Fate/grand order 絶唱魔性戦記シンフォギア   作:ぼけなす

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—————まだまだ追い詰めるよ、彼を


第三十九話 終わらせる

 

ーーーー

 

 響達は本部に戻り、空太郎という人型ノイズについて弦十郎に報告した。彼はしばらく思案顔となり、そして顔を頷く。

 

「彼をここに連れてくることはできるか?」

「そうしたいのは山々だが、こう……やっちまった手前、アイツの側にいる女達が警戒してくると思う。……アタシらは敵対してしまったからな」

 

 クリスの言葉に、響の胸がチクリと痛む。敵対するべきではなかった。話を聞いてあげるべきだった。

 

 後悔が、彼女を蝕み、苦しめる。

 

「……私、間違ったのかな」

「間違いじゃないさ。現に、彼がこの騒動を引き起こした原因のはずだ。気に病む必要はないさ。しかし……」

 

 これまでノイズが()()()()()()()()を見せたことがあった。それが、まさか会話できるようになるとは、弦十郎も思っても見なかった。

 

「了子くんがいたらな……」

 

 いない人間を、仲間を考えたところで意味がない。()()()()()()として喚ばれない限り、彼女はここへ来ることはない。

 

「セレナからの報告は? キャスターに、調査をお願いしてんだろ?」

「それが……キャスターからの音信が繋がらなくなったんだ」

「はぁ!? なんでだよッ。ジョンもといウェルの英霊ヤローはサーヴァントだろ!?」

 

 セレナのサーヴァントであるジョンもとい英霊ウェル博士は、()()()()からいた英雄だ。

 

 本人は、自身をウェルであることを否定的で、英雄に対して悲観的。それにめんどくさがりなので、良くサボることがあるが、ここぞの時にはしっかり仕事するサーヴァントだった。

 

「セレナくんからの報告だと、調査の途中で謎のエネミーと遭遇し、そのまま通信が途切れたそうだ。おそらくは……」

「ありえねぇ! アイツはクソ雑魚だが、その程度やられるタマかよ!!」

「クリスちゃん……」

 

 噛み付くクリスに、弦十郎は宥めるように言う。

 

「落ち着け。まだ死んだとは言えない。彼とのパスが繋がったままとセレナくんから聞いている。だから……」

「司令! セレナさんからです!」

 

 友里あおいはセレナの通信を繋ぎ、映像が出てきた。

 

『すみません、弦十郎さん。……キャスターのパスが切れました』

「そんな……!」

 

 絶句した。ショックだった。まさか、仲間がこうもあっさりと逝くなんて……。

 

「……原因がなんなのかわかるか」

『おそらく敵にやられたと思います。ジョンが遭遇したのは、ノイズでした。……例の人型ノイズが従えるノイズでした』

「……彼か」

 

 セレナの言葉に、弦十郎は原因が空太郎にあると考えてしまった。そして、クリスはキッとセレナではない誰か、ここにはいない空太郎へ敵意を向けた。

 

「野郎……許さねぇ。絶対ぶっ殺してやる!!」

「あたしもだ」

 

 それに共感したのは、天羽奏だった。ライブの打ち合わせが終わり、司令室へ戻ってきた彼女の目は、ノイズに向けて憎悪を滾らせていた。

 

「あたしの家族はノイズにやられた……。絶対、駆逐してやる……!」

「奏……」

 

 隣にいた翼は、なんとも言えない表情で見ていた。

 

 【S.O.N.G】の方針が決まってしまった。空太郎は捕縛…………または討伐という形で決定してしまった。

 

 最悪の結末。それがまさに始まろうとしていた。

 

 

……一方、響は未だに迷っていた。

 

 本当に……本当に彼が()なのか?

 

「悪者だった……なんで、死にたそうにしてるの?」

 

 響の言葉に答える人は……まだ()()()

 

 

ーーーー

 

 空太郎がある宿泊施設で休みをとっていた。

 

 彼は今、お金や身分などない無職なのだ。当然、宿泊などできるはずがなかった。

 

 

……そう一人ならば。

 

 

 ここにはモルガン(女王様)がいた。

 

 彼女のカリスマ性が、店員を支配し、彼らを傅かせ、讃えられるようにしてしまった。さすが、妖精國の女王。人を従う力をよく理解している。

 

「……なぁ、モルガン」

「なんでしょう」

「ホテルはいいよ。雨風凌げるなら、もうこの際なんでもいい。ホテルの人達をカリスマでわからせるのはいいよ。緊急事態だから。でもね……」

 

 空太郎は一息、吐いてから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、ラブホなの!?」

 

 そう、空太郎達が宿泊してる施設が、恋人達の憩いの場であった。なんか、致すための道具が揃っているし、隣から声が聞こえるし、どこからどう見ても合体するしかない施設なのだ。

 

「お城でしたから」

「いや、城だけど全然違う意味の城だからね!? つーか、こんなとこを一人の男と複数の女の子と泊まるなんて、明らかに俺ってクズ男じゃん! ハーレムしてるクソヤローじゃん!」

「そうですか? カルデアでもハーレムしてましたし、未だに私以外のバーサーカーとの契約も切っていませんでしたし」

「無理だよ! モルガンだけ働かせたらバーヴァン・シーが怒るからネ!」

「そうなのですか? 全くあの子ときたら」

「しようとしたら、あの子、ガチ泣きしてたならね!?

