GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり   作:睦月透火

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前回のアンケート結果ですが……
ダントツでアークス成分120%……こんな早期にもう原作崩壊させる気ですか?w

まぁ、ある程度は活躍させないとね……なのでやる事はやる。
やり方はアークスとしての彼ら流で。


第7話 夜襲、そして反撃

(夜襲はほぼ確実……タイミングは不明だけど、まず自衛隊の居る南門以外で間違いない……問題は……)

 

 僕は暗闇の中、城壁の上を最速でかっ飛ばす……アークスの地上走行速度は個人の資質や体格に大きく左右されず、基本的には誰でも素で時速30km/hは出せる。

 そしてキャストボディならば、マイクロイオンスラスターによるブースト……他の種族達ならフォトンダッシュで50~60km/hは出せるのだから、下手に車両に乗って動くよりも速いのだ。

 

『……? あっちは……東門か……!』

 

(開戦間もないだろうが、距離が少し遠い……間に合いはするだろうが、死傷者は多くなりそうだな!)

 

《トリニティ、襲撃は東門だ! そっちの現在位置は?!》

 

『現場到着まであと500、既に先行中!』

 

《了解! こちらも状況が整い次第援護に向かう、やられるなよ?!》

 

 通信の最後に「やられるなよ」と激が飛ぶ……心配されていると分かった瞬間、僕の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

『そんな心配されるのも久しぶりだね……!』

 

 その時浮かんだのは……腐れ縁とまで言える長い付き合いのある少女の顔……

 

 かつて僕は、その少女の顔を深く曇らせた事がある……最終的には笑顔に戻せたけど、もう二度と……彼女にあんな顔をさせない。

 

 その思いで努力と経験を重ね、今の僕がある……

 

『それじゃ心配させないくらい……圧倒的な戦果を見せますか!』

 

──────────

 

 途中で朝日が見え、ロゥリィも現場に来る様子が見えた……敵はもう壁内に侵入済みだ。

 

(それなら……!)

 

 走りながら武器を変更し、射撃武器「リバレイトマシンガン」を展開させる……通常、ツインマシンガンは圧倒的な弾幕と制圧力を誇るが、短射程という欠点がある……しかし、ヒーローが操るツインマシンガンは射程の短さ(その欠点)を克服している。

 

 ロゥリィが屋根から躍り出るのとほぼ同時に僕もマシンガンを展開し終えて跳躍、ロゥリィはハルバードを片手に優雅な着地を……対する僕はサーカスの軽業師の様に、捻りと錐揉みを折り混ぜた回転ジャンプを披露し、ロゥリィの背中合わせになる様に着地する……

 

 突然頭上から乱入してきた……黒ゴスロリ服の少女と、青い騎士服の男エルフ。

 その場にいた全員が、僕らの登場に我を忘れ……ただ呆然と見ていた。

 

 やがて僕らを敵と認識し、鎖付き鉄球を手に大柄で仮面を被った兵士が前に出てくる……そのまま鉄球を見舞おうと襲い掛かって来た兵士をロゥリィが一蹴したのと同時に……僕はマシンガンを構え、城門から侵入していた敵兵の集団に向かって掃射を開始した。

 

 

バララララララ……!!  ドゥラララララ……!!

 

 リバレイトマシンガンはわりと小型の武器なのだが、今回は自分の存在を抗えない脅威と認識して貰う為……あえて巨大に見えるような武器迷彩を被せている。

 しかし、既存の(ツインマシンガン用の)武器迷彩だとサイズ的に小型が多いので、以前……悪乗りもあって自作した巨大な2連装の回転機関砲を……

 とある地球産アニメで、雪の降るクリスマスイブの夜……市街地の真っ只中で、ピエロの半仮面(ハーフマスク)を付けた巨大な人型ロボットが、同じ武器を持つ敵のロボットを雑魚狩りの如く無慈悲に蜂の巣にしていく……そんな光景が目に焼き付いてしまい、3ヶ月ほど掛けてその光景を目指し再現した……

 

 この『ダブルガトリングガン』を採用したのである。

 

「ぐぁ……ッ?!」「ぎゃぁぁぁ!!」「ぶべらっ!?」

 

