Fate/grand order 絶唱魔性戦記シンフォギア   作:ぼけなす

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———遂にヤツが現れる


第五十一話 マスターの名前は

 

 

ーーーー

 

 私と響が廃工場へ逃げたものの、そこに待ち構えていたガリィと遭遇し、アルカノイズによって追い込まれた。

 

 しかし、私は「わたしだけじゃない。響の歌に救われて、響の手で今日に繋がっている人 たくさんいるよッ! だから怖がらないでッ!!」という言葉で、目を覚ましてくれた。

 

 彼女の目に決意が宿る!

 

「違うッ! そうするしか なかっただけで……そうしたかった訳じゃない……わたしは、戦いたかったんじゃないッ! シンフォギアで、守りたかったんだッ!」

 

 私に視線を向けてお互い頷いた。

 

「いってくる!」

「待っている」

 

 響はシンフォギアを纏い、彼女はアルカノイズへ向かう。本調子に戻った彼女に、もう敵はいない……!

 

 響の目的はその先に待つガリィである。一直線に最短へ、向かっていく!

 

「うわーあたし負けちゃうかもぉ」

 

……嫌な予感がした。私は響に声をかけようとしたとき、ガリィが「……なんてね」と呟いた。

 

 それは罠だった。突如、向かってきた高火力の弓矢。それを受け止めたことで後方へ吹き飛ばされ、さらには二人の人影が響へ向かう。

 

「ッ、サーヴァン———」

「ゆくぞ、ポルクス!」

「はい、兄様!」

 

 二人の兄妹による連撃。追い打ちとばかりの

 

「「双神讃歌(ディオスクレス・デュンダリダイ)!!」」

「うぐァァァァァ!!」

 

 宝具による突撃攻撃により、響のギアペンダントが破壊され、彼女は焦点の合わない目を開けながら、シンフォギアが解除される。

 

 全裸となって倒れ伏す彼女に駆け出した。

 

「目を開けてッ! 響ッ! お願い響ッ!」

 

 私は必死に声をかける。

 

 しかし、彼女の意識は回復することはない。嫌だよ……こんな、こんなのって……!

 

「……あまり気乗りしないな」

「仕方ありません。これもマスターのため。マスターが求めた者を誘い出すためです」

「フンッ、あの人間のためなどではない。……まあ、そいつには同情してやるがな」

「あなた達……!」

 

 睨みつけるが、ガリィが嘲笑う。

 

「ただの小娘に何ができるってのよ。まあ、そいつにもうちょっと辛い目に合わせるのも……いいねぇ」

 

 ガリィがアルカノイズを私へ差し向けようとしていた。

 

「オイ、目的はガングニールの女と聞いてるが?」

「別にいいでしょ。これもまた愉悦ってヤツのスパイスになるでしょ?」

 

 ガリィの差し向けたノイズ達の腕が伸びる……!

 

 このままだと私は……。

 

 そんなとき、彼が現れた。

 

「くだらねぇ」

「えぇ、つまらないわ」

 

 ノイズ達の腕を消しとばしたのはサーヴァントの二人。一人はクー・フーリンさんだけど、なんか黒い怖い感じ。もう一人は確か、コノートの女王であるメイヴ……さん?

 

「三文芝居のスパイスにするんじゃねぇよ」

「なんですって……!」

 

「そのとぉーりぃ!!」

 

 大きな声が響く。ガリィだけでなく、双子のサーヴァントが警戒心を高めた。

 

 そう、その人は……。

 

 

 

 

 

 

 

「そう、アタクシよぉぉん!!」

 

 漢女(オネェ)でした。筋肉がしっかりあるけど化粧したロベルトさんでした。

 

「きゃあァァァァァ! 化け物!?」

「だぁるぇが見るに耐えない怪物ですってェェェェ!? しどい! しどすぎるわぁ!!」

「だってそんな魔法少女服で着たら化け物って言いますよ!?」

「失礼しちゃうわ! これも立派な概念礼装の付きの戦闘服よぉん!!」

「マジですか!?」

 

 カルデアはどうなってるんですか!?

