プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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ちまちまと亀の如くのんびりと書いていたら、いつの間にかこれだけの月日が……………。
時間の流れって怖い。
期間がかなり空いてしまったため
前回までのあらすじ

2wei!のラスボス、子ギルを倒した!
けど戦いの最中にシロエが自決、ほぼ死体(封印)の状態に!!

みんなで話し合ってシロの封印を解く手段を見つけたよ!
鍵はミユのブレスレット!!
勝ったな。風呂入ってくる。

よし!みんなの力を合わせて、シロの封印を解こう!
……おや!?シロエの様子が……!←今ココ

一体いつから────子ギルがラスボスだと錯覚していた?
なん…だと…?




自動迎撃術式

 

 

「イリヤちゃん、五歳の誕生日おめでとう!!」

 

 

パン!パァン!!

 

衛宮邸のダイニングにて

クラッカーの音が鳴り響く。

 

 

「わあ…!」

 

 

五歳になった幼いイリヤの目の前には

蝋燭が立っている大きなホールケーキがあり

笑みを浮かべたセラとリズ、アイリの三人が

ホールケーキを乗せたテーブルを囲んでいた。

そして

イリヤが蝋燭の火を吹き消し

アイリ達がイリヤへと拍手を送る。

 

 

「次は…誕生日プレゼントね!はい、これ!」

 

 

プレゼントの贈呈へと移り

アイリがイリヤへとプレゼントを渡す。

そのプレゼントは

 

 

「かわいい!テディベアだ!!」

 

 

大きな熊のぬいぐるみ…テディベアであった。

五歳のイリヤと同じくらいの大きさであり

イリヤはその大きさと愛くるしさに目を輝かさせる。

そして

 

 

「ありがとう!ママ!」

 

 

プレゼントをくれたアイリへとお礼を言う。

愛娘からのお礼に満足げに笑うアイリ

しかし

イリヤはキョロキョロと周囲を見回す。

 

 

「おとーさんは?」

 

 

今、この場にはいるのは

アイリとセラとリズの三人のみであり

切嗣だけがいなかった。

イリヤの問いにアイリ達の笑顔が曇る。

 

 

「旦那様は、その…」

 

「…ごめんね、イリヤちゃん。キリツグはお仕事があって、どうしても帰って来れなかったの」

 

 

切嗣とアイリの二人は

常日頃から世界中を飛び回り

時には紛争地帯へと赴き

またある時には魔術師と戦う激動の日々を過ごしていた。

そして運悪く、イリヤの誕生日に戦闘が勃発してしまい

二人揃って抜け出すことなど出来なかった。

 

 

「私も…明日の朝には戻らないといけないの」

 

「……ママ」

 

 

幼い愛娘へと

アイリが心底申し訳なさそうに話すが

イリヤは

 

 

「……………おしごと、がんばってね!」

 

 

満面の笑顔でアイリを激励する。

 

 

「イリヤちゃん…」

 

 

五歳。

言うまでもなく、親からの愛情を欲して当然の歳頃である。

イリヤもそれは例外ではない。

それなのに…と

アイリはイリヤの笑顔に目頭を熱くする。

故に

 

 

「…イリヤちゃん。なにか欲しいものってない?」

 

 

自分達がそばにいてあげることはできない。

それでも

 

 

「え?でも、テディベア…」

 

「誕生日プレゼントとは別よ。

いつもいい子でいてくれてるイリヤちゃんへのご褒美」

 

 

イリヤのことは常に想っていると

その愛情を少しでも伝わるように形として残しておきたい。

そういった思いからアイリはイリヤに問いかけた。

しかし

 

 

「……うーん」

 

 

急な問いかけにイリヤは悩むが

欲しいものがなかなか出てこない。

 

 

「うーん、うーん…」

 

「…今すぐ決めなくてもいいのよ?

次に帰ってきた時でも」

 

 

悩むイリヤに

次に帰ってくるまでに考えて決めてくれればいいと

アイリが助け舟を出そうとした。

その時

 

 

「……………あ!」

 

 

悩んでいたイリヤが

顔を上げ、表情をぱっと輝かさせる。

欲しいものが決まったのだと

幼い子供らしい微笑ましい表情である。

そんな幼い愛娘の様子にアイリもまた顔を綻ばさせる。

しかし

 

 

「きめた!あのね!!わたしね─────」

 

 

幼いが故の

イリヤの求めたものに

アイリは頭を悩ませることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────"いもーと"がほしい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ル、ルビー!!なにが起こってるの!?」

 

 

時は戻り現在

天井が壊され、むき出しとなった大空洞

その中央には

私服である子供用のワンピースを纏い

頭には美遊からプレゼントされた二つの髪留めをつけている

普段の日常でイリヤ達がよく目にする装いをしたシロエが立っている。

 

しかし、見慣れた装いに反し

その様子は断じて正常などではない。

 

光を失い暗く真っ赤になったシロエの瞳には

幾何学模様の魔法陣が浮かんでいる。

さらに、シロエの身体からは純白色の莫大な魔力が溢れ出しており

尽きる兆しも一切なく天を貫いている。

また、シロエの魔力に呼応したのか

先の宝具発動時の勢いほどはないものの

またしても上空より雪が舞い降り、円蔵山全域にちらついていた。

 

シロエに施された神霊級魔術による封印

その解除手段をイリヤ達はやっとのことで絞り出した。

それは確かに効果があり

施された封印術式を打ち消していった。

そして、後少しで封印の解除が完了するといったところで

シロエのこの異変である。

 

一目でわかる明らかな異変に

イリヤは混乱しながらもルビーへと尋ねる。

 

 

「……シロさんは八枚目の英霊の正体を知っていました」

 

 

そんなイリヤへと

ルビーは自らの見解を語り始める。

 

 

「八枚目の英霊が所有していた数多の宝具

その中には、封印の解除を可能とする宝具が存在していたかもしれません」

 

 

シロエは敗北し捕縛された時のことを考え

神霊級魔術による封印を用意したが

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の中身に深い知見を持っている英雄王本人…即ち、子ギルであれば

封印を解ける可能性はあった。

さらにそれだけではなく

 

 

「付け加えれば、仮にシロさんが勝利したとしても

あれほどの敵が相手であったのなら消耗は避けられません。

そこをバゼットさんや凛さんに狙われてしまえば

負傷の度合いによっては敗北してしまうでしょう」

 

 

そして敗北すれば

時計塔へと連れていかれてしまう、と

そんな状況に陥ってしまった場合でもシロエは

封印術式を起動させるつもりであった。

 

ルビーの見解にバゼットと凛が気まずそうに視線を落とす。

 

 

「そうして時計塔へと連れていかれたのなら

封印を解除される可能性も出てきます。

……時計塔が本気になる、という条件はつきますが」

 

 

シロエの施した神霊級魔術による封印術式は

現代の魔術師では解除することが不可能に近いものの

時計塔には、ルビーとサファイアの製作者である

宝石翁キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグがいる。

ソロモン王の弟子の一人であり神代の終わりを見届けて尚まだ生き続けている宝石翁がその気になったのなら

シロエの施した神霊級魔術の封印も解ける可能性は十分にあった。

シロエはルビーとサファイアの製作者が誰なのかは知らないものの

その魔術の腕前に関しては、これまでのルビーとサファイアが披露したあらゆる機能から容易に想像できた。

無論、あの宝石翁が他の魔術師達の頼みを聞き入れ素直に封印を解除するとは限らないものの

その問題を無視するのであれば、時計塔にはシロエの封印を解く手段が確かに存在した。

 

