Fate/grand order 絶唱魔性戦記シンフォギア   作:ぼけなす

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———ある日、突然、普通の女の子が、自分が狂った人形だったって知ったらどう思う?

———絶望しかないね。目の前にあった全てが偽りだったし


第六十五話 罪の在処

 

#月/日(木)

 

(前回の続き)

 

 セレナさんとの決着は着いた。

 

 彼女はアヴァロンで強化されていたものの、何度もガッツで復活してきたが、こちらも何度もバスター単体宝具の連発パーティで徹底的にノックダウンさせました。

 

 マリアさんには文句を言われたが、まぁ、さっさと終わらしたかったので遠慮なく『これが私の全力全開』をしてやりました。

 

 おかげで宝具で耐えきれなくったアヴァロンは砕け、限界がきたセレナさんはダウン。

 

 シンフォギアが解除されたものの、彼女は最後まで戦う意志を見せてきたので、マリアさんが同じくシンフォギアを解除して、同じ土俵に立って殴り合いを始めました。

 

「どうしていつも抱え込もうとするのよ!」

「姉さんだって同じでしょ!」

「それは私が姉だからよ!」

「姉でも関係ない! 姉さんの重みも私にも背負わせてほしかった!」

「なら、あなたの重みも寄越しなさい!」

「いやです! 私の背負うものは私のものです!」

「なら、私の背負うものも私のものよ!」

 

 という感じで、似たもの同士の姉妹喧嘩していた。途中から参戦してきた調と切歌はこれを見てドン引き。

 

 女同士の引っ叩き合いで、どうしたらいいのかわからないようである。

 

 とりあえず、先に進もうかと思ったら、DOMANが出現。黒幕チックなことを言っていたが、アレックスに背後を取られてしまい、奏さんと同じ末路で、始末されてしまった。

 

「ぎにゃー!!」と猫みたいに浄化(?)されていく道満氏。俺は見なかったことにして、マシュと一緒に先へ進んだ。

 

 調と切歌は、マリアさんとセレナさんを見守ることにして留まることになったが……。

 

 調さんや、なぜにビデオカメラ構えてるの?

 

 え、彼女達二人が披露宴するときに流す映像?

 

……愉悦のためにって、それはヤバくね?

 

 まぁ、それはさておいて。(現実逃避)

 

 遂に立香と対面することとなった。なんか、キャロルみたいにファウストローブを身につけ、神霊系サーヴァント四体の連れての登場。

 

 スカサハは今回参加してなくて、ポルクスとカストロのコンビサーヴァント。アルテミスとオリオンの組み合わせ。

 

 サポート系サーヴァントがいないけど大丈夫なのかそれ、と思わせる配置であった。

 

 そして、俺はこのとき立香の想いを知ることになる。

 

 

……俺は()()()()()()()。彼女は()()()()()()()ではなかったんだって。

 

 

ーーーー

 

「やあやあ! お疲れ様だねお兄ちゃん」

「出たな諸悪根源。ティアマトママンとロベルトはどうした?」

「あぁー、それならティアマトママンがロベルトッチを、赤ちゃんプレイを強要させられそうになったから、ロベルトに逃げられたよ

「どゆこと!? え、ティアマトそんなことしたの!?」

「うんうん。原初の母による母性愛はすごいよねぇ。オカマであっても、バブみをさせようとするなんて……」

 

 遠い目で語る立香。空太郎を誘き寄せるために人質にしようと思った矢先、ガラガラを構えてベビーカーを押すティアマトがロベルトを追いかけ回してしまい、二人がどこかへ行ってしまったらしい。

 

 おそらく、外へ出ていってしまい、まだ鬼ごっこ(敗者は赤ちゃんプレー)は続いているようだ。

 

「……てか、オカマを人質ってさ。ぶっちゃけ、聞くけど有り?」

「ノーサンキュー」

「だよな。なんか、コレジャナイ感あるし、正直言って需要がない……」

 

 仮にこれがファンタジー系小説であったとしよう。もし、囚われのヒロインがオカマで、主人公は頑張って助けてくれるのだろうか

 

 だいたいの答えは一つ。

 

 ヒロイン(オカマ)諸共滅殺しそうである

 

「まあ、その……ようこそ! 私とキャロルちゃんの愛の城へ!」

「誤魔化したな」

「うっさい! もういい加減に話をしたいの!」

 

 白い目で見られる立香。彼女はムキーと苛立ちながら、地の足を踏んでいた。

 

