GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり 作:睦月透火
ウチは獣っ娘大好きです!!
……あとはもう分かるよね?
自衛隊はピニャ殿下の内部工作に乗じて帝国の内情を利用し、講和への道を探る予定だと聞いた。
僕個人としても、アークスとしても……争う事無く済むならそれが一番だ。
……だが事前に内情を探っていたリィスからの情報を考慮すると、一筋縄には行かないだろう。
それはさておき、ヤオから炎龍討伐の依頼を受けたは良いが、事に当たるには先に帝国の一件を片付ける必要がある。
それまでヤオには、自身の実力を引き出す為に「修行」して貰う事にした。
……だが、その中身は誰もが思う様な順当なものではない。
これから彼女に行って貰うのは“アークス流”の特別訓練……僕、またはサポートパートナーの誰かに相手をして貰い、格上の相手でも怯まず、逆転勝利を狙い、そして生還する……そうなれる為に、真の強さを身に付けて貰おう。
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「はじめまして、ヤオ・ハー・デュッシ……ボクはランガ。マスター・トリニティから聞いてるよね?」
「……どんな強者かと思えば、まさか子供とは……!」
ヤオの修行相手、その初日を務めるのは急遽呼び寄せた3人目のサポートパートナー「ランガ・ルゥ」。種族的にはデューマンなのだが、オラクルの後ろめたい過去……「
性格は表裏のない、やや単純で食い意地の張った野生児……しかし、相手の思惑や善悪を直感で見抜き、諜報では計り知れない側面に気付かせてくれる娘で、難しい最終判断にも一役買ってくれる。
この娘は直接戦闘……主に接近戦に強く、短時間とはいえ六芒均衡にも追随できる程の高い戦闘センスを持ち、こと実戦に於いては僕やアッシュでも手球に取られる場合がある。
この娘との模擬戦に耐え切れるなら、炎龍が相手でも怯む事なく戦い抜けるだろう。
『今日は顔合わせも兼ねて、ランガとの模擬戦をやってもらう。勿論初日だから、ランガにはヤオに初撃を譲るのと、強打・遠距離攻撃・テクニックの禁止。カウンターは手加減または寸止めする事。いいね?』
「オネーサンはハジメテだしね、りょーかい」
「随分と上から目線……この身の実力を侮るか?!」
当然の如く、ヤオの顔が険しくなる……この辺りは想定内だ。
彼女は確かに“この世界の存在”という枠の中では強い方だろう……だが、依頼の相手は人外の極致。多くの創作物で最強種と名高いドラゴンなのだ。
常識的にみて、現地人レベルでは太刀打ちすら出来ず地形も纏めて消し炭にされる……だからヤオには完全、とは行かずとも“アークス”として戦えるレベルを目指して貰う。
僕の基準ではあるが、
そしてランガは単独でもダークファルス【敗者】*1といい勝負が出来るので、彼女の戦いについて来れるようになれば、ドラゴン如きに遅れは取らなくなる筈だ。
「舐められたものだな……容赦はせんぞ! ……ッラァ!!」
「ほいっ……んじゃ、かる~く?」
「ッ……?! ガふっ……!!」
ランガは、ナイフを持って低い体勢から突撃してきたヤオの一撃を、何でもない様に片手で受け流し、更に虚空から自分よりも大きな得物「D-A.I.S.セイバー」を取り出し、空いているもう片方の腕で振るう。その一連の光景にヤオは驚愕……防御すらも忘れて棒立ちになり、無防備なままランガの一撃を受けて近くの木の幹まで飛んで行ってしまった。
「って……あり? よっわ……」
そう言ってやらないでくれ……アークスの力はこの世界の人間相手だと、かなり手加減しないとオーバースペックが過ぎる。
ランガは元々、非常識レベルの馬鹿力持ちなので、先ほど行った弱攻撃は十分に手加減したとはいえ、その威力は恐らく件の炎龍の尾の一撃に等しいだろう。
戦闘において、見た目で相手を判断しない事は重要ではある……が、ランガの行動はヤオにとって“あまりにも想定外”であった様だ。
まぁ……この世界の常識的に“子供くらいの人間が長大なバスターソードを片手で振ってくる”など、誰が予測できるだろうか。
小一時間ほどで気絶から復帰したヤオ……目を覚ました途端にランガを見る目が恐怖に彩られた。
『……手加減をしろと言った手前、だいぶ加減していたのは分かったが……それでもやり過ぎだな今回は。……ランガ』
「んぅ……ご、ゴメンナサイ」
「……え? あぁ……その……」
『僕からも謝らせてもらうよ……この事態は此方の不手際だ。実力差は理解していたが、常識面の配慮が十分では無かった』
「……は? ちょっと待て……コレがお前達の常識なのか?!」
「なん……だと……」
無言となる僕らに、アレで最低限の威力だった……暗にそういう事だと理解してしまったのか、悪魔と契約して後悔したみたいな顔をするヤオ……
非常に申し訳ないのだが、今回の件で彼女には「このレベルを目指して貰う」のだ……心苦しいのは山々だが、背に腹は代えられない。
