プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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今回は短めになりました。




受肉

 

 

「シロ!待って!」

 

 

冬木市深山町の上空

美遊に先行する形で飛行していたシロエへと呼びかける。

 

 

「少し速い。落ちついて」

 

「…」

 

 

美遊の呼びかけに

シロエはなにも返さずに無言である。

そんなシロエの様子に不安になる美遊

しかし

シロエは速度を緩め

美遊と並走する。

安堵する美遊

 

 

「美遊様………シロ様。

あまり近づき過ぎないように…」

 

「わかってる」

 

「………」

 

 

シロエと美遊の前方には空を駆ける漆黒の船

サファイアの注意喚起に

美遊はもちろんのこと

シロエも忠告を受け入れ

ある程度、距離を保ちながら船を追う。

 

 

「……明らかに、一直線に円蔵山に向かっていますね」

 

 

サファイアが船のルートから

行き先が完全に円蔵山であることを告げる。

 

 

「シロ様………その………

『大聖杯が眠っている』というのは、どういう…」

 

 

エーデルフェルト邸での

シロエとの別れ際のやり取りから

少し気まずそうにしながらもサファイアが尋ねた。

その時

 

 

「シロ!ミユ!やっと追いついた…」

 

「!イリヤ…」

 

「…」

 

 

二人を追いかけて

同じく飛行していたイリヤが追いつき

シロエはなんとも言えない表情をした。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「…聖杯戦争?」

 

 

一方その頃

地上では凛達が

リムジンとバイクに乗り込み

深夜の街を疾走しイリヤ達を追いかけていた。

リムジンには凛、ルヴィア、クロエの三人が

バイクにはバゼットとカレン先生が

それぞれ乗っている。

 

 

「そう。アインツベルンが10年前に起こした『願望器』降臨儀式。

今回の事件は…その残骸が招いたと見られているようね」

 

 

カレン先生が

今回の一連の事件

その真相について

聖堂教会の見解を伝える。

 

 

「でも、違った。

少なくともクラスカードは……

わたしたちの……アインツベルンの聖杯戦争には無関係だった」

 

 

それをクロエが否定する。

その際、シロエの

 

 

『なにもわかっていないくせに知った風な口を利くあなたが嫌い』

 

 

という言葉を思い出し

 

 

(今の…説明しているわたしを見たらまた………嫌われるのかしらね)

 

 

とクロエの胸に痛みが走るが

それを表に出さずに説明を続けていく。

 

 

「………聖杯戦争は10年前に不完全な形で終結。

聖杯は成ることなく

術式は半壊したまま今も大空洞に眠っている」

 

 

クロエの淡々とした説明に

 

 

「聖杯戦争がこの土地で起こったということ!?

ありえないわ!それほど大掛かりな儀式を冬木の管理者(セカンドオーナー)である遠坂に知られることなく………ッ!!」

 

 

待ったを掛けようとするが

 

 

『…アインツベルン、遠坂、マキリ。

御三家が運営していた聖杯戦争』

 

 

シロエからもたらされた情報を思い出し

凛の言葉は途中で途切れる。

 

 

「…そう。聖杯戦争を運営していたのは、なにもアインツベルンだけじゃなかったはず。

遠坂もなんらかの形で関与していたのでしょうね。

リンは…先代からなにも知らされていなかっただけ」

 

 

凛が唇をきつく結び

顔を俯かせる。

 

 

「……いずれにせよ、それは終わったことよ。

問題は今、起こっていること」

 

 

クロエが既に終わった聖杯戦争の話題を打ち切り

今、起こっていることについて話題を変える。

 

 

「では、アインツベルンの聖杯戦争は無関係だと?」

 

 

バゼットがカレン先生へと問いを投げかける。

 

 

「教会は10年前からずっと大空洞を監視しているわ。

術式の起動は観測されていません。

そしてアインツベルンの聖杯戦争は、英霊の召喚にカードなんて用いない」

 

 

以上のことから

()()()()()()()()聖杯戦争とは違うということがわかる。

 

 

「もうだいたい予想はついてるんじゃないの?

ねえ、ルヴィア」

 

「………つまり貴女はこう言いたいのですね」

 

 

クロエの考えがルヴィアへと伝わる。

 

 

「アインツベルンのものとは別に…もう一つの聖杯戦争が存在する───…!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

場面は戻り

敵を乗せた漆黒の船

その船がとうとう円蔵山の上空へとたどり着いていた。

すると

船の底に無数の宝具が展開され

それが

 

ドッガアアアァァァ!!

