GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり 作:睦月透火
戦没者達を弔った後、伊丹は部下と遺された子供達を連れ……自衛隊の拠点となった「アルヌスの丘」へと帰還する。
そして、アークスである彼もまた……伊丹達に同行するのであった。
日のある内に先の戦いで命を落とした戦没者達を、街道の外れにある螢火草の群生地の傍へと埋葬する……作業を終えた時にはもう薄暗くなり始めており、手伝ってくれた避難民達と並び手を合わせる。
伊丹さんは泣くまいと必死に涙を堪えている少女に手を差し伸べ、優しく慰めていた……
(どうか、安らかに……彼らの魂が、悠久の輪廻へと戻り……再び生まれ変われるまで)
銀髪長髪のエルフが、私を助けてくれた緑の人達と共に手を合わせている……エルフにしては奇妙過ぎる彼。
「…………」
金髪エルフの少女……テュカの目に、銀髪の男の姿は実に奇妙に見えていた。
エルフらしからぬ異質な服装を纏い、滲み出るのは自分の知るどんな魔法使いよりも遥かに強大な魔力……その癖、怪力が必須であろう巨大な剣を片手で軽々と振り回し……緑の人と同じ言葉を流暢に話す。
しかも、出会った当初は私の言葉すら分からなかった筈なのに……ほんの1~2時間ほどで完全に言語をマスターしたらしく、村の人間達とも滞りなく会話していた。
(……このエルフ、一体何者なの……?)
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『……そうですか……置いていくしかない、と』
「…………」
「……私達も、自分の事で手一杯なんだ……」
炎竜騒ぎの影響で肉親を失った子供達や、命だけ助かった老人など……避難民には彼らを受け入れる余裕など無く、置いていく判断をするしかなかった……
「あんた達には、心から感謝してるよ……」
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「大丈夫、まーかせて♪」
あの後、伊丹さんが子供達に掛けたあの言葉……彼には何かしら宛があるのか……?
揺れ動く車内で、僕は1人の少女と向き合っている。
彼女は「テュカ・ルナ・マルソー」……たった一人生き残った、コダ村に近い森で生活していたエルフであった。
『……それで、キミは何故ずっと僕を見ていたのかな?』
「……っ……」
奇異の目で見られるのには慣れている……だが、彼女から感じる視線は、それとはまた違う……形容し難い複雑な感情だ。
「……っ……から……」
やや間を置き、彼女はもう一度言葉を紡いでくれた。
「……貴方は、本当にエルフじゃないの……?」
エルフ……というのは良く分からないが、僕は現状、適当に選んだ生身用のコスチュームを身に纏っている。
登録されているフェイスデータは、謀らずもニューマンの物だ……彼女と同じ長い耳に、透き通った綺麗な銀髪……瞳は宝石と見紛う程の、暗闇で光る紫の夜光瞳という、普通では有り得ない組み合わせだが。
『そう、僕はニューマンじゃないよ……この外見も、単に真似しているだけさ』
釈然としない表情のテュカ……何故か黒川さんも同じ顔をしている。
……なるほど、彼女の言うエルフという種族とニューマンの外見的特徴はそれ程までに似ているというのか。
『僕ら……第4世代のアークスにとって、種族や性別の概念は無いんだ。
……この外見はデータをニューマンベースで登録していたからそう変わってるだけで、中身は同じなのさ』
此方の情報に異様なほど詳しかった倉田さんならすぐに理解したであろうが、彼女達にはどうやらチンプンカンプンだった様だ……これはもう、実演するしかないね。
『ほら、よく見てて……』
2人の目の前で、僕は再びマイファッションから更に別種族の外見へと変わる登録情報を引っ張りだして適用……その姿をオッドアイと角が特徴的な種族、デューマンの姿へと変える。
「「……え……?!」」
『……ほら、これで納得しただろ?』
目の前の男性の、身体的特徴がほんの僅かな間に変わるのを目の当たりにしたテュカと黒川……トリニティは外見変更をしただけだが、2人の顔は異様なほど驚愕に満ちていた。
『……どうしたの?』
「「……お」」
『お……?』
「「女の子になったぁぁぁぁぁ!?」」
2人の叫びに、自分の格好と登録情報を見比べる……服装はシンプルでタイトな革製の様な特徴のスーツっぽい奴で、短く切り揃えられた髪は銀髪のままだが、タイトな服の胸部分が申し訳程度ながら確かに膨らんでいた……
『あ、コレ……遊びで真似してた