「いやコッチの方がだいぶ命の危機ではないのか!?」
残念だけど、
……無慈悲だけど、コレが現実だ。
「……ッ……あぁ……」
早くも涙目となったヤオ。予定時間はまだ1/3しか経っておらず、地獄の時間はまだ始まったばかり……
それからしばらくの間、ヤオはランガの一撃で吹き飛ばされては気絶からの復帰を繰り返し……修行初日が終わる頃には魂が抜け掛けている様な顔をしていたという。南無三……
数日後……僕らはアルヌスから帝都へと移動し、ピニャ殿下の講和工作に協力する事になった。
対外的に僕らは“炎龍騒動の生き残り”となり、僕とリィスは殿下の側仕えとして召し抱えられたという体で護衛に付きながら、リィスは裏で情報収集、イリスには帝都へ潜入している自衛隊(黒川さん達)との繋ぎをして貰い、僕は直接日本国の使者として来ている菅原さん達の護衛(帝国側の内通役も兼ねる)となった。
なおイリスには、アルヌスに残っているランガを経由して、アルヌス側の自衛隊への連絡役も兼ねて貰っている。
勿論、自衛隊にも自前の連絡ルートがあるのだが、帝都とアルヌスでは如何せん距離がある為か、僅かながらタイムラグがあるし、有事の際の不備を極力避ける為に有線通信網を敷設する必要があった……その点、僕らアークスが使う「フォトン通信システム」は時空間の制約が無いから基本無線通信でタイムラグ無し、超長距離の通信も可能な上よほどでなければ映像込みの高品質、しかもこの世界の建物や地形程度ならたとえどれだけ障害物があったとしてもスルーできる。
これからも自衛隊にはどれだけ世話になるかも分からないし、迅速な情報伝達は部隊を支える重要なものだ。
……という事で、簡易的とはいえ設備の提供をした……無論、ウルク司令やシャオにも許可は取ってあるよ。
現状は迅速さと正確さを求める為、連絡役を兼務してる状態だけど……隊員達が機材に慣れたら、交代制に順次変更予定である。
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それから数日後……菅原さんと殿下の共催。という体で、帝国の元老院達を懐柔する為「宴遊会」が開催された。
これは日本から提案された一種の内部工作で、帝国元老院の重鎮達と秘密裏に接触し、先の「銀座事変」で日本側が拘束している帝国の捕虜(主に要人や高官の子息など)の返還を条件に譲歩を引き出す目的がある……
その他にも、
戦力差という点で見れば、だいぶ脅し的な要素が大きい……しかし、帝国は圧倒的に技術レベルの劣る国ではあるものの、話を聞かない蛮族とは違うし、第三皇女ピニャ・コ・ラーダは(成り行きやら不可抗力ではあるものの)ほぼ既に懐柔済み……既に帝国の中枢に影響を及ぼせる存在と接触し、なおかつ殿下自身が講和に意欲的なのだから、無用な流血を避けられるとあれば、日本側からしても正に“渡りに船”となっていた。
(……さて、悪い事が起きなければ良いんだけどね……)
園遊会会場の警備を兼ね、菅原さんの護衛役を務める僕は、菅原さんがテュエリ家ご令嬢と会話するのを聞き流しながら空を見上げるのだった。
あれからピニャ殿下の兄……長兄ゾルザル殿下が乱入してきたが、自衛隊との連携による迅速な行動で元老院議員達は退避。園遊会自体はそのまま続けられ、ピニャ殿下の機転と用意された食事のお陰で、ゾルザル殿下には真意を悟られる事なく済んだ……
しかし、殿下曰く“和気藹々とした事には無関心”な帝国の第一皇子が、対外的には“特に何の変哲もない園遊会”の様子を見に来る……誰かに唆された? だとすれば、この園遊会の真意も、皇帝に露見していると思って良いだろう。
皇帝の真意は読めないが、政治の中枢である元老院を切り崩す敵側の策を黙って見ている筈は……いや、もしかしたら帝国も一枚岩ではないのか……?
その日の夜……帝都は2つの意味で“激震”に見舞われた。
流れ的には原作と大きく変わりは無いですが、イリスがアルヌスに来た時点でリィスには帝国に潜入して貰っているので、この後の流れが少しずつ変わってきます。
また、アークスのフォトン通信網を自衛隊にも提供しているので、自衛隊は大規模な通信設備の用意をスキップ出来ました……もちろんオラクル側とは別回線であり、帝都とアルヌスに展開した自衛隊の連携にフォトン通信を利用した形です。
次回……帝都、激震。
感想・評価よろしくお願い致します。
帝国潜入編の改変具合は?
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とりあえず静観……かな?
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胸クソ要素だけ修正を……
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ほどほどに書き換えよう
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悩むまでもない……ガッツリ改変や!