特殊な料理人   作:主義

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この話は前回と繋がっています。


後輩と料理

それぞれの自己紹介が終わって改めて感じたが、この後どうしよう。今回は顔合わせだけなのでそれ以上のことをする必要性はない。だが、顔などを見れば明らかにオレに対しての恐怖心や緊張が目立つ。

 

緊張を解いてもらうようなことをする必要があるな。

 

 

となれば……オレに出来るのはこれぐらいか。

 

 

「今日は顔を合わせるだけで問題ないが、少し時間があるなら付き合ってくれないか?」

 

 

オレの問いかけに誰も返事することなく、首を縦に振っている。個人的にはここまで怖がられているかと思ってしまう。いや、怖がっているだけじゃなくてオレに対して嫌悪感のようなものを抱いている奴がいるのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

場所は移動して調理室に来た。

 

あんまり材料がないので大したものは作れないが、少しでもグループのメンバーが気を許してくれれば作る意味もある。別にすごく仲良くなる必要性はない。それでも話し合いができるような関係にしておかないと。

 

 

「オレが適当に作るから、キミたちは座っててくれ」

 

そして調理に取り掛かろうとしたところで…丸眼鏡の子がオレのところにきた。

 

 

「どうした?」

 

 

「あ、あの…近くで見させてもらってもいいですか!?」

 

 

「近くで…ってああ、調理をか?」

 

 

「は、はい!!」

 

緊張しているのが言葉からも伝わって来る。この子は確か…中等部三年生の子か。名前は丸眼鏡の丸井くんか。こんな覚え方をしていると知ったら本人には怒られるかもしれないが、勘弁して欲しい。

 

オレは人の名前を覚えるのがお世辞にも得意とは言えない。すぐに忘れてしまう。十傑のメンバーだってどうにか覚えようとしているぐらいだしな。

 

 

「別にいいぞ」

 

断る理由もないしな。それにオレは親睦を少しでも深めるためにやろうと考えたが、結果的に少しでも後輩たちの勉強になるのなら願ったりかなったりだ。

 

 

 

 

そして丸井くんに続いて他の後輩たちも「見たい!」と言い出して最終的に全員がオレの調理の過程を見ることになった。調理中はなにか話し掛けて来ることはなく、真剣にオレの調理を見ていた。

 

正直、個人的には大した料理も今の材料は作れないんだから、そんな真剣に見てもと思っちゃうけど。

 

 

 

 

 

それから時間が経過して、オレは料理を完成させた。

 

「まぁ…こんなものでもいいかな」

 

オレは完成した料理を見ながらそんなことを呟いた。

 

 

今回作ったのは…オムライス。色々と隠し味を入れたりして、なるべく完璧な形のオムライスへと近づいたが、しっかりと材料がある時のオムライスに比べればやっぱり劣る。

 

だが今回は食戟というわけでもないし。

 

 

 

 

 

後輩たちはしっかりと席についているのでオレはオムライスをどんどん運んでいく。六人分のオムライスを作るのは普通に考えれば面倒かもしれないが、この学園に通っている者は色々とたくさんの料理を作る機会に恵まれている。オレも外部に料理を振舞いに行くとかは尋常じゃない位の料理を作ってくれと言われることもある。

 

 

 

 

オムライスを運び終わるとオレは「ある材料で作ったからどうか分からないが、食べてくれ」と言うと全員がしっかりと「いただきます」と言ってから食べ始めた。

 

 

そしてそれぞれが一口食べるとすぐにスプーンを置いて、下を向いてしまった。そんな中、白い髪の女子生徒が席を立ちあがって、オレの方を見てきた。

 

「な、なにこれ!?」

 

 

「…マズかったか?」

 

 

「なに言ってんの。その逆よ、逆!!こんなに美味しいオムライスなんて食べたことないわ!!」

 

 

「…それなら作った甲斐があるというものだ」

 

さすがに作ってマズイと言われるのはきついし。

 

 

「ど、どうやって…こんなに美味しい料理が作れるの!?」

 

 

「どうやってか……その質問は難しいな。それにオレがオムライスを作る過程は見ていたはずだが」

 

 

「それで分からないから聞いているの。あなたの手捌きはやはり十傑の最高峰にいる料理人だと言われるレベルだったわ。でも、作り方に関してはそこまで特殊なものを入れている感じがしなかった。それなのにこのオムライスは美味し過ぎる!」

 

少し興奮した口調で白髪の少女が距離を詰めて来る。

 

 

「自分の目で見たものが全てだ。それ以上のことはしていない」

 

本当は少しだけ手を加えた。全員がずっと見ていたと言っても途中で「そろそろ席に付いていてくれ」と言ったら全員が離れてくれた。オレはその時にひと手間加えただけだし。

 

どうやらオレの答えに白髪の少女は納得できていないようだった。

 

 

「そんなわけないです。絶対になんかした!」

 

 

「そうか」

 

そこでオレは食べている奴にも聞こえるぐらいの声で話す。

 

 

「オレはキミたちに少しでも多くのものを掴んで欲しい。この交流会でなにかを掴んでくれればこれを開催した意味もある。だから、オレは出来るだけお前たちの協力する。この言葉は嘘ではないので安心して欲しい」

 

こんなことで安心してくれるとは思わないが、言っておかないと。それと次に会う時にして欲しいことをしっかりと告げておく。

 

 

「次に会った時に…一度キミたちの一番得意料理を食べさせてくれ」

 

なにをするにしても今の実力を見ないことには分からない。書面上では教師の評価が色々と書かれているが、それはあくまで一つの判断材料でしかない。やはり自ら食べて見ないことには何とも言えないというのが正直なところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして食事が食べ終わると今日は解散させることにした。

 

初日にあんまり縛り付けるのはやめた方がいいだろうし。

 

 

 

 

 

オレが「そろそろ席に付いてくれ」と言った時に全員が何も疑うことなく、席に付いた。正直一人ぐらいは最後まで見せて欲しいというと思っていたのだが、そうでもなかった。別に見せて欲しいと言われればオレは拒むことをしなかった。

 

別に隠すこともでないしね。

 

 

 

 

オレにはあんまり分からないが料理の探求をするのであれば、多少先輩に我儘を言うぐらいは…して欲しいかな。それに彼、彼女たたちにこの交流会が将来振り返った時に意味があったと思えるようにするためにも。

 

そんなことを考えて、オレはふと思った。

 

「オレも年取ったな」

 

今までであれば他人のことなんて考えずに、早く第一席から下りることばかり考えていたんだけどな。この交流会だって適度の力で行えばいいのにオレはそれなりにやる気になっているところが自分でも怖い。

 

 




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