「まぁ、いいや。んで、俺から聞きたいことがあるけどいいか?」

「なになにー? なんでも答えちゃうよ?」

「んじゃ、聞くけどさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、実は狂ってないだろ?」

 

 空太郎の言葉に、マシュは彼に驚愕の目を向けた。それに気にせず、空太郎は続けた。

 

「……なに言ってるのさ。私は」

「おかしいと思ってたことがあるんだ。お前がホントにあの頃の立香だったのなら、どうして()()()()()だって」

「いやいや、してたよ。きっちりお兄ちゃん達を妨害していて……」

()()()()()?」

 

 空太郎が知る藤丸立香とは、愉悦を嗜むも()()()を信条にしていた。

 

 そう、それは彼女は世界を救うためで最も重要視していたこと。

 

「ならさ、教えてくれよ。お前が狂っているならさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最も効率的な手段をとって、最速で終わらせないんだ?

 

 そう、ずっと気になっていた。

 

 藤丸立香が狂っているのでならば、彼女は()()()()()()()()()で達成させようとする。

 

 例えば、サーヴァントを自爆させる。

 例えば、装者達のトラウマを掘り起こさせて、戦闘不能にさせる。

 例えば、関係者達の人質をとり、無力化させる。

 例えば、到着したと同時にその場で爆殺する。

 

 空太郎は何度もそのことを警戒し、注意を払っていた。

 

 しかし、藤丸立香は何もしなかった。

 

 セレナやサーヴァント達をけしかけることはあっても、()()()()()()()()()()()、何もしてこなかったのだ。

 

 空太郎の知る藤丸立香ならば、不二丸立香ならば、人道的に、道徳的に、そんなもの一切合切を気にすることなく実行する。

 

「ヌルい手段しかしてこないし、誰も死んでない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」

「なら、お前は誰だ、って言えば藤丸立香だろう。ただし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり、お前は————」

 

 

 

 

 

「狂人のふりをした普通の女の子」

 

「そんな……」

 

 マシュから溢れた一言で、立香は俯き、何も言わなくなった。

 

 それが答えだった。

 

「先輩。では立香さんは思い出したことで元に戻ったわけではなく……」

「そうだよ。コイツは記憶を取り戻したことで、()()()()()()()()って思わせたんだ。だから、周りが……いや、コイツのサーヴァント以外は騙されてたんだ」

「先輩は気づいてたのですか」

「なんとなく……だけどな」

 

 立香に言われた言葉達が脳裏によぎる。

 

「そうさ! あなたのせいで私は変えられた……! 【狂気的だったけど叡智の私】を【正気的だったけど平凡な私】に変えてくれた怨みだよ!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その二つは立香の本心であることは違いない。だが、狂気的な立香ならばこの言葉を吐き出さない。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

「俺の知る立香は、愉悦以外でこんな感情的になるはずがない。むしろ、この状況を()()()。飽きたら()()()()()()()()。それが俺の知る義妹(藤丸立香)だ。けど、マシュの知る立香は普通と変わらない感情的で、ありふれた女の子だった……そうだろ?」

「……はい。記憶を取り戻したからわかります。立香さんならば、こんな感情的ではなかったと思います」

「……で?」

 

 立香はなんでもなさそうな感じで、空太郎に問う。

 

「結局、何が言いたいのさ。仮に私が普通の感性を持つ女の子としてさ、私の何がお兄ちゃんを許せないのかってわかってないでしょ?」

 

 一歩踏み出す。

 

「私の怒りが何かわかる?」

 

 一歩踏み出す。

 

「私の何がわかるの?」

 

 一歩踏み出す。

 

「私の……私の気持ちが、私がどういう気持ちだったのかわかるのって言うの!?」

 

 立香の怒りが噴き出す。憎しみとも近い怒りが、空太郎とマシュへ向かう。

 

 『 Why done it?(ホワイダニット)』。彼女がなぜキャロルと協力して、こんなことを起こしたのか。動機が、マシュにはわからない。

 

 

 

 

 

 

 

「答えはエルメロイ二世こと孔明とライネス師匠と話し合って、わかったよ」

 

 

 しかし、空太郎は突き止めた。動機を、理由を。

 

「立香……それはお前が

 

 

 

 

 

———普通の女の子だったからだ

 

「普通の、女の子だったから……?」

 

 マシュは空太郎の言葉に、首を傾げる。普通ならば、こんなこと起こすはずがないのでは。

 

 そう思っていたが、

 

