高嶺清麿の実力至上主義の教室   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第十九話 意趣返し

伊吹澪は目の前の光景が信じられなかった。

 

 

(な、なんなのコイツ……)

 

 

なぜなら清麿を襲うように命令されたCクラスの男子生徒達五人が、あっという間にやられてしまったのだから。

 

 

(こいつらだって弱い訳じゃない。いやむしろケンカ慣れしてる分、並の奴よりずっと強い。なのに……)

 

 

「全員……一撃で意識を刈り取った……!?」

 

 

そして件の清麿はというと、スリッパを懐にしまい、呆れたような視線で不良達を見ていた。

 

 

「ったく、くだらねぇことしてんじゃねぇよ……」

 

 

伊吹は清麿の後ろ姿をジッと見つめる。

 

なぜだか彼女には()()()()姿()()()()()()()()()()()

 

 

(ダメだ……こいつにはなぜか……勝てる気がしない……)

 

 

伊吹は身体能力も高く、格闘技術に長けている。

 

しかしそんな彼女を以てしても、清麿には勝てないと内心思い知らされていた。

 

 

「う、うぅぅ……」

 

 

すると一人の男子生徒がうめき声をあげながら目を覚ます。

 

五人のリーダー格である男子生徒だ。

 

そして男子生徒は清麿の顔を見た瞬間、悪態をついた。

 

 

「テ、テメェ……俺達にこんなことしてただで済むと思うな……「あ゛ぁ゛ん?」……よ?」

 

 

だがその直後、地の底から響くような声音が伊吹の耳に残る。

 

ドスの利いた声に思わずビクリと身体を震わせる。

 

すると清麿の目の前にいる男子生徒の顔は段々と青ざめ、終いには目に涙を浮かべていた。

 

 

(い、一体何が……)

 

 

伊吹は混乱する。

 

大の男が半泣きになるなど普通の状況ではない。

 

伊吹の位置からでは見えなかったが、清麿の()()()()()()()()()()()()()()

 

清麿はジッと男子生徒を見下ろす。

 

男子生徒はまるで蛇に睨まれた蛙のように、恐怖で身体を震わせていた。

 

伊吹も声をかけることすらできずに、無意識に恐怖を肌で感じていた。

 

 

「ジェヤアアアアアアアアア!!!!」

 

 

「ひぃ!?」

 

 

そしてトドメと言わんばかりに清麿が怒号を張り上げると、男子生徒は白目をむいて気絶してしまった。

 

ちなみに清麿の()()()()()()()()()()()のだが幸か不幸か、伊吹の角度からは見えていない。

 

清麿は()()()()()()()、唖然とする伊吹に気まずそうに視線を向ける。

 

 

「あー……その、すまん。少しやりすぎた」

 

 

「なんで襲われた立場のあんたが謝るのよ……」

 

 

「いやまあ、それはそうなんだが……」

 

 

そのとき神崎と浜口の二人がやって来る。

 

 

「「高嶺(君)」」

 

 

しかし心なしか、清麿との距離が()()()()()()()

 

 

「……二人とも、少し遠くないか?」

 

 

「い、いや、そんなことはないぞ。なあ浜口?」

 

 

「ええ、そうですね神崎君。気のせいですよ高嶺君」

 

 

二人は妙に冷や汗をかきながら早口で(まく)し立てる。

 

 

「そ、それより!目的の物はちゃんと撮れましたよ!!」

 

 

浜口は清麿に端末を見せるように報告する。

 

その意味を理解した伊吹が焦ったように呟いた。

 

 

「まさかあんた……最初から気付いて!?」

 

 

「君を利用したようで悪いが……まあな。さすがにあの手紙は露骨過ぎたな。あれじゃ、何か企んでると言ってるようなものだぞ?」

 

 

「最初からあんたの手のひらで踊らされてたって訳ね。それで私をどうするつもり?その情報で脅してみる?」

 

 

伊吹の言葉に神崎と浜口が何か言いかけるが、清麿が手でそれを制する。

 

 

「いや、君にはCクラスのまとめ役にあることを伝えてもらいたい」

 

 

「あることって?」

 

 

「『会って話がしたい。明日の放課後、特別棟の三階で待つ』。そう伝えてもらうだけでいい」

 

 

「……意趣返しのつもり?」

 

 