 

「そして、それらの解除手段に対抗するために用意したのが………これなんだと思います」

 

 

ルビーの促しにイリヤ達が改めてシロエを見る。

明らかに正気ではなく、違うナニカが身体を支配しているシロエを

 

 

自動迎撃術式(オートカウンター)

封印術式の五層目の除去を条件として起動するように

最終層である六層目の一部として組み込んでいたみたいですね。

与えられた役割はおそらく、除去された一層目から五層目の封印術式の修復とそれを阻害する敵対者の排除」

 

「そしてシロ様はこの迎撃術式をこう名付けられたようです。

ローレライ、と」

 

「ローレライ…」

 

 

ローレライ。

シロエがどのような想いを持ってその名を付けたのか

それは不明であり当然イリヤ達にもわからない。

ただ、イリヤは思い出す。

 

 

『よ、良かったよ!なんていうか、こう…すっごい幻想的な感じで!!

なんていう歌なの?』

 

『…ローレライっていう歌だけど』

 

 

運動会の前日の夜、学校の屋上で偶然目にした。

あの透き通るような歌声と静かなダンスを

そして

今にも消えてしまいそうな儚い姿と

どこか寂しそうに見えたシロエのあの雰囲気を

 

 

イリヤがあの夜の出来事を回想する一方で

クロエはある一つの結論にたどり着く。

確かに

術式を除去する方法が存在する以上

それに対抗するための手段を用意するのは当然のことではある。

理に適ってはいた。

しかし、それは同時に

 

 

 

 

 

「つまり、あの子は………わたしたちの助けなんて、微塵も信じていなかったってことね」

 

 

 

 

 

───────。

悲痛な面持ちで沈黙するイリヤ達

 

しかし、クロエの結論は的を得ていた。

仮にではあるがシロエの想定通りにバゼットや凛と戦うことになったとしても

イリヤ達がシロエの味方をしたのであれば最悪の未来は防げるかもしれなかった。

そして、シロエが八枚目の英霊に敗北し捕らえられた場合でも

今の状況のようにイリヤ達がその英霊を打倒しシロエを救い出せば、それで済んだ話なのである。

シロエの想定はそれらの可能性を完全に無視したものであった。

 

シロエはイリヤ達を信じていなかった。

今のこの状況こそが、それを証明していた。

 

一同が沈黙する中

 

 

「…イリヤさん」

 

 

ルビーがイリヤへと話しかける。

 

 

「こうなってしまったからには

今のシロさんは、持ち得る力の全てを使って

封印を除去しようとする者を排除しにかかるでしょう。

即ち……神霊の力を」

 

「神様の……力」

 

「それが誰であったとしても……たとえイリヤさんであっても、です」

 

「…」

 

「幸いと言うべきでしょうか

シロさんは先程の警告から、こちらに襲いかかってくる様子はまだありません」

 

 

ルビーの言う通り

イリヤ達へとルビーが自身の見解を話している間

シロエはイリヤ達に攻撃を仕掛けてはいなかった。

シロエの周囲には封印術式を再構築する準備のための魔法陣がいくつも浮かんでいるものの

攻撃は飛んでこず、シロエは感情のない無機質な目でイリヤ達をただ見つめていた。

 

 

「しかし、こちらに封印術式を解除する意思があると判断されれば

敵として認識され襲いかかってくるでしょう」

 

「…」

 

「彼我の戦力差は絶望的。

勝ち目はほぼないと言っていいです。

………解除は断念するべきかと」

 

 

ルビーが自らの見解を語り終えると共に

イリヤへと意見を主張する。

封印の解除は諦めるべきだと

しかし

 

 

「もしもここで諦めたら……シロはどうなるの?」

 

 

力強い目でシロエを見つめ返しながら

イリヤがルビーへと尋ねる。

 

 

「………こちらを敵として認識されずに封印を再構築し

先程と同じ死体に等しい状態へと戻ります。

そして、その頃には」

 

 

ルビーが美遊へと視線を移す。

ブレスレットから生み出された純白の光に包み込まれている美遊

 

 

「ブレスレットの効能は終了し術式も消滅するでしょう。

そうなれば今度こそ封印を解除することは………少なくともわたしたちの手では解除する手段がなくなります」

 

 

クロエの聖杯としての能力や美遊とシロエの相性の良さなど

イリヤ達が持ち得る様々な能力を結集させ、封印を解除する手段としたものの

やはり核となっているのはシロエがイリヤ達にプレゼントした純白のブレスレットである。

 

ブレスレットの術式を起動させるためにクロエの聖杯としての能力を使用し

ブレスレットの術式の効能にシロエを巻き込むために美遊とシロエの相性の良さを活用した。

即ちシロエのブレスレットが全ての起点となっているのである。

そのブレスレットの術式が失われればこの解除方法は成り立たなくなる。

 

ここで諦めたらシロエがどうなるのか

それをルビーから聞いたイリヤは

 

 

「……なら、諦めるなんてできないよ」

 

「イリヤさん!神霊の力を振るうシロさんを相手にするのは、あまりにも」

 

「ルビー!!」

 

 

もしも仮に、シロエの想定通りに

時計塔の魔術師がこの状況に直面したのであれば

リスクが大きすぎると諦めているだろう。

 

 

「わかるよ。シロの力がどれだけすごいものかって

でもね…ここで諦めるわけにはいかないの」

 

 

そしてイリヤも理解している。

今もシロエから放出されているとんでもない量の魔力

同時に発せられている神気

それらの威圧感に思わず膝を屈してしまいそうになる。

しかし、それでも

 

 

「わたしは……お姉ちゃんだから」

 

 

イリヤの脳裏に

海での記憶が蘇る。

 

 

『俺は兄貴だからな。

兄貴は妹を守るもんなんだ』

 

 

兄が妹へと掛けた

あの暖かな言葉を

 

 

「わたしはシロのお姉ちゃんだもん。

なら、妹を守らなくっちゃ」

 

 

どれだけ危険なことでも

それこそ命をかけなきゃいけなかったとしても

ここで諦めてしまったら

シロはわたしの妹だって

それすら言えなくなっちゃう。

理由なんて、それだけでいい。

だから

 

 

「だから、退かない」

 

「イリヤさん…」

 

 

イリヤの決意に

ルビーもまた覚悟を決める。

 

 

絶対に諦めない。

今度こそシロと向き合う。

迷いなんてない。

だけど

心残りは…ある。

 

 

『やだ…。わ、わたしは…シロと戦いたく…!!』

 

 

イリヤは思い起こす。

昼のさなかに起きたあのいざこざを

 

 

(結局……戦うことになっちゃったな……)

 

 

イリヤには悔いが残っていた。

あの時に

シロがそんなことするはずないと

シロを信じることができていれば

シロと向き合うことができていれば

こうはならなかったのかな、と

その時

 

 

「しゃんとしなさい!」

 

「!」

 

 

クロエの呼び掛けに

イリヤは気落ちしかけた意識を取り戻し

クロエへと視線を向ける。

 

 

「勘違いしないで。

あの子を傷つけるために戦うんじゃない。

あの子を救うために戦うのよ」

 

「クロ…」

 

