Fate/grand order 絶唱魔性戦記シンフォギア   作:ぼけなす

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——————始まりはいつだって、追い詰められていたさ


GX編 『忘却』
第三十七話 忘れ去られたマスター


ーーーー

 

「ん? あれ……」

 

 藤丸空太郎は目を覚ます。彼がいたのは、どこかの路地裏だ。

 

「ここは……イギリス?」

 

 ロンドン、なう。と言わんばかりな時計塔が見えてるのでイギリスだろう。

 

 ボロボロのカルデアの上着を着ており、戦いの後に招かれたのだろうか。

 

「確か、俺は……」

 

 空太郎は記憶を整理する。

 

 異聞帯全てを終わらし、大特異点も解決させ、そして、第七の人類悪を倒し、全てを取り戻した果てに、藤丸空太郎は消えた。

 

 役割を終え、彼は藤丸立香に【普通】の感性を与えた後に、彼女へバトンタッチして消えた。

 

 それから、沖田オルタのいる無窮の果てにきてしまい、のんびりしていたら……。

 

「え? 俺、守護者になったの?」

 

 世界とも契約してないし、それらしきものと会ったことがない。

 

 なら、自分は守護者ないと言えるのだが……。

 

「……まあ、アレに至ってたなら、何が起こっても仕方がないな」

 

 そう言ってから、彼は探索を始めた。

 

 歩き回ると、ライブポスターが張り巡らされていた。そのユニット名は……。

 

 

 

「え、ツヴァイウィング!? まさか、ここは!」

 

 なんと彼が訪れていた世界だった!

 

 異聞帯とも違い、別に存在する世界。例えるなら、空太郎の世界の樹木から派生したのではなく、別の歴史から派生した樹木。

 

 それが立花響達がいる世界だ。

 

「……まさか、ここに来るとはなぁ。全てを終わらせてから再会しましょって言ったけど、まさかなぁ」

 

 彼自身、自分が消えたことで納得してるし、立香に跡を託したので、やり切ったと思っている。

 

 もう、自分には出番がないと思っていた。

 

「んー、でも大丈夫かな。アビーにも言われてたけど、覚えてるかどうか」

 

 藤丸空太郎は、代償として存在ごと消えた。その結果、彼の住む世界で彼を覚えている人はもういない……はずだ。

 

 響達もまた、覚えていない可能性が……ある?

 

「ワンチャン確認がてら会ってみよ。変な人と思われても、うん。いつも通りだし!」

 

 というノリで彼はただ歩く。行き先は定まってないが、散歩を楽しもうとする。

 

 と、そんな最中、ノイズが出現。辺りが騒然となる。

 

「ん?」

 

 空太郎は首を傾げる。なんか色が違うような、いつものノイズと違うような。

 

 そんな違和感を感じる。

 

「海外製?」

 

 普段とは違うノイズをそう決めつけ、魔術を使って接近。魔力を込めた『なんちゃってシリーズ』を使う!!

 

「どりゃ! 卑弥呼パンチ! ヤコブ真拳! マジカル八極拳!」

 

 テキトーになんちゃって奥義を使ってノイズをぶっ飛ばしていく。今も、マシュとの繋がりが効いており、彼には炭化させられることはない。

 

「いくぜ、必殺! ただのガンド!!

 

 固まったノイズをついでにガンドでぶっ飛ばす。

 

 ノイズは灰にならず、煙となっていって消えた。

 

「海外のノイズって煙になるの? エコだなー」

 

 どこがだよ、むしろ大気汚染ものだよ。そう誰かにツッコまれた気がした空太郎である。

 

 そんなとき、見覚えのある銀髪少女がシンフォギアを纏ってこちらへ現れた。

 

「おっ。クリスじゃん。覚えてる? 俺だよ俺ー」

「オレオレ詐欺か! アタシは———

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシは()()()()()()知らねぇ!!

「やっぱしかー……」

 

 期待はしていなかった。忘れ去られてると思っていた。

 

 だから、落ち込む必要はない。そう思うも、

 

「辛い……なぁ」

 

 口から出たのは、寂しそうな言葉だった。自分はもう忘れ去られた存在。もう、()()()()()()()()()()()()と言われたかのような気分を彼は味わった。

 

 対してクリスは気にすることなく、呆れていた。

 

「たくっ。まあいい。ちょうどアタシも用があってきたんだ」

「んー? もしかして何かやからました俺ー?」

「当たり前だ」

 

 クリスのボウガンが、銃口を向けられた。

 

()()()()()。構えろ。今度こそ、消し飛ばしてやる」

「あれれ〜? 俺っていつからノイズ対象になっちゃ、って危ねっ! いきなり撃つか普通!?」

「ノイズが常識語ってんじゃねぇ!!」

 

 自分がノイズ? そんなことありえ……るのか?