 

 二刀流のマッドはいたり、筋肉を見せびらかせていくマッチョだったり、遂には魔法少女(怪物)!? 

 

 そんな人しかいないのですか!?

 

「さぁ、マジカルパワーで助けるわよぉん!!」

「マジカル(物理)でですか!?」

「違うわよ! もっとファンシーなもよぉん! いくわよぉん、メイヴちゃぁん!」

「任せて!」

 

 ロベルトさんとメイヴちゃんがポーズを決めて、響に向かって何かを放つ!!

 

「コノート流、マジカル変身ビーム!!」

「なんだそれ、聞いたことねぇぞ」

 

 クー・フーリン(オルタ)さぁん!?

 

 聞いた事ないビームを私の友人に放ってるのですかぁ!?

 

 響に当てられたビームが彼女を光にして、そして……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんかアイドル衣装となった。リアルライブとかしてるヤツの。

 

「んぅ……私……って、なんか変身してるぅ!?」

「そうよぉん! これから行うのは立花響アイドルデビューよぉん!!」

「いや、さっそく意味がわからないですけど!?」

 

 ホントです。何言ってるのこの人……って魔法少女服からカルデア服に変わってますし。

 

「さぁさぁ、今から始めるわよぉん! ステージオープン!」

 

 ッ! いきなり地面から台上が!! そしてなんかマイクが出てきたんだけど!

 

「って、戦い中に何してんだ!?」

「シャァァァァァラップ!! お黙り、スター誕生の邪魔するんじゃないわよぉん!」

「あ、はい。すみません」

「おぉ? な、なんかやるのか?」

 

 ミカって言うオートスコアラーも来たけど、これから始まるのって……。あ、ペンライトある。これ、使ってもいいのかな?

 

「では言ってみましょう! 【ALL LOVES BLAZING】!!」

「それ五期の歌ぁ! 今、歌っちゃいけないヤツゥゥゥゥ!!」

「大丈夫! 胸の歌を信じなさぁい!!」

「いや、ありがたい了子さんの言葉言われても! あぁ、もう知らないから!」

 

 響が歌を歌う。その姿に私は……私は……!!

 

「きゃー! 響ィィィ! 最高ォォォ!」

「未来ゥゥゥゥ!?」

 

 歌い終えた後にツッコむ。それから写真撮影が行われ、メイヴさんともツーショットされ、そして、いつの間にかいたミスクレーンさんによって着せ替え人形にされ、次第に響の目が先ほどのように虚になっていった。

 

「いいわよぉん!! 実にExcellentォォォォォォ!!」

「響、可愛いー!!」

「…………だれか、たすけて」

 

軽いステージに立たされて、可愛らしい衣装を着た立花響と、ペイントライトを振る私。

 

 控えにミスクレーンさんが顔面崩壊(しゅごいと言う顔)と、ポーズを決めるメイヴとすごい白けた目で見守るクー・フーリン・オルタさん。

 

 そしてそれを監督するロベルトさんと、ポカーンしているガリィとミカの二人。

 

 双子のサーヴァントのうちの妹さんが、「いいなぁ」と言った感じで、お兄さんの方が宇宙猫のような感じになっていた。

 

「何やってんだお前らァァァァァ!?」

 

 そんな最中、 なんでこうなっているのか、どうしてシンフォギアではなくアイドル衣装なのか、空太郎さんはそれらを込めてツッコんだ。

 

 

ーーーー

 

「以上です!!」

「以上です、じゃねぇよ!! 異常だわ!!」

 

 空太郎もツッコむ。だって、敵をそっちのけでいきなりアイドルデビューさせるなんて、衝撃的過ぎた。

 

「てか、ロベルト! 戦えよ! カストロとポルクスを相手しろよ!」

「えぇー? だぁって、この二人とただやっても美しくないじゃなぁい。もっと華やかにしないといけないしぃ」

「華やか過ぎるわ! 見ろよ、オートスコアラー共を! いきなり過ぎてぽかーんとしるぞ!?」

 

