GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり   作:睦月透火

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周囲の影響を考慮するかどうか、最後まで悩みました。

前回からの続き……
国会の参考人招致に応じ、日本に来た魔導師レレイ、エルフのテュカ、死神ロゥリィ……そして、アークスのトリニティ。

国会での質疑応答は続き、ロゥリィの番が回ってきた……


第11話 空想が現実になる時

 レレイとテュカへの質疑応答も無事に終了し、残るはロゥリィと僕だ……

 

 その最中、議員は何を思ったのか……ロゥリィの衣装を喪服と勘違いした上、彼女の年齢を自分よりも下と決め付け、あろう事かその勘違いを利用して自衛隊の責を問い始めたのである。

 

 ……僕は一体、何を見せられているのだろうか?

 

 今まで出会った地球人は、多少は何かしら思う所はあれども……これ程まで馬鹿な思考はしてなかった……だが、この議員は明らかに自己勝手な先入観に囚われたまま勘違いな言動を繰り返し、過去の事象を捏造しようとしている。

 渡してある「全知くん」によってテュカやレレイにも先程からの勘違い言動は全て筒抜けなので、『このオバサン何言ってんの?』といった顔だ。

 

 ロゥリィの傍らにも「全知くん」が浮いているが、彼女の雰囲気を感知したのか……忙しなく宥める様なジェスチャーを繰り返していた。

 

 そして、議員が自衛隊の行動に責を問う様に問い掛ける。

 ……それに返されたロゥリィの言葉は……

 

「……貴女、お馬鹿さぁん?!」(マイクキーン)

 

 全知くんを介さない、彼女の日本語による盛大な罵倒であった。

 

 

 罵倒を皮切りにロゥリィが語ったのは、地球の常識など通用しない……「門」(ゲート)の向こう側での戦闘の真実……伊丹さんたちの戦闘を直視し、長い時を生きてきた彼女の言葉は、あちら側の世界が持つ独特な価値観もあり……全てを聞き終えた地球人は全員、言葉を失なわざるを得なかった。

 

 ……後半で議員の事を矢鱈と「お嬢ちゃん」呼ばわりしたのは、途中から議員の事を「無知」だと切り捨てた考えから来る言動……だと思う……

 実際ロゥリィと議員の女性との年齢差を考えたら間違いなく「お嬢ちゃん」発言は妥当だろう……だが、相手は彼女の実年齢を知らない筈……そう考えると、単に苛ついたから……と思えなくもない。

 

 議員が苛立ち混じりに「年長者は敬うもの」と諭そうとすると、ロゥリィも僅かに殺気立つ……これは少々マズイね。

 

「委員長! 彼女は重大な勘違いをしています!!」

『ロゥリィ、さすがにそれは彼の立場を悪くする……ココは任せて』

 

「何よ伊丹……って貴方(トリニティ)まで、何で邪魔するのよぉ~!」

 

 僕と伊丹さんが揃って声を上げ、伊丹さんは議会の仕切り役に「勘違い」を説明……同時に僕がロゥリィの手を止めさせ、席へと連れ戻す……

 

「え~、信じられないかとも思いますが彼女……ロゥリィ・マーキュリーさんは、この場の誰よりも年長者になります!」

 

 伊丹さんの説明に、女性議員は鼻で笑いながら「一体何歳(いくつ)になるって言うんです?」と完全に信じてない模様……しかし、ロゥリィ自身が言い放った答えは……

 

「……ふふっ、961歳よ」

 

 初めて聞いた彼女の実年齢に、特地住人以外の全員が驚愕に言葉を失う……無論、それは僕もだ。

 

 アークスの現役最高齢記録保持者はレギアスだが、それでも実働期間は200年を超えてない……キャストと言う種族はかなり長命であり、身体のメンテナンスさえ十全ならば、4~500年は現役で動けるのだが……ロゥリィの実年齢は僕の予想よりも遥かに上だった。

 

 ロゥリィの実年齢を皮切りに、答弁済みの特地住人……テュカとレレイも実年齢を聞かれ、それぞれ「165歳」「15歳」と判明……その後レレイから特地における種族的な特徴が説明され、誰もが納得せざるを得なくなった。

 

──────────

 

 特地に関して、十分すぎる程の衝撃を受けた参考人招致だが……答弁を求めた参考人はまだ存在している。

 

《え~、最後に……ん、これは……?》

 

 ん? 司会が書類見て困惑してる……まさか、提出した書類に僕が気付かなかった不備が……?