「向き合うんでしょ?今度こそ。

あのバカを連れ戻すわよ。()()()()()の手でね」

 

 

()()()()()

そう宣言したクロエの表情に

迷いは一切なかった。

さらに

 

 

「うん、イリヤは一人じゃない。

わたしも戦う。シロを助けるために

シロも…初めてできた大切な友達だから」

 

「ミユ…」

 

 

イリヤの強い意志に感化され

クロエと美遊がイリヤの隣に並び立つ。

そんなイリヤ達の姿を見たルヴィアは

 

 

「…………正直な意見を言うのであれば

無謀、としか言いようがありません。

しかし」

 

 

辛口な意見を言う。

しかし、それは間違っていない。

シロエの溢れ出している魔力量は、文字通り人智を超えている。

これを見て尚も抗う選択をする方がおかしいのである。

魔術師であれば当然それは顕著である。

しかし

 

 

「子供達が頑張ろうとしているというのに

大人である(ワタクシ)達が怖気づくわけにはいきませんわね」

 

 

ルヴィアは先まで恐れ慄いていた己を叱咤する。

 

 

「この一ヶ月。あの子は従者としての仕事を完璧に全うしました。

もはやあの子は我がエーデルフェルト家の立派な従者。

そして、(ワタクシ)の妹も同然。

ならば、ここで見捨ててしまえばエーデルフェルトの名に泥を塗るようなものですわ」

 

 

そして、その表情は

いつもの強気な笑みを浮かべていた。

 

 

「貴女も、それでいいですわね?遠坂凛」

 

 

視線を下へと落していた凛に

確認を取るルヴィア

暫しの沈黙の後、凛は顔を上げ

 

 

「……………ええ。わたしもやるわ」

 

 

表面上はいつも通りに

しかし、理由は語らずに

短く参戦を表明する。

 

 

「……貴女はどうするのかしら?バゼット。

貴女に与えられた任務とは、関係ない戦いなのは明らかだけど?」

 

 

不審に思われないようにするためか

バゼットへと話を振る凛

しかし、その指摘は的を射ていた。

これからイリヤ達が挑もうとしている戦いは

バゼットに与えられた任務であるカードの回収とは何の関係もない。

ただし、関係ないのはあくまでも"カード回収"の任務であり

"封印指定執行者"として動くと言うのであれば話は変わってくるが…。

 

 

「……………」

 

 

凛の問いにすぐには答えず

無言のままシロエを見つめるバゼット

 

常識外れと言える程の魔力量を操り

天候にすら影響を与えるその強大な力は

まさしく神霊に繋がる者であると納得できた。

 

 

あの少女の存在を時計塔の上層部が知れば

なにがなんでも確保へと動くでしょう。

それこそ封印指定に入れてでも…。

あの少女が封印指定に入るものと仮定し

執行者として動くのであれば

情報の抜き出しに邪魔になるであろう封印術式の解除を目指し戦いに参加

そして、封印術式の解除が終わった後に時計塔へと連行する。

……と、動くべきでしょうね。

 

 

封印指定執行者としては、どう動くべきか。

それを頭の中でまとめるバゼット

しかし、それと同時に

バゼットは思い出す。

 

 

『貴女も知っているはずよ。

あの子の願いは…貴女と戦った理由は

決して魔術師染みた非道なものじゃなく

どこまでも子供らしく純粋で、優しさに満ちていたものだったって』

 

 

決戦に入る直前、公園にて話した凛の言葉を

 

シロエはその力を

自身が大切だと思えるものを守るために

あくまでそのためだけに今まで使ってきた。

時計塔から与えられる任務をこなしていくだけのバゼットには

シロエの戦う理由が…その純粋さが

どうしようもなく眩しかった。

そして、それらを踏まえた上で

今のシロエを見るのであれば

 

誰にも助けを求めることができずに絶望し

塞ぎ込んでしまったただの子供

 

そのようにしか……見えなかった。

市販で売られているような子供用のワンピースを身につけているため

その印象に拍車をかけていた。

 

バゼットは子供が苦手であった。

子供特有の邪気の無さや純粋さ

それらと関わる機会がバゼットにはなかったからである。

ましてや

任務の最中に敵対し戦った子供(イリヤ)達に関して言えば

余計に接しづらかった。

しかしながら

接するのが苦手というだけで、嫌いというわけでは断じてない。

困っていたり、傷ついている子供が目の前にいれば

助けて保護するべきだという一般人程度の善良さは持っている。

 

 

そうして、自身の中で

考えをまとめていき

バゼットの出した結論は

 

 

「………わたしも戦います」

 

「それは…封印指定執行者として?」

 

 

神霊級魔術を扱うシロエ

封印指定として捕縛するのが目的なのか、と

凛は抱いていた疑念をバゼットへとぶつけるが

 

 

「いいえ、違います」

 

「なら、いったい」

 

「貴女と同じですよ」

 

「え…」

 

 

バゼットの思わぬ返答に

凛は困惑し、言葉に詰まる。

 

 

「わたしは貴女達に…あの少女に敗北しました。

敗北した以上、勝者の要求には応じるのが責務です。

そしてわたしは、まだ…その責務を果たせていません」

 

 

勝者の…凛達の要求。

それは二つあり

一つは八枚目のカードの回収に()()するということ

しかし、実際に取った行動は()()ではなく()()であった。

よって、凛達の要求が完全に通ったとは言えなかった。

 

 

「わたしは魔術師であると同時に格闘術も修めています。

無論、確かに任務が第一優先ではありますが

任務外であれば、武を修める者として

戦いの上での約束事を破る気はありません」

 

 

つまりは

 

 

「"受けた借りは必ず返す"

ただ、それだけです」

 

 

凛達の要求を完全に通すことができなかった借りをここで返す。

それが自身が参戦する理由である…と

凛達だけでなく自分自身にも

そう言い聞かせるバゼット

 

八枚目のカードを巡る戦いへと赴く前

凛がバゼットへと告げた言葉を

そのまま返された凛は

 

 

「…封印指定は?

シロの…あの子の存在はその対象に」

 

「くどいですよ。

報告をするなというのも要求の一つだったはずです。

あの少女の保持していた力と正体が想像を超えていたとしても

それで契約を破ってもいいという道理にはなりません。

それに封印指定に入るか否かを決めるのはわたしではありません。

協議し判断するのは、上層部です」

 

 

二つ目の要求

それはバゼットの言う通り

シロエの存在を協会には報告しないというもの。

 

バゼットの切り返しに

凛が神妙な顔をし黙り込む。

そして

やり取りを聞いていたルヴィアが

要求したこととはいえ、報告を怠れば判断もなにもないでしょうに

と、内心では苦笑する。

それと同時に見抜く。

バゼットの語った理由は建前であると

 

 

「なんと言いますか貴女って………不器用ですのね」

 

「む…」

 

 

ルヴィアの評価に

バゼットは思わず顔をしかめるのであった。

 

 

「みんな……」

 

 

先の封印の解除までは協力してくれていたものの

過去のシロエとのいざこざから

命をかけた戦いまでは参加しないかもしれない。

自分一人でも戦う。

そう覚悟していたイリヤだったが

予想に反し全員が参戦し

イリヤは有り難さに感激する。

 

 

「ありがとう………行こう!」

 

 

イリヤ達は覚悟を決めた表情で

視線をシロエへと向ける。

 

 

「───戦意を検知。敵性体であると断定します」

 

 

シロエの宣告に

イリヤ達は身構える。

 

 

「ルビー!どうすれば元に戻るの!?」

 

「封印術式は五層目まで解除しました!

