Fate/grand order 絶唱魔性戦記シンフォギア   作:ぼけなす

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———なんで、彼はあそこまで英雄になろうとしたんだ?
———最初は憧れたんだと思うよ、彼らの生き様を、ね


第六十六話 HEROになりたかった

 ヒーローになりたかった。

 英雄になりたかった。

 

 幼い頃、僕はテレビや書物に描かれたヒーロー達に憧れた。神話に出てくる英雄や、創作物に出てきたヒーロー達に憧れを抱いた。

 

 カッコよかった、からだけじゃない。

 

 彼らには()()()()()()()()()があったから、憧れたのだ。

 

 僕は頭がよかったが、身体能力は高くない。ヒーローをサポートする博士が精々だ。

 

 少年時代の夢で終われば、よかったがそれでも僕はヒーローに、英雄に憧れた。

 

 青年期となった今でも忘れられず、彼ら一人一人は孤高でありながらも、周りから認められ、賞賛される姿に、いつかなりたいと思った。

 

 誰からにも認められる英雄を目標に、異端技術の研究をし、その力をもってして世界を、人を、救いたかった。

 

……だけど、思う。僕は認められたいからヒーローを目指したのか?

 

 そんなことしなくても研究者として、病魔から人の命を救っても、同じことなのに。別にスーパーマンや、神話の英雄のようなことをしなくても、立派なヒーローや英雄になれたはずではないだろうか。

 

 だからこそ、疑問に思う。幼い僕は、なんでヒーローへ憧れたのだろうか、と。

 

 今ではもう忘れてしまったこと……。僕はそれを未だに思い出せない。

 

 僕は……僕は()()()()()()()()()()()のだろうか。

 

 

ーーーー

 

 一方、その頃。セレナとの姉妹喧嘩を終わらせたマリアは、調と切歌、セレナを連れて下層部へやってきた。

 

 そこでウェル博士と遭遇し、そこでナスターシャ教授のコピー。キャロルによって生み出された変幻自在のホムンクルスが立ちはだかってきた。

 

 もちろん、惑わされることなく、難なく倒したが……問題はその後。

 

 ホムンクルスは一体だけでなく、複数も存在した。それぞれの形を取り、襲いかかってきた。

 

「なんでこんなものが何体もいるのよ!」

「それを私に言われましても……」

 

 困った顔でアームドギアを振るう姉妹。

 

「デデデデース!?」

「…………」

 

 対して切歌、調ペアは困惑と膨れっ面だった。

 

「なんであたしの姿が……。

 

 

 

 

 

———ウェディングドレスなのデスか!?

 

 お嫁さん(大鎌使い)に困惑する切歌。いや、なんでお嫁さんなの? と本人がツッコみたい。

 

「……キリちゃんはまだいいよ。私はなんで、

 

 

 

おっぱいあんなに大きい姿なの?

 

 本人とは違って、巨乳ナイスバディな姿なホムンクルスさん。所謂、調さんである。

 

 当てつけか、当てつけなのかコノヤローな感じで殺意増し増しな攻撃を繰り広げてるので、調ホムンクルスは逆に焦り出していた。

 

 その度に揺れる山脈に調の怒りゲージが溜まっていくのだった。

 

「なんというか、自分同士の戦いしてるのはマリアとセレナなのに、切歌と調だけが理想の自分との戦いをしてますね……

「ドクター。あとで校舎裏

「そんな言葉どこで覚えました!? お兄さん、そんな言葉教えたつもりはありませんことよ!?」

「オネェ口調で言い返すかデス。というか、切歌はあんなの別に憧れてないデス!」

「とか言いつつ、めっちゃドレスに気を遣ってません? 傷つけないように

「べ、べべべ別にそんなことないもん! 気にしてないデデデデース!!」

 

 乙女切歌。元気ハツラツお気楽少女も年頃の女の子なのである。

 

 なお、もし響と未来がいたらタキシード姿とウェディングドレス姿で現れていたわね、きっとと密かに思ったマリアである。

 

「というか、なんで私達のだけ普通……ってなんでここでお子様体型になるのよ!?