 未だに処理が追いつかないガリィとミカ。え、何してるのこの人ら、と言った感じで動けなくなっていた。

 

「貴様か空太郎。フンッ、今頃助太刀とはな」

「カストロ……お前、覚えて……」

「当然だ。忘(・)却(・)補(・)正(・)持(・)ち(・)は(・)覚(・)え(・)て(・)い(・)る(・)。そちらも同じだろう」

「……まぁね」

 

 そう、アベンジャー達は覚えていた。空太郎との繋がりに対して、他のサーヴァント達に言わなかったのは少(・)数(・)だ(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)だ(・)。

 

 いきなり、知らないマスターの名前を出せば洗脳などと疑われる可能性があったと彼らは言っていたので、敢えて言わなかったという理由だった。

 

「人間。よく聞け。貴様はオレの敵だ。よってこの場で始末をつけるのも薮坂ではないが、今日は手を引いてやる」

「カストロ……」

「フンッ、そんな顔したところで、オレとポルクスが手を緩めるとでも……」

「そのポルクスさんが、響とユニット組んで歌ってますが」

「妹ォォォォォォ!?」

 

 まさかの片割れが、敵とユニットを組む事件発生。せっかくカッコよく決めたのに台無しである。

 

「ポルクス! なぜ、人間と一緒に歌っている!?」

「え、だって楽しそうでしたので……。駄目ですか?」

「許す!!」

「ありがとうございます兄様ぁ!」(天使の微笑み)

「おぉ! これぞ、妹スマイル! ステージの上だとなおさら輝くぞ!!」

「「オイコラ、シスコン」」

 

 空太郎とイアソンがツッコむ。ツッコミがボケへとシフトした瞬間である。

 

「カストロさん、どうぞ」

「いいのか? フッ、感謝するぞ人間の娘。共に推しを応援しようではないか」

「感謝の極み」

 

 ペンライトを渡す未来。先ほどの敵対関係がなかったかのように進められていく。これにはガリィも正気に戻った。

 

「いや、さっきのやり取りなんだったの!? アンタ、さっきカッコ良く決めてたじゃないの!」

「黙れ! これから妹が歌うのだ。黙って聞け!!」

「この人類最古のシスコンが!」

「褒め言葉だ!」

「威張るんじゃねぇよ!?」

 

 もはや、元の空気に戻らない。弓矢を構えていたサーヴァントはなんか、可愛い女の子が歌う様に「いいねいいね! この後、口説こうかなー?」と呟いた後、謎(・)の(・)美(・)女(・)にチョーククリーパーをかけられて倒れていたりする。

 

 あれ、あの人知ってなくね? なんか宝具でも見たことあるんじゃね?

 

 そう思う空太郎である。

 

「ククク……まさか、ここまでやるとはね」

 

 そんな最中、ヤツが現れた。黒いフードを着込んだ怪しい者。

 

 彼女に対して、カストロとポルクスは「マスター」と呟いていた。

 

「あの人……マスター」

 

 未来が思わず呟き、ロベルトは警戒心を高めた目で射抜く。どこ風を吹こうとも気にしない黒フードのマスターは彼らに向かって言った。

 

「今日のところの目的は達成した。これより、我々は貴様らに宣戦布告を告げる」

 

 「ククク」と笑い、

 

「さぁ、始めよう。聖杯せんそ」

 

「よし死ね。簡易召喚、【謎のヒロインXX(ダブルエックス)】」

 

「へ?」

 

 空太郎が簡易召喚したダブルエックス。宝具の蒼輝銀河即ちコスモス(エーテル宇宙然るに秩序)を繰り出した!!