 

 空太郎の中に疑念が生まれた。自分は藤丸空太郎。それはわかる。しかし、それは()()()()()()()()()()

 

 存在が消え、人々から忘れ去られたマスター。そんな男が果たして()()()()()()()()と、今言えるだろうか?

 

「藤丸空太郎の記憶を持つノイズ……」

 

 そんな可能性が生まれた。空太郎は今、自分が本物なのか言い切れなくなってしまった。

 

「ハンッ、何を悩んでいるかはわからねぇが、お前がしたことは到底許されねぇよ! なんたって、

このロンドンで騒がしてるヤツだからな!

「ッ!」

 

 クリスの言うことが本当ならば、自分が世を乱す悪役だ。ならば、ここで討たれるべきではないのか?

 

 そう考えてしまう。

 

「……そうなのか」

「そうだ! だから」

「だから……なんだってんだ」

「なんだと?」

 

 自分に言い聞かせた。

 

 まだわからない。情報が足りない。だから、まだ立ち止まるな。

 

「自分が、今は何者なのかわからないままでいいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなのいいわけないだろ!!

 

 魂が震える。心が喚き出す。肉体がやる気に満ちる。

 

 彼はこれまで前を見て歩いてきた。前へ進んできた。

 

 多くの絶望、力の差、無理難題の戦いに対して逃げず、諦めず、立ち向かってきた!!

 

 生きることを諦めるな!! そう誰かが言っていた言葉を思い出し、眼前にいるクリスを見据える。

 

「何をごちゃごちゃと。これまで無口だったくせによ。……まあいいや。なら、さっさと出せよ。人型ノイズのお仲間を呼べるんだろ?」

()()()()()()()()、だって?」

 

 そんなのできるはずがない。そんな()()()()()()()()みたいなこと、今の空太郎にはできるはずがない。

 

「仕方がない、いくぞ!! Coooooo!」

「なっ!? そ、それは、波紋呼吸だと!?」

 

 ゆっくりと手を動かし、そして、合掌。

 

「くらえ!」

「くっ!」

 

 クリスはガードを構える。空太郎は合掌したままである。

 

………五分経っても、空太郎は動かず、膠着状態となった。

 

「……って、なんもしねぇのかよ!?」

「どうだ。これが奥義、見せかけだけの呼吸法(はもん・オーバードライブ)

「見せかけかよ! アタシ、期待してんだぞ!?」

「その隙に、仲間が攻めるのが戦法である。…………いつものノリでやってしまいました、許して」

「ざっけんな!! 来ないならこっちからいくぞ!」

「チィッ!!」

 

 舌打ちを吐き、彼はクリスのエネルギー弾を躱す。歌を歌いながら迫る弾丸達を避けられたのは、空太郎がこれまで戦ってきた戦闘経験によるものだ。

 

 多くの激闘が彼の選球眼を鍛え上げたのだ。

 

「ちょせい! この程度が駄目か! なら、次はこうだ!!」

「ちょ!?」

 

 今度はミサイルが飛んできた。空太郎は瞬時に路地裏の隙間に飛び込み、爆風と共に吹き飛んだ。

 

 彼は逃げ出した。今の彼には装者と互角に戦えるどころか、圧倒的な差により蹂躙されるしかない。

 

「逃げるんじゃねぇ!!」

「うっせーバーカ!! そんな痴女みたいな格好して恥ずかしくないんですか! 十七歳の女の子が上半球晒して恥ずかしくないですか!!」

「ちょ、それは言わないのがお約束だろう!?」

「言うぞ俺は! 大体なんでシンフォギアの戦衣装はエロいままなんだよ!! もっとフリフリして露出度少ない魔法少女とか見習えよ!! プリキュア見習えよ!!」

「最近の魔法少女とプリキュアも露出高いんだぞ!! 世間だと当たり前だ!!」

「マジすか」

「マジだな!!」

 

 衝撃の事実が空太郎を襲う!!※たぶん違います。誤解です。

 

「とりあえず、逝っとけ!!」

「ぬォォォ!?」

 

 ミサイルとエネルギー弾のオンパレード。終いには大きなミサイルに乗ったクリスが、エネルギー弾を使って彼の足を撃ち抜いた。

 

「ぐ、が、いっつ」

 

 機動力が下がる。痛みで足が動かなくなりそうだ。けれど、彼は逃げることをやめない。何より———諦めることを、やめない。

 

「しぶとい!!」

「ず、ぁ!」

 

 今度は肩を貫かれた。だが、まだ止まらない

 

「血出るなんてどうなってやがる……。まるで本気で人を撃ってるみたいで後味ワリィ」

「なら、撃つなよ……!!」

「……ワリィがこれも仕事だ。安心しろ、楽に殺してやる」

 

 大広場に出るも、遂に痛みで足が止まる。膝についてしまい、動けなくなる。

 

 銃口を頭へ向けられた空太郎は思う。

 

 

———このままでいいのか?

