今回は要素てんこ盛りです。そして前回のようにおばあちゃんと担当医のセリフが見にくいと思います。すみません。
あとプロセカ本編にはない、ここオリジナルのものが出てきますが、ご了承ください。
音視点
かな姉に手を引かれながら歩いていると、小児科と書かれた看板が見えてくる。そして私の昔の担当医さんと名乗る人の個室の手前まで来た途端。
「申し訳ありません。少し確認したいことがありますので、音ちゃんと2人にさせてもらえますか」
音「えっ...」
奏「......音...」
「...音、できるかい?」
私は速攻で首を横に振る。いや、無理無理無理...!ほんとに、さっきみたいな怖さはもうヤダ...!なんだか...恐怖心、というか...なんとも言い表せない怖さが襲ってきて...震えと涙が止まらなくなる感じ。そんなことを考えているとまふゆが真剣な口調で語り掛けてくる。
まふゆ「...音。これは音にとって必要なことなのかもしれないよ?怖いかもしれないけど、頑張らなくちゃ復学もできないかも...」
音「うっ...うう...わ、わかった...頑張って、みる...」
担当医さんにありがとう、と言われ個室に案内される。...2人きりは、やっぱり怖い。...でも。私のために必要なことならば、我慢しなくちゃ...。
「...さて。まず先に。ほんとうに、申し訳ない。こちら側の不手際で、あんなことになってしまうとは...」
音「...えっ、と...?」
「......もしかして、覚えていないのか?」
音「あ、えっと...さっきの、角での出来事ですか...?それなら気にしてない、と言ったら嘘にはなりますけど...そんな謝るようなことでも...」
私がそう言うと目の前の担当医さんは考え込むような動作をしてから私に問いかけてきた。
「...音ちゃん。今、自己紹介をしてもらえないか?できるだけ、詳しく」
音「じこ、しょうかい......あ、自己紹介...自分を紹介...。えーと、名前は宵崎音。あとは...お父さんが入院していて......ん?これは私自身の事じゃないから...」
...ダメだ。自分の名前くらいしか自分のことが分からない。そもそも自己紹介って何言えばいいんだろう。好きな食べ物、とか...?
「...音ちゃん、自分の名前しか言ってないのだが...。じゃあ、好きな食べ物や嫌いな食べ物は言えるかい?」
音「......この前瑞希に貰った飴っていうのは好きだなって感じがした、けど...」
「......なるほど、そうか。やはり......」
...目の前の担当医さんが1人でブツブツと呟き始めた。なんだろうこの人。何がなるほどで何がやはりなんだろうか。...私、好きな食べ物とか嫌いな食べ物、なんなんだろう...。
「...音ちゃん、君は......記憶を、失っているね?」
音「...多分」
「...多分それは、過度なストレスによる記憶障害だ。君の髪色が白くなっているのも、そのせいだろう」
音「私の、髪色も...?」
「...少し、過去の話をしよう。少し君にとっては酷かもしれないが...。君は過去のことをどこまで知っている?」
音「2年前、入院していたってことは知ってます...」
「...そうか。君の言う通り2年前、君は風邪を重症化させて入院していたんだ。その時の君は...ひどく元気がなくてね。目もどこか虚ろで...と、そんな事はいいか。大事なのは、ここからだ。君が記憶をなくした原因であろう出来事が、ひとつあったんだ」
...私が、記憶をなくした原因であろう出来事?...私は、この病院のせいで記憶をなくした...ってこと?私は、前にこの病院に来た時......うっ...あたま、が...。
「...君は、この名前を知っているか。黒田孤児院。表向きには孤児院を経営しているのだが...」
そう、どこかの会社であろう名前を出される。黒田、孤児院...?黒田孤児院...どこかで、聞いたことがあるような...そう思い、私は頭痛がする中頑張って思い出そうと頭をフル回転させる。くろだ...くろだ...。
『──それでは、この子供を貰うことにしよう。なに、今は風邪か何かで心ここに在らずという状態だが関係ない。...いずれこうなるのだからな』
『働けっ!お前らに休みなどいらぬ!!学問と仕事を両立させてこそ、初めてお前らに価値がみいだせられるのだ!!』
『...お前はこの中でも優秀な成績を叩き出しているな。これからも価値を見いだせるよう、精進したまえ、
──ッッ!!!?