「しかも、私達の小さい頃の姿ですし……」

 

『『さあ、覚悟して!』』

「喋れるの!?」

『『二人は……タマキュア!』』

「そっち!? そこはプ●キュアじゃないの!? てか、それなヤツゥゥゥゥ!!」

 

 まさかの新事実。相手の嫌がる恥ずかしいポイントを的確についてくる。なお、本来のタマキュアは、ババアと猫耳団地おばさんで構成されているので、断じて、美少女(十二歳前後)が名乗る者ではない。(強め)

 

……マリアは思う。このホムンクルスの製作者は、かなり性根が悪いに違いない、と。

 

『私の創造主……立香様のために!』

「やっぱりアイツかァァァァァ!!」

 

 ノリノリで、開発しちゃった【対乙女系戦士ホムンクルス】に苦戦するマリア達。

 

 ウェル博士は「これ、最後の戦いだよね。なんか黒歴史との戦いじゃないよね?」と呟くほど、酷い争いになっていた。

 

 本来ならば、ノリノリで「胸が躍るじゃないかァァァァァ!」と興奮するほどの展開なのだが、ホムンクルス達のせいでシュールなものへ変わっていった。

 

『終わりだァァァァァ!』

「こちらのセリフよ!」

 

 いい加減にキレたマリアがイグナイトモジュールを抜剣し、あっさり返り討ちしてしまった。

 

 時間制限もあり、しかも空太郎への負担も考えて使うことを控えていた切り札だが、さすがに堪忍袋の尾が切れた。

 

 セレナを除いた残りの二人もイグナイトモジュールを使ったが、一人は徹底的に滅殺していき、もう一人は惜しみながら泣く泣く倒した。

 

 残りのホムンクルスも倒され、ホムンクルス達は塵へと変わり、戦いは終わった。

 

「恐ろしい敵だったわ」

「そうですね……まさか、自分自身と戦うことになるとは」

「というか、私のホムンクルス……物凄く鬼気迫る勢いで、私の胸へ殺意向けてたんだけど

「そうなのですか? 私は笑顔で倒されてましたけど」

「何この差。え、セレナの方は違うの? なんか私の方はアベンジャーへクラス替えする勢いだったんだけど

 

 装者のホムンクルス達は相手のコンプレックスを刺激する方へコピーするのだが、なぜか逆にコンプレックスを感じていたマリアホムンクルスであった。

 

 ある意味、興味深い成長なのだが、残念ながら、それを評価する者はいない。

 

「……立香、絶コロ」

「デス……調がこわいのデス……倒すのはちょっと残念デス

 

 殺意増し増しと、物凄く残念そうな乙女。立香はこの後どうなるかは、おそらく彼女達の気分次第であろう。

 

 そんな中で、ウェル博士がシャトーを解析し、分解を阻止しようとしていた。

 

 エルフナインの協力もあってか、なんとかなりそうなところで外にいたキャロルが「私とパパの邪魔をしないで!」と遂には自らの手で破壊する暴挙に出てしまった。

 

 瓦礫を避けることはできたが、ウェル博士が下敷きとなってしまった。

 

「ドクターウェル!」

「ぼくが守った……ヒヒ、ぼくが守ったんだ」

 

 下半身が潰され、もはや残された時間が少ない。マリアはなぜ、ドクターウェルが協力してくれたのか、尋ねると「勘違いするなよ……、僕の英雄的な行動を、知らしめるため」と答えた。

 

 最後まで彼は自分本位だった。だが、それでも救われた者はいる。

 

「さっさといけよ……。死にぞこなった恥を晒してこい……! それとも、今と変わらない君はダメな女のままかいぃ……?」

「……ドクター」

 

 彼はマリアに最後の力を振り絞り、SDカードを渡した。

 

「シンフォギアに奇跡など介在しない……その力、自分のものにしたいのなら、手を差し伸ばし続けろ……」

「…………」

「……マリア……ぼくは英雄になれたのかい?」

「……あぁ。お前は最低な英雄だったよ」

 

 彼女はそう言って装者と共に、響達の元へ向かった。残されたウェルはそれを見送り、息を吐いて力を抜いた。

 

「……結局、ぼくはこういうことになるんだね。英雄……になれても、死んじゃったら、何もない……」

 

 

 

 

「そうでもないさ」

 

 ウェルの前に一人の男が、片膝をついて答えた。

 

「おまえ、は……」

「こういう形で会うのは初めてか?」

「しってるとも……アルゴノーツの……船長」

 

 「そうか」とイアソンは答える。彼の背後には目を合わせようとしないジョン博士がいた。

 

「なんだよ……英雄様が笑いにきたのかい? ぼくの……惨めな姿をみて」

「まさか。俺様とここにいるジョンはお前の行いを賞賛するために来たんだよ」

「ぼくを……しょうさん?」

「……不本意ながらね」

 

 ジョンが口を開いた。

 

「君の行動は、自分のためだが、結果的に誰かへ繋がることだ。僕としては、それは認めざる得ない行いだった」

「素直じゃねぇな、お前。自分のことだろう? 認めてあげたらいいのに」

「冗談じゃない。()()()()()()()()()()の過程があまりに酷すぎる!」

 

 ジョンと同じ行い……それは英雄的な行動なのだろうか、とウェル博士は思う。それを肯定するかのようにイアソンは頷いた。

 

