プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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覚悟はしていたつもりだったのですが
低評価押されるとモチベがガクッと下がりますね……。
といった、投稿期間が空いた言い訳をしているにも関わらず
書き終えて文字数を確認してみたら、20000字をまたしても超えており
脳内が宇宙猫状態になりました。




ツヴァイフォーム

 

 

ずっと、心のどこかで

シロなら大丈夫って

そんなことを思ってた。

だって………強かったから。

ミユやクロよりも

リンさんとルヴィアさん、バゼットさんよりも

そして…わたしよりも、ずっと…

誰よりも………強かったから。

だから

シロなら一人でも大丈夫って

わたしの心配なんて…助けなんていらないんだって

そんなことを…思ってた。

そんなわけがないのに。

シロだって

傷つけば、血だって出る

傷つけば、痛い思いをする

弱いところのある普通の女の子なのに。

心に、ぽっかりと

大きな穴が空いてしまったかのよう。

………お風呂でのママの言葉が蘇る。

 

 

『あの子のことがわかった時には

拒絶せずにあの子の手を掴んであげてほしいの』

 

 

掴んで、あげられなかった。

疑って…しまった。

信じて……あげられなかった。

あんな声………聞きたくなかった。

あんな顔…………させたくなかった。

護らなくちゃいけない、わたしの……………妹……………。

 

 

「シロ……………死んじゃったの……………?」

 

 

地面へと両膝をつき座り込んでいるイリヤが

シロエが消えた地面を見つめながら

否定してほしいかのように

涙声で呟く。

 

物心がつき始めた頃から、ずっと一緒の日々を過ごし

イリヤからしてみれば、双子の妹のような存在であり

そういった意味ではクロエ以上に

自身の半身と言っても過言ではなかった。

 

 

「違うよ」

 

 

そんなイリヤの呟きを

否定する声

声の主は子ギルであった。

しかし

 

 

「あれは言ってたじゃないか。

自分は最初から元々いなかった、って」

 

 

……………。

 

 

「シロエ・フォン・アインツベルンなんて人物は存在しない。

どの時代、どんな世界であっても」

 

「……………て」

 

 

ぽっかりと大きく空いた

心の穴に

湧き上がってくるものを感じる。

 

 

「今までがおかしかったんだ。

君の隣に妹として、あれがいた今までがね」

 

「やめて」

 

 

これは………怒り?

 

 

「そして、その今までだって

あれは君達に胸の内の全てを明かしたことは

一度たりともなかった」

 

「うるさい」

 

 

誰に対しての…?

目の前のこの子………だけじゃない。

この子と─────

 

 

「君に妹なんて最初からいなかった」

 

「黙って」

 

「そう。全てはただの───」

 

 

イリヤの語気が

次第に強くなっていき

そして

 

 

「───『虚構』だったんだよ」

 

「ふざけ…」

 

 

顔を上げ、勢いよく立ち上がり

イリヤの怒りが爆発しそうになった。

次の瞬間

 

ガギン!!!

 

魔力の刃を展開した美遊が

子ギルへと斬りかかったが

子ギルは障壁を形成し

美遊の魔力の刃を受け止める。

 

 

「……シロを、返して」

 

 

美遊の顔色は青褪めたまま

目には涙の跡がうっすらと残っており

焦燥しているようであった。

 

 

「さっきから言ってるじゃないか。

他でもないあれ自身が望んだことだよ?

シロエなんて人物は最初から」

 

「そんなの絶対に認めない!!

シロは確かにここにいた!!!」

 

 

放たれる魔力弾

繰り出される魔力の刃

先の子ギルの口を塞ぐべく放たれたそれよりも

明らかに激しくなっている美遊の攻撃だが

子ギルは障壁を使い

美遊の攻撃を防いでいく。

 

 

「そもそもさ、返してもらってどうする気?

封印は完成した。あれの肉体はもう死体も同然なのに」

 

 

子ギルの問いかけに美遊は耳を貸さず

障壁をなんとしても砕くべく

美遊の攻撃が苛烈さを増す。

しかし

障壁に皹が入るものの

突破には至らない。

そして

 

 

「あ、もしかして…」

 

 

美遊のその明らかに焦燥している様子から

子ギルが理由を察する。

 

 

「自分がこの世界に来なければ

あれは普通の子として生を送れたのに、とか思ってる?」

 

「ッッ!!!」

 

 

図星を突かれた美遊が

歯を強く食いしばる。

 

 

「そんなの気にしなくてもいいのに。

どちらにしても破綻してたと思うよ?

あれがよりにもよってこの世界で、誰にも吐き出さずに」

 

「黙れ!!!!!」

 

 

美遊がカードケースへと手を伸ばし

『セイバー』のカードを取り出す。

 

 

夢幻召(インスト)…」

 

 

夢幻召喚(インストール)を行おうとした。

次の瞬間

 

バリィン!!!

 

泥を封じていた

天まで伸びる巨大な氷柱

それが破壊され

中にあったドーム状の泥の渦と

泥で形作られた巨腕が解放される。

そして

 

 

「!?」

 

 

動き出した巨腕が今度こそ

美遊を鷲掴みにする。

その衝撃により

美遊が取り出した『セイバー』だけでなく

カードケースに入っていたカード全てが

地面へと散らばる。

 

 

「ぐ……ッ!!っく………!」

 

 

美遊は呻き声を上げながらも

巨腕から逃れようともがく。

 

 

「ミユ!?」

 

 

美遊へと急ぎ近づきながらも

イリヤは思い出してしまう。

 

 

『…()()()()()()()()この氷が解けることはない』

 

 

その氷が砕けた、ってことは

シロは本当に─────

 

 

シロエの明言により

生死不明となったセイバー戦以上の絶望が

イリヤと美遊を襲う。

 

 

「結局、捕まっちゃったね。

あの人形も逃げるように言ってたのに。

最後の願いも無駄に終わってしまった」

 

 

氷が砕けたという事実と

子ギルの言葉に

最悪な現実を受け止めるしかなくなった美遊が

もがくのを止め、顔を俯かせる。

 

 

「待ってて。今、助ける…!!」

 

 

美遊へと近づいたイリヤは

ルビーを振りかぶり

 

 

斬撃(シュナイデン)!!」

 

 

魔力の刃を

巨腕の手首へと放つ。

しかし

 

ギャゴンッ!!

 

巨腕を構成している泥から

現れる無数の盾

 

 

「え…!?」

 

 

イリヤの放った魔力の刃が

無数の盾に激突するも

盾には傷一つつかない。

先のシロエと子ギルの戦いにより

宝具はシロがほとんど全て壊したはずだ、と

驚愕するイリヤだったが

 

 

「僕が持っていた宝具は確かにほとんど壊されたけど

あっちの半身が持っている宝具はまた別だよ。

あれも少し言ってたと思うけれど、全体の九割以上はあっち持ちになってる」

 

「九割…!?」

 

 

シロエがあれだけ壊したにも関わらず

それらは氷山の一角にすぎなかったことを理解し

絶句するイリヤ

 

 

「察するにあれが使ってた斬撃は、君のその技を真似たのかな?