種族の話から拡大したこの騒動はひと悶着あったものの……トリニティには基本、外見の変更を極力しない事を確約して貰い、この件は幕引きとなった。
見た目だけなら性別すらも自由自在……というトリニティの能力に驚愕する
ちなみに倉田は、トリニティを
(コミケ、というのはよく分からないけど……誰かの真似で誰かが喜ぶのは、別に悪い事じゃないし……出ても良かったんだけどね)
一度休息のために野営した後、翌日の早朝に移動を再開……その日の昼前に、第3偵察隊と難民の子供たちを乗せた車は、自衛隊の駐屯地……「アルヌスの丘」へと到着した。
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建物そのものは半ば簡易的ながら、頑強さはなかなかみたいだね……防音性はイマイチみたいだけど。
「……だ……誰が連れてきて良いと言ったァァァァァ?!」
わーお、凄い声だね……壁越しにでもしっかりと聞こえてるや。
「……あれ、連れて来ちゃマズかったですか?」
「……マズくない訳がなかろうが……ッ」
「あ……えっと、どうしましょう?」
「それはコッチの台詞だァ!」
世界が違えども、中間管理職は辛いねぇ……盛大な溜息までこっちのセンサーが捉えてる……余程あってほしくない事態になってしまった……といった感じかな。
うーん、初めてとはいえ……このやり取りを聞く限り、伊丹さんはこの状況から発生する予測を踏まえつつ、敢えてこのやり取りを誘発させている気がする……もしかして、彼は昼行灯に見えてかなり狡猾だったりするのか?
上官さんの盛大な溜め息は、どこか哀愁を漂わせている様だった……
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しばらくして、更に上方への報告も済み……戻ってきた上官さんは何やら恨めし顔で伊丹さんへ、半ば八つ当たりの如く指示を出したみたい。
「……と、言う訳で……君の面倒も俺達が見る事になったから」
『了解……それで、帰還の件は?』
「来訪の経緯も併せて報告はしたんだけど……上から特に個別なお達しは無かった。
どうやら上は、
それはおかしい……マザー・クラスタやアースガイドとの抗争の後、双方の共同で新設された情報統括部が間違いなく機能している筈なのに……
「ちなみに俺個人の見解からしても、その『マザー・クラスタ』とか『アースガイド』っていう組織なんて知らないし……『エーテル技術』って言うのも初耳だよ……
やっぱり、キミ達と交流していた地球と、ココと繋がってる地球は違う世界なんじゃないかな?」
確かに、伊丹さんが提示してくれた地球の情報と、僕が現在保持している地球の情報は
それに通信技術も、ごく一般的な広域電波による通信技術が主流であり、エーテルによる超高速通信……なんて影も形も無かった。
その他一般的な常識レベルの情報はそれなりに共通点も多かったが、必要不可欠な情報はその尽くがありえない程の「技術差」を痛感するものばかり……なお、凄まじく絶妙だったのは「PSO2」というゲームが「NGS」というサブタイトルを添えられて大幅進化し、僕らアークスが使用している技術はそっくりそのまま、ゲーム内のシステムとして再現されている事だった。
(……じゃあ、本当に僕は……この世界では単なるゲームから飛び出した、いちキャラクターに過ぎないのか?)
実感は湧かないものの、現実にこうして与えられた情報は嘘一つなく……原隊復帰への道は閉ざされたのであった……
服装変更後のステータス
種族:デューマン(女性)
髪型:エターナルFレイヤー
服:エーデルゼリン[Ba]
エーデルゼリン[in]
備考:瞳の色は左が暗めの赤……赫色と呼べる色へと変化している。
なお、CVや身長などは変化無し。
元々が潜入捜査などに長けていたので、声色や性別の変更に一切の戸惑いがなく、また自然体で変化させる為……テュカ達には普通に女性だと思い込んだ。
その他、彼の「変身」レパートリーは非常に多く……鳥人、アンデッド、竜人……果てはA.I.S.や異世界の剣士、
今後、トリニティはどうすればいいと思う?
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伊丹達のチームで活躍
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自衛隊に相互協力を要請
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独自ルートで単独行動
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いっそ帝国に身を寄せる?