オレと木久知は手分けして色々と手配をした。理事長に報告した時は「楽しみにしている」とだけ言われた。たぶん、理事長としても生徒たちが研鑽する風景を見たいのだろう。
だが、本番はこれからだ。それぞれのチーム分けを行ってそれを伝達していかなくてはならない。それだけではなく、司会者や場所など問題は山積みだが今回のことに関してはそれだけする価値がある。後輩たちが色々と学ぶ機会を作るのは第一席として当たり前のこととは言ってもやっぱり難しい。
あと…これは関係ないが、十傑に属している者たちぐらいの名前はしっかりと覚えることにした。今回のことで色々と話す時に名前が出てこないというのが色々とあったのだ。さすがにこれは不便だと思うようになり、徹夜で名前を覚えた。
そして今月何回目か分からない、『遠月十傑評議会』を開くことにした。正直急な呼び出しということもあって、何人かは来れないとしても仕方ないと思っていた。
でも結果的に全員が集まってくれたのは本当に有難い。
オレは席を立ち、全員の姿を確認した後に話し始めることにした。
「まずは今回の十傑評議会に参加してくれてありがとう」
普段であればこんなことは絶対に言わないが、今回の招集はオレが独断で行ったことだ。それぞれ予定が厳しい中で参加してくれているのだから感謝しかない。
「私、ちゃんと色々と掛け合っておきましたよ」
第ニ席こと木久知園果は腰に両手を置きながら自信満々に言い放つ。それが全員に向かって言っているのではなくて、オレに対して言っているのはすぐに分かった。
「ああ、本当に感謝している。第二席」
「そうですか!次からも私を頼ってもいいんですよ!」
「はいはい、わかりました」
このままだと話が始まらないので木久知のことは適当にあしらって話を始める。
「今回、皆を呼んだのは開催する予定のイベントについてだ。次のイベントで交流会のようなものをやることは皆と話したが、一番の問題はやはりグループ分けにはなるだろう」
これに関しては偏ることがないようにしたい。
出来るだけそれぞれのチームが均等になるように分けてなくてはならない。やっぱり問題となって来るのは三年の少なさだ。三年にまで来るとふるい落とされて、生き残った奴しかいない。実力はそれなりに保証が出来るが、人数が少ないというのがな。
「グループ分けにおいて、オレを含めた十傑のメンバーはなるべく分散するようにするべきだな」
そう当たり前のことを話すと…ちょっと不満がありそうな顔をする奴が増えた。オレにはその理由が分からず、そのうちの一人こと第四席の小林竜胆に話を振る事にした。
「もちろん、天沢先輩の言っていることも分かってるけど、私も先輩と組みたい!」
「なぜだ?」
「こんなことを本人を目の前にして言うのはちょっと恥ずいけど、天沢先輩の技術は私たちなんかよりも上にあります。それはこの場にいる天沢先輩以外が認めるところ。私たちだってそんな先輩と一緒のチームになって色々と学びたいし、先輩と居た方が色々と面白そう!」
「そ、そう言われてもな」
十傑に属するような奴に関しての成長よりも新入生が研鑽できるようなイベントとしての意味が大きいのだ。オレのを見て学べるかは分からないが、オレ以外にもお手本とすべきような奴は三年の中にも二年の中にも多いし、それを学んでくれれば問題はない。
だが一応…勝負という形にする以上、公平性のためにも十傑と呼ばれている十人はしっかりと分散させたいという気持ちはあるんだよな。
「『もも』も!天沢先輩とお料理したい!」
「そ、それなら僕もやりたいです!」
なぜか小林に釣られるように第六席の茜ヶ久保ももと第三席の司瑛士が挙手した。
「だが、十傑のメンバーが同じグループに属するのはちょっと偏りが過ぎる気がするしな」
オレの言葉に木久知も同意してくれた。
「それはそうかもしれませんね」
それにどんな風に分けても全組に十傑のメンバーを入れるのは難しいのが正直なところ。一年生の人数を考えればどんなに甘く見積もっても七十組以上は必要になってくる。それも司の案で二人だった一年生を三人した場合だ。増やした場合でもこれだけ多くのグループを作らなくちゃいけなくなるのだ。
もちろん、十傑のメンバーや一番数が少ない三年のことを考えるともう少しここ辺りは議論をする余地がある。
「小林、茜ヶ久保、司には悪いが、今回ばかりは後輩が学べる場所を作るという目的が最優先である以上は飲めない」
オレがそう言うと明らかに小林を含めて三人は落ち込んでしまった。
これは仕方ない。
どう考えても今の状況で十傑クラスの料理人をブッキングさせるわけにはいかない。
「だが、交流会が終わった後でならいいだろう」
オレの言葉にこの場にいるオレ以外の全員が目を見開いている。
オレとしては後輩が学ぶ場所を作れた後なら問題はない。しっかりと目的を果たしたわけだしな。
それに十傑のメンバーには色々と迷惑を掛けているのも事実だし、多少の要望は応えておかないといけないだろう。
「全てが終わった後ならそれぞれがしたいことをしても構わない。だがやるのであれば事前に連絡してくれ。会場の時間など諸々のこともあるからな」
それからはグループ分けについての詳細が話し合われ、3時間程度の議論の末にある程度はまとまった。今回決まったこととしてはグループを分ける時は公平性を保つためにもクジにすること、そして中等部からのメンバーに関しては立候補者がいればその者を優先的に参加させて、もし求める人数に満たない場合は他薦という形でオレたちが決める。
今回の行事に関しては出来るだけ参加してもらうのが一番いいからな。
そして十傑のメンバーは絶対にブッキングしない。
今回の連帯食戟のようなものに関してのルールはほとんど連帯食戟とは変わらない。だが違うところも存在する。今回の場合、勝負は一対一だ。
そしてルールとして連帯食戟の順番は学年の低い順にすること。
でも一つだけ例外があり、それは十傑メンバー。
十傑のメンバーは今回の食戟において絶対に『大将』であること。大将とは柔道団体などでもよくあるもので、最後に戦う者のこと。それは学年関係なく、十傑メンバーが大将。例え、二年生の中に十傑がいたとしたら三年生が居たとしても大将は十傑メンバー。
今回は十傑の力を誇示する場所ではない。あくまで後輩たちの成長を促すために行うのだ。それならオレたちがあまり出しゃばるのは良くないのだ。なるべく後輩にチャンスを与えてやるべき。
この交流会の期間は約2ヵ月。最初に1ヶ月グループを公表して、それぞれチームで勝つための方法やお互いに知りうる限りの知識を集めて、研鑽してもらう。
そして最後の1ヶ月で連帯食戟を行う予定だ。
勝利を掴んだチームには豪華ディナーのご招待。豪華ディナーと言ってもオレを含めた十傑の誰かを指名してもらい、その指名された人物がディナーを作るというもの。
こんなものが賞品で良いのかという疑問があったが、他の十傑のメンバーからすれば「これ以上に価値のあるものはない」らしい。
十傑評議会で決まったのはこんなこと。