されるセラの蹴りとシロエの拳
それらを弾いていくリズ
そして、ただオロオロしているイリヤ
「ただい…うおおッ!?何が起きてるんだこれは!?」
帰宅した士郎がその意味不明な光景に
驚愕するのであった。
…
……
………
またある日の衛宮家の夕食
「えーと…セラさん。
このちんまりした夕食は……」
「精進料理です。これで栄養は十分摂れます」
食卓には
少ないご飯と味噌汁
冷奴やきんぴらごぼうなど
只管低カロリーのものが並ぶ。
「そんな〜…」
「…」
シロエはもちろんのこと
ダイエットをしていないイリヤや士郎も
同じメニューであるため
不満そうな声を上げるイリヤ
そんな姉を見たシロエは
「…セラ。お姉ちゃん達まで巻き込むのは、違うと思う」
「シ、シロ…」
「む。家族なのですから一蓮托生なのは当たり前でしょう?」
「セラ」
セラの反論に
シロエはまっすぐにセラを見つめる。
その表情は珍しく真剣でふざけている様子が一切ない。
「確かにセラはお姉ちゃん達の家族ではあるけれど
それ以前に…主と従者、だよね?」
「っ!?」
つまりは
従者の都合に主を巻き込むなと
そんな考えは従者失格もいい所であると
遠回しにそう言っているのである。
それが伝わったセラは
「……失礼しました。作り直してきます」
なにも反論出来ずに
席を立ち、イリヤ達の食事を作りにキッチンへと向かう。
「あ…シ、シロとセラの分も」
「お姉ちゃん。わたしたちはダイエット中だから」
「そ、そうだけど…」
そして
イリヤはもちろんのこと
士郎やセラ達も気づけなかった。
『セラはお姉ちゃん達の家族』
それは、まるで
シロエ自身はそれに含まれていないということに
…
……
………
その後
シロエとセラは
「200メートルダッシュ10本!!」
「ダッシュ10本!!」
堤防を全力で走り込み
「パンチ!」
「パンチ!」
「「キック!!」」
「ポリポリポリポリ」
自宅では
DVDの指示に従い
拳と蹴りを繰り出し
「リズゥ!!」
「後ろでこっちを見ながらポッ◯ーをボリボリ食べないでよ!?
食べるなら別の部屋で」
「そんなのわたしの自由」
「「ムガァッ!!!」」
時にはその拳を
リズに向かって繰り出し
(尚、全て捌かれた模様)
そんな生活が一週間続いた。
そして
ピッ
衛宮邸、脱衣室にて
セラが体重計へと載り
体重計の電子音が響く。
隣にはシロエもいて
セラはバスタオル一枚
シロエはパジャマを着ている。
シロエ、セラの順で入浴を行い
入浴を済ませたシロエは既に体重を計り終え
現在は今まさに風呂上がりのセラの体重を計っているのである。
そして、結果は
「ふふふ…。やっと…やっとお姉ちゃんと同じ体重になった…」
シロエは目標である
5キロ減を達成し
イリヤと同じ体重となっていた。
さらに
「おめでとう…ございます…シロさん…。
わたしは…元の体重まで…後750グラム…。
ふふ…体脂肪率はむしろ前より下がりました…」
セラも目標に届いていないものの
もう少しで届きそうであった。
「セラも…順調だね」
「ええ…。どうせならこのままシロさんと同じく5キロぐらい減らしましょうか…」
「そう…だね。わたしもこのままお姉ちゃんを追い抜いて…」
「「うふふ…」」
二人は仄暗い笑みを浮かべる。
しかし
(はぁ…なんでしょう。
身体は軽くなったはずなのに頭は重いわ…)
「?セラ…?」
セラの様子に
シロエが訝しんでいると
「あ。シロ、セラ」
「あ、お兄ちゃん…」
士郎が脱衣室へと入ってくる。
シロエは入ってきた士郎に反応するものの
セラは反応しない。
その顔色は青ざめている。
「…なぁ、そろそろいいんじゃないか?