「そうですか。なんて、親想いな良い娘でしょう」

「ダメだこの親バカ。なんとかしないと……!」

 

 件のバーヴァン・シーはベッドでトランポリンしていた。メリュジーヌはなんか羨ましそうに見てるところをニヨニヨしながら、バーヴァン・シーは笑っていた。

 

「楽しそうで何よりです」

「まあ、楽しむのはいいけどさ。てか、よく貸してくれたなここの人」

「オーナーから『ぜひ使ってください』というお言葉をいただきましたから」

「そうなのか……ありがたいよ」

「あと、『冷めた目で踏んでください、女王様!!』とお願いされたので、踏んであげました。なんでしょうか、あの熱意は」

「訂正! ただの変態だったここのオーナー!!」

 

 なお、オーナーは満足したのか、このホテルで高い部屋を案内してくれた。お金もなぜか貰えたので、モルガン的にも魔術なしで貸し出せたことで満足だった。……彼女の天然なところはどうにかしないといけないと思う空太郎である。

 

「では、これから一戦やりましょうか」

「やらないよ!? 健全な女子というか、娘さんの前でヤらないよ!?」

「ん? あたしも混ざるのか? 変態だなマスターは」

「誰が親子丼するか! そんな変態的なこと言うのはマッドサイエンティストだった頃の立香の専売特許だよ!」

「え。でもアイツ、『ハーレム王に私はなる!!』って言ってたぜ

「あれぇー!? 普通に戻ってないのあの子ぉ!?」

「いや外道戦法がなくなっただけで、アイツは相変わらず魂がオヤジだぜ。……このあたしでさえ、ゾッするぜ。茄子とマジで百合百合してた」

「俺の後輩、寝取られてる!? でも忘れられてるから仕方ないモンネ! そりゃ、取られるよね!?」

「泣いてんのか?」

「泣くよ!? だって、まさかのキマシタワーで取られるなんて男として泣くよ!」

「それでは私が慰めましょう」

「だから脱がないの!!」

 

 モルガンが脱ごうとするのを止める空太郎。すると、これまで黙っていたバーゲストが挙手した。

 

「陛下、私も参加してもよろしいでしょうか」

「参加しちゃダメだってバゲ子さんや! つーか、君は愛した人を物理的に食べちゃう習性あるからダメ!! 色んな意味でヤバスだから!」

「だ、大丈夫ですマスター! あなたに夜這いして、そうなってしまったことがありましたが、あなたは耐え切りました!

「俺の頭ガジガジしてたもんね! スプラッタだったもんね! というか良く生きてたよ俺ぇ!」

「そういえばマスターって、異聞帯の終盤に近づくほど、めちゃくちゃ頑丈になってたしね。……ギャグ補正?

「一言で片付けないのメリュジーヌさんや!」

「あたしに吸血されても、翌日ケロってしてるしな」

「貧血で倒れたわ!! 翌日から書類整備するのがしんどかったわ!!」

「あ。マスター、僕も参加してもいい?」

「あたしも。お母様が参加するなら」

「ノリで混ざろうとすんな! 妖精騎士共ぉ!」

 

 やりたい放題か!!とツッコむ空太郎は頭を抱える。

 

 と、そんな空太郎にクスクスとモルガンは微笑む。

 

「よかった。元の貴方に戻りました」

「元の俺……?」

「はい。さっきの貴方は酷い顔をしていました。今にでも、死にそうな顔でしたよ」

「……そっか」

 

 空太郎自身、気づかなかった……というわけでもない。何せ、さっきまで彼は()()()()()。もう何もかも、投げ出していたのだ。

 

「今の貴方に必要なのは目的です。これからどうしますか?」

「どうする……って」

 

 どうしたらいい。カルデアとしての使命は、もう背負うこともなく、義妹はもう狂気に侵されているわけでもなく、後輩は自分のことを忘れて義妹と仲良く暮らしてるはずだ。

 

……もう自分に、目的も、夢も、希望なんてない。

 

 だからこそ……彼は戸惑った。

 

「……なんのために、俺は」

 

 ここにいるのだ。そう言葉が続かなかった。なぜならモルガンが、彼の頭を抱きしめてきたからだ。

 

「大丈夫です。今はなくてもいずれ見つかります」

「そうかな……」

「はい。だから今はお休みください。休んだら、次のことを考えて動きましょう」

 

