特殊な料理人   作:主義

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十傑評議会の後

十傑評議会が終わるとそれぞれ帰路に付くのが普通。だが今回に限っては第一席の天沢久遠を除いて、全員がまだ残っていた。

 

 

残っている中で最初に静寂を破ったのは一色だった。

 

 

「それにしても天沢先輩を前にするとなんか緊張しますね」

 

そしてその意見に紀ノ国が同意する。

 

 

「先輩は普通に話しているけど、こっちは今にも押しつぶされちゃう感じがして」

 

 

「初めて会った時からやっぱりちょっと違うと思ってましたけど、あの人はちょっと次元が違いますね。正直どんなことをしたらあんな風な料理人が出来上がるのか興味ありますよ」

 

全てのことをそつなくこなす万能な料理人の一色慧ですら、第一席の天沢久遠には敵わないのだ、そしてどれだけ研鑽を積んでもあの領域に達することがほぼ不可能であることを感じている。

 

 

そんな一色の評価に対して隣に座っていた、久我照輝が口を開く。

 

「確かに俺もあの人の生い立ちは興味あるかも。まじであの人は底が見えない。あの人には挑む前から勝敗が分かっちゃうから…挑もうと思えない」

 

 

そう話した時の久我は珍しく何も野心がなく、もう諦めている感じだった。そんな久我の姿が珍しかったのか、小林が声を掛けに行く。

 

 

「久我がそんな風に言うなんて珍しいな」

 

 

「そりゃあ、あんな食戟を見ちゃったらね」

 

 

「それは中等部の子と天沢先輩の食戟?」

 

司からの問いかけに対して久我は静かに首を縦に振った。

 

 

「『もも』も天沢先輩がすごいのは知ってたけど、ちょっとあれは凄すぎて予想してなかった」

 

そんな茜ヶ久保の言葉に対して、次はずっと無言だった斎藤が口を開く。

 

「俺も自分のすしに自信があるつもりだが、ちょっと揺らぎかけたな」

 

 

「その気持ち、『もも』わかるかも」

 

第六席の茜ヶ久保ももと第七席の斎藤綜明がそう称するほど天沢久遠という人間は少しおかしいのだ。

 

 

そんな中、第四席の小林竜胆がいつものふざけた感じではなく、真面目な顔をして話し始めた。

 

 

「まぁ…あたしも天沢先輩は次元が違うとは思ってるよ。あそこまであたしたちが到達するのには生涯を費やしても難しいかもしれない」

 

同世代でもTOPに君臨するような料理人たちが天沢久遠という料理人に対しては…自分たちとは違うというぐらいにすごいのだ。

 

 

「でも、そんな天沢久遠という料理人と一緒の時間を過ごせるのはあたしたちの人生にとってすっごく良いことじゃね。それに少しでも先輩に近付けるチャンスだってあるかもしれないんだからさ」

 

 

小林の意見に対して一番最初に同意したのは女木島だった。

 

「確かにそれはそうだな」

 

 

「先輩から色々なことを学べますし」

 

 

 

そしてそれから少し話して、小林が改めて天沢に対して思っていることを口にした。

 

「それにしても…天沢先輩はすげぇって改めて思っちゃった」

 

 

「うん、それは僕も思ったよ!あんなに取っ散らかった議論をしっかりと軌道修正させているとかを見るとやっぱり天沢先輩はすごいんだってさ!」

 

司瑛士はさっきの話し合いを上手くまとめて、小走りで去っていった第一席のことを思い浮かべ、興奮している。

 

 

「司も思ったよな。やっぱりあたしらのTOPはすげぇよな」

 

 

「天沢先輩は本当にすごいよ。僕たちが見ている世界とは全く違うものが見えているんだと思う。

 

 

「だけど、やっぱりあたしは先輩と同じチームがいい~」

 

 

「それは皆、同じ気持ちだよ」

 

 

「『もも』だって先輩と一緒に料理したいもん」

 

皆がそんな話をしていると今まで何一つ喋らなかった、木久知が口を開き、衝撃的なことを語り始めた。

 

 

「ちょっと久遠くんと言われたことがあるんです。月饗祭について」

 

 

「月饗祭についてですか?」

 

前にも語ったが、天沢久遠は未だに月饗祭に参加したことがない。そして司がさっき天沢に対して「出て欲しい」と懇願していた。それに対して天沢は「出る可能性がある」と言った感じのニュアンスで話していた。

 

 

「はい、私もまさか久遠くんの口からその言葉が出てくるとは思ってもいなかったです。さっき久遠くんが出て行く時にこんな風に言われたんです。『今年はお前に手伝って欲しいことがあるんだ』って」

 

ここにいる全員が彼女の話を固唾をのんで聞いている。

 

 

「え、それって?」

 

 

「はい。今のところなのでまだ何とも言えませんが、今年の久遠くんは月饗祭の参加についてかなり前向きなんだと思いますよ」

 

木久知の言葉は特に司や小林にとっては嬉し過ぎることであったが、それ以上にこの後告げられたことが彼ら彼女らの心を動かした。

 

 

「それと『できれば他のメンバーの中でも手伝ってくれる奴がいると有難いんだがな』と言ってましたよ」

 

木久知のその言葉を聞いた瞬間は静まり返って、数秒後に盛り上がった。このメンバーはそこまで叫ぶようなメンバーはいないが、今回に限っては叫び声や奇声など色々な声が入り混じっている。

 

 

その中でも一番盛り上がっているといっても過言じゃないのは第三席の司瑛士だ。

 

 

「え、それって…僕たちが先輩のことを手伝ってもいいってことだよね!」

 

この場にいる人は色々な反応を示している。

 

 

「あたしの力を先輩に見せる時だ!」

 

「やっと恩返しをする時だ」

 

「『もも』のお菓子で先輩を助けてあげるんだ!」

 

「俺に手伝えることがあるんだったら全力でやるだけだ」

 

「私の技術で先輩の手助けになるのなら」

 

「僕も出来るだけ先輩の力になりたいですね」

 

「まあ…力を貸して欲しいって言うんだったら」

 

 

総じて言えるのは全員が天沢への協力を望んでいるということ。




次の更新は少し先になってしまうと思いますが、必ず更新するのでそこまで気長にお待ちいただければ嬉しいです
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