可愛いところもあるものだね。

いずれにしても、その程度の出力じゃあ

あの盾は壊せないよ」

 

 

シロエであれば両断できていた、と

暗にそう言われ

イリヤは悔しげに唇をきつく結ぶ。

 

しかし、そんなやり取りをしている間に

美遊を掴んだ巨腕が

泥の渦の中へと戻ろうとする。

 

 

「ミ、ミユ!!!」

 

 

イリヤは慌てながら

飛行を行い、戻ろうとしている巨腕を追い

美遊へと再び近づく。

しかし

 

 

「……ごめんなさい。関係ないあなたたちを…あなたの妹を巻き込んでしまった」

 

 

美遊は俯いたまま

涙声でイリヤに謝罪する。

 

 

「あなたから…大切な妹を奪ってしまった。

あなたたちの関係を………壊してしまった」

 

「そんな風に思わないで!!まだ…!!」

 

 

無論、イリヤは

そんなことを微塵も思っていなかった。

しかし

こっちの世界に来て、初めて出来た二人の友達

そのうちの一人を自身の事情に巻き込んだ結果

死んだも同然の状態になってしまったという現実に

美遊の心は絶望一色に染まっている。

 

 

「ダメだった…。

拒んで、抗って、逃げて

やっと出来た友達を…巻き込んで、失った」

 

「諦めないで!!手を伸ばして!!

ミユまでいなくなったら、わたし…ッ!!」

 

 

イリヤが美遊へと手を伸ばす。

美遊が手を伸ばせば

届く距離である。

しかし

 

 

「これが…わたしの運命」

 

 

美遊は

イリヤの伸ばされた手に

サファイアを手渡す。

 

 

「ミッ…」

 

「美遊様ッ!?」

 

 

サファイアの柄から

美遊の手が離される。

 

 

「壊して。わたしごと、この悪夢(かいぶつ)を」

 

 

イリヤから

美遊がどんどん離れていく。

 

 

「ごめんなさい。今までずっと、言えなくて」

 

 

美遊の姿が

魔法少女のものから

私服へと戻る。

 

 

「せめて…ちゃんと話していれば

シロがこんなことになることも

なかったかもしれなかったのに」

 

 

そして

とうとう

 

 

「ミユ!!!」

 

「ごめんなさい。さよなら」

 

 

美遊と共に

巨腕は完全に泥の渦の中へと消えた。

 

 

「ミユ………シロ………。

どう…………して……………こんな……………」

 

 

妹に続き

友達までも失ったイリヤは

呆然と呟く。

ルビーとサファイアも

言葉を失っている。

そんな時

 

フラリ、と

子ギルの身体が揺れる。

 

 

「…流石にそろそろ限界かな」

 

 

シロエとの戦いにより

負傷した自身の身体が

限界に近いことを覚る子ギル

そして

子ギルは魔力で空中に足場を形成し

ふらつきながらも一歩ずつ足場を歩く。

その右脚もまた、シロエがいなくなったことにより

氷は解けていた。

そうして空中にて呆然としているイリヤを追い越し

子ギルは泥の渦の真上へとたどり着く。

すると、その時

 

ビキッ…バキキキキキ…

 

泥の渦に皹が入っていき

 

バキィン!!

 

泥の渦が割れる。

そして

中から出てきたものを見て

イリヤは総毛立つ。

 

 

「………ッ」

 

「これは…なんという…」

 

「こんなものが…英霊…!?」

 

 

それは、あえて言うのであれば

泥で形作られた巨人である。

しかし

蜘蛛の如く多数の手足を持ち

その手足の先は人間の手のように五本指となっており

泥の中心には醜悪な巨大な顔のようなものが形作られている。

化物。

それがイリヤ達の共通認識であった。

 

 

「ああ、醜いね。本当に。見るに堪えない」

 

 

眼下に広がるその巨人を見て

子ギルが貶す。

その目は侮蔑で満ちており

イリヤや美遊、そしてシロエにも

向けなかったものであった。

訝しむルビーとサファイア

そんな二本のステッキの訝しみに気づいた子ギルは

 

 

「……………はあ」

 

 

深い溜め息と共に

侮蔑の視線を引っ込める。

 

 

「認めたくないものだね。

違う僕の…それも大人の僕がやったことというのはさ」

 

 

けれど

と子ギルは続ける。

 

 

「嫌で仕方ないけれど、こんなのでも

僕の半身であることに変わりはない」

 

 

そして

子ギルはイリヤ達へと向き直り

泥の巨人へと身を投げ出す。

 

 

「あっ…」

 

「死にたくなければ、あれが言った通り逃げなよ。

あれがいなくなった以上、君に勝機なんてなくなったんだからさ」

 

 

子ギルは落下していき

そして

巨人の額部分へと

 

ボチャン

 

と泥に着水する。

 

 

「………」

 

 

一人取り残されたイリヤの心中に

 

 

「なんっ…なのよ…」

 

 

美遊の攻撃によって

寸断されていた怒りが

再び湧いてくる。

 

 

「シロも」

 

 

一人で戦いを挑み捕らえられ

衝撃の事実を前にし、心を折られ

自決にも等しい真似をしたシロエ

 

 

「ミユも」

 

 

シロエがそんなことになったのは

自分の所為であると

自身の運命に巻き込んで死なせたと

絶望しイリヤの手を取らずに全てを諦めた美遊

 

 

「あの英霊の子も…」

 

 

場を散々に引っ掻き回し

二人を捕らえた後

イリヤを煽るように逃げることを勧めた子ギル

 

 

「みんな…みんなして…」

 

 

三人の行動を前にし

イリヤの怒りが今度こそ爆発する。

 

 

「イ、イリヤさ──」

 

「勝手なことばっか!!」

 

 

 

イリヤは地面へと降下。

シロエと美遊が持っていたカードを乱暴に回収。

それと同時に

泥に潜っていた子ギルが

 

ゴパッ

 

巨人の額の中心から

上半身のみ飛び出すように

姿を現す。

その身体は泥が纏われ

泥により肉体を再び形成したのか

シロエとの戦いにより負った傷は全て

綺麗になくなっていた。

 

カードを乱暴に回収したイリヤは

その勢いのまま空高く飛び上がる。

そして

 

 

「クラスカード『バーサーカー』!!」

 

 

シロエの形見となってしまった

『バーサーカー』のカードを手にし

 

 

「待ってください!イリ…」

 

限定展開(インクルード)!!射殺す百頭(ナインライブズ)!!!

 

 

カードをルビーへとかざし、斧剣を手にする。

その目は怒りで涙目となっている。

イリヤは斧剣の切っ先を

巨人と一体化した子ギルへと向け

斧剣の重量を利用し

上空から落ちるように突撃する。

 

 

劣化物(レプリカ)…それも上から落とすだけ、か」

 

 

子ギルはそれをつまらなそうに見る。

 

 

「それじゃあ、あれの方が余程上手く扱えていたよ」

 

 

子ギルはシロエの放った

超速の九連撃を思い返しながら

イリヤを酷評する。

そして

子ギルの隣に

 

 

真・射殺す百頭(ナインライブズ)!!!」

 

 

巨大な黄金の弓矢が

泥より出現する。

 

 

「なっ…」

 

 

それは人の手に扱えるとは思えない程に巨大であり

弓矢というよりもバリスタのようであった。

そして

 

 

「まあ、酷な話だとは思うけどね。

縁を持っていたあれと比べるのは」

 

 

黄金の弓矢より

自動追尾の光線が九発同時に発射され

 

ゴガッ!

 

そのうちの五発が

イリヤが手にした斧剣を破壊する。

 

 

「……ッ!!」

 

 

なんなの?なんなのよこれ…ッ!?

平行世界?

神様になったわたし?

ミユの世界の聖杯戦争?

シロが宝具?

運命…?

こんな…こんなものが

わたしたちが追い求めていた───真実…?

 

 

斧剣が破壊され

カードへと戻るが

残り四発の光線はそのまま

イリヤの身体を貫き

イリヤの身体に大穴が空く。

 

 

「……焚きつけてはみたけれど」

 

 

絶命したであろうイリヤを見ながら

子ギルは

 

 

「やっぱり…期待するだけ無駄だったか」

 

 

落胆したかのように呟く。

その時

 

パキン

 

という音と共に

イリヤの身体が

サファイアとアサシンのカードへと姿を変える。

 

 

「…!」

 

 

子ギルが貫いたものは

アサシンの能力により生まれた

イリヤの変わり身の分身だったのだ。

 

子ギルの目が驚きで大きく見開かれる。

その間に

ルビーが離れたことにより

転身が解け私服となったイリヤは

子ギルの目の前に着地。

そして

 

パァン!!