顔色も悪いし、これ以上は…」
「わたしは…別に平気だし」
「いや、シロもそろそろ…」
士郎がシロエを説得しようとしている。
その時だった。
「シロ…ウ…?(あら…?なんだか…視界が白く──)」
セラの視界が白くなっていき
ドサッ…
と士郎を押し倒すようにセラが倒れる。
衝撃でバスタオルが外れる。
「!」
「セッ…セラ!?」
うわぁ。やばいやばいやばい…!!
と、士郎は
気絶しているセラの下敷きになる形で倒れながらも
接触している全裸のセラの
その感触に、その温もりに
動揺し顔を赤らめる。
「…お兄ちゃん。嬉しがってないで早く服を着せるなりベッドに運ぶなりしてあげなよ」
「ばっ!?か、勘違いするなシロ!?
俺は嬉しがってなんて」
冷ややかな視線を向ける妹に
弁明をしようとする士郎
すると
「…ハッ!?」
殺気を感じ
脱衣室の入口へと勢いよく振り返る士郎
すると、そこには
ゴゴゴゴゴ…
と重圧を放つ
涙目になりながら金槌を手に握り
入口から覗き込んでいるもう一人の妹
イリヤの姿があった。
「…………違うぞ?」
「……シロ。お兄ちゃんは…」
「……うん。お姉ちゃんの想像通りだよ。
お兄ちゃんは周りに女性しかいないこの家の状況に耐えられずにとうとう…」
「シロ!?誤解だってわかってるよな!?」
「しかもわたしの目の前で…見せつけるように」
「見せつけてねぇ!?さっきからシロの視線が冷たい!?
イ、イリヤ落ち着け!!これはシロの出たら…いだーーーッ!!?」
ゴチン
という大きな音と
士郎の悲鳴が
衛宮邸に響くのであった。
…
……
………
「無理しすぎ」
士郎への制裁(?)が終わった後
イリヤとシロエはリズを呼び
気絶しているセラを
セラとリズの自室へ運び
服を着せた後ベッドへと寝かせていた。
リズが団扇をセラへと仰ぐ。
「セラ大丈夫ー?」
「もー…。体力が落ちてる時に長湯なんてするから…」
「…長湯した方が新陳代謝が上がって体重も減りやすいと思うけど」
「それで身体壊したら元も子もないでしょ」
シロエの意見にイリヤが苦言を呈すが
それにダメージを受けたのはシロエではなく
「面目ありません…。
体重管理どころか体調管理もできないなんて…」
見慣れないセラの弱っている姿にイリヤは
「……ねぇセラ。もうやめよ?」
セラにダイエットをやめるように言う。
「…」
そんなイリヤの姿に
シロエは一瞬、目を細め無表情になるが
イリヤ達はセラの説得に
セラはイリヤに注目し
誰も気づくことはない。
「さっきも言ったけど…
いくらダイエットのためだからって身体を壊してちゃ意味ないよ。
それに気づいてる?