 阿鼻叫喚の悲鳴を口々に出しながら、敵兵が次々に倒れていく……しかし今回は非殺傷設定なので、攻撃を受けても肉体は全く損傷しない……

 しかし、肉体が痛み(ダメージ)を受ける……傷を付けられる生々しい感覚と、実際に弾丸に撃たれ、身体中を穴だらけにされる感覚……そして物理的な傷がないので(認識の違いからか)、この世界の魔法による治癒効果は望めず……延々と伴う痛みからは逃げられないのであった。

 

──────────

 

 その少し前……実は盗賊達の本体後方からも、悲鳴が上がり始めていた。

 

「て、敵襲~ッ!!」

 

「敵?! って何処の誰だよ!?」

 

「俺が知るかよ!? もう何人も襲われたって……」

 

「あ"ぁ?! 馬鹿かテメェら! 敵ならゴフッ……」

 

 文句を言わせて貰えず、肺に何かが貫通したような反応を最後に動かなくなる兵士……

 その胸からは奇妙な光沢のある長い()()()()()が生えていた。

 

「……な……ッ?!」

 

 音を立てて倒れた仲間の背後に、何者かが動く気配……しかしその気配ほ非常に掴み辛く、この至近距離だから辛うじて分かった程度だ。

 

『…………ッ!』

 

 その気配の主……隠密モードのリィスは、武器をカタナからロッドに持ち替え……ゆっくりと姿を表しながら独特な構えを取る。

 

 青白いフォトンの刀身を持つ漆黒の鎌……そんなイメージの武器迷彩「グリムアサシン」を被せた武器(エモノ)を振るい、味方を倒された事で激昂し迫る数人の兵士を纏めて撫で斬りにする。

 振るわれたロッドの先端から伸びる不可視の刃は、血飛沫一つすら出さず範囲内の敵兵全員の肉体を貫通……傷一つ無いのに、胴体を上下に両断される感覚が神経を伝わり脳へと達する……その想像を絶する痛みと光景に、正気を保てる人間など居やしない……

 

「……ッ?! 誰、アンタ……何処から?!」

 

 城門から降り注ぐ矢の雨を風で吹き飛ばし、味方の防御をしていた緑髪のセイレーン「ミューティ」は背後の異変に気付き……暗闇に消えようとする()()……いや、()()を見つけた。

 

『……見つかってしまいましたか、ですが……全員倒せば然したる意味も無い。

 貴女にはすみませんが……倒させて頂きます!』

 

 闇から声が響く……リィスは落ち着き払ったまま、相対したミューティも倒すと宣言した。

 

「ッ?! んなろッ!!」

 

 ミューティは己の得意な精霊魔術で風の刃を生み出し、闇に消える気配へと放つ……が、そこには既に誰も居らず……ミューティがそれに気付いた直後、四肢を激しい痛みが襲った。

 

「……あぐッ?! なん……で……」

 

 そして夜明けが始まり、ミューティは自分を攻撃した相手の姿を確認できた……

 

「こん、な……子供……に……ッ……」

 

 気丈に踏ん張ろうとするも、四肢に走る激痛で身体がろくに動かない……リィスは気絶を促す為、追撃としてカタナをしまい、ミューティの晒された首後ろへ手刀を落とす……

 

「……ぁ……ッ……」

 

 重力に負けて彼女の身体が大地に倒れ伏す……

 

『私からすれば、貴女の方が子供ですよ……お眠りなさい』

 

 ミューティの首に軽く手刀を喰らわせ、フォトンで強制的に気絶させたリィス……後れ馳せながら走ってきた敵兵を認識すると、右手にアサルトライフルを展開し、左手には数個の黒いフォトンキューブを発生させる……

 敵兵を軽く一瞥し、射程距離に入ったのを確認したリィスはフォトンキューブを投げた……が、()()は空中を飛ばずに消え失せ……数瞬の後に敵兵の上へと出現してフォトン光線を発射し、射程内の敵全員を瞬く間に気絶させた。

 

『……なんとも、呆気ないものですね……』

 

 今ので後方の敵部隊の大半を撃破してしまった為、未だ城門付近で競り合う全線側の部隊の殲滅に向かおうか、と思ったが……

 

『……確か、自衛隊の方からも救援が来る、とご主人様が予測してましたね……』

 

 その後、ヘリのローター音と共に大音量で流される『ワルキューレの騎行』が聞こえてくるのだった。

 

──────────

 

 やがて何処かで聞いたクラシックな音楽が遠目から聴こえて来て……城壁内の戦闘は更に激化した。

 