「マシュ……仮に自分がさ。いつも通りに過ごしていて、ふとしたある日、実はすごかったんだって思い出したとするよ。君ならばどう思う?」

「えっと……混乱はするものの受け入れると思います。それが私自身ですから」

「そうさ。マシュ、君がこれまでの特異点と異聞帯で得た冒険で、心が成長していた。それが素晴らしかったからこそ、君は受け入れられるんだ」

 

 けどね、と続ける。

 

「立香は逆だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そんな……どうしてですか?」

「正気だからさ」

「えっ」

「狂っていたら、気にすることはないけど、正気だからこそ、自身のした行いを受け入れられないんだよ」

「立香さんが……。で、ですが、それでもこれまでの冒険で私と同じように心が成長しているはず……!」

 

 

 

 

「ううん、成長してないよ」

 

 返ってきたのは、怒りが鎮まり、静かな立香の返答だった。

 

「正解だよ、お兄ちゃん。私は……成長してなかったんだよ」

「そんなはずありません! だって立香さんもまた、」

「違うよ。違うんだマシュ。私の心は、()()()()()()()()()

 

 その言葉通り、立香のメンタルは強くなったいなかった。心が成長していなかった。

 

 理由は、空太郎が吐き出すように答えた。

 

「……これまでの特異点と異聞帯。その経験で得たものが、マシュの心を強くした。それはわかるね?」

「はい……。それがあったからこそ、私は受け入れられると思います」

「そうだよね。だけど……立香は違う。狂人だった頃の立香は()()()()()()()()()()()にはならない。つまり、悲しみと痛み。そんな辛い経験を感じとれてなかった……!」

 

 我々の知る主人公。【藤丸立香】。彼/彼女の冒険は喜びと楽しさばかりではなかった。多くの痛みと嘆き、悲しみと怒りがあっての、特異点解決と異聞帯攻略があった。

 

 けれど、ここにいる()()()()は違う。

 

 彼女の心は、第一特異点頃から変わってない

 

「そんな! で、でもなぜ先輩を恨むのですか。ただ願っただけじゃないですか! 【ありふれた女の子】に戻ってほしいと!」

「だからこそだよ……! そんな、ありふれた女の子が、ある日、自分がとんでもない酷いヤツだったと思い出してみたら、耐えれるはずがない……! 苦悩して、思い悩み、だけど周りに言えない。……嫌われるかもしれない、避けられるかもしれない。相手だけでなく、自身にも疑心暗鬼へ陥って、自分が許せなくなる……」

 

 

『会ってみたらわかりますよ。あの子の望み、そして願い。それがあなたが背負うべき罪ですから』

 

 ずっと気になっていたセレナの言葉。それは、立香に自身の成し遂げたものを押し付けたからだったと思っていた。

 

 けど、違う。違っていた。

 

 ゆえに、

 

「……立香。お前は許せないんだ。普通の女の子だったからこそ、許せなかったんだ————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()が」

 

 普通の女の子だったから、彼女は狂人だったことを認めたくない。

 普通の女の子だったから、彼女は世界を救った重みを受け取れない。

 普通の女の子だったから、彼女は()()()()()()()()()()()()()()を許したくなかった。

 

「……さすがだね、お兄ちゃん」

 

 顔を上げて見せた表情は、空太郎とマシュが知るものだった。

 

 

 空太郎は鏡で。

 

 マシュは日常と彼が追い込まれていたときの空太郎で。

 

 

 

 

————その顔は、目が死んでいた。

 

 希望ではなく、絶望。

 諦めない心はなく、ただ受け入れる。

 

 もはや、生きることをやめた目をしていた。




藤丸立香

バイタル:鬱
メンタル:自傷行為も辞さないほど、自身を嫌悪している。それは彼女が……(途中で消えている)

作成者:キャロル

ーーーー

とりあえず、伏線回収というわけで。
この後に立香の答え合わせがありますのでお楽しみ。Fateらしく、敵側のメンタルも語っていく感じになりますね。……動機があってこそ、ただの敵ではなかったと、プレイヤーは知るわけですから。

立香自身もノリノリで敵役やっていましたが、実は第三章初期の主人公レベルにメンタルがやられていた話ですね。

なお、忘却というタイトルですが、実は重要なキーパーソンだったり?(遠い目)

次回はところ変わってウェル博士。感想欄のやり取りでやってみたい話がありましたし、独自解釈ですが、こういう()()があったからじゃないんですかね、って感じですね。

———英雄とは、跡を託す者。未来を繋げられる者こそ、英雄と謳われたんだ
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