GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり 作:睦月透火
大変長らくお待たせ致しました。
ようやく書き上がりました第25話……
ついに炎龍討伐へと向かいます。
しかし、未解決の問題もまた多い……
精神崩壊間近なテュカ……何やらキナ臭い帝国内部……そして、アークス君が囚われそうになった“深遠なる闇”のフォトン……
様々な見えない不安を抱えたまま
アークス君はヤオの依頼を果たすべく、彼女を鍛え上げつつ炎龍討伐の準備を着々と進めていた。
あの後、望月さんに状況を掻い摘んで説明する……彼の無事を知った彼女は涙ながらにお礼と、“何かあった時は、必ず力になります”と言い残し、僕の部屋を去っていった。
(……なにはともあれ、これで憂いの1つは断てたか)
問題はまだまだ山積みではあるが……今回のリィスの件で、事を荒立てそうな要因を1つとはいえ排除できたのは嬉しい誤算だった。
「……さて、そろそろ彼女の仕上がりを確認するか」
この依頼の成否には、依頼を携えてきた彼女の種族の未来が掛かっている……故に失敗は許されない、万全を期して挑む必要がある。
(炎龍……人知を超えた存在の討伐、か)
あの時の手応えからすれば、僕だけでも撃破は可能……
しかし、それはあくまでも“撃破”という目標を達成するだけならば……というもの。
(滅亡寸前の種族を救う為となると……現状を精査する必要もあるし、何より敵が単体であるとは限らない可能性もある)
厳密に言えば少し状況は異なるが、オラクル世界に存在する惑星アムドゥスキアに住まう大型の龍族との戦いは、アークスにとっても厄介なものだった。
特に硬い外殻を持つクォーツ・ドラゴンやクリス・ドラール、飛翔する為の翼を失った代わりに頑強さと超パワーを両立させたドラゴン・エクスやノワル・ドラールなど、戦闘という状況において龍族という種族は一筋縄ではいかないのが実情……
この世界はゲームではないし、命は1つしかないのだから……
翌朝、僕はアルヌスの近くにある森で自主鍛錬をしているヤオを訪ねた。
「……いよいよ出るのか?」
出迎えてくれた彼女の顔には、最早“あの時の残念さ”など欠片もない……アルヌスで自衛隊との繋ぎ役をしているランガに、“必要であればPSO2を介した“オラクル規格のシミュレーター”を使っても良いと指示を出していた。
その為ヤオは、早期からアークス向けの戦闘訓練をややスパルタ気味に受けさせられていたらしい……
その矯正のお陰か、以前までの傲慢な態度はすっかり消えており、己の実力に裏打ちされた自信に満ち溢れながらも、以前の様な不遜な言動はサッパリ消えていた。
『出発前に、キミの今の実力を確かめておきたくてね……』
「彼女、アレから相当強くなったよ? 今なら、
幾らシミュレーター用の劣化版とはいえ、ある程度の実力者でなければ敵対者を一瞬で灰にしてしまう戦闘能力を持つあの竜を相手に、勝てる……と豪語するランガ。
『へぇ、あのトカゲにも勝てる、か……それなら十分だろうね』
聞けばヤオも、幾つか“フォトンアーツ”を習得できたらしい……アーツを使えるという事は、フォトンを扱う素養がある証拠……ひいてはアークスの強さに至れる素質を持つ証左でもある。
(コレが異世界人の覚醒……異世界には素養のある者が多いというのは、事実のようだね)
「……行くのか?」
ヤオの視線は鋭く、獲物を狩る狩人の目をしている……雌伏の時を過ごし、今ようやく怨敵を討てると息巻いている様にも見えた。
『……あぁ……明日、ココを立つ。準備を整えておいてくれ』
決戦の準備は整った……ならば、早い方が良い。しかし……一抹の不安はある。
(テュカは……どうなる……?)