ダイエット始めてからセラずっと眉間に皺寄ってて…あんまり笑わなくなってた。
そういうの…駄目だと思う…」
イリヤの説得に
(笑わなく……か)
普段から笑顔の仮面を被っているシロエが
思うところがあり、なんとも言えない表情となる。
そしてその一方でセラは
(……確かに、思考にも行動にも余裕がなくなっていた。
毎日毎日体重計の数値ばかり見て…代わりに
イリヤの説得は的を得ていると
セラはそう感じる。
さらに
「それに───
いつも通りの料理が食べたいな」
「?シロさんに指摘されてから料理はそのままのはずですが…?」
「ううん。違うよ。
わたしが一番美味しいって思うのは、やっぱり
「…!」
──愚かしい。
たかが数キロの体重に振り回されて…
「…シロさんに諌められて
そしてイリヤさんにも教えられるなんて
これじゃ教育係失格ですね」
イリヤの説得に
心を打たれたセラは
ベッドの上で正座し
イリヤへと向き直る。
「ご心配をお掛けしました。お嬢様。
ダイエット期間は本日で終了。
明日からは…
「うんっ」
セラの言葉に笑顔になるイリヤ
そして
「シロも!いいよね?」
妹にもダイエットをやめるように言うイリヤ
しかし
「…わたし、無理してないもん」
「シロ…」
先のイリヤの『家族』という発言
それを聞いたシロエの胸には
チクリ、と痛みが走っていた。
しかし、いつものことだと
抑え込み全く表には出さなかったが
それが災いし素直に頷くことができない。
そしてさらに言うのなら
「…実際にわたしはセラと違って倒れてないし
学校とかでもいつも通りだったと思うけど」
「それは…そうだけど」
「それにこの程度慣れてるし…」
「え?」
「…なんでもないよ」
『猟犬トケ』としては
時期が悪く獲物に遭遇すらしなかった時も
当然、主から餌を絶たれ
絶食した状態で狩りに出るなど
日常茶飯事であったため
この程度のダイエットなど
シロエにとっては生温いことこの上なかった。
(少量だけどご飯は出るし暴力もない。
あの頃に比べれば、この程度全然大したことない。
……暴力に慣れてきたら熱湯とか掛けてくることもあったし)
セラが倒れる程のダイエットにも関わらず
シロエのみ平気だったのは
そういった理由があったからである。
『猟犬トケ』の記憶を
シロエが掘り返していると
「……シロ」
姉から呼びかけられ
シロエは記憶を掘り返すのをやめる。
「やっぱりよくないよ。子供のうちからダイエットなんてしたら…」
「したら…?」
「身長が伸びなくなっちゃうよ?」
「!?」
「一緒にダイエットしていたわたしが言うのもなんですが
その………胸も小さいままの可能性が」
「!!?」
「ん。セラみたいになっちゃう」
「!!??」
「シロさん?なにショックを受けてるんです?
それにリズ!また貴女は…」
無論シロエにも説教をしたいところではあるが
ショックを受けている様子から仕方なくスルーし
大元であるリズへと噛みつくセラ
「うぐぐ………だ、だって……だって……。
痩せないと…また、お姉ちゃんに馬鹿にされちゃうもん……」
「シロ……」
シロエは俯きながら唇を尖らせ
涙目になり肩をプルプルと震わせる。
そんな妹の様子に
イリヤはゆっくりと近づく。
そして
ギュ…
と妹の両手を
優しく包み込む。
そして
イリヤはシロエと至近距離で視線を合わせる。
「ごめんね。シロだって女の子なんだから気にするに決まってるのに…酷いことを言っちゃって」
「…」
「シロの言う通り本当にまだ大丈夫なのかもしれない。
けどね、そうだとしてもわたしは……シロにダイエットをやめてほしいと思ってる」
「……どうして?」
「上手く言えないけど…今のシロの雰囲気がね。
ダンスの練習をしていた時の…絶対にやらなくちゃいけないって
そういう感じになっていってる気がするの」
ダンスの練習
それはシロエが放課後に屋上にて
ダンスの居残り練習をしていた件である。
誰にも言わずにたった一人で
身体を限界以上に酷使していたが
幸いにも運動会前日にイリヤと美遊が気づき説得することで
事なきを得た。
イリヤが運動会前日の妹の言葉を思い出す。
『わたしはわたしに求められた役割を全うする。
そこにわたしの好き嫌い…意思なんてものを考慮する必要性はない。
ただ考えるべきなのは───目的を達成することだけだよ』
絶対にそうしなければならないという
よくないなにかに取り憑かれているかのような
妹の怨念じみたあの様子を
そして
あの時程、酷くはないものの
今のダイエット中のシロエからも
似たような雰囲気をイリヤは感じ取っていた。
「わたし、シロの…今のシロの様子、好きじゃない」
「お姉ちゃん…」
……確かに
ダイエット中、いつも頭の中に浮かぶのは
『猟犬トケ』の
マスターに拾われる前の記憶だった。
そしてそれは
多分、食事を制限した所為…なんだと思う。
ダイエットの最中
シロエの笑顔は剥がれておらず
その言動もいつも通りのものではあったが
『道具』としての
強迫観念にも似た怨念じみた思考へと徐々に染まっていき
そしてその危うい雰囲気が
だんだんと外へと出てきてしまっていたのである。
「……もう目標の…わたしの体重には届いたんでしょ?
