Fate/grand order 絶唱魔性戦記シンフォギア   作:ぼけなす

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———戦えるなら、戦おう


第八話 今こそ見せような件

ーーーー

 

 

 雪音クリスが目を開けると知らない天井だった。

 

 和室というもので、畳の上に敷かれた布団で、彼女は眠っていたようだ。そんな彼女が目覚めたのは、誰かの気配を感じたからだ。

 

 目に写ったのは、薄い色素の髪をしたこれまた顔の整った少女である。年齢から、自分より下の中学生くらいだろうか。

 

 そんな美少女と言える少女が、クリスにしようとしていたのは——————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………油性マジックでラクガキしようとしていた

 

 

「って、何しとんじゃー!!」

「あ。起きた」

 

 ラクガキしようとしていた魔人さんこと沖田オルタは、悪びれずそぶりも見せず、空太郎の名前を呼んだ。

 

「マスター空太郎。あなたの教え通りに起きました。うれしみ」

「ご苦労、パタ湾魔人さん。ワシの教え通りのノリと悪戯のおかげで、雪音クリスが目覚めた。これもモースの導きなりよ」

「どこぞの宇宙戦争なノリで、アタシにイタズラしようとしてんじゃねぇよ!!」

 

 さすがのブチギレて、布団が起き上がり、怒鳴るクリス。そんなとき、クリスの濡れタオルを変えようとしていた未来が、入ってきた。

 

「く、クリスちゃん……だっけ? その、あの」

「なんだよ!」

「ふ、服なんだけど……」

 

 クリスの今の姿は、未来の予備のワイシャツ一つで下着を一切つけてない状態である。つまり、

 

「クリス、とりあえず下を隠せ。お前のパイぱ———」

「言わせねぇよ!!」

「痛し。なぜにバケツを投げられた」

 

 首を傾げるずぶ濡れの空太郎に、冷ややかな視線を未来は向けていた。

 

「女心を学んできたら、変態」

「ミクにゃん厳しー。拙者、床を汚さぬように、バケツを全身で受け止めたのに、なぜだ。魔人さん教えて」

「一緒に女心を学ぼう、マスター」

「まさかの心優しい解答に、全米が泣いた」

「なんで全米が泣くんだ、あるじのマスターよ……」

 

 的確なツッコミを入れる煉獄に、気にせず、空太郎はクリスがなぜ、倒れているのか尋ねた。

 

 クリスは口を閉ざして、話さないと察して、大方の予想を口に出した。

 

「どうせあれだろ、フィリピンに捨てられたんだろ」

「フィーネだ! 間違えるなよ、知り合いだろ!」

「わざとだ。安心しろ」

「どこをだよ……。てか、お前、ボケ多くね?」

「うん。最近、この子に振り回さててねー」

 

 と、魔人さんを紹介する空太郎。肝心の沖田オルタは、煉獄を抱き上げ、リラックスしていた。

 

「なんか、そう見えないんだが……」

「事あるごとに、お好み焼きの生地におでん入れようとするし、事あるごとに、俺の料理におでん入れようとするし、事あるごとに、冷蔵庫をおでんで埋めようとするんだ。スゴイだろ? これほぼ毎日だぜ?」

「どんだけ、おでんに執着してんだよコイツ!? てか、目がこぇーよ!!」

 

 死んだ目で語る空太郎のSUN値がヤバいことを知ったクリスである。

 

「さて、話を戻すがフィーネに捨てられたってことでいいよな?」

「……そうだよ。フィーネのヤツ、もうアタシのことを用無しだってな」

 

 クリスが語る。

 

 フィーネに捨て駒にされたこと。

 フィーネに自分がやってきたことは、逆効果であったこと。

 

 自分がやってきたことは、結局間違いだった……ということ。

 

 対して空太郎はカラカラ笑っていた。

 

