戦闘力5のおっさんに転生したので生き延びようと思う 作:暇です
……もう、正史から見事にずれていることは仕方ない。過ぎたことだし何やったとしても変えられるような事ではないだろう。
俺がすべきことは、何としてでもズレた歴史を正史に沿った形に修正することだ。
もし、俺が悟空たちのことを放置して好き勝手やってたら、勝手に正史からズレていってフリーザ一味に地球人皆殺しとかもあり得るかもしれない。
普通にありそうで怖いんだが。
俺がそんな事を考えている間に、悟空がブルーへと飛びかかっていった。そのまま、体ごと飛び蹴りを一発……しかし、ブルーは両腕で蹴りを防いだ。
悟空は桃白白の反撃を、宙返りして避け、一旦敵から距離を取る。
……え? ブルーが今の悟空の攻撃を防いだ?
おかしい。ブルーがカリン塔を登った後の悟空の攻撃を防ぐなんて、有り得るのか? ぶっちゃけ、桃白白にベロでやられたわけで、その桃白白よりも悟空は強いわけだ。
その戦力差で飛び蹴りを防げるのか……?
まさか、強化されてる?
「はは、私の力はレッドリボン軍のドーピング薬を飲むことによって何倍にも跳ね上がっているのよ!」
ブルーが笑いながら、声高らかに叫ぶ。その目は血走っており、いかにも私無理してドーピングしてますよ感が出ていた。
レッドリボン軍は、最終的に悟空一人に壊滅させられてしまっている。けれど、かなりの技術力を有してはいた。ならば、そういう類いの薬があってもおかしくな類。
多分、何かしら代償がある系の薬なんだろう。けど、今の悟空に脅威な事は変わりない。一応手助けしないとな……。
今度はブルーが悟空へと向かっていく。そして、悟空に向けて右腕を振るうその瞬間。
「はあ!」
能力を発動した。
全力でオーラを解放する。その威圧感によって、一瞬ブルーが怯んだところに悟空のこぶしが向かっていく。こぶしがブルーの胴体にめり込み、少しの間うめき声をあげた後、倒れ込んだ。
悟空がこちらを一瞥する。何やら不満げな表情だ。
悟空の性格的に不意打ちのような今の倒し方は、気持ちのいいものではないのだろう。けれど、悟空といえども強化されたブルーと桃白白を同時に相手するとどうなるかわからない。だから許してほしい。
今の悟空とブルーの戦いを傍観していた桃白白がニヤリと口の端を釣り上げた。
「それなりにやるようだが……私にはかなわんぞ」
「へへん。今に見てろ、オラがぶっ飛ばしてやる」
桃白白の自信満々な言葉に対し、悟空も不敵な笑みを浮かべながら言い返す。悟空のそれは桃白白と違い、強敵と戦えることに対してのワクワクを抑えきれずにこぼれ出たものだった。
この頃からサイヤ人の片鱗を見せてるよな。やっぱり種族の差ってもんは埋めようがないな……。
悟空が、足に力を込めて、思いっきり桃白白のほうへと飛んで行く。桃白白は悟空へ向けて手刀を走らせるが、悟空は体をのけぞらせることによって回避した。そのまま宙返りをして、桃白白の顎を蹴り上げる。
一瞬、桃白白はひるんだがすぐさま体勢を立て直し、連続でパンチを放つ。悟空はわずかに上体を揺らすだけで、その拳をひょいひょいと軽々しくよけた。
一瞬のスキを突き、悟空の蹴りが桃白白の脇腹へと突き刺さった。何十メートルも桃白白は弾き飛ばされ、芝生の上にうずくまる。
すぐには立ち上がれないほどのダメージを負っているようだ。
……というか、なんで俺は目で追えているんだ? 今のも、わずかコンマ数秒の間に行なわれていた。ボラたちも目を白黒させていることから、何が起きたのか分かっていない様子だ。
なのに、ボラたちよりも貧弱な俺が目で追えている。
これも能力の一種なのかもしれない。ありがたく使わせてもらおう。
それと、思ったよりも悟空が強いな。正史ではここまで一方的な戦いだったろうか? 分からないが、基本的に主人公が強いのに越したことはない。このまま何事もなく勝ち切ってほしいところだ。
「き、貴様……! この桃白白様に向かって……!」
桃白白が二本の指を額の前に掲げると、バチバチとエネルギーが集まり始めた。禍々しい光が煌めいてる。
おお、どどん波か。かめはめ波より数倍の威力を持っているという設定がある。それならなぜ悟空たちはどどん波を使わないのだろうか。
まあ、そんな恐ろしい物すら悟空は防ぎきってしまうのだ。
「どどん波!」
二本の指が垂直に向けられた。その指がさした先には……ウパがいた。
待て。聞いてないぞそんなこと。正史だったら悟空に向けて撃ったけど、普通に耐えきられて終わるはずだろ。
やばい。このままでは間違いなくウパが死んでしまう。悟空もこの状況では間に合わない。
焦りが全身を支配する。うまく頭が回らない。けれど、俺がこのまま何もしなければ目の前で一つの命が消えてしまうということは理解できた。
その事実を理解した瞬間、一切の躊躇なく俺はウパのことを突き飛ばしていた。
勿論、俺がよける時間なんてあるはずもない。俺みたいな一般人にとっては凶悪極まりない一筋の光線は、無慈悲に体を貫いた。
でえじょうぶだ。ドラゴンボールで生き返れる