 

「ダーブール、エェェェェクス!!」

「ちょ、マジ、待って!?」

 

 黒いフードマスターが概念礼装 月霊髄液(ウォールメン・ハイドラグラム)で防御。三度の無敵でなんとか防ぎ切り、ダブルエックスが消えた後に、非難の声をあげた。

 

「ちょっと! いきなり何するのさ!」

「黙れ。お前に会ったらまず単体宝具をぶち込む予定だったんだ。生きてるだけありがたいと思え」

「怖っ! この人、マジで怖っ!」

 

 殺意増し増しの空太郎がいきなり上級モンスター(初っ端から宝具)で攻めていく。

 

 なぜか彼が額に青筋が浮き上がっており、キレていた。

 

「ちょ、いきなり宝具ってどういうこと!? 空太郎さん落ち着いて!」

「大丈夫。俺は今、ちょーCoooooLだ。落ち着いて、処刑を実行できる」

「なんかキラーマシーンに目覚めるー!?」

 

 響さんもこれにはびっくりツッコむ。何せ、いつも苦労ばかりで目が死んでるあの人が、微笑みながらブチギレているのだから。

 

 そんな様子を見たカストロが口を開いた。

 

「人間。いくら敵とは言え、いきなり必殺奥義はひどくないか?」

「じゃあ、カストロ。お前、あれがポルクスだったらどうする?」

「無論、褒め称える! 当然であろう! 妹に勝る者などない!!」

「兄様……言い方ぁ」

 

 ポルクス、羞恥で顔を覆う。シスコンも度が過ぎると、恥ずかしめているのがわからない兄者である。

 

「まあ、とりあえずアレの正体は大方判明してるしな」

「え、わかるのですか!?」

「あぁ。だいたい読者もわかってるだろ」

「メタ発言だよそれ!?」

 

 空太郎の言葉が耳に入った黒フードのマスターは「フッフッフ」と先ほどの焦った様子を誤魔化すかのように笑う。

 

「どうやら、わかっていたようだね……そう、私の正体は……!!」

 

 そして、その姿が露わになる……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤丸立香ちゃんなのだ!!」

 

「よし死ねパート2!! 簡易召喚、ランサーアルトリア・オルタ!!」

 

「え?」

 

 簡易召喚されたアルトリア。既に宝具の準備ができている!!

 

「私にも出番を寄越せ!! 最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)ォォォォォォ!!」

「私怨が混じってるぅ!?」

 

 引き立てられた13の牙である最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)。その一撃はギガドリルクラッシュみたいに立香を巻き込んでいった。

 

 彼女はなんとか無傷で済んだ。理由は彼女が着込んでいるシンフォギアのような服装にあると、空太郎は見た。

 

 アルトリアオルタランサーが消えた後、冷や汗を拭っていた立香が吠えた。

 

「感動の再会兼衝撃な展開になんてことするのさ!?」

「知るか。お前に会ったらまず全体宝具をぶち込む予定だったんだ。生きてるだけありがたいと思え」

「物凄い殺意!? なんでさ!?」

「これまでのことを考えた結果だ。報いを受けろ」

「それお(・)兄(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)が言える言葉!?」

 

 ごもっともである。空太郎も空太郎で、異聞帯という世界をぶち壊した業だけでなく、マシュなどの女性関係で問題がある。なお、オベロンに再会がてら「報いを受けろー」と微笑まられて、冷や汗を掻いていたりする。

 

「とりあえず、久しぶり立香。なんでこんなことしている?」

「久しぶりだけどさ!? なんかお兄ちゃんのせいでせっかくの演出が台無しだよ!?」

「だから元の空気に戻そうとしてるんだよ。ほら、見ろ。オートスコアラー達もしっかり元の空気を纏ってるぞ」

 

 オートスコアラー、ガリィは動きを止めて呆然としている。ミカの方は「花火だー!!」と興奮している。

 

「な?」

「な、じゃなァァァァァい! ガリィちゃんなんか宇宙猫みたいになってるだけど!?」

「なんでだろ?」

「いや、大事な肉親が実は敵でしたって言う演出だよ!? それを宝具という名のパワーで台無しにしたんだよ!?」

「あ、そっか。ごめん。次は確実に葬る」

「違うよ!? え、私ってそんなにお兄ちゃんに怨まれてたの?」

「え、当然だろ。だって、人の恋人を寝取ってたし」

 

