GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり 作:睦月透火
ゲートのアークスくん最新話更新です。
前回、しれっと流してましたが……
菅原さんとテュエリ家のご令嬢の会話シーン、例の誑し込み現場に立ち会った癖にノータッチだったアークスくん。
この辺りは彼が色恋沙汰に無関心故の悲劇w
時刻は正確に記憶していないが、あれは夜半過ぎに差し掛かろうかという頃だ……
イリスからの緊急回線で、僕はスリープモードから強制的に復帰させられた。
《自衛隊員から緊急事態発生の連絡あり! まもなく地震発生の兆候を察知! 推定規模は不明、すぐに屋外へ退避をとの事です!!》
惑星全体の地理情報の把握はさすがに出来ていない……当然ながら地形情報の把握は本来、宇宙から降下する前に取得を済ませ、進行ルートやその他計画を完全把握してから降り立つのがアークスの定番だ。
だが今回は特殊な事情が重なり、最初から地上の一区域から探索をスタートした為、大陸の形状や海岸線等の位置情報はほとんど無い。
あるのは近隣の山岳地帯までの距離や、通過した土地等の大雑把な地図上の位置関係……そして帝都やアルヌス等、都市部近辺の地形図くらい。
『屋内にいる者は今すぐ外へ出ろ!! 地震……地揺れが来るぞ!?』
伊丹との通信を繋ぎつつ、トリニティは帝国の騎士を演じてピニャの部屋へと走りながら叫ぶ。
この屋敷には殿下の近衛と騎士団関係者しか居ない為、そう人数は多くない。だがこの世界の建築技術では、恐らく震度5を超えるレベルの地震に耐え得る保証はない。
6を超えるなら、倒壊してもおかしくは無いだろう……
『急げ! すぐに殿下を庭園へお連れしろ! 建物の下敷きにされたくなくば足を止めるな!!』
その発声から約数十秒後。この世界で初の……推定マグニチュード8.5クラスの巨大地震が発生した。
「……ッ……?!」
「で、殿下ぁぁぁ……」
現地人であるピニャや他の兵達は、地震の兆候を感じ不安に駆られている……それから間を置かず大地は徐々に揺れ始め、彼女達は生まれて始めて感じる奇妙な感覚と、有り得ない事が起きているという常識崩壊を無理矢理に理解させられ、泣き叫ぶ者も居た。
「……結構揺れてるなぁ〜」
『そうですね……体感で震度3〜4程度、でしょうか? 震源地は近くない様ですが』
「……キャストって震度計まで付いてんの?」
『センサー類で得ているデータを、提供して頂いた情報に照らし合わせて概算を出しているだけですから……正確性は本家に及びませんけどね』
そんな……不気味な音を立てて大地が揺れ動く最中を平然と歩きながら、まるで他愛無い会話をするように揺れの強さの話をしている伊丹とトリニティ……そんな平然としている姿を見て、泣き叫びそうなのを必死に堪えていたピニャは、理不尽さも手伝って2人に言葉で噛み付いた。
「お、お前達は……何故そんな平気な顔をしておるのだ?!」
「え? だってこの程度なら日本じゃしょっちゅうだし……」
『僕らは基本的に、コレ以上で更に危ない目に遭う事も少なくないですからね……』
その「え、こんなの日常茶飯事ですが何か?」という返しに、地震よりも有り得ない物を見た様に沈黙してしまうピニャ……
それは事実であり、慣れてしまえばそんなもの扱いになってしまう……悪い傾向ではあるが、それはひとつの真理でもあった。
地震が収まった後、ピニャは宮殿に赴く為トリニティや伊丹らを連れて夜の帝都を進む……道中には天変地異を肌で感じ、逃げられないという錯覚も手伝ってその場で泣き叫び許しを請う者や、恐怖に身を強張らせ、ガチガチと歯を震わせながら蹲っている者……運悪く落下物に当たって気を失っている者も見られた。
(地震を知らない……いや、この世界ではこれまで地震が無かったのか。だとしたら妙だ……これだけ地球に酷似した環境なのに。いや、まだ沿岸や海洋のデータは不足しているから早計過ぎるか……)
ふと頭に浮かんだ事を頭の隅に置きつつも、トリニティは伊丹達を追いながら歩みを進めた。
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玉座の間に着いた僕達は殿下から、地震に詳しい専門家として皇帝に紹介された。
(彼がモルト皇帝……なるほど、この威圧感……歴戦の将兵を束ねる存在と言うなら噂に違わないな)
「……父上ェッ!!」
だが、父と娘の会話を掻き消す騒音の如き大声を発し、皇太子ゾルザルが乱入してきた。ゾルザルは、地震が収まったがまた揺れる事を口にし「今のうちに」と避難勧告に来たのだった。
(おかしい……この地震は現地人にとって初めての事だ。何故、アイツが地震の……揺り戻しが来る可能性まで知っている?)