「まあ当然の結果かねぇい。なんせ暴力で争いをなくそーなんてできるはずがないし」

「……はっきり言うか、普通」

「普通だろ、普通。暴力は所詮暴力。武力をもって武力で正したところで待ってるのは新しい争いだ。結局、人を正すには対話と納得させる材料が必要ってわけ。暴力や武力で、争いのない世界なんてソレスタルビーイングみたいな思想だって」

「ガンダムはいいですよ、マスター」

「はーい。とりあえず、魔人さんはステイ。待っててね。煉獄と遊んでおいて」

「了解しました。煉獄、少し遊びましょう」

「なんかなっとくできない……」

 

 というわけで、部屋からログアウトする沖田オルタ達。

 

 空太郎は「それにしても」と続けて、

 

「フィーネもお優しいこって」

「優しい……ですか? こんな酷いことして」

 

 未来が反論すると、空太郎は「だってそうだろう」と返す。

 

「いらなくなったら、わざわざ言わずに背後からズドンって殺ればいいじゃんか。それからクリスに何もかも擦りつけて後は、コッソリ犯行に及べばいいし」

「怖いこといいますね、空太郎さん」

「普通だろ、犯罪者がこんなこと思いつくことなんて。誰だって考えるだろ」

「それ空太郎だけじゃないですか」

「失礼な。ひどし」

 

 未来の毒舌に、空太郎はまとめに入った。

 

「とりあえず、俺が言いたいのはわざわざ、黒幕だってみんなの前に現れる必要はねーってこと。なんで、自分が悪の親玉でクリスを陰から操ってましたなんて言うかね、普通。これじゃあ、クリスを庇って、全ては自分が原因って言ってるもんじゃないか」

 

 ハッとクリスも息を呑んだ。まさか、そんなこと……が。

 

 ここで未来も、空太郎の言うことを理解した。フィーネという人物は、やっていることは悪だが、邪悪というわけではない。

 

「ま、今はどうでもいいけど」と空太郎は言った。

 

「どうでもいいって……」

「今、クリスが何をしたいのかが重要だ」

 

 空太郎の言葉に、クリスは俯く。考えはまだ纏まらない。どうすればいいのか、わからない。

 

 何より……こわい。やってきたことが間違いで、そのせいで多くの人を傷つけてしまった。

 

 だから、もう、何もできない……。

 

 そう言った感情に支配されていた。

 

 そんな彼女に気にせず、しっかり彼女の目を見て空太郎は言った。

 

「クリス。君が決めろ。この先どうするか、を」

「でも……アタシは間違え過ぎた。もう、動けない」

「そうか? お前には立てる足がある。掴める手がある。まだ、動かせる力があるさ」

「……お前みたいに強くねぇんだよ。放っておいてくれ」

「ケジメもつけずにか?」

「ッッ」

「ま、お前がフィーネの元へ戻って、また犬のように尻尾を振るか。響ちゃん達と協力して、フィーネに仕返しするか」

「そんなことできるかよ」

 

 そうだ。まだ仲良くできない。そんな資格は自分にはない。そう決めつけていた。

 

 だからこその、第三の選択をあげる空太郎、

 

「それとも———自分で立ち上がって、戦っていくか、だな」

「……自分で立つ」

「敵対していたくせに今さらになって響ちゃんと仲良くするのは、自分の中の折り合いがつかんでしょう」

 

——————でも、と彼は続けた

 

 

「一人で戦い続けるのだけはやめて。それはいつか、自分を壊していくことだし、何より寂しいことだ。悪いことではないが、とても辛くて、苦しいことだ」

「……そんなのいつもそうだ」

「何より、俺と助けてくれた未来が悲しむんだ。君が傷つくこと、苦しむことが。だから、いつものように不敵に笑って元気になってほしいんだよ」

 

 と彼はそう言って、部屋から出た。いい加減、びしょ濡れ状態はよろしくないので着替えに出たのだろう。

 

 残されたクリスと未来。クリスがふと、呟く。

 

「……本当に変なヤツ」

「変だね」

「……アイツに会ってから思うんだ。そうだ……いつだってそうだ……アタシがほしかったものを持っていて、アタシより苦しいことがあっても、前へ、前へ進もうとしてやがる……」