 その瞬間、空気にひび割れる音がした。空太郎の目が装者達にノイズ扱いされていた頃のような、死んだ目になっていた。

 

「……あの、その、これには、えっと」

「大丈夫。大丈夫だから。お前とマシュがたとえ、寝たとしても俺は気にしないさー。……ころす」

「どこが大丈夫!? 私、ここで殺されるぅ!?」

 

 立香、涙目で空太郎を恐れる。まぁ、人様の恋人と寝たら、怨まれても仕方ないよねと思う響である。未来? 彼女はこの修羅場を愉しんでいます。

 

「立香さん! なぜですか!」

「マシュ……」

 

 なんとか空気を変えようとマシュが参戦。空太郎は黙ってそれを見守っていた。

 

「なぜ、あなたがこんなことを……!」

「なぜってそりゃ、もちろんキャロルちゃんの協力者だからね」

「どうして……!」

「マシュにはわからないと思うよ。私がどんな想いをしていたのか……」

 

 立香の目から光が消える。あれは……空太郎がしているものと同じだ。

 

「私は私の目的のために、キャロルちゃんに協力している。その結果で世界が壊れようと気にしない。だって、そうしなければならないからね」

「立香さん……」

「ごめんね、マシュ。でも、もう私は止まれない」

 

 覚悟を決めていた。決意に満ちていた。そんな声色で言われたマシュは拳を作る。

 

「なら、私は……私達はあなたを止めます! あなたを止めてみせます!」

「私もやる。やらせてよマシュさん!」

「響さん……」

「私も、あの子がなぜあんな目で言ってるのか気になる。話してよ! 理由を!」

「マシュ……響ちゃん……」

 

 響とマシュ。三人だけの空間ができている。そんな最中、令呪を輝かせた死んだ目の彼が一言。

 

「なぁ、そろそろぶっ殺していい?」

「「「空気読んで!?」」」

 

 殺意全開☆な空太郎が準備していた。

 

「マシュもさー、別にそっちに行ってもいいよ。うん、そのときは仲良くあの世に送るからー」

「先輩!? なんでそんなこと言うのですか!?」

「いや、もうさ……百合を引き裂く行為ってのが批難対象だと思うとさ……もう、仲良くやっちまった方がいいじゃん」

 

 空太郎、自身の過ちを悔いている模様。百合の間に無理矢理引き込まれてしまった自身を、最低な男と自覚しているため、失意に落ちていた。

 

「死後で一緒になっちまえよって思うじゃん。ハッピーエンドじゃんよー」

「あぁ! 先輩が暗黒面に!?」

「そこまでのことを……! クッ、なんてこと……!」

「いや、それ私や響ちゃんのせいだからね? あの人、ああなったの私らのせいだからね?」

 

 空太郎の目は死んだまま。希望はないのか?

 

「いつまで遊んでる」

 

 そんな最中、一人の少女が転移で現れた。

 

「あ、キャロルちゃん! 紹介するね! この子がキャロルちゃん。幼女だけど、実年齢がBBAだよ!」

「しばくぞ貴様」

 

 実年齢は禁句の模様。女性はいつだって年齢がタブーである。

 

「お兄ちゃん! 安心して! 大丈夫、私にはキャロルちゃんがいるから! ねっ、キャロルちゃん!」

「そのキャロルちゃんとやら、目が死んでるだけど」

 

 なぜか登場がてら、キラキラとした目に戻った立香に対して、キャロルの目が死んでいた。

 

 そんな彼女が再び口を開いて空太郎へ尋ねた。

 

「お前の義妹……なんでそうなったんだ?」

「知らん。俺に聞くな」

「いや責任とれよォォォォォォ!! コイツのせいでもうオレの計画無茶苦茶だよ!?」

 