 

イリヤ達が見ている中で

山へと落とされる。

そして

 

 

「………!!」

 

「こんなの…めちゃくちゃだよ…!!」

 

「地表が…蒸発して大空洞がむき出しに…!!」

 

 

山の一部が削りとられ

地下にあった大空洞が姿を現す。

影は大空洞へと飛び降りながら

槍を取り出し、その手に持ち

 

ゴギャ!

 

大空洞の底へと突き刺す。

すると

 

 

「!?地面が割れて…地下に…なにか!?」

 

 

現れたのは…巨大な魔法陣であった。

 

 

「あれは…!!」

 

「そんな、どうして…()()()()()()()()()()…!?」

 

 

その魔法陣を見たシロエと美遊は

それぞれ表情を険しくさせる。

 

 

「魔法陣…!?大空洞の地下にこんなものが…!!」

 

「途方もなく巨大で複雑な術式です…!!

……?ですがなにか…この術式、見覚えがあるような…?」

 

 

驚くイリヤと

同じく驚きながらも訝しむルビー

そんなイリヤ達を余所に

影は魔法陣の中心へと降り立つ。

すると

泥が湧き出し渦となり天へと昇り

泥の渦は影を呑み込み、影は見えなくなる。

 

 

「あいつ…!!」

 

 

影がなにをしようとしているのか

即座に看破したシロエは

氷柱を複数生成し

それを妨害するべく敵のいる渦へと向けて放つ。

 

 

「シロ!?」

 

 

シロエの突然の攻撃に

驚く美遊

しかし

渦を守るように巨大な盾が現れ

 

ドドドッ!!

 

氷柱はその巨大な盾へと突き刺さる。

巨大な盾は氷柱が突き刺さり皹が入っているものの

貫通はせず未だ健在である。

先の地下トンネルでの戦いと違い

速射性を優先したのが災いし氷柱に込められた魔力が足りない。

 

 

「チッ!」

 

 

シロエはそれを理解し

舌打ちしながら大剣を取り出す。

さらに

 

 

「ッ!」

 

「イリヤ!?」

 

 

シロエに続きイリヤまでもが

ルビーを構える。

 

 

「ミユも手伝って!!

あいつを魔法陣の外に出す!!」

 

「二人共、危険ですよ!

交戦はダメだと凛さんにも言われたでしょう!」

 

「わかってる…でも!!」

 

「……説明は省くけど、アレを許したら事態はさらに悪化する」

 

「!」

 

 

止めようとするルビーに

シロエが大剣を構えながら反論する。

敵がなにをしようとしているのか

イリヤはシロエのように理解してはいないものの

直感で確信していた。

今、止めなければ取り返しがつかないことになる、と

それが伝わった美遊もまた意を決した表情で頷きサファイアを構える。

 

シロエは構えた大剣へと

膨大な魔力を込める。

そして

 

 

極大斬撃(マクスィマール・シュナイデン)!!!」

 

 

大剣を振り下ろし

今までよりもさらに巨大な魔力の刃を放つ。

シロエの最大出力である。

巨大な盾と魔力の刃がせめぎ合うが

 

…ザンッ!!

 

シロエの魔力の刃に軍配が上がり

盾は真っ二つになる。

さらに

 

 

斬撃(シュナイデン)!!!」

 

 

シロエよりも威力は劣るものの

イリヤの魔力の刃が放たれ

 

 

「最大出力…!!放射(シュート)!!!」

 

 

それと同時に美遊の

最大出力の魔力弾が放たれる。

 

ボゴッ!!

 

イリヤの魔力の刃と美遊の魔力弾が

シロエが破壊した盾を通り抜け

泥の渦へと直撃する。

 

 

「あいつは…ッ!!」

 

「まだ…渦の中に…!!」

 

 

イリヤと美遊の攻撃は

シロエの攻撃よりも威力が低く

渦に阻まれ敵へと貫通こそはしなかった。

しかし

 

 

「でも、渦が晴れた!!

これなら直接…!!」

 

 

イリヤと美遊の攻撃が功を奏し

泥の渦が途切れ、敵の姿が露わになる。

そして

 

 

「敵を、押し出す!!」

 

 

イリヤが露わになった敵に向かって飛び出す。

 

 

「ッ!?おね…ッ!!」

 

「イリヤ…ッ!!」

 

 

シロエが飛び出したイリヤへと手を伸ばしかけ

美遊もまたイリヤの行動に焦った声を上げる。

 

 

(早く…この()()を止めなくちゃ…!!)