僕は伊丹さんからレクチャーを受けたし、地球の情報はインターネットを利用してあらかた検索済みだ。だが彼にはそんな接点など持たないのに地震の情報を持っていた。
……ならば地震の情報を持つ者が存在している……?
直近の出来事で接点のある現地人以外の存在……
……まさか……?!
「……おい、連れてこい!」
ゾルザルの言動からトリニティが推測した、1つの答え……それが正解だと言わんばかりに、彼等の前へ、ボロボロの麻布服1枚しか着せられていない黒髪の少女が引き摺り出される。
「……ゃ……ッ……?! たす……け……て……っ」
「「「……?!」」」
か細いが、確かに少女が喋ったのは間違いなく“日本語”。
そしてトリニティのセンサーが取得した彼女の外見的特徴はデータとなり、“あるリスト”と照合される。その結果は……
……該当者“1名”。
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『伊丹さん……彼女は、銀座事変での失踪者です……外見特徴92%一致、服装と
「なっ……?!」
自身の言葉の筈なのに、やたらと遠く聞こえてくる……湧き上がる衝動が、激しい感情の波が止まらない。
ドス黒いその衝動が、僕の思考を塗り潰していく……
……彼女は、何故あんな姿なのか……あれでは彼女を対等にみていない……もはや奴隷も同然の扱いだ。
「……ッ……!」
何故、彼女はあのような扱いを……やはり、敵対する国の人間だからか? だから情など欠片も無い……
敵に情けなど不要……それは1つの真理といえど、さすがに僕の許容にも限界がある。
彼ら日本人は、たとえ相手が敵対国の人間であろうと一定の配慮を行っていたし……異邦人である僕さえも、暖かく歓待してくれた。
そんな彼らを害し、奴隷の如く無碍に扱う……そんな事が許されて良いのか?
それはヒトとして倫理に反する行為だ。決して許される事ではない……
だが奴らはそれを平然と行っている……何故だ?
現状、帝国は日本と戦争状態にある……
奴等は、日本を敵対国として……
あぁ、そうだった……奴等は……
……敵、だったな。
伊丹がトリニティの報告……いや、呟きを耳にしてから僅か数秒後……
「…………!」
自分達が銃を構える間もない時間で、ゾルザル達に瞬足で接近していたトリニティ……彼はこの一瞬で、ボロボロの少女の手足に繋がれた枷と鎖を瞬く間に破壊し、同時に彼女を引き摺っていた男の腕を、巨大な光刃で切り飛ばしていた。
「……ッぁ……?!」
腕を斬られた男はそのまま更に頭から一刀両断され、声を上げる間もなく命を散らす……これまで頑として物理的に影響する攻撃をせず、フォトンによって大ダメージを与えても命までは取らなかった彼が……始めて人を殺めたのだ。
頬に返り血が付着しているトリニティ……その顔に一切の感情はなく、冷めきったその視線を帝国兵に向けている。帝国兵は一瞬たじろぐが、状況を理解し武器を構えた。
「……富田、栗林。各自の判断で撃って良し。2人を回収して撤収する……菅原さんは下がってて下さい」
伊丹も状況を理解し、すぐさま部下の2人へと指示……捕虜となり、辱めを受けたであろう日本人の少女とトリニティを連れてこの場を去る事を決める。
そんな中トリニティの身体からは、視覚的に見える殺意……荒れ狂う風の様に巻き起こるフォトンの奔流が、敵と定めた帝国兵やゾルザルへと“赤黒く輝きながら”打ち付けられ始めた。
「トリニティ!!」
だがそこに伊丹の一声が響き、栗林がトリニティの背後を取り襲おうとしていた兵士の頭を狙い撃って倒す。
