『光月家』というのは今では禁句と言ってもいい。もし『光月家』に味方するような発言をすれば確実に父さんによって殺される。だからこそ皆、その想いを心の奥底に秘めて暮らしているのだろう。
ボクが生れ落ちるよりも前に『光月おでん』は死んでいるため、一度も面と向かって会ったことはないがヤマトさんなどから聞くところによれば慕われる人間であったのは間違いなかったと思われる。
そして何よりも平和を望み、和の国の発展を望んでいた。だが最終的には悲しき最後を遂げることにはなる。カイドウさんや父さんたちの手によって殺された。ヤマトさんはその『光月おでん』の意志を継ぐ者なのだと個人的には思っている。だから彼女はカイドウさんとも対立し、自らはいずれ海に出たいと考えているようだ。そういう風に夢や希望を持つことが出来るのは素直に凄い。ボクは別に何かになりたいと思わないし、父さんの後を継いで将軍になりたいとも思えない。
この国を変えるために父さんを殺そうとも思わない。父さんが行っている事は間違いなく『悪』だが、ボクは命を取ろうとは考えていないのだ。
多分、端から見ればボクは中途半端な人間に移るんだろう。確かにボクは個人的にも中途半端だと思っている。どちらにもなびくことなく、どちらに手を貸す事はしない。中立を保ち、自らを危険に晒すようなことはしない。
これが黒炭ミコトという存在なのだ。
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「ヤマトさん、入れすぎですよ」
毎度のことながらヤマトさんは僕の隣に腰を下ろしている。今、ヤマトさんはみたらしだんごを口一杯に入れて幸せそうな笑顔を浮かべている。
「だ…だいじ…ょうぶ」
だんごを口一杯に入れたまんま答えてくれた。だけど、口一杯に入っている事もあって聞き取りずらい。
こんな風にヤマトさんとのんびりと過ごす機会が増えてきた。僕は別にそのことは良いんだけど、ヤマトさんは態態、鬼ヶ島から来るわけだから大変のはずだ。本人にその事を聞いたら「別にそんなこと気にしなくてもいいんだよ。ボクはミコトに会いたいから来ているだけだしね」と言っていた。
彼女は気持ちをストレートに伝えてくることが普通に出来る。本人はそのことに対して何とも思ってないみたいだけど、それはすごいことだ。
「本当にヤマトさんはすごいですよね……」
独り言のように呟くと
「なにが?」
団子を全部食べてしまったヤマトさんがこっちを向きながら首を傾げていた。
「ヤマトさんは自分が考えている事とかをストレートに伝える事が出来ますよね。それが『すごい』と言ったんです」
「そうかな?」
「そうですよ。多分、ヤマトさんは気付いてないとは思いますがそれは誰もが出来るではないんですよ。胸の内では思っていてもそれを言葉にするのには勇気が必要なんですよ」
僕とヤマトさんは正反対。あんまり人とコミュニケーションを取りたがらない自分。グイグイ距離を縮めてくるヤマトさん。こんな正反対の二人だからこそ、お互いに一緒にいることが妙に心地いいのかもしれない。
「…でも、言わないと思っていることなんて伝わらない。だから僕は自分の気持ちは正直に相手に伝えようとしているだけだよ」
やっぱりヤマトさんは当たり前のように口にする。これは自分には出来ないようなこと。確かに考えている事や思っている事なんて言わないと伝わらない。だけど、それを言葉にするのはとても勇気のいること。
「やっぱりヤマトさんは凄いですよ。自分なんかに絶対に真似できないことですから」
「そんなことないと思うけどな。ミコトはただ相手を傷つけないように言葉を選んでいるだけだよ。それは誰かを傷つけないようにというミコトの優しい考えがそうさせれいるだけ。それに思っていることを直球で相手に伝える事が確実に良いこととは限らないとボクは思うよ。相手を傷つけて嫌な思いをさせるかもしれないしね。それに僕はミコトのその人を思いやれる心が好きだよ」
「…ありがとうございます」
いつも思うけど、やっぱり直接思いを伝えられるとこっちがなんか照れる。