 

 

そんな二人を尻目に突撃し

イリヤは敵へと接触する。

 

 

「んくっ…!!」

 

 

早く、早く、早く…!!

 

警告を鳴らし続ける直感に

イリヤは焦りながら

敵を一刻も早く魔法陣の外へと退けるべく

力一杯に敵を押す。

その時だった。

 

ザザッ…

 

 

(───えっ…!?)

 

 

イリヤの目の前で

敵の姿がぶれる。

 

 

(なに!?これって…まさかもう、間に合わなかっ───)

 

 

そして

 

ズルン

 

と敵である影の中から

 

 

「たは…?」

 

「あら?」

 

 

金髪の少年が押し出される。

 

 

「うやああああ!?」

 

 

イリヤと金髪の少年は

ゴロゴロともつれ合いながら転がる。

 

 

「─────ぇ」

 

「な…なにが…!?」

 

 

突如として現れた金髪の少年

そんな予想だにしていなかった事態に

呆気に取られるシロエと

驚愕する美遊

渦の方へと目を向けてみると

 

 

「ガ…アッ」

 

 

敵である影は

身体が途中でちぎれ

本体であるカードが露わになっているが

未だに健在であった。

しかしそれが確認できた瞬間には

泥の渦は再び影を呑み込み視認できなくなる。

 

 

敵は渦の中に健在…!!

押し出しは失敗?

なら、アレは…!?

 

 

「イリヤ!?」

 

 

様々な疑問が頭の中に浮かぶも

イリヤの下へと走る美遊

 

 

「……ッ」

 

 

逆巻き続ける泥

その危険性を理解しているシロエは

泥の渦にも注意を払いながら

美遊から一歩遅れてイリヤの下へと向かう。

一方で

 

 

「いっ…いったい何が起こったの…!?」

 

 

無我夢中だったため

何が起きたのかも把握できていないイリヤ

咳き込みながら身体を起こす。

すると

 

ムニ…

 

 

(あれ…?なんか手にやわらかいものが…)

 

 

イリヤの左手の手のひらに伝わる感触

それはまるで人肌のようにやわらかく

イリヤはムニムニと握る。

すると

 

 

「な…!?」

 

「イッ…イリヤ…それ…ッ!」

 

 

イリヤの下へとたどり着いたシロエと美遊

しかし

そうして視界に映った金髪の少年と

そして、なにより

そのとんでもない状況に絶句する。

 

 

「へっ?」

 

 

そんなシロエと美遊の声に

イリヤは目の前の状況をようやく把握する。

 

 

「いったー…」

 

 

突如として現れた金髪の少年

その瞳は赤く

まだまだ幼いものの非常に整った顔立ちをしている。

無論それだけではなく

その金髪の少年は

 

 

「キミさぁ、もうちょっと優しくしてくれないかなぁ」

 

 

全裸であった。

そして

さらに言うなら

 

 

「あ、その左手のことも含めてね」

 

 

イリヤの左手が

少年の股間へと伸びており

即ち

イリヤが先程握ったものは───

 

 

「◆▲▷◇◆☆■□◀▽☆★◁◀○△!!?」

 

 

自身が握ったもの

それを理解してしまったイリヤは

半狂乱となり魔力弾を目茶苦茶に乱射する。

 

 

「うわぁ!ちょっとちょっと!!

いきなりソレは酷くない!?」

 

 

金髪の少年は冷静になるように

イリヤへと呼びかけるが

冷静になれるわけがない。

 

 

「なんだよもー。

叫びたいのはこっちだっていうのにさー」

 

 

けッ…結局のところ

 

 

「ど…どういう…ことなの…?」

 

 

間に合ったのか

間に合わなかったのか

 

 

(さわっちゃったさわっちゃったさわっちゃった。

握っちゃったよーーーー…!!)

 

 

この結果をどう判断すればいいのでしょう…。

 

 

顔を真っ赤に涙目になり

目がぐるぐると渦巻いているイリヤ

この珍妙な状況に未だ唖然としている美遊

そして

 

 

「──────」

 

 

目を見開き

金髪の少年を凝視している

シロエであった。

 

 

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