家事代行サービスのあの子ということで、今回はあの子が出てきます、あの子が。
多分これから音ちゃんの復学、からのイベストって感じで書いていきます。ちなみに音ちゃんが現れたのは、時間軸的には囚われのマリオネット後です。
音視点
復学届。前にまふゆにそんな単語を聞いてから、スマホで調べてみた。どうやら生徒氏名や復学理由、備考などを書かなければならないらしい。復学理由や備考は病院側に任せればいいだろうが、一つ問題点がある。
音「保護者指名...」
そう。保護者である。家族のことが思い出せない私はかろうじて今お父さんとお母さんの存在を認識しているが、お父さんもお母さんも、今これに名前を書ける状況にはない。...おばあちゃん、おじいちゃんとか?いるのかな...どことなくかな姉に聞いてみようかな...。そんなことを考えていると、玄関のインターホンがピンポーンとなった。
音「こんな時間に来客...?」
私はこの時間、いつもなら図書館に行っていたが今日は休館日らしいのでまふゆとのお勉強もなし。そんなわけで今は家にいるのだ。自室からリビングに顔を覗かせると、かな姉が玄関に向かうところだった。
奏「望月さん、いらっしゃい。今日は掃除をお願いできるかな」
穂波「はい!今日も張り切ってお掃除しちゃいますね!」
音「もちづきさん...ってあの、作り置きの人...」
ふむ、しかしどこかで見たことがあるようなないような...。絵名や瑞希に会った時にはなくて、かな姉に会った時には存在した感覚だ。...てことは、望月さんも私の過去の知り合い...?分からないな...。
奏「...あれ、音?そんなところで何してるの?」
音「え、ああ...インターホンなったから、誰かなって」
奏「ああ、そういえば音はまだ望月さんと会ってなかったっけ...?望月さん、ちょっと来てくれる?」
穂波「はい!なんでしょう......って、ええっ?!」
望月さんと言われた人が私の方を見て驚く。ああ、これは多分───
穂波「お、音ちゃん?!」
───私の昔の知り合い、なんだな。
一方のかな姉は少し驚いたような顔をしている。この感じ...昔の私はかな姉に、この望月さんとの関係を言ってなかったのかな。
奏「知り合いなの...?」
穂波「あ、すみません...えっと、知り合いというか、幼馴染と言いますか...あの、音ちゃん、覚えてる?穂波、だよ...?」
音「......うん、覚えてるよ、穂波」
穂波「...!よ、よかったぁ」
望月さん...いや、穂波は安心したような嬉しいような笑顔をする。幼馴染、なんだ...。かな姉が知らないってことは、小学校から一緒ってことかな...?
奏「...驚いた。まさか望月さんと音が幼馴染だったなんて...」
穂波「わたしも、ここで音ちゃんに会えるなんて思ってなかったので驚きました...」
音「穂波はなんでここに...?」
奏「あ、音には言ってなかったね。望月さんは家事代行サービスの仕事をしてて、わたしの家を担当してくれてるんだ」
穂波「うん、そうなの。...確かに、音ちゃんの苗字、宵崎だったね。気が付かなかった...」
音「まあ、注意してないと気づかないものなんじゃないかな。それにしても、家事代行サービス...?そんなものがあるんだ」
奏「わたしも、おばあちゃんに言われるまでは分からなかったよ」
...ん?今、おばあちゃんって言ったよね。...これは、チャンスかもしれない。
音「おばあちゃん、か...。久しぶりに話したいな」
奏「確かに、音はもうしばらくおばあちゃんと話せてないもんね。電話とか、してみる...?」
音「電話...番号、なんだっけ」
私がそう言うと、かな姉は番号を伝えてくれた。...よし、電話帳登録?っていうのもしたし、これでいつでもかけれるはず。あとは、どう私のことをおばあちゃんに説明するかだな...。
穂波「...ねえ、音ちゃん」
音「ん?何、穂波?」
穂波「その、2年前...中学二年生の時、何があったの...?」
...ああ、そうか。幼馴染、なんだっけ、この人と。2年前...と言われても、私自身、何があったのかが分からない。せいぜい休学する前に入院してたらしいってことしか。...かと言って、今ここで記憶が無いことを伝えればかな姉にもそれが伝わるだろう。それは避けたい。...なら、私に出来ることは...。