残りは六層目の一層のみ!つまり封印術式は解除される一歩手前です!

そして、迎撃術式は六層目の封印術式の一部です!!

封印を解除すれば迎撃術式も停止します!!」

 

「つまり…なにをすればいいの!?」

 

「治癒術式を起動している美遊さんが

さっきのイメージを保ちながら、シロさんの胸元にある封印術式に触れてください!!

それで封印は解けます!!!」

 

 

夥しい量の魔力の放出に目を奪われていたが

シロエの胸元には封印術式である小さな魔法陣が変わらずに展開されていた。

イリヤ達が封印を解除していったことにより

解析していた時よりも遥かに簡素なものとなった魔法陣が

それに治癒術式の光を纏った美遊が触れればいい、と

 

自分達の勝利条件をルビーが明確化し

倒す必要はないことがわかりイリヤは内心ホッとする。

美遊もまたホッとするものの

シロを助け出す鍵を持っているのは自分だと

緊迫した面持ちで気を引き締める。

 

その一方で

シロエは再構築を進めていた封印術式の魔法陣を一時停止

放出していた魔力共々消失させる。

そして

 

 

「威嚇行動を停止。殲滅行動を開始します」

 

 

シロエの宣言と共に戦いの火蓋が切られる。

シロエは自身の後方に特大の三つの魔法陣を展開する。

イリヤ達にも見覚えのある魔法陣であった。

それは

 

 

記憶走査(メモリスキャン)。キャスターを抽出し再現」

 

 

キャスター戦、最後の攻防にて

キャスターが放とうとした特大の魔力砲の術式であった。

 

 

「あれってキャスターの…!?」

 

 

驚愕するイリヤ達

しかし

それだけでは終わらなかった。

 

 

「二門、追加」

 

「「「!?」」」

 

 

シロエはさらに

砲門である魔法陣を二つ追加

威力を増大させる。

 

 

「すぐに止め…」

 

「ダメよ!間に合わないわ!!」

 

 

キャスター戦の時と同じく

美遊が止めるべく駆け出そうとするも

クロエに止められる。

そして、クロエの予想通りに

砲門の魔法陣が二門増えているにもかかわらず

キャスターを超えるシロエの膨大な魔力量にて

あっという間に魔力の充填を終えてしまう。

 

 

「全員、バラバラに散って!!」

 

 

凛の号令により

イリヤ達が動きだした

次の瞬間

 

 

「五門───壊砲」

 

 

ゴアッ!!!

 

魔法陣に充填された魔力弾が解き放たれた。

直前の凛の号令によりイリヤ達は各自分散した上に

威力を重視したためかシロエが五つの砲門の射線を広げずに集中させたため

魔力砲の射線からギリギリで逃れることに成功。

結果

 

ドガアァァァンッッ!!!

 

シロエの魔力弾は

イリヤ達の後方にあった大空洞の壁面を

木っ端微塵に粉砕した。

 

 

「ッ!?」

 

「…まともにくらえば骨も残らないわね」

 

 

その威力に対するクロエの評価に

戦々恐々とするイリヤ達

 

 

「敵性体、分散を確認。

状況に応じた有効な宝具の逆算…完了。

広範囲かつ継続的な宝具を使用し敵性体を殲滅します」

 

 

そんなイリヤ達を尻目に

シロエは機械的に次の一手を打つ。

 

 

「星に刻まれし傷と栄華───」

 

 

シロエが言の葉を紡ぐと共に

シロエの周囲の地面に無数の黄金の光が生まれる。

 

 

「───今こそ歌い上げよう」

 

 

無数の黄金の光。

その中から現れたのは…無数の刃。

剣や槍、斧など無数の武装が

地面より現出する。

 

 

「嘘…でしょ!?」

 

「ありえない…!?」

 

 

その光景は

八枚目のカードの英霊の攻撃方法と

非常に酷似しており

イリヤ達は目を見開く。

 

 

「……ここまで力を貸すとはね。

やっぱり自分に近しいものを感じたのかな」

 

 

その光景を目にした

地面に寝転んでいる子ギルが

目を細めながら懐かしそうに呟く。

そして

 

 

「擬似展開───民の叡智(エイジ・オブ・バビロン)

 

 

地面より生み出され

シロエの周囲に漂っていた無数の刃が

一斉にイリヤ達へと襲いかかった。

 

 

「キャッ!?」

 

「立ち止まらないで!!弾幕に呑み込まれるわよ!!」

 

「全員固まりなさい!!避けきれないものは互いにフォローを!!」

 

 

生み出された無数の刃は

バラバラに散らばっていたイリヤ達全員を狙い

広範囲に射出されており

それでいて射出されている間にも

地面から武装が次々に生み出されている。

 

こうなってしまっては分散しているメリットはないに等しい。

イリヤ達は再び合流した後

射出されている武装の射線に入らないように

シロエから一定の距離を保ちつつ只管に走り回る。

先の泥の巨人を相手にした時と同じように

さらに

 

 

「!イリヤッ!!」

 

 

ギャリンッ!!

 

イリヤに命中しそうだった剣を

美遊は障壁を展開し軌道をなんとか逸らす。

 

泥の巨人を相手にした時よりも人数が多いため

被弾する可能性があるものは障壁で軌道を逸らしたりと

ルヴィアの指示通りに互いにフォローしあうことで

かろうじて対処はできていた。

とはいえ

撃ち出されている無数の刃の威力は

八枚目のカードの英霊と遜色がなかった。

 

 

「あ、ありがとう。ミユ」

 

 

自身に命中しそうだった剣を防いでくれた美遊に

お礼を言うイリヤ

そして、その一方で

 

 

「ふざけんじゃないわよ!!

こんなの今まで戦ってきたカードの英霊全部をまとめて相手にしているようなものじゃない!?」

 

 

クロエが大声で毒づく。

 

イリヤ達が度々目にししてきたシロエの模倣

セイバーの聖剣、イリヤの斬撃(シュナイデン)、バゼットのルーン

そして今度は八枚目の英霊の模倣をしている、と

イリヤ達に明かされた衝撃の真実

神霊級の魔術と置換された聖杯を使用することにより

宝具の事象の再現を行なっている、と

そう考えているイリヤ達であったが

 

しかし、事実は少々異なり

『神霊級魔術』と『聖杯』

さらに、イリヤ達が知る由もないが『天の鎖』

この三位一体によりこの現象を生み出していた。

そして、この三つを併用することにより

事象の再現だけに留まらず、あらゆる英霊の宝具その現物も含めて完全に再現することすらも可能になっていた。

しかし今は、イリヤ達が考えた通りに

八枚目の英霊の宝具を再現しているというわけではなかった。

シロエに埋め込まれた天の鎖

その天の鎖そのものと言っていい

とある英霊の宝具をシロエは再現していた。

 

英雄王ギルガメッシュがその英霊の宝具を見て思いついたのが

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中身を射出するという戦い方である。

よって、この二つが酷似しているのは当然であり

イリヤ達がそう勘違いするのも無理のないことであった。

 

 

「ク、クロ!気持ちはわかるけど、落ちついて…」

 

「ぬぐぐ…」

 

 