 

右手で子ギルの頬を

平手打ちする。

 

 

「……驚いた。あと一本ステッキがあったらまずかったかも」

 

 

子ギルの表情から落胆が消え失せ

再び笑みが戻るが

そんなことを気にしている余裕がないイリヤは

 

 

「…シロとミユはどこ!?」

 

 

捕らえられたシロエと美遊の居場所を問いただす。

 

 

「…今、宝物庫とこの泥は繋がっている。

二人ともこの中さ」

 

 

現在、子ギルと巨人は一体化している状態であるため

シロエを放り込んだ黄金の波紋と美遊を引っ張り込んだ泥

それらは繋がっていた。

 

 

「美遊は中心部あたり。ちゃんと生きてるよ。

あの人形はそれよりも少し外れかな。こっちは生きてるとは言えないけどね」

 

「ッ!」

 

 

子ギルの言葉に

イリヤは子ギルを睨みつける。

 

 

「さっきから()()とか()()とかって!!

シロを物みたいに…!!」

 

「それはまず本人に言いなよ。手遅れに近いけど。

それよりも気をつけなよ」

 

 

イリヤの周囲の泥から

無数の宝具が現れる。

 

 

「君は今ここで、死んじゃうかもしれない」

 

「──く…ッ!!」

 

 

今のイリヤの手にステッキはない。

何の力も持たないただの子供同然である。

危機的状況にイリヤは表情を険しくさせる。

 

 

「上手く避けてね」

 

「イリヤさん…ッ!!」

 

 

放たれる無数の刃

しかし

それらがイリヤを貫くことはなかった。

何故ならば

 

 

「クロ!!」

 

 

クロエである。

戦場へとたどり着き、イリヤの危機的状況を目にしたクロエは

急ぎ空間転移を行い接近した後、イリヤを抱えその場から離れることで

危機的状況を脱した。

 

 

「バッッッカじゃないの!?

こんなやつを前に生身なんて!!」

 

 

転身を解いた状態で

子ギルの前に出てきたイリヤを

叱咤するクロエ

 

 

「て言うかコイツ…なんなのよ!?」

 

 

イリヤを抱えながら

巨人から離脱し

地面へと降り立つクロエ

そしてイリヤを地面へと降ろしながら

巨人を見上げる。

 

 

「攻撃方法から見て…八枚目のカードでしょう」

 

「バゼットさん…!」

 

 

クロエに続きバゼットも

戦場に姿を現す。

英霊並みの身体能力を持つ二人は

凛とルヴィアよりも先行して

戦場へと駆けつけたのだ。

とはいえ

シロエと子ギルの激突によって生じた

猛吹雪や地面の揺れにより

駆けつけるのが少し遅くなった。

 

 

「しかし、どうしてこんな異形に…!」

 

「それにミユと…シロは?

さっきまで戦ってたわよね?」

 

 

シロエと子ギルのとんでもない規模の攻防

遠くにいたクロエ達にも、それは視認出来ていた。

しかし今、そのシロエとそして美遊の姿が見えない。

それが意味する所は………。

嫌な予感がしつつもクロエはイリヤに尋ねる。

 

 

「……………ッ」

 

 

イリヤは二人のことを思い返し

二人がずっと秘していた真実を話すべきか

躊躇ったものの

 

 

「………シロと、ミユは」

 

 

イリヤは

俯きながら、その重い口を開いた。

 

 

……

………

 

 

イリヤは話した。

シロエと美遊

二人について発覚した衝撃の真実を

話している間に合流した

ルビーとサファイアにも手伝ってもらいながら

そして、シロエと美遊の二人が今どこにいるのかを

 

 

「平行世界に…」

 

「神霊の宝具…!?」

 

 

驚愕するバゼットとクロエ

美遊が平行世界の住人であることは

カレン先生からの情報により気づいており

クロエはそこからシロエもまた

この世界の住人ではないとまではたどり着いていたものの

神霊の宝具だとは夢にも思ってなかったのだ。

 

 

「にわかには信じがたいことですが…」

 

 

バゼットは思い出す。

シロエと戦った時のことを

 

 

(あの戦い慣れている様子も、英霊の座にいたのであれば………

神霊の宝具として様々な戦場へと召喚された記憶が残っているのであれば説明がつきます)

 

 

そしてクロエも思い出す。

シロエから魔力供給をした時のことを

 

 

(あの異常な程の魔力の濃さも、神霊特有のものだった…?

それにイリヤと同じレベルの効率の良さも、同一人物だったのならそれも当然………。

けど……………神霊になった平行世界のわたし、か)

 

 

シロエに関しておかしいと思っていたことが

全てにおいて説明がつくと

信じられない気持ちは無論あるものの

バゼットとそしてクロエは納得せざるを得なかった。

 

 

「…なるほど。

どうりであの翁が首を突っ込んできたわけだ」

 

「……?」

 

 

バゼットの

得心がいったとばかりの呟きに

訝しむイリヤ

 

 

「でも、どうするのよ!?

助けるにしても、こんなの近づくことすら…!!」

 

 

今、イリヤは再び転身しているものの

巨体から放たれる無数の宝具が降り注ぎ

それを避けながらイリヤ達は巨人の周囲を走り回っていた。

近づくことも困難である。

そんな中、イリヤが

 

 

「シロは…ここから逃げてって言った」

 

「…………」

 

「ミユは…自分ごと壊してって」

 

「だからなに?」

 

「騙してた…って

いないのが正しいって…!

あなたたちには関係ないことだったのに…って

これがわたしの運命だって…!」

 

「だからなによ!?」

 

 

クロエがイリヤの手首を握る。

 

 

「………二人を、見捨てるって言うの?」

 

 

護るべき妹と大切な友達

それらを見捨てるのか、と

クロエは眉間に皺を寄せながら詰問する。

 

 

「違う!」

 

 

そんなクロエの問いに

そういうことではない、と

否定するイリヤ

 

 

「………違うの」

 

「───…」

 

 

そんなイリヤの目には

薄っすらと涙が浮かんでいた。

そんな時だった。

 

 

「どうにも、身体が大きくなると攻撃まで大雑把になっていけない」

 

 

子ギルは思い返す。

先のシロエとの戦いを

そして

 

 

「どうせだから、もう一度

さらに大雑把にいこうか」

 

 

巨人を形成している泥から現れる

超弩級の巨大な剣

 

 

「なっ…!!まだあんな宝具を…!?」

 

 

その大きさはシロエが先に砕いた

万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)と同程度の大きさであった。

 

 

「流石にもう、避けて言えないかな」

 

 

それは

「水平線」の概念を持つ万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)と対になる

「地平線」の概念を持つ神造兵装

その銘は…千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)

別名を斬山剣。

山を切り裂くことができる程の巨大な剣である。

 

巨人は斬山剣をその手にすると

大きく振りかぶる。

 

 

「薙ぎ払いが来ます!!

イリヤさん!!上空に…」

 

「くっ…」

 

 

焦るクロエ達

そして、クロエは思ってしまう。

 

 

こんな時に、シロがいてくれれば……と

 

 

万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)を容易く打ち砕いたシロエがいれば

凌ぐことができるかもしれない。

…いや、恐らくできる。

 

あの小さな背中に

今までどれだけ助けてもらってきたのか

いなくなった今だからこそ

実感するクロエ

とはいえ

 

 

(ってこんな時になに考えてんのよ、わたしは!?)