 

———このまま終わっていいのか?

 

 もし、仮に自分がノイズとしてならば、このまま終わっていい。だが、しかし……もし、仮に自分が()()だとしたら?

 

「そんなの……駄目だろ」

 

 クリスに人殺しをさせてしまう。人殺しをしてしまったこの少女は()()()()()()()()()

 

 ソロモンの杖を使ったことで罪悪感を感じてしまい、人が死ぬ様を見て、自責してしまう少女が、自らの手で人を殺してしまえば……おそらく耐えきれない。

 

 彼女は自責のあまり、心が折れ、死ぬ。

 

「そんなこと……やらせて、たまるかァァァァァ!!」

 

 願え、吼えろ、唄うのだ!!

 

 いつだってそうだ。いつもそうだ。

 

 自分にできるのは前へ進んでいくことだけ。立ち止まらず、前を見て駆け抜けることだけだ!!

 

 託されたものが多く、その想いを受け取って、彼は前へ進む。

 

「バトンタッチ……だろ?」

 

 ゆえに———告げろ。

 

 我が想いに応える者よ。

 

()に銀と鉄。 ()に石と契約の大公。 降り立つ風には壁を。 四方(しほう)の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路(さんさろ)は循環せよ」

 

 空太郎は左手をかざす。その甲には、()()()()()()()()赤く輝く令呪が浮かび上がる。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる(とき)を破却する」

 

 詠唱を唱える。彼が喚びだすのは歴戦の戦士達。

 

「ッ! 何しやがる!!」

 

 焦ったクリスは飛び退き、エネルギー弾を撃ってきた。対して空太郎は強引に身体を立ち上がらせ、血を噴き出すも気にせず、詠唱を言う。

 

「告げる。(なんじ)の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、人理の轍(じんりのてつ)に従うならば応えよ」

 

 光輝く甲に刻まれし、令呪。空から陣が描かれる。

 

「汝、星見の言霊を纏う七天。

降し、降し、裁きたまえ、天秤の守り手よ!」

「くたばれェェェェ!!」

 

 クリスの何十億のエネルギー弾が飛んでくる。

 

 空太郎に守る術はもうない。力尽きて、膝についてしまった少年にはもう、避ける力も立ち上がる力もない。

 

 そう、彼はここで終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことさせると思ってる? この僕が!!」

 

 声と共に陣から飛び降り、そのままエネルギー弾を()()()()()()()()()()()()

 

「んなっ!?」

 

 これにはクリスも驚く。まとめて弾くならばまだいい。しかし、一発ずつ全てを弾くなどあり得ない!!

 

「お待たせマスター!! 僕がきたよ!!」

「……なんだよ。俺、……」

 

 空太郎を助けたのは小柄で白に近い銀髪を靡かせた美しき少女。龍が妖精となり、その美貌は妖精國より評価された最強にして最高の騎士の一人。

 

「サーヴァント、妖精騎士ランスロット———真名、メリュジーヌ。マスターの助けに、私は応えたよ!!」

「いけるじゃんか……まだ」

 

 泣きそうな顔の空太郎と、笑顔のメリュジーヌ。忘れ去られたマスターを、()()()()()()()()()へ変えた。




藤丸空太郎
バイタル:普通
メンタル:やや危うし

雪音クリス戦
ギミック:
・ワンブレイクで勝利
・サポートのメリュジーヌしか出撃できない

『カルデア側からの支援なし』
・レベル低下、自身のレベルが40までダウン
・スキル封印、宝具威力ダウン

『マスター絶不調』
・攻撃力、防御力アップ
・マスタースキルの使用不能

ーーーー

という感じのオリジナル展開です。GXの序盤。ナスターシャを地球に帰してからのお話です。

現在のクリスを含むこの世界の人達(一部除く)は藤丸空太郎のことを忘れています。謎の国連組織カルデアがいつ発足されたのか不明で、それを取り潰そうとするもトップ数人から待ったの言葉がかかる繰り返しを重ねています。

なぜかはわかりませんが、取り潰したらAUOという生物が襲ってくるという謎の脅迫観念があるためです。……なので、まだカルデアあるよという感じの設定です。

さて、上記でも書きましたが空太郎のメンタル状態を表してます。ギャグでもシリアスでも、序盤の彼はとことん追い詰めていこうと思うので、覚悟してね(愉悦)

次回はカルデア側のお話と、マスターとして戦うも彼は限界だったという話です。

———もう、いいじゃん。終わったことだし
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