音「...んー、今はまだ言えないかな。正直、私も心の整理がついてないから。...でも、きっといつか、穂波達に伝えるよ」
真実を混ぜ込んではぐらかすことだけ。詳しいことは分からない。でも、いつか記憶がなくなってしまったことは...せめて穂波には伝えたい。かな姉には、難しいかもしれないけど...。
穂波「...そっか。ごめんね、こんな形で聞き出しちゃって」
音「ううん、全然いいよ。ていうか、それより穂波」
穂波「ん?何、音ちゃん」
...いや。これは、復学することはまだ決まってない。それに...なんだろう、これは。知られたくないって言うより、復学した時の反応を見たい...?もしかして、これが悪戯心というやつだろうか。...だとしたら、案外私はドッキリとかが好きなのかもしれない。
音「あー...掃除、しなくて大丈夫?」
穂波「あ、そうだった!ごめんね音ちゃん、引き留めちゃって。それじゃあリビングから掃除していくから、何かお願いしたいこととかわたしに伝えてね」
音「うん、ありがとう穂波。がんばって」
そう言って私は自室にまたこもった。さて...おばあちゃんに電話、してみるかな...。果たして向こうは私のことを覚えているのか、そもそも私からの電話に出るのか...。そんな不安にかられながらもおばあちゃんに電話をかける。3コール目になった頃、向こうからの反応が来る。案外早いんだな、そんなことを思いながらスマホを耳に当てた。
音〘もしもし...おばあ、ちゃん?〙
〘その声......もしかして、音なのかい?〙
音〘うん、音だよ。久しぶり、おばあちゃん〙
電話の向こうで、すすり泣くような声が聞こえる。何故...と考えてみたが、向こうにとっては久しぶりに聞く孫の声。そういう感動の再開、みたいなのは普通の人にとって嬉しいのだろう。それから私は、病院へ行くという趣旨を伝えた。もちろん、記憶が無いということも。
〘......そうかい。つらかったろう、苦しかったろう。分かったよ、都合がついたら連絡しておくれ〙
音〘...うん。ありがとう、おばあちゃん。じゃあまたね、おばあちゃん〙
〘ええ、またね、音〙
...案外すんなり受け入れてくれた。いや、驚いてはいたけど。もしかしておばあちゃんは、私が記憶をなくした原因を知ってるのかな。それなら冷静に対処出来るのも納得だけど...。何にしろ、まずはまふゆと行く日程を決めなきゃな。そんなことを考えていると、穂波から呼ばれる。
穂波「宵崎さーん、音ちゃーん、お茶入れましたので飲みませんか〜?」
音「わかった、今行く」
奏「...わかった」
おお...。香りのいいお茶だ。それはかな姉も感じたようで、いい香り...と呟いている。
穂波「実は今日、アップルパイを作ってきまして。1つしか作れてないんですけど、よかったら...」
奏「ありがとう、望月さん。音、食べる?」
音「かな姉も食べなきゃダメだよ。...うーん、半分こする?」
奏「ふふ、そうしよっか」
穂波の方を見たらなんだか微笑ましそうに笑っている。なんだか、温かい気持ち...。さっきおばあちゃんと話した時と同じ感じだ。てことは、穂波にお母さん的な何かを感じてる...?いや、でも同級生だろうし...。
奏「...音?食べないの?」
音「あ、ごめん。食べるよ」
穂波「ぜひ召し上がれ〜」
私はかな姉が食べるのをまた見よう見まねで食べる。ん...ちょっと取るのが大きすぎたかも。食べる口が小さいこと、忘れてた...。
穂波「...ふふ。音ちゃん、昔から変わらないね」
音「...?何が?」
穂波「いや、えっと...音ちゃん、食べ方が小動物みたいで可愛いから」
奏「あ...ちょっと分かるかも」
穂波「ですよねっ!」
小動物みたい...?褒められてるのか、それは。まあたしかに、ハムスターとかは可愛いと思うけど...。食べ方が、小動物...。うーん、なんだか複雑...。
まあでも...穂波とかな姉、楽しそうに笑ってるし、いっか。
ほなちゃんの笑顔、大好きです。