オレが思っていたよりも後輩たちはこの連帯食戟に乗り気なようで、暇さえあればオレを呼び出してくる。こうなったのは2日前に二度目の集まりをした時に後輩の料理を食べて、アドバイスをした。
そして解散する時に何か聞きたいことがあれば連絡してきていいと言った。これが全ての始まりで、何度も何度も呼び出されては後輩の料理を食べてアドバイスをするという毎日。
あと食べて思ったが、それぞれ料理人としては特出したものをやっぱり持ってる。しっかりと育てばいずれはこの学校を無事に卒業できるだろう。遠月学園に通う以上は『退学』といつも隣り合わせの日常だ。そして卒業する頃には信じられない位に人が減るもの。
話しは戻るが、僕が担当する六人は全員が卒業出来るだけのものを持っている。あとはそれなりに努力して研鑽していけば…いずれはダイヤになるかもしれない。そうなってくれればオレにとっては嬉しい限りだな。
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教室で突っ伏していると木久知のような声が聞こえてきた。
「随分、疲れてますね」
「木久知か…」
「後輩さんたちですか?」
「ああ、遠慮がないのは別に構わんが、さすがにこの2日間で10回以上も呼び出されればな」
「大変そうですね」
「…大変だ。ここまでやっているんだから、あいつらが何か掴んでくれればいいが」
まぁ…どっちにしても高等部一年と中等部三年だ。これから色々な奴と会ってくだろう。そしてその中の一人としてオレが少しでも良い影響を与えられたらいいが。
「昔から思っていたんですけど、久遠くんって後輩に対しては優しいですよね」
「そうかな」
「そうです。もちろん、第一席だからって言うのもあるのかもしれないですけど、それを差し引いても面倒見がいいです」
「そうなのか。まぁ…オレにも弟や妹がいるからな」
「え、そうなんですか!?」
「ああ、そこまで離れてないが」
遠月に入るよりも前はよく弟や妹に勉強を教えたりしていた。だから元々人に何かを教えるのはそんなに苦でもない。
「そうなんですね。初めて知りましたよ」
「言ってなかったからな」
さすがにこれ以上、他愛のないような話をしても仕方ないので本題に入ることにした。
「それで木久知、まだ少し早いが月饗祭について少し相談したいことがある」
「はい、何ですか?」
「お前は自分で店を構えるんだろ?」
「昨年と一昨年はそうでしたね」
「今年は違うのか?」
「まぁ…どうですかね。久遠くん次第じゃないですか」
「オレ次第?」
「自分の店を構えるのには色々と大変です。特に今まで一度も月饗祭に参加したことがないような人には」
「そうだろうな。オレもそのことについては考えていたところだ」
「そうでしょう。だから…私が手伝いますよ」
「ありがたいな。今まで参加したことがなさ過ぎて全然分からなかったんだ」
資料とかで内容に関しては理解しているつもりだが、あくまで書面上だけ。一度でも参加したことがあれば雰囲気も分かるもの。でも、オレには経験がない。
「店の営業に関してはオレ一人で大丈夫だ」
「ほんとですか?」
「そこは信じてもらっていい。だが、最終日だけ少し手伝って欲しいことがあるんだ」
「…手伝って欲しいこととは?」
「それはな…」
それからオレは木久知に対して自分のやりたいことをなるべく丁寧に説明した。
「でも、それってあなた以外の人にかなり負担掛かってません?」
「ああ、そうなんだ。だからこれに関しては一応ダメ元で聞いてみて、受け入れられた人だけ参加してくれれば問題ない。オレも無理強いさせるつもりはないからな。でも、早いうちにそれに関しては聞いておかないとメニュー作りとか当日の立ち回りや店の規模にも影響が出て来るからな」
「それはそうですね…」
「誘うのはオレから直接言ってみる」
「それがいいですね。話の張本人である、あなたが誘われた方がいいでしょうし」
そしてオレは改めて木久知に視線を向ける。
「それでまずは一人目の木久知なんだが…」
「いいですよ」
「いいのか?」
「ここまで話を聞いて断る方が難しいでしょう。それに一度ぐらいは久遠くんと一緒にやってみたいんですから」
「そう言ってくれると有難い。詳細については連帯食戟が全て終わったぐらいから詰めていこう」
「そうですね。今は連帯食戟の方です」
学園全体が連帯食戟の空気に包まれている感じでかなり盛り上がっている。ここまで大がかりな食戟は今までなかったというのもあるだろう。少なくともオレが在学中が今みたいなことが行われた試しはない。
「うちの子たちは強いですよ」
「そうか。オレのところも良い子が入っている。今はダイヤの原石だが、いずれは本物になるかもしれないような奴がな」
「それはお互いに楽しみですね」
「ああ。だが、やはりルールに変更を加えてよかった」
「そうですね。さすがに十傑のいるところが有利過ぎますからね」
追加のルールとしては大将が場に出られるのは1回か2回。普通の二年生や三年生であれば二回、十傑に所属している者は一回だけというもの。
これは二年生や三年生の力を誇示するためでなく、あくまで一年生や中等部の子に経験や研鑽、学ぶ機会を与えるために行うだけだからな。
だから勝負の勝敗は一年生や中等部の子たちが握っている。だから十傑の奴がいるところが絶対に勝てるなんてことはない。これこそ総合力が必要になって来るんだ。
「それでも私のところが勝ちますが」
「それはどうかな。オレのところも簡単には負けない」
第一席と第二席が見つめ合いながらそんなことを話していた。