妹(?)であるイリヤに諌められ

クロエは目の前で起きている不条理を

なんとか呑み込む。

 

 

「でも、クロ。なんだか…」

 

「…ええ、わかってるわ。おかしいわね」

 

「?おかしいって?」

 

 

美遊とクロエのやり取りに

訝しんだイリヤが問いかける。

凛とルヴィアもまた傾聴しており

バゼットは会話に耳を傾けながらも

なにかのルーンを刻む作業をおこなっている。

 

 

「あの子、なんで接近戦を仕掛けてこないのかしら…?」

 

 

………………。

クロエが提示した疑問に

暫し考え込むイリヤ達

 

シロエの基本的な武器は

剣、大剣、弓矢、そして魔術

それらを組み合わせることにより

近距離から遠距離まで様々な状況に対応することが可能ではある。

しかし、それでも

シロエが好んでいるのは接近戦である。

無論、イリヤと美遊の魔力弾や凛とルヴィアの魔術など

イリヤ達の戦闘手段が後衛に寄っていたがために

シロエが接近戦を行なっていたというのも確かではあるものの

敵を接近戦にて力でねじ伏せる。

というバゼットにも似た脳筋染みた戦闘方法を

シロエは好み、そして得意としていた。

それは剣術を身につけると共に大剣を多く使うようになったことからも明らかであった。

 

そのはずであった。

しかし

今のシロエは魔術を使った模倣にて弾幕を張るばかりであり

接近戦を仕掛けてくるどころか、その場から一歩も動かず

魔法陣が浮かんでいる光のない瞳で無機質な視線をこちらへと向けてくるだけであった。

 

 

「……今、シロの身体を動かしてるのは迎撃術式よ。

その所為じゃないかしら?」

 

「……いえ、それを差し引いたとしても

接近戦が全くないのはいくらなんでもおかしいわ」

 

 

例えをあげれば

イリヤ達が分散した時に

後衛が基本戦術であるイリヤや美遊、凛やルヴィアに

接近戦を仕掛けられたのなら

各個撃破されてても、おかしくなかった。

美遊に関してのみで言うのであれば、封印術式に触れられるリスクを避けたと考えることはできるものの

それでも美遊以外に関しては説明がつかない。

 

確かに妙だと

頭を悩ますイリヤ達

すると

 

 

「………おそらく、ですが」

 

 

シロエの様子を観察していたルビーが見解を語り始め

イリヤ達の視線が集まる。

 

 

「接近戦をしないのではなく……接近戦ができないのではないかと」

 

「接近戦が………できない?」

 

「先程も言った通り、封印術式が施されていたシロさんの身体の内部は凍りついている状態です。

もちろん、封印術式を五層目まで解除したことで多少はマシになったとは思いますが……激しく動いたりはまだできないはずです」

 

 

封印術式が施されたシロエの身体は

身体の内部…内臓や骨、血管など

全てが凍りついている状態となっていたため

本来であれば、まだ暫くの間は安静にしていなければならないのである。

接近戦はもちろんのこと起きることすら本来は許されない。

 

 

「仮にそんなことをすれば

内臓がひび割れ、砕けてしまい

身体がとても保ちません」

 

「じゃあ、あの子はほとんど半死人の状態で戦ってるってこと!?」

 

 

しかし、確かにそれなら

シロエ自身が全く動こうとしないことに説明がつく。

イリヤ達の方もピンチではあるが、シロエの方も大ピンチである。

この状況にクロエは頭を抱えたくなった。

その時

 

 

「─────敵性体、未だ健在。

膠着した戦況を打破すべく新たな攻撃手段を追加します」

 

 

耳を疑いたくなるようなシロエの言葉が

イリヤ達の耳に届く。

 

 

「キャスターより抽出。攻撃陣展開」

 

 

またしてもイリヤ達が見覚えのある

無数の魔法陣が空一面に隙間なく敷き詰められる。

そして

 

 

「魔力光線。一斉掃射」

 

 

無数の魔法陣より光線が発射され

イリヤ達へと襲いかかる。

 

 

「ちょっ!?」

 

 

空からはキャスターの光線が

シロエからは無数の刃が

一斉にイリヤ達へと襲いかかり

イリヤ達の余力は一気に失われる。

 

 

「ッ!!」

 

 

堪らずクロエが一人

迫りくる無数の刃の前へと飛び出し

 

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

 

四枚の花弁の形状をした光の盾を展開

飛来する無数の刃を防ぎにかかる。

さらに

 

 

「「物理保護展開!!」」

 

 

ルビーとサファイアが上部に星型の障壁を展開

放射される光線を受け止める。

 

 

「どうするのよ!?このままじゃジリ貧よ!?」

 

 

クロエの言う通り

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)と同等の威力を持つ

シロエが生み出した無数の刃は

クロエが展開した光の盾を瞬く間に削り取っていく。

先のように軌道を逸らすように使うのではなく

まともに正面から受け止めているため、消耗も激しいのである。

 

それに加え、ルビーとサファイアの張った障壁も

光線を完全に防げず、光線の何本かは貫通してきていた。

キャスター戦の時はシロエも障壁を張っていたからこそ遮断できていたため

ルビーとサファイアだけでは障壁が足りないのである。

 

 

「そ、そんなこと言われたって…!!」

 

 

この状況を避けるために、先まで走り回っていたのだ。

それが光線を追加したことにより完全に捕まり

足を止め障壁を全力展開する事態へとなってしまった。

 

どうする…!?

 

必死に頭を回転させるイリヤ達

その時

 

 

「まともに動けないというのであれば

接近戦に持ち込み制圧すればいいでしょう」

 

 

先までルーンを刻む作業を行なっていたバゼットが

ようやく作業を終えたのかイリヤ達から飛び出す。

そのまま光の盾を展開していたクロエを追い越し

無数の刃へと身を晒け出す。

その右拳の周辺には、三つの鉄球が浮かんでいた。

そして

 

 

「…シッ!!」

 

 

振り抜かれる右拳と共に

放たれた三つの鉄球は

無数の刃の弾幕に隙間を発生させる。

生じた隙間にバゼットは身をねじ込みさらに前進

地下での戦いと同じ手順にて

シロエとの距離を潰そうとする。

しかし

 

 

「───敵性体一機、前進を確認。

対抗手段を検索、実行します」

 

 

バゼットがシロエとの距離を半分程、潰した時

上空の無数の魔法陣は消失し、無数の刃の飛来もなくなる。

これによりイリヤ達の危機的状況は過ぎ去り

イリヤ達は各々で障壁を解除する。

しかし、それと同時に

 

 

「ッ!?」

 

 

シロエの前方に大きな魔法陣が出現。

開戦と同時に放たれた特大の魔力砲を思い出し

思わず足を止めるバゼット

しかし、バゼットはすぐに気づく。

 

 

(…違う!これは、魔力砲ではない!?)

 

 

出現した魔法陣の術式

それが先の魔力砲の術式とは全くの別物であることに

しかし、気づいた時には既に遅く

 

 

「略式…英霊召喚───バーサーカー」

 

 

魔法陣から目が眩む程の光が放たれ

そして

光が治まるとそこには

 

 

「バ…」

 

「バーサーカー!?」

 

 

バーサーカー()()()()()がそこにはあった。

なぜ()()()()()なのか。

それは身体全体に黒い靄のようなものが覆われており

黒いシルエットのような姿で現界しているからである。

 

 

「な、なんで!?『バーサーカー』のカードはここに…!!」

 

「違うわ!カードは関係ない!!