 それが、貴方の取り柄。私達サーヴァントが共に歩みたくなった理由。モルガンはその言葉を呑み込んだ。

 

 まだ彼には、その言葉を出すには早い。彼の心はもうズタボロで摩耗し切っている。そしてその心は閉ざしかけている。

 

 ゆえに、言ったところ彼は受け入れられない今はまだ、きっとそうなのだ。

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……うん。今は休むよ。とりあえず、次は俺のこと、知りたい。俺がノイズなのか、どうか。そして……俺の偽物がいるのかどうか」

 

 空太郎自身、まだ見ぬ自分の存在。それが響達に酷いことする敵だ。そいつを倒さない限り、彼はまだ安心できない。

 

「それがたとえ、その響という女の子と敵対してもですか?」

「敵対するよ。……それしか、ないじゃないか」

「ッ……マスター」

 

 彼らしくない。とても弱々しく情けない声だ。本当に限界だったのだろう。ゆえにモルガンは、魔術で彼を眠らせることにした。

 

「おやすみ、マスター。良い夢を」

「陛下、もしや……」

 

 バーゲストはモルガン陛下に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠ってる彼にあんなことやこんなことを……!!」(頭ピンク色)

「その手がありました……!」(衝撃!!)

「お母様ァァァァァ!? 落ち着いて!? それやっちゃいけないことぉ!!」(普通の反応)

 

 ボケるバーゲストに、天然でノるモルガン。この中で比較的、常識人は意外にもバーヴァン・シーだったりする。

 

「なんだ、バーヴァン・シー。せっかくマスターが無防備なんだぞ。こんな、無防備見せられたら…………ジュルリ

「いや、何喰おうしてんだテメェ!? テメェのそれは性的じゃなくて食欲だろうが!!」

 

 涎を垂らすバーゲストにバーヴァン・シーがツッコむ。

 

「落ち着け、バーヴァン・シー。僕や陛下がそんなことするはずがないじゃないか」

「当たり前だ! 人が寝てる間にコトをするんじゃねぇよ!」

「そうとも! やるならやるで、無理矢理組み敷けばいいじゃないか!!

「オメェもオメェでヤベェよ!? それ、アウトだよ人として」

「僕はドラゴンだよ?」

「ドラゴンでもしちゃいけねぇよ!!」

「ふむ……私としては逆に組み敷かれて、支配されてみたいのですが

「お母様ァァァァァ!? 娘の前で性癖暴露しないでもらえますぅ!? てか、お母様そんなキャラじゃないでしょ!?」

「娘よ。貴女にも知らない母がいるのです」(ポッ)

「どこのエロゲーだ!?」

「「Fateはエロゲーでしょ」」

「元祖はな!!」

 

 ボケるバーゲストとメリュジーヌ。天然で乗っかるモルガン。もう、ツッコミが大変だ。

 

「クッ……本来のあたしは冷酷で残忍な女よ。なんでこんなツッコミ担当なんかにぃ!」

「ですがバーヴァン・シー。貴女、マスターやその友人からいただいたお花をしっかり育ててるじゃないですか」

「お母様ァァァァァ! それ、人前で言っちゃダメェェェェ! 特にこの妖精騎士二人には!!」

 

……空太郎のバーヴァン・シー。実は良い子な面がたまに出てくる女の子である。ニヨニヨする妖精騎士二人にギャーギャー騒ぐバーヴァン・シー。

 

 そんな有様を見てモルガンは、ふと懐かしく思う。

 

「フフ……そういえば、こういうこと。あの聖剣となった子もやってましたね」

 

 彼女達のやりとりが、カルデアでまだ待機しているアルトリア・キャスターと村正のやりとりに似ていたことに、モルガンはクスクス笑うのだった。

 

 空太郎もまた……穏やかに、それを聞いているのかのように眠りについていた。

 

ーーーー

 

ピキーン!!

 

「ハッ! 誰か私の噂してるような気がします!」

 

「いつも通りだろ。アルトリアが、アホ面晒して寝てたってことだろ

「そうだね。大食いしてるのが、リスっぽいって噂してるでしょ

「そんなことないもん!!」

「あ、ウノ。ラッキー」

「やるな。こっちもウノだ」

「そういとこだぞぉ! 村正ァ、オベロンッ」

 

 彼らの出番はまだまだ先。まだ()が求めない限り、まだ。




藤丸空太郎

バイタル:安定
メンタル:マイナスから絶不調へ。……が、まだ不安定になりつつある

まだまだ予断が許せない状況なので、監視を続けられたし。

ーーーー

とりあえず、S.O.N.G側は敵対関係になりましたー(汗)
いや、まあ、最終的にどうにかするけど、空太郎のメンタルどんどんヤバめにしてます。

彼に救済はあるのでしょうか?

次回、ギャグ回で、そのまた次が不信

——————その過ちが、袂を別つ



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