GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり   作:睦月透火

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そろそろ話がややこしくなってくる……

帝国は日本と敵対関係にある。

しかし帝国第三皇女ピニャは、イタリカの街……そして日本へ赴いて実感してしまった。
日本との軍事力における圧倒的な差、そしてその先に待つであろう確定した未来を……

このまま日本との戦争を続ければ、間違いなく帝国は滅ぶ……
絶望に満ちた未来を回避すべく、ピニャは日本との講和を目指し奔走する。

……しかし、誰もまだ理解していない。
この世界には既に、()()()()()()()()()()の魔手が迫って来ている事を……



第24話 不穏と安堵、そして……

 あの晩から一夜明け……

 

 ピニャ殿下の屋敷で再び目覚めた僕は、昨日の事を改めて考えていた。

 

(あの時の感覚……そしてあの痕跡……。少なくともシミュレーションじゃない……間違いなく、ダークファルス系統のフォトン反応が記録されていた。なら、あの時……僕は「深淵なる闇」に影響されていたのか……?)

 

 かつて、アークスは「深淵なる闇」と呼ばれる存在を不倶戴天の敵として戦っていた……

 「深淵なる闇」とは、全宇宙を滅びに向かわせる究極の存在……

 

 その大元は、ヒトの怠惰の果てに生み出された「全知存在(アカシックレコード)」と呼ばれるモノの模倣品だ。

 

 宇宙の全ての事象を演算し尽くし、その全てを余さず記憶している「アカシックレコード」……

 

 その究極的な演算能力を利用するために、ヒトが自らの手でアカシックレコードを模倣しようとし、数え切れぬ失敗を繰り返し、なお諦めず……いつしかその狂った執念が生み出してしまった、極悪の根源……

 

 正しく理解する為には大いに説明不足だが、そこまで語るには世界が違う。

 この世界では「ヒトの悪意で狂った究極存在」という程度で十分だ……

 

 トリニティは今回の「日本人奴隷」騒動で、自身の奥底で無意識のうちに溜め込み封印していた“負の感情”が精神を激しく揺り動かし……それに堪え切れず暴走してしまったのだ。

 

 アークスの力の源である「フォトン」とは、使い手の精神に多大な影響を受けるもの……この症状もアークスシップにある医療施設へ定期的に通う事で治療できるのだが、根治には莫大な時間を要する上、ゲーム(PSO2-NGS)では一時的な帰還しか出来ず、環境や状況によっては途中で接続を切らなければならない事態に発展する事も含め、適切な処置を十分に受けれない可能性が高かった。

 

(あの時……感情の沈静化が追い付いていなかった。それだけ彼女に対する扱いを嫌悪したという事か……)

 

 文化レベルや常識の違いを考慮すれば、仕方ない事ではある。

 郷に入っては郷に従え。と諺にもあるように……

 

 ……だが、感情はそう上手く処理など出来ない。

 

(老練や古参の者ならば、多少なりとも自制が働いたはず……まだまだ青いな、僕も……)

 

──────────

 

 数日後、イタリカ経由でアルヌスに帰還した僕らを待っていたのは……

 

「テュカの様子が変だって……?」

 

「……はい。数日前の地揺れの後から……以前にも、日暮れ時に誰かを探す彼女を見かける事はありましたが、夜には宿舎へ戻っているのを確認しているので」

 

 テュカは昼間こそいつも通りに仕事をこなし、日暮れ時に奇行こそあるものの目立った不調も見られなかった……しかし、最近の彼女の奇行は目に余る状態であり、日暮れ時には発作のように焦燥感に駆られて誰かを探し回り、寝食すら忘れてしまう……

 

『……最悪だ……もしかすると、手遅れの可能性もある』

 

 僕のこの言葉に、さすがの伊丹さんも押し黙ってしまう。

 原因といえばもちろん、件の炎龍騒動なのだろうが……この事態に発展したのは間違いなく自分たちの行動の結果だ。

 

「…………」

 

 僕らも黒川さんも任務で帝都に出向いていた為、アルヌスには彼女を気に掛けてくれる人物が居なかった……と、悪化の要因はすぐに合点が行く。

 

『コレは明らかに、彼女の状態の把握不足です……せめて、ランガに様子を伺う位させておけば……』

 

「それを言うなら、根本の責任は連れて来た俺にある……目の前の事に感けて、テュカの状態を軽く見ていた」

 

 トリニティも伊丹も、自分がもう少し何かしら手を打っていれば……と自分を責めるが、そんな事をしても解決になどならない。

 

「……俺が何とかする」

 

 そう言って立ち上がり、席を後にする伊丹……トリニティと黒川は、そんな彼の背中を見送るしか出来なかった。

 

──────────

 

 その翌日の昼下がり、アルヌスの街中を笑顔で伊丹さんの手を引くテュカを目撃した……と、ランガから報告を受けた。

 

『……で、それがさ……』

 

 武器の手入れをしていた僕に、ランガが耳打ちしてくる。

 その言葉に、僕は思わず素っ頓狂な声を上げるしか無かったのだった……

 

 

(……崩壊しつつある己の精神の保護を他人に求めた結果、伊丹さんを自分の父親と認識した……か。)

 

 アルヌス常駐の医者から告げられた現状……

 

 テュカの精神状態は既に崩壊寸前……その回復と保護を無意識に肉親へと求めるのは正常な推移だが、彼女の肉親は既に他界している。それ故、近しい人物……背格好が似ており、自身の知己の人物を父親と“思い込む”事で、辛うじて精神崩壊を避けたのだと言う。