 

 

窮地に陥ると

シロエに頼る癖がついてしまっていると

クロエは自身を一喝

すぐにその考えを捨て

斬山剣を凌ぐべく必死に思考を回転させる。

そんな時だった。

 

 

「シロとミユも、こんな気持ちだったのかな」

 

「!イリヤ様……!?」

 

 

自身のマスターである二人の名前を出され

サファイアが反応する。

 

 

「バーサーカーとの戦い。

…わたしが逃げてた時、シロとミユは二人だけで戦っていたんだよね。

とうてい、かないっこない敵と」

 

 

シロエは

この場の誰よりもバーサーカーの強さを信頼している。

バーサーカーは世界で一番強いのだと

だがそれは、裏を返せば

バーサーカーと戦うことになったら勝てない。

そういう思いも、あの時のシロエには確かにあった。

 

 

「どうしてなのかな」

 

 

イリヤの問いに

サファイアが答える。

 

 

「…美遊様は、イリヤ様が初めての友達だから…と

シロ様は……イリヤ様にこれ以上傷ついてほしくないから……と」

 

 

さらにサファイアは

 

 

「シロ様の、その言葉には……決して嘘はなかったと

イリヤ様の妹としての……心からの叫びであったと

わたしは………そう思っています」

 

 

先のシロエからイリヤへの

最後の言葉を聞いたからか

その言葉は決して嘘なんかではなかった。

少なくとも自身はそう感じたと

サファイアは付け加える。

 

 

「───……うん。そっか」

 

 

友達と妹の決意を聞き

目尻に浮かぶ涙を拭うイリヤ

 

ゴォッ!

 

斬山剣が水平に振るわれ

木々を薙ぎ払いながら

イリヤ達へと迫る。

涙を拭っているイリヤにクロエが呼びかける。

 

 

「なにしてるのイリヤ!!早く逃げるわよ!!」

 

 

とにもかくにも

迫りくる斬山剣を避けなければならない。

しかし

 

 

「しかし、逃げ場など…!!」

 

 

山を切り裂ける程の巨大な剣

それが水平に振るわれている。

とてもではないが範囲外へと逃げることなどできない。

クロエとバゼットが焦っていると

 

 

「逃げられないよ」

 

 

涙を拭っていたイリヤが

ポツリと呟く。

 

 

「逃げられるはずがない。

わたし、しなくちゃいけないことができた」

 

 

イリヤの目から最後の

一雫の涙が落ち

 

 

「シロと…ミユを……絶対」

 

 

涙を拭うのを止め

顔を上げる。

イリヤのその顔は

 

 

「絶ッッッ対、ひっぱたく!!」

 

 

迷いなどない

強い覚悟で満ちていた。

 

 

「はぁ!?」

 

「何を…」

 

 

イリヤの宣言に

困難するクロエとバゼットを

置いてけぼりにし

 

 

「サファイア!力を貸して!」

 

 

イリヤがルビーを握っていない手

右手をサファイアへと伸ばす。

 

 

「………ッ。はい!!」

 

 

マスター登録している二人の少女

美遊とシロエ

二人を助けたいという想いは

イリヤにも決して負けていない。

サファイアがイリヤの右手へと収まる。

 

イリヤの服装が

眩い光と共に変わっていく。

 

斬山剣がとうとう

イリヤ達へと到達する。

しかし

 

ドゴォン!!

 

轟音と共に

斬山剣がへし折れる。

 

 

「……君は、なにものだ?」

 

 

空中へと回避するだろうと

予想しながら振るった一撃であったが

それを完全に覆され

シロエと同じように真っ向から

神造兵装をへし折られ

子ギルが驚愕で目を大きく見開く。

 

 

「ウソ…でしょ」

 

 

クロエとバゼットもまた

驚愕している。

 

 

「シロ、ミユ…わたしね

怒ってるんだよ」

 

 

へし折れた斬山剣の先端が宙を舞い

地面へと突き刺さる。

 

 

「『元に戻るだけだから…わたしは最初から元々いなかったから哀しまないで』?

『関係ないあなたたちを…あなたの妹を巻き込んでしまってごめんなさい』?

そんなの───」

 

 

イリヤの服装。

ルビーを使った転身のものをベースとしているが

いつものピンクではなく明るい紫を基調とし

胸元には五芒星、腹部には六芒星があしらわれている。

長い銀髪は左にまとめられサイドテールとなっており

溢れ出す魔力を象徴するかのように背中には

半透明の紫色の翼が展開されている。

そして、その手にはステッキが握られている。

無論、それもいつものステッキではない。

ステッキの先端には五芒星と六芒星が内部に浮かんでいる水晶玉があしらわれており

水晶玉からルビーの鳥の羽とサファイアの蝶の羽が一対となり伸びている。

 

 

「お姉ちゃんに、友達に

言うセリフじゃないっての!!!」

 

 

その姿の名は

 

 

「絶対!引きずり出して、起こしてひっぱたいてやる!!」

 

 

カレイドライナー

ツヴァイフォーム!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「すぅー……」

 

 

時は神代

人はおろか生き物の気配すら感じない

荒野の地にて

 

 

「はぁー……」

 

 

金髪赤目の男が深呼吸をする。

上半身は裸であり

首回りには金色の装飾

下は同じく金色の腰蓑を巻いている。

その視線の先にいるのは

唯一無二である友の姿

 

 

そんなギルを前にし

僕は自然に笑みが浮かぶ。

 

 

「…ふっ!!」

 

 

僕は鎖をギルへと放つ。

 

ドォン!!

 

衝撃で粉塵が舞う。

けれど、当然

ギルは宙返りをしながらそれをかわし

 

 

「…ふん!!」

 

 

無数の射出口を展開。

その顔は僕と同じく満面の笑みだ。

そして僕へと放たれる無数の刃。

僕は右手を刃と化しそれを弾きながら

 

 

「ふふっ」

 

 

民の叡智(エイジ・オブ・バビロン)を使い

大地から無数の刃を生成。

ギルからの残りの刃を迎撃する。

すると

 

 

「フハハハハハハハハハッッ!!!」

 

 

ギルが笑い声を上げながら

剣を手に僕へと突貫。

 

接近戦か。それも…いいねギル!

 

ガギッ!ギン!!ギィン!!!

 

何合も何合も

暫くの間

楽しく打ち合い

 

ギィィィンッッ!!!

 

鍔迫り合いの後

ギルは距離を大きく取り

空高く跳ぶ。

そしてギルは射出口を展開し

蔵の中から

 

 

エアを取り出した。

 

 

ギルは手に持っていた剣を捨て

エアを手にし

エアから赤い暴風が発生する。

それを受け、僕は───

 

 

「───呼び起こすは星の息吹」

 

 

僕の立つ大地が

黄金色の輝きを放ち

木々が芽吹いていく。

 

その様子を見たギルは

笑みを深くする。

 

 

「原初を語る。

天地は分かれ、無は開闢を言祝ぐ。

世界を裂くは我が乖離剣」

 

 

空からは雷が連続で落ち

 

 

「人と共に歩もう、僕は。ゆえに───」

 

 

大地からは巨大な樹木が伸びる。

 

 

「星々を廻す臼、天上の地獄とは創世前夜の終着よ」

 

 

エアの全力により

空間が軋み、ひび割れていき

それに対抗するために

星の魔力が一箇所へと集中し、樹木の先端に巨大な花が咲く。

そして

 

 

天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!!」

 

人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)!!!」

 

 

二つのエヌマ・エリシュが

激突した。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「…」

 

 

銀髪青目の少女シロエが

ゆっくりと瞼を開ける。

 

 

「今の、記憶は……」

 

 

戦闘の記憶。

相手は…金ピカだった。

見たことのない表情をして戦っていた。

これ以上ない程の………笑顔だった。

確かにわたしの知っている金ピカは

戦っている時はいつも笑みを浮かべていたけど

それは相手を侮蔑する笑みで

どこまでも傲慢に満ちたものだった。

けれど、さっきの金ピカは

侮蔑なんて一片もなく

ただ純粋に相手との戦いが

楽しくて楽しくてたまらない。

そういった表情だった。

 

 

「金ピカでも………あんな顔をすることがあるのね」

 

 

そしてそれは

記憶の持ち主も同じであり

金ピカのことを……友だと、そう思っていた。

 

あの戦いは

殺すか死ぬかといった

そういう殺伐としたものでは決してない。

優劣を競い合って楽しむのが目的だと

現代で言うところのスポーツみたいなもののように感じた。

乖離剣まで使ったのは

相手ならば相殺することなど当然できるだろう、という

これ以上ない程に信頼していることの裏返し。

あの金ピカが、ね……………。

だけど

 

 

「だけど……………今の記憶って、誰の…?