 

『……スミマセン、どうやら提出書類に不備があった様ですね……この場で謝罪します』

 

 仕方なく伊丹さんを倣って挙手し、マイクで此方の不備を謝罪する……対応は早い方が良い、僕は自身のマグデバイス「ネメシュ」に指示を出し、書類を持って困惑する司会者の元へと行かせる。

 

 ネメシュは見た目こそ刺々しく奇妙な模様入りの超大型閃機種「ネメス・アンジュール」を2.5頭身にデフォルメした人型デバイスだが、マグ故の高性能や多機能ぶりは健在……簡単な指示なら問題なく実行できる上、キャストである僕と視界の共有も可能。

 

 ……他にも様々な有用性があり、兎に角重宝する。

 

 ネメシュはすぐに不可視モードとなり、司会を務める議員の後方から回り込んで書類をカメラに収めてくれた。

 

(……書類の不備じゃない、内容の信憑性の問題か……)

 

 視界共有で確認させた書類に不備は見当たらなかった……単なる信憑性の問題か、それともこの地球独自の問題なのか……少なくとも信憑性なら答弁で回復できるハズだ。

 

《え~、すみません……個人的な勘違いです、失礼しました。では最後に、トリニティ・フェザーバレットさん》

 

 改めて司会者が書類に目を通し、僕の名前が呼ばれた……さて、何をどう聞かれるかな……

 

 

 質疑する議員は先程の衝撃から何とか立ち直り、一見すると優男に見える僕に対してまたもや優位に立とうとする言動を展開する……

 

「まず……貴方は特地住人ですが、ドラゴンと自衛隊の戦いに途中参加し、撃退に寄与したとありますが……それは本当ですか?」

 

『はい、私が参戦するまでの間……自衛隊員はドラゴンの周囲を車両で走って撹乱しつつ、手持ちの装備で牽制を繰り返し続け、民間人に注意が向かない様にするので手一杯でした。

 

 目撃以前の行動は分かり兼ねますが、少なくとも飛翔している相手に対して、陸戦歩兵がやれる事はほとんどありません……幸い、私は切り立った崖の上から様子を伺えたので、牽制射撃が途切れたタイミングに合わせ、剣でドラゴンの尾を斬り付けました……それで想定外のダメージを負い、ドラゴン自身が己の命の危機を感じて撤退した……という顛末です』

 

 先程、ドラゴンの鱗はタングステン(の合金)並の強度を持つと明かされたばかりなのに、僕がその鱗に覆われたドラゴンを剣で斬り付け、尾を切り落とした……会場のほとんどが「信じられない」といった顔だが、特地組と伊丹さん達は目の前で見てるので特に反応もない。

 

「……それはさすがに、誇張が過ぎていませんか? 確かに、自衛隊の報告書にもドラゴンの尾は切り落とされていたとありますが、別の方法かもしれませんし、或いは既に傷を負った後だったのでは?」

 

『確かに……報告書や聴取内容は簡単に偽れるモノですからね……』

 

(……ひとまず、これで彼の言葉から正当性を欠かせる事は出来そうね……)

 

 とでも考えたのだろう……僕を相手に弁論大会をやるなんて随分と短絡的な思考だな。

 生憎だが、そんな言葉遊びなんかには付き合ってられない……況してや、伊丹さん達の特地での奮闘や努力を世界中に誤解される訳には行かない……

 

(だからといって、彼女やアッシュ達を落胆させたくは無い……)

 

 長い付き合いのある、幼なじみの彼女……レギアスに師事し、姉弟子のアザナミと共に剣を学んでいる事から、守護輝士(ガーディアン)であるアッシュやマトイとの縁もできた。

 彼女は守護輝士の2人と同じで困った人を見捨てず、不正は許さない難儀な性格……当初こそ割り切っていたが、アッシュが反逆者とされた事件の前後から……僕自身の思考にも影響を及ぼしていた。