英霊を召喚する術式を自力で組み上げたのよ!!」

 

「不完全とはいえ、英霊の召喚という奇跡をこんな容易く…!!」

 

 

イリヤが『バーサーカー』のカードを慌てて確認し

信じられないと驚愕しながらも

クロエとルビーがそうではないと否定する。

 

イリヤ達が知る由もないことではあるが

それは英霊を短時間で無理矢理召喚しようとした場合に出現するもの

即ち、英霊の影…シャドウサーヴァントと呼ばれる代物であり

かつて、異聞帯(ロストベルト)にてシトナイが従えていたものと同種のものであった。

『イリヤ』としての縁を利用し召喚したのだ。

 

 

「■■■■■■■■───ッッ!!!」

 

 

バーサーカーの影は雄叫びを上げ

斧剣を片手にバゼットへと襲いかかる。

 

 

「くっ!?」

 

 

バーサーカーの影による斧剣が連続で振るわれ

バゼットはそれを回避していく。

 

ブォン!!ブォン!!!

 

その尋常ではない風切音から

一撃でも、もらえば終わりであると

バゼットは理解する。

そんな中で

 

 

「ハッ!!」

 

 

間隙を縫って

バゼットの渾身の右ストレートが

バーサーカーの影の胸板へと突き刺さる。

しかし

 

 

「■■■■■──ッ!!」

 

 

まるで意に介さず

バーサーカーの影は斧剣を振り回し続ける。

その圧倒的な破壊力と耐久力に

バゼットは

 

 

(ッ!!嫌なことを思い出させますね!!)

 

 

まるで竹槍で戦車に挑んでいるようだと

シロエと戦いボロボロにされた記憶を蘇させられる。

しかしすぐに

弱気になってはいけないと

その記憶を余所へと追いやる。

 

 

(落ちつけ!ルーンで強化し、一撃で仕留めればいい!!)

 

 

幸いと言うべきか

バーサーカーの巨体によりシロエの姿はバゼットからは見えない。

つまりは、バーサーカーが邪魔となりあの厄介な無数の刃も飛んでこない。

バーサーカーとの距離が空けばすぐにでも飛んでくるはずである。

即ち、接近戦をしている今こそが仕留めることのできる唯一のチャンス

バゼットはそう判断し、目の前のバーサーカーのみに意識を傾ける。

そして

 

 

「《硬化》、《強化》、《加速》」

 

 

ルーン魔術を施し、右手の手刀の威力を高め

横薙ぎに振るわれたバーサーカーの影の斧剣を掻い潜り

 

 

「《相乗》…!!」

 

 

右手の手刀をカウンターで突き出そうとした。

狙いは無論、バーサーカーの心臓。

しかし

バゼットは、一つ見誤っていた。

 

先に凜が言った通り

今、シロエの身体を動かしているのは迎撃術式であり

シロエの意識は完全に皆無である。

だからこそ、普段であればシロエが絶対にしない攻撃方法である宝具の射出などという攻撃さえも行なっていた。

大嫌いな八枚目の英霊を想起させるであろうにも関わらずに

 

話が少し逸れたが

今、戦っているのはシロエではなく迎撃術式である。

ただただ機械的に敵を殲滅し、封印術式を保全する。

当然、そこに感情などあるわけがない。

つまりは

『イリヤ』としての感情など持ち合わせておらず

バーサーカーへの親愛なんてものもない。

よって

 

 

 

ズドォッ!!!

 

 

 

バーサーカーごと敵を殺すことに

なんの躊躇いもない。

 

 

バーサーカーの腹部を突き破り

剣や槍…計五本が襲いかかり

 

 

「ガ……ハ……」

 

 

そのうち四本が

バゼットの胴体へと突き刺さる。

さらに

残った一本の剣が

バゼットの脇をすり抜け

 

 

ドスッ

 

 

と、凛の鳩尾に突き刺さった。

 

 

「え………あ………」

 

 

バーサーカーと格闘戦をしていたバゼットの後方にイリヤ達は位置しており

先のシロエの攻撃…地面から再び生み出した武装の射出は

バゼットと同時にイリヤ達を狙ったものであった。

 

凛は目を見開き、苦悶の声を上げながら

自身に突き刺さった剣を見つめる。

そして

 

 

「リンさん!!?」

 

 

身体から力を失った凛は膝をつき

 

どさり……と

 

横向きに倒れる。

それと同時に突き刺さった剣は消失し

凛の腹部から血が溢れ出す。

 

 

「ぐ………まさか、味方ごと攻撃するとは………」

 

 

凛と同様にバゼットもまた

突き刺さった四本の剣や槍が消失するが

それと同時にバゼットの身体を無数のルーンが包み込み

バゼットの傷は瞬く間に塞がる。

 

それは、蘇生のルーンであった。

 

イリヤ達が話し合っている間にバゼットが刻んでいたルーン

それが蘇生のルーンだったのだ。

 

蘇生のルーンによって辛くも難を逃れたバゼットの一方で

腹部に風穴が空いたバーサーカーの影は

シャドウサーヴァントだからか宝具である蘇生能力は発動せず

 

 

「■────……」

 

 

そのまま霧散していき消滅した。

消滅する直前、影が漏らした最後の呻き声は

どこか物悲しそうであった。

 

 

「リンさんッ!!リンさんッッ!!!」

 

「サファイア!!早く治療を!!」

 

 

倒れた凛へと急ぎ近づき

涙目で声を掛け続けるイリヤとサファイアを用いて治癒魔術を施そうとする美遊

クロエはシロエから目を離さないようにし

攻撃が飛んできたら今度こそ対処するべく警戒しているものの

凛が倒れたことで表情は険しく余裕がないように見える。

そしてルヴィアはというと

 

 

「ぬ、ぐ……………〜〜〜ッッ!!!」

 

 

この状況に直面した子供達の様子を見ながら、しばらく逡巡したものの

やがて苦虫を百匹くらい噛み潰したような苦々しい表情をしながら

宝石を片手に倒れている凛へと近づく。

そして

 

 

「全員、落ちつきなさい!!

美遊とイリヤはクロと共に攻撃を警戒!!

遠坂凛は………ッ………(ワタクシ)が治療します!!」

 

 

ルヴィアは心底嫌そうな顔をしながらも凛の治療を引き受け

さらにイリヤ達に指示を出し、落ちつかせることにより

崩れかかった状況の立て直しを図る。

 

 

「で、でも…!!」

 

「シロの攻撃はクロ一人では受けきれません。

安心なさい。必ず助けます」

 

 

嫌そうにしながらも力強く断言するルヴィアに

落ちつきを取り戻したイリヤは美遊と共に

意識をシロエへと向き直す。

 

 

正直な話、ルヴィアとしては

凛がどうなったとしても構わなかった。

それは逆も然りであり

凛からしてもルヴィアがどうなろうと構わない。

だからこそ、ここに至るまで二人は幾度となく

啀み合い反目し合ってきたのだ。

それでも治療を自ら引き受けたのは

状況の立て直しもあるがなにより

 

 

「しっかりなさい遠坂凛!