「そうだね」

「……羨ましいよ。あんなに前へ進める勇気があって」

「そうだね、私も羨ましいと思うよ」

 

 啜り泣くクリスを黙って抱きしめる未来。クリスもそれに委ねながら、未来の話を聞いた。

 

「私の友達……今、喧嘩しちゃてる友だちの話だけど、ね。その子はライブ会場へ行ってて、ある災害に巻き込まれちゃったんだ。その災害から、誰かに助けられて、『生きることを諦めるな』って叱咤されて助かったんだ。ここまでなら、いつもの日常に戻っていける、私もそう思ってた」

 

 けどね、

 

「その子が助かったことが気に入らなかった子がいてね。気に入らなかった子は、好きな人をその災害で失って、八つ当たりでその子に酷いこと言ったんだ。そこから先は、堰き止められていたものが溢れて、助かったはずのその子は、周りの人から酷いことを言われ始めたんだ。石を家にぶつけられたり、家に『人殺し!』ってスプレーをかけられてたことがあったらしいよ」

「なんだよ……それ」

「助かった友達を『悪』にしたかったんだと思うんだ。その災害で助からなかった人達はね。そして、それに乗っかって『正義の味方』になろうとした人達がいたんだ。結局、その子の友達のお父さんは耐えらなくて出ていったけど」

 

 絶句するクリス。助かったのに、周りがそれを許してくれなくて、悪意に苛まれ続けられた。その上、父親が家から去る悲劇。

 

 冗談ではない。自分はそんな悪意と悲しみに、耐えられるだろうか。

 

 両親を失ったクリスだからこそ、共感できた。未来はそれに気にせず、続けた。

 

「でもね、その友達はね———それでも、屈しなかったんだ」

「……負けなかったのか?」

「うん。だって、周りが何を言おうと、家族から生きててくれたことに感謝されてたし、喜んでいたんだ。それに『生きることを諦めるな』って叱られてたし、諦めたくなかったんだ。だから、自分が生き残ったことは間違いじゃないって、言ってたよ」

「……スゴイなそいつ」

「うん。おまけに、『せっかく生き残ったんだし、もっと頑張らなきゃ!』って言って、人助けという趣味に拍車をかけるようになったし」

「訂正。変なヤツだ。そいつ」

「ハハッ。確かにそうだね。でも、私の友達はそんな辛い中でも立ち上がっていたでしょ?」

「……アタシにもできるかな」

「できるよ。クリスなら」

 

 未来はクリスが立ち直ることを信じる。そう言わんばかりに微笑んでいた。

 

「てか、アタシ達って、同じ変なヤツを知り合いにもってるな」

「フフッ、そうだね。空太郎さんは変態だけど」

「それは否定できねぇ」

 

 苦笑するクリス。

 

「でもね。その子と空太郎さんは似ているって言ったら、空太郎さんは否定していたよ」

「なんでだ? なんつーか、前向きなところとか、誰かれお構いなしに助けるとことか」

「うーん、空太郎さん曰く、」

 

 

 

 

 

『いや、俺。知り合いなら助けるが、それ以外は助けないよ。そりゃあ、苦しそうなご老人とか、なんか怪物に襲われていたら、助けようって気になるが、ぶっちゃけ、俺は命をかけてまで守るのは俺の手の届く友人達だけださー』

 

『そいつらが苦しんでいたら、助ける。泣いてたら、笑わす。間違っていたら、ぶん殴ってでも止める』

 

 

 

『それが()()でしょ?』

 

 

 

