レヴィア・クエスト! ~美少女パパと最強娘~   作:ちりひと

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093. 休憩

(うーむ、少々予定外だな)

 

 闘技場の控室。

 

 元々は剣闘士が待機する場所な為か、黄土色の壁や地面はところどころに破損が見え、あまり状態のいい部屋とはいえない。しかし今回の為に気は遣っているらしく、床には真新しいカーペットがひいてあり、椅子やテーブルは一級品だ。恐らく英雄殿から持ってきたものだろう。

 

 その一つである椅子に座り、支給された飲み物を飲みながらレヴィアは思う。

 

 自分がぶっちぎりだと思っていたのに、結果を見れば二位。それも三位とそれほど離れていない。最初こそ上手くスタートを切れたが、すぐに失速してしまった。

 

(まあ仕方ないか。一番の苦手種目だもんな。ここでマジになってバテる方が問題だろ)

 

 魔力を出せない訳ではない。しかし自分の魔力は他者に比べ、性質がかなり異なる。下手に解放すると様々な問題を引き起こしかねない。やっかいな体だ。レヴィアは心底そう思った。

 

 とはいえ、それはどうしようもない。レヴィアは頭を切り替え、両手で頬をパンと叩いて気合を入れる。

 

 そんな彼女に近づいて来る影。

 

「うふふ~、どうですか。これが実力の差というものですよぉ」

 

 見上げれば、ドヤ顔をしている魔法使い風の女。ガーベラであった。

 

「悪知恵は回るようですけど、所詮は悪知恵。真なる知恵にはかなわないのが道理。五賢者の一人……おっほん! ではなく、大魔法使いに勝てるなんて思わないでくださいねぇ」

 

 どうやら本当にドヤりに来たらしい。クイズ大会で負けたのが相当に悔しかったのだと思われる。

 

 ぺちゃくちゃとマウントを取ってくる彼女にイラッとするレヴィアだが、ふと疑問に思う。確か三階にガーベラの姿はなかったはず。自分の下僕にならない者も一部にはいたが、「従わない者は後で冷遇してやろう」なんて考えていたので全員の顔を覚えているのだ。

 

(ああ、コイツ三階じゃなかったんだな)

 

 レヴィアは同情の目線を送った。元々対象外と思われていた存在。しかし実力があった為に這い上がってきたのだ。不思議な事に顔は悪くないが、レヴィアには分かる。三階でなかった理由が。

 

「な、何ですかぁ。その目は。もっと悔しがりなさいよぉ」

 

 その雰囲気を察したのか、ガーベラが抗議してくる。その抗議を聞き流していると……。

 

「やあ。レヴィア様とガーベラ殿」

 

 さわやかな顔で話しかけてくる者。クィンと呼ばれる女騎士風の女だった。

 

「あらぁ? 三位の方じゃないですかぁ。どうしたんですぅ?」

「フッ。まあ今は三位だがね……。実はお二人に提案があって来たんだ」

「提案?」

 

 首をかしげるガーベラ。その彼女に対し、さわやかな顔のまま言うクィン。

 

「こう見えて私は貴族の一人でね。さるお方の命を受けているんだ。で、そのお方は私の勝利を望んでおられる」

 

 どうやら貴族らしい。女騎士的な恰好をしている理由は分からないが、様にはなっている。下級生から「お姉さまぁ」と慕われそうな感じだった。

 

 そして“さるお方の命”という言葉。間違いなくルシアとやらの仕込みだろう。貴族出身の誠実な子女。そんな女が千妃になる事を望んでいるのかもしれない。

 

「それで、どうだろう。君たち、わざと負けてくれないか?」

 

 

 

 

 

 

「「……は?」」

 

 が、次いで紡がれたのは誠実さとは真逆の言葉。思わず意味が分からないという感じの声を出してしまう。隣のガーベラも同様であった。

 

「どうやら君たち二人がライバルのようなのでね。是非負けて欲しい。もちろん対価は用意するよ。ロムルス王子の懐から」

 

 ハッハッハ、とさわやかに笑いながら言うクィン。それを聞いた二人は目が点になっていた。誠実さのカケラもない言葉だったからだ。

 

(……ああ。そういやコイツ、真っ先に俺に媚び売ってきやがったな)

 

 レヴィアが三階の女王となっていた際。もみ手をして媚びていた者の一人が彼女であった。

 

 恐らく途中でルシアの命を受けたのだろう。しかし、あんな振る舞いをしておいてこの手のひらの返しっぷり。さらにレヴィアを越えられる目安が立った途端、裏工作をしようとするプライドの無さ。風見鶏にも程がある。一番信頼してはいけない人種だった。

 

「ダ、ダメですよぉ。王子様と結婚するのは私ですぅ。そんな提案は受けられませぇん」

 

 彼女の提案をガーベラは即拒否。ガーベラの言葉に「まあ、そうだろうな」と思いつつレヴィアは言う。

 

「そ、そうです……。アナタのような卑怯な方に、ロムルス様は渡しません……!」

 

 気弱ながらも意思を感じさせる……といった感じの目で。その言葉を聞いた二人は「お前が言うな」的な視線を返してきた。

 

「……まあ、いい。気が変わったらいつでも言ってくれ。早ければ早いほどいいと思うよ? その方が私の心象が良くなる」

 

 くるりと踵を返し、去っていくクィン。とても余裕そうだった。午後からの審査にそれほど自信があるのだろうか?

 

(……いや、あのドリル女の手先だからな。ヤツ有利な試験があるに間違いない。警戒しておくに越したことはないな)

 

 レヴィアはクィンの背中を見ながらも思った。また魔力審査のような苦手種目があれば本当にそうなりかねない。自分は何としても彼女の上をいかなければならないのだ。純花の為に――

 

 

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