それに、なんでわたしがその記憶を………」

 

 

どう考えても

自身はもちろんのこと

シトナイにもないであろう記憶を目にし

訝しむシロエであったが

 

 

「………いっか。どうでも」

 

 

シロエは

興味がない…否、正確には

なにもかもどうでもいい、と

投げやりに締めくくり

考えるのを止め、その身を起こす。

そして、そのまま立ち上がる。

すると

ざく、と

雪を踏みしめる音がする。

周囲を見渡すシロエ

そこは

 

月の光も、星の光もない

真黒な背景に

見渡す限りの雪原

山の中なのか針葉樹が辺り一面に生えている。

さらに

 

ビュオオオォォォ………

 

と吹雪が吹き荒れており

遠くを見通すことができなく

近くには

狼や鹿などの動物

果てはホムンクルスと思われる人型の

様々な死体があちこちに転がっており

それらの死体は雪に埋もれている。

 

 

「………我ながら、酷い心象風景ね」

 

 

心象風景

それはシロエの内面にある風景

即ち、ここは

シロエの内側の世界である。

 

身を切るような"寒さ"と

あらゆる生物が息絶えた"死"

そんな風景を見たシロエが自嘲する。

 

そして

ざく…ざく…と

シロエが歩き始める。

行き先など当然なければ

目的すらない。

ただフラフラと

時折、吹雪に煽られながら歩き続ける。

これが自身への罰だとばかりに

 

 

「ドイツなのか…蝦夷なのか…。

それすらも、わからないわね」

 

 

蝦夷にて

熊を相手にし、死にかけた後

それでも主の後を追った『猟犬トケ』の記憶。

 

あるいは、ドイツの山奥にて

城から放り出され狼の群れに襲われた『イリヤ』の記憶。

 

それらを思い返したシロエは

木々の枝葉から伸びている氷柱を

ぼんやりと眺め、そこに映る自身の姿を確認する。

その姿は

私服である薄緑色のワンピースに

銀髪青目の少女の姿

 

 

「……………ふふ」

 

 

自身の内側の世界であるにも関わらず

『猟犬トケ』でもなければ『白熊』でもない

『シロエ』としての姿を取っていることに

なんとなく可笑しくなるシロエ

 

子供用の薄手のワンピース

言うまでもないが雪山を彷徨っていい服装ではない。

しかし、シロエは

そんなことはどうでもいいと

ただ歩き続ける。

その姿はまさしくシロエが思い返した

ドイツの雪山を彷徨っていた『イリヤ』のようであった。

 

そうして、暫くの間

シロエは俯きながら、無意味な歩みを進めていた。

その時

 

 

「……………?」

 

 

前方の地面に

人の足が見えた。

心象風景の一部である死体…ではない。

その人物はしっかりと二本の足で立っている。

 

シロエは俯いていた顔を上げ

光を失った瞳で

その人物を見る。

 

 

「─────あなたは」

 

 

シロエの目が僅かに見開かれる。

その人物は

 

 

()()()………ううん、マスター」

 

 

長い銀髪に赤い瞳

ピンクの刺繍が施された長袖の民族衣装

シロエを送り出した時と同じく第二再臨の姿をした

シトナイがそこにはいた。

 

 

「…封印が完成する寸前に

魔力に意識の一部を乗せたんですね」

 

 

何故シトナイが自身の内面世界にいるのか

同じ知識を持つシロエはその方法をすぐに見抜く。

とはいえ

 

 

「だけど、直に……消えちゃいますね」

 

 

シトナイが行動を起こす度に

意識を乗せた魔力は徐々に薄れていき

最終的には消えてしまう。

内面世界にて、こうして姿を現すことができるのも

一時的なものであった。

 

 

「…」

 

「…」

 

 

転生前は、どこに召喚されてもずっと共に在ったシトナイとシロエ

そして10年以上の時が経ち、こうして顔を合わせたが

気まずいシロエは無言になる。

 

シトナイもまた、暫し無言ではあったが

 

ざく、ざく

 

と足音を立てて、シロエへと近づいていく。

そして

 

 

「………マスター、わたし」

 

 

 

 

 

パァンッッ!!!

 

 

 

 

 

近づいたシトナイは

シロエの左頬を

右手で平手打ちした。

シロエの左頬が赤くなる。

そして

 

ガッ!

 

とシロエの胸ぐらを掴むと

自身へと引き寄せる。

 

 

「なんで…!どうして…!!」

 

 

眉間に皺を寄せ

目に涙を溜めながら

シロエを糾弾するシトナイ

 

 

「………すみません、マスター。聖杯を」

 

「違う!!そんなことじゃない!!!」

 

 

シトナイが激怒しているのは

聖杯を持ち出したからだと

シロエが謝罪するものの

そんなことで怒ってるのではないと

シトナイは涙目のままシロエを睨みつける。

そして

 

 

「わたしはあなたのことを道具だなんて思ってない!!」

 

 

シロエに自身の想いをぶつける。

 

 

「わたしがあなたを転生させたのは!

今度こそ幸せな生を送って…道具じゃない新しい自分を得てほしかったから!!」

 

 

シロエを転生させた本当の理由は

暇つぶしなどでは断じてなく

新しい生を送らせることにより

シロエに成長を促すためだった。

 

 

「けれど、それをあなたに教えたら

あなたは絶対に受け入れないから!!

『トケ』の…道具としての自分を、あなたは絶対に捨てようとしなかったから!!」

 

 

シトナイが『シロウ』を造った時

『猟犬トケ』であったことは全て捨てるように、と

『シロウ』へと命じた。

そして、その後も

それが表に出てくる度にシトナイは『シロウ』を窘めた。

しかし

シトナイが一番捨ててほしかったそれを

『シロウ』が捨てることはなかった。

 

 

「あなたは、疑問に思っていたわよね。

自分が何故消されていないのかって…」

 

 

シロエが抱いていた疑問

本来であれば、わざわざ答えるまでもなく理解できることを

シトナイは答える。

 

 

「消せるわけ、ないでしょ……。

わたしは、あなたを…大切な家族だって……いつも思っているのに………」

 

 

『道具』などではなく『家族』なのだから

消せるはずない、と

 

一つの生命として

温かで幸せな生を送ってもらいたい。

成長してもらいたい。

ただそれだけがシトナイの願いだった。

 

 

「なのに、なんで……………」

 

 

胸ぐらを掴んだシトナイの手が震え

 

 

「なんで……こうなっちゃうのよ………」

 

 

シトナイの頬に

涙が伝う。

しかし

 

 

「わたしは………使い魔です。

わたしの代わりは、いくらでも利きます」

 

「ッ!!」

 

 