「って、言ってた」

「……なんか意外に熱いなアイツ」

「ちなみに、周りから友達の子のような感じをされたら、『まずそいつに一言言いたい』らしい」

「なんだよ」

「『好きなら告れよ。自分の後悔を、俺に押し付けるなよ』って言ってたよ」

「はんッ、ごもっともだわ」

「あと、デスソースを弁当に仕込んでやるって黒い笑みを浮かべてた」

「イタズラ小僧みたいな仕返しかよ……」

「石やスプレーされたらって聞いたら、『デスソースをぶつけちゃる』って言ってた」

「メインウェポンがデスソースなのかアイツ!?」

「あ。それ私も言ったよ。サブウェポンは、麻婆豆腐とも答えてたし」

「辛さしか武器がねぇのか、アイツは!!」

 

 デスソース片手で、麻婆豆腐を構える空太郎の姿が脳裏に浮かぶ。何それ、とてもシュールなんだけど。

 

「まあ、空太郎さんと私の友達は違うのは同感かな。私の友達は誰かれ構わずだけど、空太郎さんは人を選ぶ。……そこも同じだったら、よかったのに

 

 と最後は小声で呟く未来に、クリスは首を傾げる。

 

「ただ、私の友達のことは褒めてたよ。尊敬できる女の子だってね!」

「なんでアンタが鼻を高くしてんだよ。たくっ……」

 

 クリスは思う———そうだ。まだ終わってない。

 

 あんな変態なんかに負けたくないし、未来の友達にも負けたくない。……なんか、自分が捕まえようとしていた、 アホ面(立花響)をクリスは思い出した。

 

 なんでだろう。他人じゃない気がする。

 

「アタシはもう一度フィーネに会う」

「うん」

「話をして、聞いていく」

「うん」

「んで、後は一発ぶん殴る。落とし前つけさせてやるんだ」

「そうだね。がんばってね」

「アンタもその喧嘩した友達と仲良くしろよ。ぶん殴って、とか」

「それは空太郎さんに助言された。今、左ストレートを鍛えてます」

「……女の子に何教えてんだアイツ。アタシも言えた義理はねぇが」

 

 肩を竦めるクリスに、ニコニコする未来。もう、二人に迷いはない。似たもの同士……とも言える二人は微笑みあっていると、

 

 

 

 

 

 サイレンが鳴り響いた。

 

 クリスと未来が外に出るとパニックになった市民達。

 

 クリスは「アタシのせいだ……」と言って、逃げる市民とは逆方向へ進んでいく。

 

 そんなクリスを心配して、未来が彼女を追おうとしたとき、ノイズとも言えない黒い生物の影が現れた。

 

「何……これ」

 

 本能で察した。あれは人に触れていいものではない。未来は表に出てきたオバチャンを連れて、逃げ出した。

 

 しかし、黒い生物は未来達にあっさり追いついてきた。

 

 もはや、逃げようがない。このまま、私は……。

 

 未来が運命を受け入れようとした——————

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔人さん、やっちゃって!」

 

 

 と、知ってる男性の指示を出し、黒い生物を斬り裂いた。消え去る黒い生物に、彼は訝しめな目で考え込んでいた。

 

「妖精國でもないのに、なんでモースがいるんだ。フェアリーとかいたか、ここ」

「マスターマスター。この通りのお店にも、妖精國はありますよ」

「あっちはアランさんと同じ人が集まるとこなの。オカマとモースを一緒にしちゃダメだよ。オカマさんに失礼でしょ」

 

 などといつも通りの二人に、未来はなんとか口に出した。

 

 

「あなた達は……なんなんですか?」

 

 頼れるお兄さん。変なお兄さん。普通で平凡そうに見えるそんなお兄さんが、店員服の上着を脱ぎ捨てながら、いつも通りに言った。

 

 

「ただのマスターの一人だよ」

 

 ノイズとモースの群れの前に、マスター(空太郎)はいつも通りの笑みを浮かべていた。





遂に始動。ここから先が彼らのターンだ!(長く続くとは言っていない)
独自解釈な方は自分なりに考えてみてなんで、参考程度な意見ですねぇ……。

まあ、大々的に見せて、了子が黒幕ではないという思考誘導させてた理由もあり得ますけど……。

次回は、オリジナル展開です。どうなるかはお楽しみに
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