 

『……ですが、この場で在らぬ誤解や行き違いは徹底的に排除したいというのが私の主義ですので、敢えて言わせて貰います……

 ……現実を知らない者にとやかく言われる筋合いはありませんし、彼等自衛隊が現地民の方々にどれだけ感謝をされたか……貴女はそこまでの全てを知ってから物を言うべきだ』

 

 さすがに彼女の言動には腹が立っている……疑うのならば見せてやるさ、現実を。

 

 ネメシュに不可視モードを解除させ、最大サイズの巨大ホロモニターを展開……それにある映像を映し出す……

 

 それは僕の視点でネメシュが記録した出来事……件の赤トカゲ(ドラゴン)戦における自衛隊の活躍と、現地民とのやり取りの全てだ。

 

 

『……この映像はフィクションではありません。

 私が実際に自衛隊と共に目にし、感じ、体感したものを映像に納めたものです……無論、音声翻訳以外の加工も一切行っていません』

 

 そう良いながら、僕は量子格納していたアウターを取り出し手早く着込む……もちろん録画した時の、ニューマン男性の姿へと変わって。

 

『この映像も証拠資料として後程提出しましょう。少なくとも、この映像は全て現実であり、特地ではこの様な驚異が他にも潜んでいるかもしれない……

 自衛隊はその様な土地に派遣され、この映像の出来事を経験した……その事実を忘れる事無く、今後に活かして欲しい……

 

 ……それが、貴方達に望む事です』

 

 作り物にしては迫力がありすぎる、大迫力のデジタル(この世界で広く普及している)動画データに変換したネメシュの記録映像……もちろん音声は日本語に変換済みだが、データ上では翻訳前の音声とシームレスに(いつでも)切り替えられる様になっている。

 

 繰り返し流される映像記録に、誰もが言葉を失い……質疑していた女性議員は、ドラゴンの咆哮が響く度にビクッと身体を震わせている。

 各メディアのカメラマンもカメラを向けてこそいるものの……これまでの質疑応答を全肯定せざるを得ない記録映像を食い入る様に見ていた。多分、放送局側は必死に事態を収拾しようと苦心している事だろう……

 

 証拠がないから信じない? それなら見せてやる……簡単な理屈だ。

 専門機関やらに持ち込んで映像を解析するだろうが……本当に加工は施してないから意味はないし、これだけ簡単に出すの物を疑う方がおかしいと周囲から疑われる……人間の心理的にも証拠能力は十分だろう。

 

《……静粛に!》

 

 いち早く事態を収拾すべく、司会のマイクを借りて重鎮らしき議員が周囲を一喝……ざわめきが収まったのを確認した後、僕に対して質問をしてきた。

 

《……君は一体、何者なのかね……?》

 

 キリの良い処で映像を止め、ネメシュが僕の傍らに戻って来る。

 

 特地から来た筈なのに、明らかに技術レベルの違い過ぎる芸当を行ったエルフらしき男……素性を疑われるのも当然だ。

 

『…………』

 

 冷静さを取り戻しつつある会場の全てが、僕の次の言葉を待っている……

 この世界でPSO2を造った会社(のSEGAというゲームメーカー)には悪いが、少しばかり付き合って貰おう。

 

『私……いえ、僕はトリニティ・フェザーバレット。

 種の保存と惑星調査を行う組織(Artificial Relict to Keep Species)……通称、アークスに所属する者です』




Q:そんな簡単に身分明かして良いの?
A:アークスの存在を元々秘匿する必要性はありませんでした。
  ただ、今の世界はPSO2本編で繋がった地球とは違う次元と言う事もあり、無用な混乱を抑える為にも即時公開はせず、初期は時期の決定にも慎重になっています……ですが今回は発言の信憑性を得る必要がある為、やむを得ず……と言う事で。

Q:アークス君はSEGAを知ってるの?
A:序盤で倉田さんはPSO2の事を知っていました。
  こちらの地球での関係は彼から情報提供されています。

公開後の混乱が目に浮かぶわ……収拾する側の苦労は考えたくないw

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