シトナイが怒っている理由を

シトナイから見限られたわけではないことを

理解して尚も強情なシロエ

そんなシロエを涙目で睨みつけるシトナイ

とはいえ

そう答えるだろうとシトナイはわかっていた。

これで考えを改めるのであれば

わざわざシロエを転生させたりなどしない。

よって

 

 

「………ねえ。本当は気づいてるんでしょ?」

 

 

シトナイは切り口を変える。

 

シトナイは手を離し

まっすぐにシロエを見つめながら

言葉を紡ぐ。

 

 

「自分が変わったと…弱くなってしまったと

あなたがそう感じたのは、置換魔術の所為なんかじゃないって」

 

 

口では、頭では

道具だと思おうとしていたとしても

シロエは確かに揺れていたと

その迷いは断じて置換魔術の影響などではないと

 

 

「あの世界に転生して10年。

あなたの中で『シロエ』としての新しい価値観が…大切だと思える確かなものが生まれているはずよ」

 

 

シトナイが問題としている『猟犬トケ』の価値観

『猟犬トケ』が生きた期間は、僅か約3年

既に『シロエ』はその三倍以上を生きている。

『猟犬トケ』とは違う新たな価値観が生まれて当然である。

 

 

「そして、それは決して悪いことなんかじゃない。

道具であることに固執して、それらを捨てる必要なんてないのよ」

 

「…」

 

 

シトナイの訴えを

無言で清聴していたシロエだったが

 

 

「………何故、あの世界だったんですか?」

 

 

シトナイへと疑問を投げかける。

ずっとずっと抱えていた

『イリヤ』としての疑問を

 

 

「…!」

 

「転生させた理由については…納得はできませんがわかりました。

でも、何故あの世界なんですか?」

 

 

切嗣が理想を捨て

聖杯戦争が起こらず

そして

イリヤが幸せに生きる世界

 

何故その世界なのかと

シロエが問いかける。

 

 

「………世界の選定はランダムよ。

あんな世界があるなんて…わたしも知らなかった」

 

「…」

 

「とはいえ……わたしに責任がないと言ったら

嘘になると思うけどね」

 

「…?」

 

 

シトナイの答えに

訝しみながらもシロエは

 

 

「……なんとも思わないんですか?

あの世界を見て、あなたは…?」

 

 

シロエはあの世界にてイリヤ達と過ごしていくことにより

切嗣への憎しみがぶり返し

その理想にまで激しい憎しみを抱くようになってしまっていた。

シトナイにはその憎しみはないのかと

シロエが問いかける。

 

 

「………なんとも思わないわけがないわ。

わたしだって思うところはある」

 

 

けどね、とシトナイは続ける。

 

 

「あの聖杯戦争が終結して

得ることができたものがわたしには確かにある。

遺せたものがあるわたしがいる。

十分よ。それだけでわたしは…やりきったんだって

胸を張って言うことができる」

 

「………シロウ」

 

「ええ」

 

 

遺せたもの。

即ち、聖杯戦争を生き残った者。

それがシロウ…弟であると

シロエはすぐに察する。

 

 

「わたしは、シロウのことを知るために

シロウに触れ合う機会が欲しいと、あなたにお願いしました」

 

 

シロエが転生前の

自身の心境を思い返す。

 

 

「シロウが何故、わたしの…『イリヤ』の心の多くを占めることができたのか。

『イリヤ』が何故、シロウとの殺し合いを止めたのか。

そして」

 

 

転生前こそ、わからなかったものの

この世界の士郎と兄妹の関係となり

士郎の人となりを知ることができた今であれば

この二つの疑問に関してのみであれば、シロエは理解することができた。

『イリヤ』にとって

士郎は残った最後の家族であるから、と

しかし

 

 

「何故『イリヤ』は、シロウのために

自身の全てを躊躇いなく差し出せたのか」

 

 

今のシロエであっても、未だにそれだけは理解できなかった。

無論、この世界の士郎が…『シロエ』の兄である士郎が

同じように命の危機に瀕したのであれば

シロエは躊躇いなく差し出せるだろう。

しかし

 

 

「あのキリツグの後を継いで

正義の味方になろうとしていたシロウ。

キリツグの理想は間違いなんかじゃないと肯定するシロウを

どうして命を捨ててまで護ったのか。

わたしには…どうしても理解できませんでした。

そして、この世界に来て……もっとわからなくなりました」

 

 

たとえシロウであったとしても

キリツグの理想を引き継ごうとしている人なんかのために

わたしは、そこまで…できない。

 

シロエはこの世界に来て

切嗣の理想に対して憎しみを募らせ

より強くそう思うようになっていた。

 

俯きながら、自身の考えを口にしたシロエに

シトナイは

 

 

「……………あなたには金ピカに殺されたわたしの記憶しかないから、尚更わからないのかもしれないわね」

 

 

右手の人差し指と中指を

徐ろにシロエの額へとつける。

すると

シロエの頭の中で

『イリヤ』の記憶映像が流れる。

ギルガメッシュに殺された『イリヤ』ではない記憶が

 

 

聖杯戦争の最中、巻き起きるイレギュラー

街に現れる黒い影

 

マキリ・ゾォルケンの襲来

襲いかかってくるセイバーとアサシン、それに黒い影

撃破されるバーサーカー

そんな激しい戦いの中であっても、『イリヤ』を何度も庇うシロウ

 

束の間の休息

シロウと一緒に街へと繰り出す『イリヤ』

とても楽しそうな………『イリヤ』

 

キリツグが本当は何度もドイツまで足を運び

自身を迎えに来ていたという事実に

衝撃を受ける『イリヤ』

 

激しい葛藤の果てに

万人のための正義の味方ではなく

たった一人の味方となることを決断するシロウ

 

桜に同行した『イリヤ』を連れ戻すために

敵と化してしまったバーサーカーを撃破するべく

アーチャーの左腕を使用するシロウ

 

そして

 

大切な弟の命を救うために

聖杯の器としての機能を使い

大聖杯の門を閉めて、終わりを迎えた。

 

 

聖杯戦争における

過程と結末が異なる

『イリヤ』の記憶映像が

シロエの頭の中に流れ終わる。

 

 

「……………」

 

「わたしに…後悔はないわ。

たとえ……他の道があったかもしれなかったとしてもね」

 

 

シトナイはシロエの額から指を離し

なにも言えないでいるシロエに

穏やかな笑みさえ浮かべながら

結末に悔いはないと伝える。

シロウを護ることができた結末も

そして

金ピカに殺された結末であったとしても、と

しかし

 

 

「………わたしは…そんな風に思うことは、できません」

 

 

この世界で過ごし、憎しみが増したシロエには

金ピカに殺された『イリヤ』しかないシロエには

今の記憶を見ても

シトナイのように考えることはできなかった。

どうしても悔いが…残ってしまっていた。

 

 

「……そうね。簡単には割り切れないわよね」

 

 

ならば、どうすればいいのか。

割り切れないシロエにシトナイは

 

 

「わたしたちの哀しみは、捨てることはできないけれど

それでも………上書きすることはできると思う」

 

「上書き…?」

 

「あの子達と一緒に過ごしてきて、あなたが感じたものは

本当に…哀しみや憎しみだけだったの?」

 

 

イリヤや美遊

新しくできた家族と友達

それらと一緒に過ごし

負の感情しか抱くことはなかったのか、と

 

 

「…」

 

「笑顔をずっと貼りつけて

溜め込んだ負の感情に苛まれて

わかりにくくなっているのかもしれない。

激しい感情の発露を前にして、それが薄い『トケ』としては

戸惑って理解する余裕がなかったのかもしれない」

 

 

わからない、と

無言になったシロエであったが

シトナイは当然の如く、そんなシロエの心境を察する。

 