「この俺様が認めてやる。お前は英雄だった」

「なぜ……そう言い切れるんだい」

「そりゃあ、お前」

 

 イアソンの言葉に、ウェルは幼い頃の自分を思い出した。親だったか、友達だったか、誰かに「なんで英雄、というかヒーローになりたいんだ?」って聞かれたことがあった。

 

 そのとき、彼はやっと……やっと思い出せた————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かを救って、その想いを託せる姿ってスッゲーカッコいいだろ」

 

 イアソンの言葉にウェルの心がストンと落ちた。

 

 そうだ。そうだった……。自分はどうして英雄に憧れたのか。授け、託すという、普通では難しいことを難なくこなせる英雄達に憧れたからこそ、英雄に憧れたのだ。

 

 だから、神話の英雄譚が好きだった。

 だから、創作物のヒーローが好きだった。

 

 彼らは救うだけでなく、想いを次へ託し、授けていく姿に憧れたじゃないか。

 

 もう、死ぬ自分が、やっと思い出せたことがとても口惜しい。けれど……同時に、幼い頃の夢が叶った達成感を感じて満足していた。

 

「だから、俺様が認めてやる。

 

 

オメーは英雄だったよ

「そうか、い……それできみは、どうしたんだい?」

「俺様の船に来い」

 

 アルゴノーツへの誘いだった。英雄達の集う、伝説の船団への誘いだった。

 

「しぬゆく、ぼくに?」

「死んだところで、どうせ英霊になってるだろお前。やったことは反英雄的だったけど、座に登録されて、サーヴァントになるに違いないからな」

「そうか……そう、なんだ……」

「だから安心しろ。他が認めなくとも俺がお前を英雄と呼んでやる。ちょうどアルゴノーツに生物学者がほしかったところさ! だから、いつかお前が英霊としてきたのなら、そのときは来い。俺達が歓迎してやる。安心しろ! 何せ、うちの船員全員曲者ばかりだからな!!」

「それ……あとで、せんいんにどなられない、かい……あぁ、でも……」

 

 視界が暗くなる。時間切れが近い。しかし、それでもウェルは言いたかった。

 

「……ありがとう……せんちょう」

 

 英雄と呼んでくれて。

 英雄と認めてくれて。

 

 非人道だった自分を、認めてくれた英雄に感謝の言葉を述べてウェルは……事切れた。

 

「別世界の僕ってホントに馬鹿だったよ」

 

 呆れた物言いをするジョンだったが、

 

「でもありがとう、船長。彼を看取ってくれて」

 

 最後まで看取ってくれた彼へ、感謝を述べた。

 

「ま、一応コイツはなかなか使えそうだったからな。というか、お前も来いよ」

「ふーむ。まぁ、そのときは兄弟という設定で乗せてもらおうかね」

 

 軽口を言いながら、彼は遺体を丁重に運ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、さっきの攻撃でマスター。大丈夫なのかい?」

「大丈夫だろ。というか、言っとくけどなジョン」

 

 ウェルを背負いながら、ジョンへ言う。

 

 

 

 

「うちのマスター。圧倒的な不利ほど、強いぜ?




ふと思いました。ウェル博士って、なんであそこまで英雄になることを拘ったのだろうか、と。悪役だからどうでもいいと思う人がいるかもしれませんが、なんといいますか、Fate作品だと『 Why done it?(ホワイダニット)が多いですからねぇ。FGOのストーリーも、だいたい悪役にも、なぜその悪行をなそうと至ったのか経緯と背景がありますので、そう考えた結果、今回の独自解釈ができました。

なお、ウェル博士に引導(意味深)を渡すのが、船長とウェル(英霊)となったのはアイサさんのおかげです。
やっと、辿り着きました。ありがとうございます。……勝手に台詞も引用しましたのは申し訳ないです。それほど、この台詞が自分の中で印象残ってたのでしょうね。

ちなみに今回出てきたホムンクルス達ですが、対装者用嫌がらせ決戦シリーズです(笑)
相手の恥ずかしいところやコンプレックスをとことんついてくるので、英雄王など、ありのまま(意味深)の己を認められる者でなければ羞恥と憤懣で悶えます(愉悦)

……マリアとセレナのロリモード? 彼女達は謎の電波によって、ホムンクルスが変化したということにしといてください(遠い目)

決して、ギャラルホルンとかから受信した電波じゃないですよー(目逸らし)

それとタマキュアについて知りたい方は、動画で検索してくださいねー。……よく放送したなあのアニメ(死んだ目)

さて、次回こそ、立香の心情です。答え合わせです。

彼女がなぜ、己を消したいのか。なぜ忘却と破滅を望んだのか判明させます。

———もし……もし、自分が最悪の盗っ人だったならば、その罪悪感に耐えられますか?

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