音「あ、う、あああ...あ"あ"あ"あ"あ"あ""!!!」
「音ちゃんっ?!」
奏「───音っ?!」
音「あ"...あ"あ"あ"...やめて、来ないでっ、思い出させないで...!!やだ、やだ、いたい、いたい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめっ、ごめんなさい!」
まふゆ「お、音...?」
「...失礼するよ。...音に何をしたんだい?」
「...少し、過去の話をしました。...やはり、強烈なトラウマになっているようです。......親御さん、少し...話せませんか。子供達は外へ」
「...分かりました。奏、まふゆちゃん、音を連れて行けるかい」
奏「わ、わかった...!」
まふゆ「分かりました。音、ごめんね...ちょっと行こう」
音「や、触らなっ、やだっ...!」
───その後。
どうやら私はかな姉とまふゆに落ち着かせてもらっていたようで、気がついたら個室の前にいた。私は少し前の記憶がなかったが、どうやらすごく震えて顔色が悪かったそうだ。...なに、してたっけ。確か、何かを思い出そうとして......うぅ、今でも頭痛がする。
奏「音、ほんとにもう大丈夫?落ち着いた...?」
音「うん、多分...。ごめんね、かな姉、まふゆ」
まふゆ「それはいいけど...何、話してたの?」
すっかり普段の様子に戻ったまふゆが私に問いかける。何してた......担当医さんと話してて、それで...何かを思い出そうとしたってことは分かるけど...何を思い出そうと...?
音「......何かを、思い出そうとしてて...」
奏「...思い出す...?」
音「あ、ええと......」
まずい、かな姉には内緒にしてたんだった...。どう言い訳しよう、そんなことを考えていると個室のドアが開けられ、中から担当医さんとおばあちゃんが出てくる。
「...お待たせしました。復学の書類準備が完了したから、ちょっといいかな?」
音「あ、はい...。ありがとう、ございます...」
そう言い私達は個室に入る。担当医さんの机の上には復学届の紙があり、まだあまり状況が整理しきれていない私の代わりとして、まふゆが宮益坂女子学園にいたという趣旨の内容を説明してくれた。それから復学届に保護者氏名や備考などを書いてもらい、判を押してもらう。どうやらおばあちゃんと担当医さんとの間で契約?というものが交わされたようで、学費や制服などは心配しなくていいとのこと。復学する日も後日伝えるとのことだ。
「...それでは、お手数とご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳ございません。音ちゃんも、ごめんな」
音「え、あ...こちらこそ、ありがとうございました...?」
「さあ、行くよ。院長先生、あとはお願いしますね」
まふゆ「...院長先生...?」
奏「...?まふゆ、どうかしたの?」
まふゆ「あ、ううん。なんでもないよ、行こっか」
そうして私達は4人で受付へと向かう。が、途中でまふゆのスマホが振動する。まふゆはスマホを見て誰にも聞こえないようなため息を吐き...ってため息?
まふゆ「ごめんね、お母さんから連絡が来て、急ぎの用事が入っちゃったみたいだから私はここまでかな」
音「まふゆ、帰っちゃうの...?ばいばい」
奏「まふゆ、またナイトコードで」
「まふゆちゃん、またね。今日はありがとう。...さて、わたしは受付に行ってくるよ」
...そういえば、ナイトコードのアプリ、ダウンロードしないとなあ...。セカイにも全然行ってなかったし...帰って余裕が出来たら行こう。そんなことを考えているとおばあちゃんがもう受付に行ってきたようで、私達は帰り支度を始める。
「それじゃあね、奏に音。健康的な生活をするんだよ。くれぐれも体調管理には気をつけるように」
奏「うっ...わ、わかってるよ。またね、おばあちゃん」
音「おばあちゃん、ばいばい」
こうして私達はおばあちゃんに別れを告げ、駅へと向かう。もちろん、かな姉先導のもと。駅へ着くとちょうど電車が来る頃で、私達は急いで乗って席を確保する。...はぁ、疲れた。席に座ったら落ち着いて、かな姉もいるし安心できる...。そう思いながら私は、気がついたら眠りについていたのだった──────
─────奏視点。
奏「音...?」
隣の音の頭が肩に乗り、すぅ、すぅ...と可愛い寝息が聞こえる。
奏「そっか。今日は色々あって、疲れちゃったからね...」
穏やかに眠る音を見て自然と微笑んでしまう。...わたしは、迷っていた。以前...音がいなくなってしまう前、音を拒絶してしまったわたしが...音に寄り添っていいのか。音とまた、仲良く...姉として振舞っていいのかを。
奏(...でも。今日で、何となくわかった気がする)
わたしは...音のことが、大切。これは今も昔も...変わらない。私だけの、大切な妹で...家族だから。...だから。音には、笑顔でいてもらいたい。音に救われて欲しい。そのためには、わたしは......しっかりと、
奏「...うん。頑張ろう」
そう、安心したように眠る音の隣で決意したのだった。
はい、ということで。いかがでしたでしょうか。
個人的に今回は後に伏線となる部分をたくさん入れたつもりなので、ぜひそこも探していただけると嬉しいです。次回に復学、出来たらいいなぁ...。