なら、あとは増えないように少し気をつけるくらいにしよう?
それくらいならわたしも……協力するから。
だから……お願い。シロ」
シロエは握られている姉の両手が
微かに震えたのを感じた。
もしもここで
意地を張り、断ったのなら
泣き出してしまいそうだと
シロエは覚った。
故に
「………わかったよ。わたしもダイエットはもう…やめる」
「!うん!」
「………お姉ちゃん」
「?」
「その………ごめんなさい。
体重で、揶揄ったりして」
「!!
う、ううん!いいの!シロがわかってくれたなら
わたしは、それで…」
イリヤは妹の謝罪を受け入れ
笑みを浮かべる。
そして
リズはそんな姉妹の様子を見て
うんうんと満足げに頷き
セラは
「…」
なにかを抱えているであろうシロエを
無言で眺めているのであった。
…
……
………
セラとシロエがダイエットの終了を決めて
一時間後
「というわけでダイエット終了記念!
セラとシロにとって一週間ぶりのちゃんとした夕食だ!
いっぱい作ったから遠慮なく食べてくれよな!」
士郎が満面の笑顔で迎える。
食卓には美味しそうな料理がこれでもかと並んでいる。
イリヤ達は士郎に促されるままに食卓へとつき
豪勢な夕食を摂り始める。
「ああ…久しぶりですね。動物タンパク…」
「んまんま」
久しぶりの肉料理に
セラが涙目になりながら口に入れ
リズは山盛りにしたご飯を片手に口へと料理を頬張る。
「豚の角煮に麻婆茄子に焼き餃子…なんだかすごいね」
「……豚の角煮453kcal、麻婆茄子171kcal、焼き餃子209kcal。
これにご飯と汁物を加えると約一人前のカロリー量が」
「そんな具体的な計算なんてしないの。
明日少しだけ運動すればいいじゃない」
「そうだぞシロ。たまにはいいだろ?」
シロエがカロリーを算出しようとすると
イリヤからストップが掛かり
士郎からも説得され
ダイエットの終了を宣言した手前もあり
シロエはおずおずと食べ過ぎないように意識しながら食べ始める。
末っ子の食べ始めた様子を見て笑顔を浮かべるイリヤと士郎
「そうですね。通常業務をしていれば自然と体も動きますし
たまにはこういうのも…」
シロエのカロリー予想を聞いていた時は
顔をしかめたセラであったが
イリヤと士郎に同調し
餃子を口に運ぼうとする。
しかし
(…………カロリー?
それに…たま、には…?)
セラの脳裏に電流が走る。
そして
「シロウ…。週二回の貴方の夕食当番…。
ここ最近ずっと脂ものじゃありませんでしたか…?」
「え、そうだっけ?」
セラの問いかけに
士郎が記憶を掘り返す。
すると
「ああ、そうか。最近ちょっといい北京鍋買っただろ?それ使いたくてさ。
自然と中華とかそっち系の料理になっちゃってたかも…」
確かに中華…即ち脂ものが多くなってたかもと認める。
認めてしまう。
結果
ガタン
セラが椅子から立ち上がる。
「セラ…?」
セラは俯いており表情は見えないが
士郎は重圧を感じ遠慮がちに声を掛ける。
しかし
「おかしいと思ったんです…。
わたしは常に栄養価とカロリーを計算しながら料理していました。
わたしの料理で太るはずがないんです」
セラはゆっくりと
幽鬼の如く机を迂回し士郎へと近づく。
「迂闊でした…。貴方の料理は計算外にしていた…」
「セ…セラ…!?」
「貴方が…」
セラは士郎を手の届く位置まで近づく。
その手にはいつの間にかフライパンが握られている。
そして
「わたしたちに脂肪を密輸した犯人だーーーッ!!!」
「セヴァーッッ!!?」
バッカァァァン!!!