ここで貴女が死ねば…シロが帰ってこれなくなるでしょう!!」

 

 

ここで凛の身にもしものことがあれば

仮にシロエの封印が解けたとしても

シロエは責任を感じ自分達の下には帰ってこない。

元の鞘に収まることはなくなってしまう。

ルヴィアにはその確信があった。

だからこそ治療を引き受けた。

凛のためではなく、あくまでも従者であり妹同然であるシロエのために

 

ルヴィアが宝石魔術を駆使し凛の治療を始めた。

その時

 

 

「敵性体一機、戦闘不能を確認」

 

 

抑揚のない無機質なシロエの声がイリヤ達の耳に届く。

まるで作業の進捗を確認するかのようであり

どこまでも平坦で事務的であった。

凛の負傷に何の関心もないと言わんばかりに

 

 

最近の無表情だったシロでも

ここまで動じないことはなかった。

それに…味方を巻き込んで攻撃するなんて絶対にしなかったのに

 

 

迎撃術式が身体を動かしている所為だとはいえ

妹の無情な言動に

胸が痛くなるイリヤだったが

 

 

「同時にバーサーカーの消滅を確認。再召喚を行います」

 

 

続いて紡がれた言葉に

イリヤ達の目が見開かれる。

そんなイリヤ達を尻目に

シロエの前方にまたしても大きな魔法陣が出現する。

先と同じシャドウサーヴァントを召喚するための魔法陣である。

そして

 

 

「英霊召喚、バーサー」

 

「させませんッ!!!」

 

 

魔法陣が煌めき、シャドウサーヴァントが再び召喚されそうになった瞬間

バゼットが再び鉄球を射出。

放たれた鉄球は魔法陣へと着弾し、魔法陣の一部が欠損する。

それにより術式は瓦解

魔法陣はその役目を果たすことなく砕け散った。

そして、それと同時に

 

ダンッ!!!

 

バゼットが残り半分の距離を潰し

今度こそシロエへの接近に成功する。

鉄球を放つと同時に全速力で踏み込んだのである。

そこはバゼットの手が届く距離…紛れもなくバゼットの間合いであった。

そして、バゼットはシロエへと右ストレートを放つ。

無論、魔術の発動ができなくなる程度のダメージを与えるために

 

 

しかし、イリヤ達は知らなかった。

 

 

ゴォン!

 

 

硬い物を殴ったかのような

重低音が辺りに響く。

 

 

「な、に…!?」

 

 

今まで戦ってきたカードの英霊全部をまとめて相手にしているようなもの。

先にクロエがそう毒づいたが

そんな程度で済むわけがない。

 

 

記憶走査(メモリスキャン)、オニランドより─────」

 

 

イリヤ達は知らなかった。

シロエの蓄えてきた戦いの経験値は

イリヤ達の想像を遥かに超えていることを

 

 

「─────ランサー、茨木童子を抽出し再現」

 

 

バゼットの右ストレートを防いだもの

それは─────槍。

氷と地面、それぞれ異なった材料で生成された槍が計五本

バゼットとシロエの間に差し込まれ

五本の槍は交差する形でバゼットの拳を受け止めていた。

さらに

 

ギャリンッ!

 

槍は一人でに動き、バゼットの拳を払い除ける。

そして

 

ゴアッ!

 

五本の槍に青色の炎が灯り

五本の槍は炎に包まれながら一つに集結する。

そうして炎の中から現れたのは……巨大な右手。

その右手は人一人を鷲掴みできる程の大きさであり、地面と氷で形作られていた。

呆気に取られているイリヤ達の目の前で、巨大な右手は握り拳を作り

 

 

「擬装展開、愚神礼讃・一条戻橋(エンコミウム・モリエ)

 

 

下からすくい上げるように

バゼットへと巨大な右拳によるアッパーが振るわれる。

 

 

(冷静になれ!動きをよく見ろ!!この程度の速さならかわせ…)

 

 

突如として出現した神秘の塊に

度肝を抜かれたバゼットであったが

先のバーサーカーと攻撃速度に差はそれほどないため

落ちつけば回避できるはずだと

自身に言い聞かせ

迫りくる巨大な右拳に

冷静にサイドステップを行い、回避しようとする。

しかし

 

 

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

 

 

という音と共に

バゼットは何かに足を取られ、よろける。

バゼットは視線を自身の足へと向ける。

すると、そこには

 

 

(ッ!?この、鎖は…!!)

 

 

そこにあったのは氷で出来た鎖。

地面には手の平サイズの魔法陣が浮かんでおり

その魔法陣から伸びている氷の鎖がバゼットの右足へと絡みついていた。

それはバゼットがシロエと戦い敗れた後、拘束に使われた鎖であった。

氷の鎖が右足に絡みつき移動できなくなるバゼット

そして当然それは、致命的な隙となり

バゼットが氷の鎖を視認した次の瞬間

 

ドゴォンッッ!!!

 

巨大な右拳がバゼットに直撃した。

 

 

「ぐはっ!!?」

 

 

それと同時に氷の鎖は消滅する。

バゼットは青色の火の玉となりながら、上空へと殴り飛ばされ

そして

 

ヒュルルルル……パァン!!

 

大きな花火が上空に咲いた。

 

 

「バゼット、が……こんなあっさり……」

 

 

この場に似つかわしくない気が抜けるような宝具ではあったものの

上空に殴り飛ばされたバゼットは

炸裂した花火の衝撃により

遠くへと吹き飛ばされてしまった。

生死不明の上、仮に生存していたとしても

この戦いの間に返ってくることは出来ないだろう。

 

自分達の最高戦力であるバゼットの脱落に

ルヴィアは凛を治療しながらも呆然としてしまう。

それを尻目にシロエは

バゼットの対処が終わったからか巨大な右手を消失させ

視線をイリヤ達へと戻す。

 

 

「………ッッ」

 

 

シロエの無機質な視線に

イリヤと美遊の表情は強張り、冷や汗を掻いた。

その時

 

 

「───山を抜き、水を割り」

 

 

いち早くクロエが動きだす。

バゼットが脱落し、そして凛が深手を負った今

先のように逃げ続けることは最早できない。

シロエを行動不能にするべく、短期決戦で勝負に出るしかない。

そう判断しての行動であった。

 

クロエは黒白の双剣を三組投影し、そのうちの二組をシロエを中心とした四方に別々の方向へと回転させるように投擲する。

投擲された四本の剣は回転しながら互いに引き合い、その軌道を変えシロエへと向かう。

 

 

「なお墜ちることなきその両翼───」

 

 

さらにクロエは転移を行い

一瞬にしてシロエの背後を取る。

その手には残った一組の双剣

そして

 

 

「───鶴翼三連!!!