 ロゥリィは笑い声を響かせ、踊るように敵の攻撃を避け……その細腕からは想像も付かない程の剛力でハルバードを振り回し、次々と敵兵を仕留めていく。

 その隣で、僕はソード・ツインマシンガン・タリスと次々に持ち替え、次なる手を読ませない様にしながら敵兵を薙ぎ払い、撃ち抜き、吹き飛ばす……

 

 意図したのかは分からないが、ロゥリィの挙動と僕の挙動はまるでダンスのデュエットを踊るペアの様に噛み合っており……時には狙われた相手を庇う様に立ち位置を入れ替え、敵の空振りにカウンターを返し、悉く返り討ちにしていった……

 

「……うっそ……あたしの出番はぁ~?」

 

 あぁ、栗林さんも来てたのね……もうほとんど終わっちゃったけど。

 

 その後、自衛隊の戦闘ヘリ(と呼んでた)で門内の残敵を掃討する際にロゥリィをお姫様抱っこして伊丹さんは殴られ、呆然とヘリを見送るピニャ殿下の表情は……何故だか絶望的な顔をしていたらしい。

 

 まぁ、当然と言えば当然か……帝国は自衛隊との戦闘で大敗を喫しているから、殿下も話には聞いていただろう……でも、それは人伝いによる脚色で正確ではないし、この世界の人間なら絵空事に思えて簡単には想像出来ない……

 

 だが今度は、その隔絶たる力の差を、()の当たりにしたのだから。

 

 

 戦後のゴタゴタを解決する為の条文は、だいたい慣例通りだったり、帝国側……殿下と領主ミュイの連名で提示された条文ほぼそのままで処理された。

 

「……っと、あの子と……あっちの子……そんで、あそこの子かな」

 

 指差しで対象を指示する伊丹さん、背後には黒川さんと栗林さんが立っており、伊丹さんの指示する人物を確認し終えるとこう切り出した。

 

「女の子ばかりですね……?」

 

「偶然だよ、偶然~」

 

 伊丹さんの隣では、ピニャ殿下の部下の1人……ハミルトンさんが、条文が書かれた書状に眉根を寄せながら1人でずっとにらめっこを続けている。

 

「まぁ、女の子をココに残す訳には行かない……というのは分かりますけど……」

 

「そう考えたら、()()こうなっちゃった訳……OK?」

 

『確かに、最後のあの緑の……セイレーンは魔法を使って来ましたし、この世界の魔法技術を知る為にも、私達が捕虜にするのは分かります……が、そうでなくとも、この人選はほぼ伊丹さん(アナタ)()()ですよね?』

 

 いつの間にか来ていたリィスにクリティカルを喰らい(図星を突かれ)、必死に誤魔化そうとしている伊丹さんを見ながら、僕は今後の予定を考えていた。

 

(レレイ達が鱗を売った後……自衛隊はすぐにアルヌスに戻るって言ってたっけ……確か、国会の参考人招致に呼ばれてる……とか)

 

 内部事情や今後の予定については、簡易的な説明を事前に受けている……ただ、何か見落としている様な……そんな気がしていた。




走行速度はゲーム内描写や地理的な概算からですので正確ではありません。
小説内だけのオリジナル設定と思ってください。

なお、非殺傷設定フォトンによるダメージを通常の治癒魔法では回復出来ません。
概念的な話ですが、治癒魔法は肉体が持つ回復力の増強、もしくは物理損傷の治癒促進という物理現象であり、対するフォトンによるダメージは物理効果を一切伴わなず、直撃した部分に残る残留フォトンが設定された痛みを与え続ける為、残留フォトンを取り除かない限り痛みは引きません……
要は毒や精神支配と同じ概念になるなので、解毒や精神支配解除系の魔法やアイテムならば、完全では無いものの一定の効果は望めます。

そういうものだと認識し、ちゃんと理解出来てれば……ですけど。

一応、この逆説も成り立ちますが……フォトンによる回復術は性質的にかなり万能な上、行使者の精神に大きく左右されるという設定がある為、フォトンには半分くらい不可逆的な優位性があります。

次回、伊丹さんがまたやられます。
ほぼアニメと同じ展開でw

伊丹さんの次話の扱いは……

  • ほぼ原作(アニメ)通りで
  • 少し(ダメージ的に)盛ろうか
  • 手荒な真似はしないように
  • むしろ違う人があの場に残る?

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