 蹲ってガチ泣きするキャロル。

 

「なんだよ、トロロになって人間を包むノイズって! 嫌がらせなの!? 嫌がらせがしたいだけなの!?」

「あ。やっぱアレ立香考案だったんだ」

「あとなんでローションでできたノイズとか作っちゃうの!? おかげでオレが元々所属してたところでは、【ヌルヌルの錬金術師】か【山芋の錬金術師】って呼ばれてるんだぞ!? 別の意味で恐れられてるんだぞ!?」

「ヌルヌルと山芋の錬金術師。新しいな」

「素直に嬉しくねぇよ!?」

 

 立香の作ったノイズのせいで、キャロルの風評被害が広まってしまった。別の意味で恐れられたキャロルの明日はどっちだろうか。

 

「それにしてもお兄ちゃんはさ。なんで私だと気づいたの?」

「いやさ、だいたいわかるだろ」

 

 空太郎はなぜ立香が犯人だと気付いたのか。

 

「まず、セレナからだ。彼女の気質を考えて、穏やかで心優しい女性だ。マリアさん曰く、世の男が黙っていられないほどの出来た女性だ」

「あの、恋人の隣で他の女性を褒めるのはどうかと……」

「NTR女は黙ってろ」

「あ、すみません。浮気して……」

 

 マシュ撃沈! まぁ、記憶がなくなって立香と結ばれた事実はずっと残るからネ。

 

「そんな彼女がなぜマリアさんを含めたS.O.N.Gの人達を裏切ることができたのか。簡単さ、目(・)の(・)前(・)で(・)苦(・)し(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)者(・)が(・)い(・)る(・)か(・)ら(・)だ(・)」

 

 セレナとて助けを求められた少女がいたら、黙って見過ごせない。そして、見捨てられない。救いを求める少女に、彼女は手を差し出してしまったのだ。

 

「まぁ、後から自首しようとか思ってるだろうなあの人なら。ずっと監獄にいる覚悟でいるつもりだろうし」

「へー、それだけで私とわかったの?」

「他にもあるぞ?」

「どんなことが?」

「ギ(・)ル(・)ガ(・)メ(・)ッ(・)シ(・)ュ(・)王(・)」

 

 その名前が出た刹那、立香の表情から笑みが消えた。

 

「あの人がいるってことはさ、立香。お前がいなきゃおかしい。なんせ、あの人のマスターはお前だからな」

「…………」

「それに俺のことを知(・)っ(・)て(・)い(・)て(・)、(・)マ(・)ス(・)タ(・)ー(・)。カルデアのマスター達は誰も覚えていなかった。よって、これに当てはまるとしたら、行方不明のお前しかいない」

「…………」

「DOMANもお前の差金。んで、奏さんのマスターはお(・)前(・)だ(・)っ(・)た(・)。魔力パス、繋がってるお前だけしかいないしな」

 

 空太郎の推理に対して、立香は興味を、

 

「……ふーん」

 

 持(・)た(・)な(・)い(・)。(・)なぜなら、それは予(・)想(・)通(・)り(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

「お兄ちゃんの推理は大正解。読者さんも大正解だよー」

「あの、さりげなくメタ発言はやめてほしいのですが……」

「浮気相手は黙ってて」

「あ、はい」

 

 マシュ、またもや撃沈!

 

「じゃあ、動機もわかるよね?」

「そ(・)こ(・)な(・)ん(・)だ(・)よ(・)」

「?」

「お前の『 Why done it?(ホワイダニット)』がわからない」

 

 空太郎は誰が犯行を行ったのかは推理できた。しかし、な(・)ぜ(・)犯(・)行(・)に(・)及(・)ん(・)だ(・)の(・)か(・)がわからなかった。

 

「立香、お前は【普通の女の子】でいいよな?」

「どうだかね。まあ、どっちでもいいよ。そんなこと」

「よくない。俺は……」

「騒がないで。神経が苛立つ」

 