精神の疲弊は一長一短では治らない。況してや彼女は眼の前で肉親をはじめとした全てを失い、状況に流されるまま今までを過ごしていたのだ。
これまでロクな精神療養すらしていなかった上、知らず知らず悪化していた現状を把握し、伊丹さんや僕も後悔している。
(彼女の精神は回復できるだろうか……もし、もう一度あんな事態になったら、彼女は……)
精神療養は長い目で見ていかなくてはならない……もし、これ以上は危険だと判断されるなら、オラクル側の技術を使う事も躊躇わない。
少なくとも今の僕は、彼女の現状を放置しないと心に決めている……しかし、事態は何故か突拍子もない方向へと突き進んで行った──
……翌日、僕はヤオを連れてアルヌスを離れた。
移動は徒歩だが、僕はキャストだから疲労とは無縁……ヤオも修行でずいぶんとスタミナも付いたとの事。脚部スラスターの高速ホバリング移動も併用して休憩を挟みつつ順調に行けば、彼女の案内で件の地……エルベ藩王国領内へは約1週間後に辿り着く計算だ。
まぁ、ルートやマップデータはほぼ無いので、彼女の案内が頼りだけどね。
「……そういえば、貴方の装備は……?」
2人並んで舗装すら無い、野晒しの道中……ふとヤオがそんな事を問うて来た。
『僕は“アークス”だからね……不必要な時は装備を量子格納してるんだよ』
アークスや量子格納といった単語を聞き、頭を捻るヤオ……おっと、さすがにワードのチョイスがマズかったか……
『……あ~、特別な魔法で“この中”に入れてあるんだよ。必要になったら取り出せば良い様になってる』
「あぁ……収納の魔道具か。随分と小さいが、そんなに入るのか?」
慌てて説明し直すと一応は納得するヤオ……しかし、背中にある小型の“ナノトランサーパック”*1を胡散臭そうな目で見ている。
確かにこの中に、自衛隊から借りた野営用装備一式とアークス用装備一式……そして一月ぶんの食料が入っている等とは思わないだろう。
況してや、ナノトランサーパックは中身に関わらず重量は外見通りの約140g。中身がたとえ総重量数トンになろうとも、入れてさえしまえばその重量は関係なくなるのだから……
『ほら、これなら信じるかい?』
そう言って僕はナノトランサーから、今回の対炎龍戦の為に用意した大剣「ドラゴンスレイヤー」を取り出す。触れ書きではドラゴンを屠った逸話がある……とされているし、何らかの役には立つだろうと思っている。
だが、ヤオはドラゴンスレイヤーをひと目見ていきなり……
「な……何なのだこの禍々しい気配は……っ?! そ、そんな呪われそうな武器を持っていて……大丈夫なのか?!」
何故か物凄く心配された……解せぬ。
その後、何だかんだの道中……後方から自衛隊の車両が接近している事に気付いた。僕の現在位置は、定期的にフォトン通信でアルヌスに残っているランガや、帝都に赴いているリィス等に伝わる様になっているので、ランガから位置を聞いて何か用事を言付かった誰かだろうと思っていた……
しかし、隣に止まった車両から顔を覗かせた面子を見て、僕は我が目を疑った。
『伊丹さん……レレイ、ロゥリィに……テュカも?! 何で……!?』
「お前さんが炎龍討伐の依頼をそこの美人さんから受けた事をカトーの爺さんから聞いてな……急いで来た」
『……何故、ロゥリィはともかく……レレイやテュカまで……!?』
この時僕は再び怒りで我を見失いかけていた……当然だ、ロゥリィは所謂“亜神”なので実質不死身らしいし、戦闘力も充分。伊丹さんは自衛隊員の任務として、避けて通れないならばやり遂げるかもしれないだろうが、多分お人好しだから放っておけないという思いで来たのだろう……
しかし、レレイは魔法の才能に恵まれたと言ってもまだ子供だし、テュカに至っては自身も殺されそうになった相手……そもそも現地人らが徒党を組んで倒せる程度の相手なら、現状のようにヤオが救援を求める様な事態になっていない。
そんな化け物退治に連れて行くなど、正直言って論外だ。
それにショック療法と言えば聞こえは良いだろうが、実際は
「私は自分の意思でついて来た。リスクは承知の上……それに、私の魔法が役に立つ可能性もある」
レレイは僕の怒気に臆せず、毅然とした態度で答える。
「わ、私も! ……私も、役に立ちたい……から……」
レレイとは対象的に、消え入りそうな……だけども“置いて行かれるのは嫌だ”と視線で訴えてくるテュカ。そういえば、最近の僕はほぼずっと“ニューマン男性”の姿で過ごしており、今も服こそアークス用コスチューム「クラノスアーレス*2」を着込んでいるくらいで、傍から見れば普通に
アルヌスではほぼこの姿でいた事から、此方の世界のほとんどの人や、テュカにとって僕は今も同族だと思われている事にようやく気がついた。
(……なんてこった……)
行動しやすさを優先した結果ではあるが、こういう事態に発展する可能性が頭から抜け落ちていた事に今更気付く……強がりもあるが、芯は曲げないのがテュカの性格だと理解しているし、伊丹さんも承知の上で連れて来ている時点で、僕がなんと言おうと彼女は付いて来るし、強制的に排除すれば皆が黙っていないだろう。
これはさすがに僕の負けだな……
『……分かった。皆が賛同している以上、僕からはもう何も言わない……だけど直接戦闘への参加だけはさすがに認められない。状況的に僕も庇えない可能性があるからね。戦闘になったら後方に下がって支援に徹する事、良いね?!』
「……はいっ……!」
荒くなりそうだった僕の語気に少し気圧されていたとはいえ、テュカの声はさっきよりもハッキリと聞こえた。
やれやれ……これはとんだ作戦になりそうだ。
外見は俗に言う“スケルトン素材で中のディスクが見える小さなCDプレーヤー”みたいな感じで、七色に煌めく内部ディスクが量子記憶ユニットとなっており、主にアークス用コスチューム等の背部や腰部に一体化してたり、付属のアクセサリーっぽく着衣にくっ付いている。
デフォルトカラーは赤で、後継クラス“ヒーロー”のデフォルトコスチュームとなっており、実装時期に展開されていたストーリー「異世界オメガ編」の雰囲気に合うよう、“騎士”風なデザインをしている。
なお、女性版は「ヘリオスディルア」。
この後、伊丹さんの事情云々を聞いたアークス君は司令の意図やらを認識。その背景からエルベ藩王国の関係者とも何らかの取引が行われた事を想像してちょっと引いたという……
アークス君『……知識マウントかよ……人のこと言えた義理じゃないけど』
次回もお楽しみに!!
炎龍戦まで飛ばす?
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はよはよ!
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いやいやじっくりと