 

「だけどね、楽しさや喜びといった温かなものも

確かにあなたの中には生まれていたはずよ」

 

 

シロエ自身がふざけはじめ

イリヤを振り回していた際は

楽しさなど微塵もなく、ただただ虚ろであったが

だからといって

イリヤと一緒にいるのは苦痛でしかなかったのかと聞かれれば

そんなことは断じてなかった。

イリヤと共に過ごした日常の中には

温かな時間もまた確かに存在した。

 

 

「そして、もちろんそれは…『イリヤ』としてもね」

 

 

『イリヤ』が家族と言える人達に対して

哀しみや憎しみしか抱けないのか、と言われれば

答えは………否である。

どんなに負の感情が大きくなってしまったとしても

そこには必ず、家族に対しての慈しみが存在する。

 

置換魔術により『イリヤ』の性質が大きくなっていたとしても

それらは必ず存在しているはずだと

そして少なくとも、それが表に出ている間は

負の感情に囚われることはなくなるはずだと

シトナイはシロエを諭す。

 

 

「わたしたちの哀しみを捨てることはできない。

けれど、あの子達と本心で向き合っていけば

上書きしていくことはできる。わたしは、そう思う」

 

 

一人では、負の感情に呑み込まれても

誰かと一緒であるならば、折り合いをつけることができる。

 

 

「…そんな上手くいくとは思えないのですが」

 

「そうかしら?あなたの身近にもいるじゃない。

過去に折り合いをつけて、今を精一杯楽しんで生きている子達が」

 

「…!」

 

 

シトナイの言っている身近な子達が

シロエの脳裏に過る。

 

 

「…クロとわたしたちとでは、歩んだ道程が違いすぎます!

参考になんて」

 

「じゃあ、美遊ちゃんは?」

 

「!!」

 

 

シトナイの切り返しに

シロエは口を噤む。

 

 

「あなたはわたしたちに似たなにかを、美遊ちゃんに感じていた。

だから…あんなことを聞いたんでしょ?

抑えきれない憎しみに、答えを出したくて」

 

 

あんなこと。

それは夏祭りへと赴く前に

 

『キリツグのことをどう思ってるの?』

 

と美遊に尋ねた件である。

 

 

「美遊ちゃんも聖杯だとわかって

美遊ちゃんがどんな扱いを受けてきたのか

あなたには想像がついた。

そして、美遊ちゃんにあんな言葉を遺した」

 

 

シロエが黄金の波紋に呑み込まれる直前の

周囲の言葉に縛られないでほしい、と

自分のような…『イリヤ』のような終わりは迎えないでほしい、と

美遊へと遺した言葉である。

 

 

「……………」

 

「あなたの想像に過ぎないかもしれないけれど

もしも…美遊ちゃんが頑張っているのなら

あなたができないって放り出すわけにはいかないでしょ?」

 

 

シロエの想像通り

自分達と美遊の過去が

似かよったものであるのなら

美遊が過去にも負けず、今を生きているのなら

上書きすることなんてできないなどと

とてもではないが言えない。

 

 

「け、けど………でも………」

 

「…………それでも不安なら

憎しみや哀しみに支配されそうになったのなら

我慢なんてせずに、吐き出しちゃえばいいのよ」

 

 

未だに言い淀むシロエに

『イリヤ』としての負の感情

それをイリヤ達にぶつけろと伝えるシトナイ

 

 

「そんなこと、できるわけないじゃないですか……。

お姉ちゃん達は、なにも悪くないのに……関係ないのに」

 

「そう。それよ」

 

「え…」

 

 

キョトンとしたシロエへと

シトナイは

 

 

「関係ないなんて思うから

自分と周りを別個に自然と考えるようになって

余計に疎外感を感じるようになったんじゃないの?

そして、輪に入れなくて

自分は家族じゃない…って思ってしまう」

 

 

自身はアイリ達の家族だと

シロエが思うことができないでいる要因となっているであろうもの

そのうちの一つを指摘する。

 

 

「だって………実際、関係ないことじゃ」

 

「あなたが関係ないって思っても、周りはそうじゃない。

大切な人が困ってるのに、その原因が自分とは関係ないことだからって無視するわけがない」

 

 

理屈で言えば、それをぶつけることが

どんなに理不尽なことであったとしても

 

 

「そしてそれを受け止めるのが、家族というものよ」

 

「…」

 

 

家族の誰かが困っているのであれば

それは家族一丸となって解決するべき問題だと

シトナイはシロエに伝える。

 

 

「ましてや、あなたの精神性は子供のそれで

あなたはあの家では末っ子なんだから

気なんて使わずに、もっと甘えるべきなのよ」

 

 

『猟犬トケ』と『イリヤ』の混ざり合った精神は

『イリヤ』よりも幼くなっており

シロエの精神性が子供であるのは確かであった。

 

それが良くないことだとわかっていても

感情のままに憎しみや哀しみを吐き出す。

それが子供の特権であり

そして

自分達に何の落ち度がなかったとしても

それを受け止めるのが家族としての在り方であると

シトナイは締めくくる。

 

 

 

ここまで

『猟犬トケ』としての、『イリヤ』としての

シロエが抱えていた悩みに

様々な助言をしてきたシトナイだったが

 

 

「…………………」

 

 

シロエの瞳には変わらず光が戻らない。

主の助言故にはっきりと反対こそしないものの

『猟犬トケ』としても、『イリヤ』としても

未だに迷っており、納得がいっていないのが目に見えてわかった。

 

 

(………久しぶりに会っても

この手の話になると、頑固になるのは

変わらないんだから)

 

 

自身の子供あるいは弟か妹とも言っていい

シロエのその様子に

シトナイは嘆息しながら更に言葉を掛けようとした。

その時

 

 

「なにが……いけないんですか?」

 

 

シロエがポツリと呟く。

 

 

「自身を…道具だと思うことの、なにがいけないんですか!?」

 

 

自身をあの世界へと送り出した

そもそもの理由

ここまでのシトナイの助言の中でも

シロエが一番納得がいっていない部分

 

 

「わたしは今まで使い魔として!道具として!!

あなたの命令に従ってきました!!

ずっとずっと…あなたを護ってきました!!

それなのに、なにが」

 

 

『猟犬トケ』の根幹を成していると言っても過言ではないもの

染みついてしまった…植えつけられた価値観。

それを今さら捨てることなどできない。

そして、なにより

使い魔とは魔術師からしてみれば道具の一つ。

なのにその価値観のままで、なにが悪いのか、と

しかし

 

 

「あなたは護れてなんてないわ」

 

「ッ!?」

 

 

シトナイの思わぬ切り返しに

シロエは言葉を詰まらせる。

 

 

「あなたがこの先も…わたしと一緒に戦っていくには

決定的に欠けているものがある」

 

「欠けている……もの?」

 

「それを自然に獲得してもらうために

わたしはあなたに幸せな生を送ってもらうつもりだった。

そして…あなたが助けをわたしに求めたりしない限りは

わたしは手を出さないと決めた」

 

 

しかし、ここまでの事態になってしまったため

シトナイは介入することを決めた。

もっとも、現界していない以上は

本当に細やかな手助けしかできないが

 

 

「それがなんなのか、わからないうちは

あなたはわたしを、本当の意味で…護ることはできない」

 

「…」

 

「わたしがここで、その答えを言うのは簡単だけど

あなたは絶対に納得しない。理解することは…できない。

だから…あなたが自分で答えを見つけるしかない」

 

 

シトナイの言う自身に欠けているもの。

シロエに思い当たるものは当然ない。

ここに来て、シロエとして生きていきながらの

言ってしまえば"宿題"を

シトナイから受け取ったシロエであったが

 

 

「………あなたが、なにを言ったとしても

今さらどうしようもありません。

だって全部もう…終わってしまったのですから」

 

 

シトナイから与えられた

シロエとしての生もまた

既に終わりを迎えた。

シトナイがなにを言ったとしても

無意味であると

シロエは光のない瞳で切って捨てようとするも

 

 

「いいえ、まだよ。

まだ…終わってなんてない」

 

 

シトナイはまるで諦めていない。

シロエとは正反対に、瞳には強い意志が宿っている。

そのシトナイの様子に訝しむシロエ

 

 

「一つ…賭けをしない?」

 

「賭け…ですか?」

 

「ええ。あの子達が…あなたの姉や友達があなたを助けることができるかどうか」

 

 

シロエは眉を潜める。

そんなもの賭けとして成り立つのか、と

 

 

「賭けに…なるんですか?