 立香がらしくない言葉を吐いた後、手をこちらに向けた。そこから、一斉に触手のように伸びたレーザーが飛んでいく。

 

 空太郎は響を抱えて後退し、マシュが盾で防ぐ。

 

「この……威力!」

 

 盾もろともマシュが吹き飛び、空太郎は彼女を支えて滑走を止めた。

 

「すごいでしょ? これ。ファウストローブってヤツだよ。錬金術師が纏うシンフォギアってとこかな」

「立香……お前!」

「まぁ、私がなぜ犯行に及んだか……それはねー」

 

 微笑みながら、彼女は空太郎へ言った。

 

「復(・)讐(・)。藤丸空太郎によって変えられた私(・)達(・)による復讐がしたいの」

 

 彼女から吐かれた言葉が、空太郎の脳裏にかつて、セレナに言われた言葉を思い出す。

 

『会ってみたらわかりますよ。あの子の望み、そして願い。それがあなたが背負うべき罪ですから』

 

 背負うべき罪。それはなんなのか空太郎は、理解した。理解してしまった。

 

「まさか……立香、お前」

「そうさ! あなたのせいで私は変えられた……! 【狂気的だったけど叡智の私】を【正気的だったけど平凡な私】に変えてくれた怨みだよ!!」

「ッ、だけどそれは!」

「そうだよ! 狂気的な私が間違い! 普通の私が大正解! それが世の中の当たり前だよッ。けどね、そんなのどうでもいい!!」

 

 立香が怒りを込めて、空太郎を射抜く。

 

「勝(・)手(・)に(・)、(・)私(・)に(・)重(・)荷(・)を(・)押(・)し(・)付(・)け(・)た(・)こ(・)と(・)が(・)許(・)せ(・)な(・)い(・)!(・)!(・)」

「……ッ」

 

 その言葉が空太郎を射抜く。彼女に後のことを託した。バトンタッチして、任せてしまった。

 

 そのせいで彼女は苦しんでいた。それが、彼の……藤丸空太郎の罪。

 

「だから、あなたを倒す。あなたの全てを滅ぼす。それが、私のするべきことだから」

 

 決意に満ちた目だ。藤丸立香は藤丸空太郎を怨んでいると見える。しかし、空太郎はふと違和感を感じた。

 

 彼(・)女(・)は(・)ま(・)だ(・)何(・)か(・)隠(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。(・)

 

 本物の復讐心の先にあるその何かがある。

 

「立香、お前……」

「今日はここまでだよ。……次は簡単に思わないでね」

 

 立香はそう言って、キャロルやオートスコアラー達、サーヴァント達と共に転移していく。

 

 残されたのは自分の過ちを犯してしまった一人の少年と、それを見守る仲間達だけだった。

 

「空太郎さん……」

「……気にしてないさ。ただ、ショックだっただけ」

 

 空太郎は自身の手を見て、拳をつくる。

 

「だからと言って、世界を乱していいわけじゃない」

 

 空太郎は仲間達へ振り向き言った。

 

「力を貸してくれ、みんな!」

 

 その言葉に全員が頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ! やっと通信が繋がりました! 響さん、大丈夫……ってなんですかその格好!?』

「あ……」

 

 エルフナインとの通信が繋がり、それを見たS.O.N.G一同とカルデア一同は思う。

 

 

……何があったの!?





まぁ、だいたい察していたと思いますが、犯人は藤丸立香でした。
なお、彼女の動機ですが、空太郎の言う通り違和感があります。

重荷を背負わされた不満もそうなのですが、それだけはないとだけ敢えて言っておきます。

彼女はなぜキャロルに協力するようになったのでしょうね……。

そして初登場のキャロルちゃん。なんか、パヴァリア光明結社に変な異名をつけられてしまい、風評被害が広まるばかりに……!

立香のせいで今後も、苦労します(愉悦)

……鋼の錬金術師になってほしいものですね(遠い目)

次回、響、麻婆食す。第一次のアレが起きるの二本です。


……遂に来てしまったか!!
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