連帯食戟がやっと始まった。オレのグループも予選に出場したが、まさかこんな速度で成長するとは思わなかった。予選はそれぞれ四グループに分かれて、グループステージで戦う。そしてそこで勝ち上がった一チームだけがトーナメントに進める。
オレのグループは一度も負けなかった。
元々それぞれが才能を秘めているとは思っていたが、少しずつ開花し始めてる。特に目覚ましいのは鏑木祥子だ。上級生相手にも臆せず、戦っていき勝利を掴めるあの腕はやはりすごいと感じた。
いずれ十傑に入るのは確定路線と言っても良いぐらいだ。
他の子たちもそれぞれ自分の得意分野を伸ばしつつある。
だが、連帯食戟でのお互いはあくまでランダム。自分の得意分野がお題になる可能性は極めて低いというのが正直なところだろう。そんな中で負けずに切り抜けているのはすごい以外の言葉がない。
連帯食戟ではいかに早くお題に合う一品を頭の中で構築して、それを形にするのかが問われる。作る皿を考えるのに時間を取り過ぎれば、調理をする時間が削られる。だが、早くても皿としての完成度が低ければ本末転倒になりかねない。その案配がとても難しいというのが連帯食戟なのだ。
そしてトーナメントに勝ち上がった僕たちが最初に戦うのは大将に第九席の一色慧くんがいるところ。
チームメンバーの中で特に予選で目立っていたのは中等部三年生の葉山アキラくん。さすが汐見先生のゼミに所属している子と思うべきかもしれない。中等部三年生の中で葉山くんは少し飛びぬけた部類に入るが、この世代は全体的にレベルが高いので世代1位かと問われたら答えるのは難しいところ。
そんな彼がいるところと対戦するわけだが、うちのチームには勝ち目はある。正直、同じチームだからこそ多少の贔屓目はあると思うけど、それでも彼や彼女らの力を結集すれば勝つのは難しくないと思っている。
それでも一色くんの相手は現状では厳しいとは思っている。もちろん同学年の鏑木さんや小西くんも力はあるけど、一色くん程ではないというのが現状。
いや、勝負事は何が起こるのか分からない。ジャイアントキリングが起こらないとは誰にも言えない。
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遠月学園の中でも入ることが滅多にいない部屋に三人の男女がいた。
「司、竜胆ともに忙しい中来てくれてありがとう」
「いえ、天沢先輩からのお話となれば」
「私らは先輩のことを尊敬しているからよ」
「そう言ってくれるのは素直に嬉しいが、オレに憧れても何もないぞ」
「何かが欲しくて憧れているわけではありません。僕は天沢先輩の料理人として実力を見た上で憧れているんです」
「そうだぜ。先輩の調理の腕や目利き、センスのどれをとってもこの学園内に上回るような人はいない。そんな人間に憧れない方がおかしいぜ」
「そうか」
これ以上、なにを言っても無駄だ。それに憧れようとどうでもいい。個人間で済ませるのであっても、多少のアドバイスを求められても問題ない。
そこでオレは今回の本題を思い出して、説明に移ることにした。
「お前たちにここまで来てもらったのは一つお願いがあるんだ。別に断ってもらっても問題無いとだけ最初に伝えておく」
先輩からのお願いというだけでも多少は緊張するだろう。それにさっきのこいつらの言葉を信用するとすればオレなんかに憧れているようなので、断ってもいいということはしっかりと伝えておくことが必要だと感じた。
「今回、お前たちにお願いしようと思っているのは月饗祭についてだ」
「月饗祭?」
「ああ、オレは今回の月饗祭で店を出そうと考えている」
二人は笑みがこぼれとしているように見えるが、決して話を止めることはしないのは有難い。
「そしてそこで二人にも手伝って欲しいことがあるんだ。三日目だけオレに二人の時間をくれないか?」
「いいですよ」
「私もいいぜ」
「おい、そんな二つ返事で承諾していいのか。オレはまだ概要を何も話していないが」
「僕は天沢先輩からのお願いは断らないと決めているので」
「私もそうだな。断ることはないな」
こいつらのオレに対する信用は予想以上に高いな。
そう思った後にオレは念のため、手伝ってもらうことなどを具体的に話したのだった。