そんなの、答えは決まりきって」

 

「わたしは、助けることができる方に賭ける」

 

「……………え」

 

 

シトナイの答えに

シロエは驚愕から目を大きく見開く。

そして、その反応から

助けが来ない方にシロエが賭けるものとして

シトナイは話を進める。

 

 

「わたしが負けた場合は、望み通りにあなたを消してあげる。

聖杯がそっちにある上に置換が進んで難しくなってるけど、そこはなんとかする。

そして、わたしも……………いえ、それはいいわ」

 

 

シトナイは説明を省いたが

自身も責任を取って、英霊の座から消滅するつもりである。

それこそ、自身が持ちうるあらゆる手段を使ってでも。

シロエを一人で消させないという

一種の覚悟であった。

 

 

「だけど、もし

もしもわたしが勝ったのなら……その時は─────」

 

 

ビュオオオオオォォォォォ……

 

シトナイの声が

吹雪に流され消える。

しかし

至近距離にいたシロエには

その声は届いていた。

 

 

「……………」

 

 

シトナイが提示してきた賭け

その内容にシロエは戸惑っていた。

その時

 

ジジ…

 

とシトナイの姿が一瞬ではあるがぶれる。

 

 

「……もう行くわ。他にもやらなきゃいけないことがあるから」

 

 

出来ることは限られているが

まだここで魔力を使い果たすわけにはいかない、と

シトナイは

 

 

「…」

 

「わたしの言ってることがおかしいか

もう一度よく考えてみなさい」

 

 

無言のシロエに背を向け、歩き出した。

その時

 

 

「………助けが来ると、本気で思ってるんですか?」

 

 

シロエの言葉に

シトナイの歩みは止まる。

 

 

「あの金ピカを…バーサーカーでも勝てなかったあの金ピカを

お姉ちゃん達が倒せると、本気で思ってるんですか?」

 

 

『イリヤ』を護っていたとはいえ

あのバーサーカーがなにもできずに殺された相手

英雄王ギルガメッシュ

その光景がこびりついているシロエには

イリヤ達がギルガメッシュを打倒できるとは、とても思えなかった。

そして、それは

同じ過去を持つシトナイも同じはずなのに、と

シロエは困惑していた。

 

 

「…」

 

「仮に倒せたとしても、お姉ちゃん達に封印を解くことはできません!

いえ、そもそもわたしはお姉ちゃん達を散々傷つけました!!

助けようとするはずが」

 

「助けが来る…なんて、思いたくないだけなんじゃないの?」

 

「ッ!!」

 

 

図星だったのか

シロエはまたしても言葉を詰まらせる。

そんなシロエにシトナイは背を向けたまま溜め息を一つ吐く。

 

 

「あなたの思っていることがわたしにわかるように

あなたにもわたしが本気かどうかなんてわかるはずよ。

だって」

 

 

ビュオオオッッ!!

 

一際激しい風が吹き

シトナイはその場から姿を消す。

 

 

あなたはわたしでもあるんだから───……

 

 

シトナイの最後の言葉を残して

 

 

「…」

 

 

一人残されたシロエ

暫し無言であったが

 

 

「………わかりませんよ」

 

 

ポツリと呟く。

 

 

「そうやって……信じて、期待して

待ち続けた結果が、あれだったんじゃないんですか…?」

 

 

『イリヤ』は

バーサーカーが助けに来てくれたけど

心の奥底で、ずっと待ち望んでいた人が

連れ出してくれることはなかった。

 

『猟犬トケ』は

マスターが助けに入ってくれたけど

心のどこかで、求めていたものを

あの男からもらうことは最後までなかった。

 

 

「耐えて待ち続けたって…どうせ裏切られるだけなのに

裏切られて傷つくくらいなら………最初から期待なんてしなければいいのに」

 

 

マスターとわたしは

『イリヤ』という

同じ過去を持っている。

なのに、何故

 

 

「あなたは何故…まだ、信じることができるんですか…?」

 

 

『イリヤ』としての、『猟犬トケ』としての

そのシロエの呟きもまた

吹雪の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

───────記憶領域に異常を検知。

原因究明のため『■■■■■』限定起動。

全体スキャンを実行します。

 

…13%

……27%

………56%

……………97%

………………スキャン完了

 

結果を開示。

核近辺に異物を検知。

神霊級の魔術知識及び蓄積された記憶を参照し

異物の正体を解析します。

 

…17%

……39%

………52%

…………88%

……………解析完了

 

解析結果を開示。

 

一致率100%

『天の鎖』の欠片であると断定。

 

処遇について審議。

現状を維持した場合をシミュレートした後

メリット・デメリットを提示します。

 

 

メリットを提示

 

1.神霊級魔術による、鎖型拘束術式の性能強化。

術式構築の高速化及び強度・汎用性の上昇により

戦闘においても使用が可能になると提言します。

 

2.精霊としての能力の一つ『星への接続権』の拡張。

星の触覚としての能力、星へ干渉する力が向上し

大地をあらゆる形へと変形させ操作する能力を獲得可能。

尚、宝具等一定量以上の神秘を内包している物品の生成は不能。

ただし

聖杯及び神霊級魔術を併用した場合は、その限りではなくなり

事象の再現から、さらに再現度を向上させ

記憶内にある宝具、その現物を含めた完全再現が可能になると提言します。

 

 

デメリット………特になし。

 

『天の鎖』から微弱な意志を検知。

記憶領域の異常の原因であると推察するものの

侵食、拒絶反応等の現象及び害する意志は感知されませんでした。

肉体及び精神への影響はないと診断します。

 

 

総括

記憶領域の異常は、埋め込まれた『天の鎖』が原因です。

しかし、危険性は認められず。

当術式の目的である

 

封印術式の保全及び敵性体の殲滅行動

 

に支障をきたすをものではないと断定します。

メリットを加味し、現状を維持。

当術式は再び停止し

スリープモードへと移行します───────。

 

 

 




作者の脳内A
「シトナイってSNのどのルートのイリヤなんだろ?」

作者の脳内B
「UBWじゃない?マイルームでギルガメッシュの心臓を抜き取りたいって言ってるし」

作者の脳内A
「えー?士郎への思い入れの強さとかHFを彷彿とさせるんだけど。白熊の名前までわざわざ変えてるほどだし」

作者の脳内C
「ラスベガスの特異点では花札に思うところがあるみたいだったけど…」


( ´・ω) (´・ω・) 【審議中】(・ω・`) (ω・` )


作者の脳内D
「…全ルート記憶持ちってことにしちゃえば?」

A・B・C
「………異議なし」


(・ω・`) (ω・` )【解散】( ´・ω) (´・ω・)


実際、どのルートなんでしょうね。
調べても、はっきりとしたことは出てこなかったので
この小説内でのみ、以下の通りです。


シトナイ→全ルート保持

シロエ→UBWのみ。※他ルートについてはシトナイから話を聞いた程度


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