と士郎の顔面へ
フライパンをフルスイングで叩きつける。
「で、でも中華は意外と野菜がいっぱい摂れてヘルシー…ゴバっ!?」
士郎がセラへと意見しようとするも
セラは聞く耳を持たない。
フライパンを叩きつける。
「お兄ちゃん…。女性ばかりの食卓でカロリー計算をしていないのはどうかと…」
「い、いやシロ!俺だってちゃんと栄養価はもちろんカロリーだって計算してるぞ!!
現にシロは太っていたわけじゃないし
セラだっておかわりのしすぎで食べ過ぎてただけ…だばあッ!?」
セラのフライパンが止まらない。
(………太ってなかったって…わたしの身長、お姉ちゃんと変わらないんだけど。
でも………そっか。その手があったか)
シロエは士郎のフォローに納得できないものの
思いついたとばかりに両手をポンッと叩く。
「わたしが痩せるんじゃなくてお姉ちゃんの体重を増やせば…」
「んー?今なんか聞き捨てならない案が聞こえた気がするなー?」
「キットキノセイダヨー」
「わかりやすい嘘をつかないの!!」
「お姉ちゃん!わたしの目を見て!!これが嘘をついてる人の目だと思うの!?」
「思うよ!?すっごいニヤニヤしてるもん!?」
姉の言葉にシロエはくるりと背を向けると
目薬を数滴自身の両目へと入れる。
そして再びイリヤへと向き直り
「グスッ…酷いよ!お姉ちゃん!!」
「目薬で泣いてるふりをしないの!
というか目薬で遊んじゃダメでしょ!!
その目薬を渡しなさい!!」
「えー?そこは三分間待とうよ」
「?なんで三分間なの?」
「…」スッ
「??目薬をこっちに出して…渡してくれる」
「バルス!!!」
「目がぁ!?目がぁーッ!!?
ってわたしはム◯カ大佐じゃなーい!!!」
某天空の城の
三分間待ってやる。
と余裕そうに主人公達を追いつめた◯スカ大佐の姿が
イリヤの頭に浮かぶ。
シロエが元通りの雰囲気に戻ったからか
いつも以上にイリヤのノリがいい。
尚、そんな平和なやり取りをしている間にも
士郎はセラにしばかれている。
「セラ、世界には食べたくても食べられない子供達が…」
「リズお姉ちゃん、それ今する話?」
「お姉ちゃん。
『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない』
っていう言葉があるんだけど
つまりは逆説的にお菓子は主食として成り立つということなんだよ。
だから夕食と一緒にお菓子も食べよう」
「え、そうなの?やったー。じゃあお菓子食べよう!
…とはならないよ!?絶対そういう意味じゃないでしょ!?
あからさまに太らせようとしてるよね!?
それで丸め込まれる程、私は子供じゃない!!」
…
……
………
数日後
衛宮家の脱衣室にて
「ねー…。シロー…」
「…」
「毎日計るのはやりすぎだって…」
「……増えないように協力するって言った」
「言ったけどー…」
ダイエットこそはやめたものの
毎日風呂上がりに体重を比べる姉妹の姿がそこにはあった。
「月に一回とか…」
「…」
「せ、せめて週に一回とかに…」
「………今日も体重差は、なし」
「シーロー…」
尚、シロエの几帳面さのお陰か
姉妹の体重に差が出ることは今後一切なかった。
FGOのプロフィールより
イリヤ:身長133㎝ 体重29㎏
シトナイ:身長133㎝ 体重34㎏
シロエもシトナイと同じ体重なので
イリヤよりも重いという結果になりました。
(この話からはイリヤとシロエの体重は同じになりますが)
つまりシロエの読書や士郎の料理が原因というわけではなく
単純に元となっているシトナイがイリヤよりも重
シトナイ「な に か 言 っ た ?」
※後書きはここで途切れています。