 

(何とも不思議すぎる光景だが……彼自身はどういう思いなのか……)

 

 伊丹さんには悪いが、シエラに彼の過去を探って貰った……その結果、彼も過去に家族間の問題を抱えていたらしい。

 詳しくは分からなかったが、学生の頃には既に家庭崩壊の域であった……との事である。

 

(誰しも、辛い過去を抱えている……か)

 

 自らの目でテュカの状態を見るため、僕自身も、休暇を取って彼女の側に居る伊丹さんを遠くから見る……

 

『……向き合わなきゃいけない時は来る。でもせめて、今だけは……』

 

 炎龍討伐は既にアークスとして僕が請け負っており、自衛隊側にも連絡してある……しかし、件の炎龍自体が今も活動しており、被害が更に広がるのなら……

 

(計画を早めなきゃいけないな……)

 

──────────

 

 その日の夜、後宮での銃乱射事件で救出した日本人……望月紀子さんが部屋を訪ねて来た。

 

「貴方が……私を助けてくれたんですよね……?」

 

『……ええ、事実としてはそうなります』

 

 含みのある言い方だが、此方としては半ば暴走状態であったのだから、推移を正しく認識できていなかった立場としては“暴走の結果でそうなった”としか言えず、言葉に迷った……そこへランガが機転を利かせてこう続けてくれた。

 

『マスターってば、貴方が捕らわれているのにすっごく怒って、全員ブッ飛ばしちゃったんですよ〜』

 

 ケラケラ笑いながらそう言い、彼女に紅茶を出すランガ。しかし、望月さんの顔は最初こそ軽く笑っていたが、すぐに暗くなる……

 

「……まだ、検疫期間なんで……日本には帰れないし、あっちの家族とも……自衛隊の設備では連絡はできないって言われて……それに……あの時、離れ離れになった彼もまだ……」

 

 彼女の一言に、僕はリィスの報告を思い出した。

 

『貴方と一緒に捕まった男性の行方ですか……』

 

「……はい」

 

 リィスはあの時、奴隷となっていた日本人男性2人を発見したと言っていた……タイミングとしては、ちょうど園遊会の数日前。事を荒立てない為に、現状を維持しつつ彼等を保護する様に言っておいたが……その後はまだ報告を受けていないな。

 

『ちょっと失礼するよ……』

 

「あ、はい」

 

 視線を彼女から外し、テーブルに設置していた簡易端末を起動……通信システムで、帝都に潜入中のリィスへ連絡を取る。

 

《ご主人様、この度はどの様なご要件で?》

 

『先週に受けた報告の進捗を聞きたい……保護観察対象の要人2名は今、どうしている?』

 

《御二方は現在、私が直接保護しております……ただ、手続きの際に揉め事が発生し、うち1名が私を庇って軽傷を負ってしまった為、自衛隊の方に協力を求め、治療を依頼しようとしていた所なのですが……》

 

 どうやら2人とも無事らしい……しかし、揉め事で1人が負傷したとは、なかなか厄介な現場だった様だな。

 

『データには“鉱山奴隷”とあるな……』

 

《……はい。両名の作業中、例の地震が起きて落盤事故が発生し、咄嗟に私が救出したのですが……その一部始終を鉱山管理者が目撃し、私を雇おうとしてきたのです。勿論、丁重にお断りしましたが……》

 

 淡々と応えるリィス……彼女は有能だし、誰に対しても温和に対応するメイドの鑑だ。その彼女が厄介事に巻き込まれるという事は……

 

『……大方、罠に嵌めて奴隷化する手筈だったという訳か』

 

《はい。その際に……その……私の背後に迫った男に要人の御一人が気付いて体当たりし、反撃に拳打を受け……その……腕を骨折して……》

 

 目を伏せ、申し訳無さそうに続けるリィス……彼女の性根からのメイド気質が彼の負傷を“己の失態”だとしたのだろうが、僕からすれば、負傷した彼の行動は称賛に値するし、リィスを咎める理由にもならない。

 

『分かった……自衛隊側には此方からも一報を入れる。連絡が付き次第、要人の保護を自衛隊側に委譲。君は僕の代わりに殿下の護衛へ入ってくれ。以上だ』

 

《……は……い? あの……要人を負傷させた不手際の処罰は……》

 

『それは彼の勇気ある行動の結果だ。彼の行為は君を救う為であったし、事実君はそれに救われている……彼の名誉の負傷だ。君を処罰する理由にはならない……リィス・ステイヤー、任務を継続せよ』

 

《……了解しました》

 

 心なしか安堵した様な返答を聞き、通信を終える。

 通信の内容はオラクル言語なので望月さんには分からない……改めて伝える必要はあるが、良い報告には変わりないな。




アークス君の帰還できない弊害がコレですよ……
どうしろって言うんですか?

あと、テュカもヤバヤバ一歩手前。
唯一の救いは、原作で片方は死亡してた男性の日本人奴隷を2名とも救出に成功していた事でしょうか……
サラッと言うけど、落盤事故から二人とも救出……リィスさん有能過ぎるわ、タダでさえ体格小さいサポパなのに。

しかし、コレでは炎龍の件とテュカの件が繋がらない事に……話の流れ的にマズイのでは?
そりゃまた次回のお楽しみ♪

感想ヨロシクお願いします!

炎龍討伐は誰の主導で行う?

  • アークス君
  • 伊丹
  • テュカ達
  • ヤオ
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