帝国兵が倒れるのを確認する間もなく栗林はトリニティ達へと急接近し、足元に倒れた格好の少女に「貴女、日本人ね? 助けてあげる」と声を掛けながら、緊急用として持って来ていた長布を少女の肩へと掛けた後、威嚇を止めない狼の如く睨みを効かせていたトリニティの頭を殴りながら罵声を浴びせるのだった。
「このお馬鹿ッ! 一人で突っ込むな!」
彼女のこの一言が、闇に囚われたトリニティの心を引き戻した……
殺意の波動……ドス黒く赤い闇のフォトンは急速に搔き消え、トリニティは視界に収まる惨劇の光景を認識し、驚愕する。
(……人を……殺めたのか……この僕が……)
しかし、感傷に浸っている場合ではない……センサー類から来るアラートに従い、背後をカバーする栗林の挙動に合わせながらトリニティは瞬時に大剣を双機銃に持ち替え、帝国兵の手足の関節を撃ち貫きに掛かる。
もちろん武器の出力は既に非殺傷設定へ戻してあるらしく、撃ち抜かれた帝国兵は痛みに呻きながらも死んではいない。
「うあ"っ?!」
「ギャッ?!」
「ガハァッ!?」
乾いた炸裂音、そして独特の射撃音が複数回……不規則なタイミングで発せられる。
瞬く間に制圧されていく帝国兵。表情一つ変えず、黙々と相手を無力化していく緑衣の女と騎士服の男……
あまりにも理不尽過ぎる光景……もはや蚊帳の外となっていたピニャ殿下や小間使い達は言葉すら発する事もできず、ただ見ているだけしかできなかった……
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時間にして凡そ数分……たったそれだけの間に、敵対の意志を見せた帝国兵は全て撃ち倒され、残されたのはゾルザル1人。
伊丹は自国民の保護を念頭に置きながらもゾルザルへ拳銃を突き付け、他にも捕虜が居ないかを問い質す……
しかし当然ながら、己のプライドを優先するゾルザルは口を割らず、反対に伊丹へと啖呵を切る始末……
「……栗林……」
「はい」
どうあっても口を割らない強情な相手には、その身体に聞くしかない……伊丹は栗林に実力行使の許可を出し、彼女は薄ら笑みを浮かべながら、両手に嵌めていたグローブの具合を確かめ始める。
『……もう少し
そう溢しながらも、トリニティは内心の動揺が収まってはいなかった。
怒りに任せた暴力行為……アークスとなった彼が最も忌諱していた短絡的な行動。絶対に行ってはならない、と自ら戒めていた事を……己の手で破ってしまった。
ふと、彼は自身の足跡に目をやる……
そこにはかつてのダークファルス等が動いた時と同様の……黒いフォトンに侵食され、焦げ付いたような足跡が点々と残されていたのだった……
アークス君をはじめ、組織の構成員としてのアークスは本来の任務である「未開拓惑星」や「現地調査」等で、理不尽な目に遭う事も想定済みとして任務にあたります。
ゲーム等では基本的に語られませんが、彼らは宇宙の「開拓民」という側面も持っているので、当然ながらあらゆる危険を承知の上で活動しています。
なお、本作で明記したマグニチュードや震度は、アニメ版の描写を元にした推定情報ですのであしからず。
図らずも闇のフォトン……その深淵に囚われ掛けたトリニティ。
これからの彼の動向も気になる所ですが……今回はここまで!
次回もお楽しみに。
【候補選び】アークス服の次の試着者は誰が良い?
-
レレイ
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ロゥリィ
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ピニャ
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栗林