 

 

四方からは投擲された双剣が飛来し

それと同時に、背後のクロエが双剣を振り下ろす。

 

クロエの絶技

これを凌ぐには、先の生成能力で全方位に防御を固めるか

あるいは負傷覚悟でクロエを迎撃するしかない。

しかし、それを行えばイリヤとそして美遊に

接近する隙を与えることとなる。

そして美遊に接近されれば、封印術式に触れられる可能性が生まれる。

どう転んだとしても、こちらに利が出てくる。

そこまで考えた上でのクロエの攻撃であった。

 

 

「ミユ!」

 

「うん!」

 

 

クロエの意図を察し、イリヤと美遊が駆け出す。

そして

クロエの絶技が、シロエに触れる。

その、刹那

 

 

 

 

 

シロエの姿が、かき消えた。

 

 

 

 

 

「な─────」

 

 

シロエがその場から消えたことにより

クロエの振り下ろされた双剣は空を切り

投擲した二組の双剣も互いに衝突し音を立てながら地面へと落ちる。

 

 

「え…!?」

 

「な、なんで!?動けないはずじゃ!?」

 

 

バゼット戦と子ギル戦にて

ルーン魔術を使用し、自身を強化することにより

まるで消えたように見える程の超スピードをシロエは叩き出した。

それが強く印象に残っているイリヤと美遊は

シロエが超スピードを出し、窮地を脱したのだと

そう思った。

しかしそれでは、シロエが動けないという推測が崩れる。

 

否、そもそもクロエの鶴翼三連は

投擲と斬撃を重ね当てる必中不可避のコンビネーションであり

超スピードだろうと逃げ道がない以上、回避することは本来であれば不可能である。

 

何故、と困惑するイリヤと美遊

そんな中

クロエは気づいた。

戦闘において、それをよく使用するが故に

 

 

(違う!これは……これは、空間転移!!)

 

 

今、シロは聖杯の機能を獲得してる!

それもわたしよりも高ランクのものを…!!

わたしにできることならあの子にできない道理はない!!

そして転移なら逃げ道がなくても…身体を動かさなくても、回避は可能になる!!!

 

 

何が起きたのか即座に看破したクロエは

転移したシロエを探し、急いで辺りを見回す。

イリヤ達の背後、自身の背後、右、左…と

しかし、どこにもシロエの姿はなかった。

 

まずい、とクロエは焦る。

このままシロエを見失ったままでは

不意打ちを受ける可能性が出てくる、と

その時

 

 

「─────記憶走査(メモリスキャン)異聞帯(ロストベルト)より」

 

 

シロエの声が響く。

その方角は

 

 

「上!!」

 

 

クロエが急ぎ上空を視認する。

そして

 

 

「───────は?」

 

 

頭が真っ白になる。

クロエの反応に訝しみながらも

イリヤ達も急ぎ上空を見上げる。

 

 

「え─────」

 

「なに……これ……」

 

 

それを見たイリヤの頭に過ったのは

 

 

『影分身の術!!』

 

『そんな漫画みたいな技が出来るわけないでしょ!?』

 

 

エーデルフェルト邸での

ふざけていた頃のシロエとのやり取りだった。

 

 

「ランサー、ワルキューレを抽出し再現」

 

 

上空には、確かにシロエはいた。

ただし

 

 

「分身体…顕現完了しました」

 

 

()()()()()()()

 

それも二人や三人といった話ではない。

イリヤ達のいる大空洞

その天井が壊れたことにより一望できる雪がちらつく夜空を

埋めつくす数多のシロエ

軽く見積もっても数十人はいるだろう。

その全員がちらつく雪の中、上空にて佇み

無表情のままイリヤ達を見下ろしていた。

服装は変わっておらず子供用のワンピースを全員纏っており

その全ての両目の瞳は赤く迎撃術式の魔法陣が浮かんでいる。

空を埋めつくす程、数多いる同じ容姿の無表情の少女

服装こそは、よく目にするような所謂日常的なものであったものの

それが却って不気味さを増大させていた。

 

 

あまりに現実離れした光景に

一般人のイリヤはもちろんのこと

魔術と関わってきた美遊、クロエ、ルヴィアでさえも

頭の処理が追いつかず呆然としてしまう。

しかし、そんなイリヤ達を待つはずもなく

 

 

「同期開始」

 

 

数多いるシロエ達が動き始める。

シロエ達の左手に魔力で形作られた純白の光の槍が出現する。

そして、光の槍が握られている左腕を頭上へと持っていく。

 

 

ミシ………ベキ………ブチブチ………

 

 

本体であるシロエの左腕から嫌な音が鳴るが

シロエは意に介さず、そのまま光の槍を頭上に構える。

切っ先は無論イリヤ達へと向けたまま…所謂、槍投げの体勢である。

シロエ達は槍投げの体勢のまま、頭上へと掲げた光の槍に

より強大な魔力を込めていき、純白の光の槍はその輝きを増していく。

 

 

「ッ!!全員、固まりなさい!!そして最大出力で障壁を!!!」

 

 

込められていくとんでもない量の魔力に

イリヤ達の背筋に冷たいものが走り、本能がけたたましく警鐘を鳴らす。

ヤバいのが来る。危険だ、と

そして、その警鐘により我に返ったルヴィアがイリヤ達に号令する。

あれだけの数、そして魔力が込められた光の槍が

一斉に投げられれば逃げ場などなく、回避など不可能に近い。

全力で防御を行う以外に手はなかった。

 

指示を聞いたイリヤ達が動きだす。

ルヴィアの下に向かって

ルヴィアの下には負傷した凛がいるため、そこに集まらざるを得ないのである。

 

イリヤと美遊が走りだし

一番離れているクロエも続けて

 

 

 

ガチャ

 

 

 

走りだそうとしたが

聞き覚えのある音と共に

クロエは足を取られ、よろける。

クロエが左足を見ると

予想通り、氷の鎖が絡みついていた。

先にバゼットを捕らえた鎖と同じものである。

それを視認したクロエは

 

 

ドゴンッ!!

 

 

魔力を込めた右拳を地面へと叩きつける。

狙いは氷の鎖が伸びている先の魔法陣

魔法陣が浮かんでいる地面ごと壊そうとしたのだ。

もくもくと土煙が舞う。

しかし

 

 

「…ちっ!」

 

 

魔法陣はへこんだ地面を離れ、宙へと浮かんでおり

破損もなければ効能にも何ら陰りはない。

魔法陣から伸び自身を拘束している氷の鎖もまた当然、健在である。

舌打ちをしながらクロエは黒剣を投影。

氷の鎖を断ち切ろうとする。

 

 

ギリリ…

 

 

氷の鎖は黒剣の刃を通さない。

 

 

「どんだけ頑丈なのよ!?」

 

 

埋め込まれた天の鎖の影響により

シロエが生み出す氷の鎖の利便性とそして強度は大きく向上していた。

それこそ生半可なことでは壊れない程に

 

もっとも、それを知らないクロエは

魔法陣と鎖、両方共に壊すことができず

焦りながら毒づく。

そして、そうしている間に

 

 

「照準完了」

 

 

魔力の充填が終わり

もはや原形がわからない程の輝きを放っている光の槍

イリヤ達へとその狙いを定めるシロエ

 

 

「クロ!?」

 

「速くこっちに!!」

 

 

今、イリヤ達が持ち得る最大の防御手段は

クロエの熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)である。

そして当然のことではあるが、そのクロエが合流できないとあれば

力を合わせて障壁を重ねたとしても、その強度は格段に落ちてしまう。

 

ルヴィアの下へとたどり着いたイリヤと美遊が

焦りながらクロエに呼び掛ける。

しかし

そうしているうちに

数多のシロエ達の左腕が振り下ろされ

そして

 

 

「擬装展開─────終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)

 

 

イリヤの視界は

真っ白に染まった。

 

 

 




モルガン「魔術師であれば"自分と同等の分身"など、いかようにも作り出せる」


特定の人が触れれば勝ちという勝利条件から
とあるのインデックス戦を思い出すかもしれませんが
個人的には
奏章3のアンキ・エレシュキガル戦を思い出しました。


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