「どう感じるかは君の自由だ。だがそれまでは、ここであった事は口外しないことを約束する。しかしオレの要求が飲まれない、又はAクラスの生徒に何か危害が加えられるようなことがあった場合、それ相応の覚悟もしておくように伝えといてくれ」

 

 

「……分かったわ」

 

 

「一応、オレのプライベートナンバーを伝えておく。あと君の連絡先も教えてくれ」

 

 

「拒否権は……ないわね」

 

 

「物分かりが良くて助かる」

 

 

そうして清麿と伊吹は連絡先を交換する。

 

 

「さてと……あとはこいつらをどうするかだが……」

 

 

清麿の視線の先には倒れ付す五人の姿があった。

 

 

「別にお詫びって訳じゃないんだけど……こいつらは私がなんとかしておくから、あんた達はもう行きなさい。そもそも後処理は私の役目だったし」

 

 

「……じゃあお言葉に甘えて。悪いな」

 

 

「別に。さっさと行きなさい」

 

 

伊吹はシッシッと厄介者を追い払うように清麿達を追い出す。

 

そうして清麿達は特別棟を後にする。

 

しばらく歩くと、神崎が清麿に話しかけた。

 

 

「高嶺……あれで良かったのか?」

 

 

清麿は答える。

 

 

「ああ。ここで学校側に訴えれば、確かにオレ達が有利となる。それどころか確実に勝てる勝負だ。だがそれだと、Cクラスの連中がなりふり構わず接触してくる可能性も出てくる。そうなれば、Aクラスメンバーにも余計な負担をかけることになる。中間テストを控えている今、それは得策ではないと判断した。それに……」

 

 

「それに?」

 

 

「Cクラスを牛耳っている奴が、どんな奴なのか確認する良い機会だからな。早目に接触しておくに越したことはない」

 

 

「そこまで考えていたか……」

 

 

「そいつの人柄や考え方を知ることができれば、今後の対策も打ちやすくなるからな」

 

 

すると今度は浜口が話しかけてきた。

 

 

「それにしても高嶺君は強いですね……」

 

 

「言っただろ?護身術の心得があるって」

 

 

「ええ、本当に色々凄かったです……それはもう本当に……色々と」

 

 

「気持ちは分かるぞ、浜口」

 

 

浜口がどこか遠くを見るような目で虚空を見つめ、まるで同情するかのように浜口の肩に手を置く神崎。

 

ちなみに動画の撮影をしていたのが浜口、見張り役をしていたのが神崎である。

 

 

「それはそうと二人とも、後で撮影した動画を確認させてほしいんだが……「そういえば高嶺君、今日は生徒会に行かなくてはいけなかったのでは?」……そうだった!悪い二人とも!オレは先に教室に戻る!!」

 

 

そうして清麿は急いで鞄を取りに教室へと戻っていった。

 

そのまま生徒会室へ直行するのだろう。

 

その姿を神崎と浜口はジーッと見送っていた。

 

清麿の後ろ姿が見えなくなると、二人は顔を見合わせる。

 

 

「あの映像だけは……誰にも見せる訳にはいかないな」

 

 

「ええ、下手すればトラウマ物です。この映像は僕が編集して見せられる物にしておきますので、神崎君もこのことは他言無用でお願いしますよ?」

 

 

「無論だ」

 

 

このとき、二人の間で確固たる友情が芽生えたのは言うまでもない。

 

 

 

________

______

____

 

 

 

清麿達がいなくなってから伊吹は端末を取り出し、ある人物に電話をかけていた。

 

 

「……もしもし?作戦は失敗よ。それはもう完膚なきまでにね」

 

 

伊吹は気怠そうに話す。

 

通話先の人物、龍園翔は報告を聞いて楽しそうに笑う。

 

 

『クククク。ほう?それで一体どうなったんだ?』

 

 

「まず高嶺の奴に襲いかかった五人は瞬殺。見事に一撃でノサれたわ。それもスリッパなんていうユニークな武器でね」

 

 

『クハハハハハ!スリッパだと?中々愉快な武器を使う奴じゃねえか』

 

 

「笑い事じゃないわよ。それにこっちの作戦を完全に読んでたのか、隠れて動画まで撮影されてたわよ。この分じゃ、ボイスレコーダーで会話まで録音されてるでしょうね」

 

 

『ただの優男かと思ってたが、こいつは良い意味で裏切られた。楽しませてくれるじゃねえか』

 

 

「あとその高嶺からあんたに伝言。『会って話がしたい。明日の放課後、特別棟の三階で待つ』……だそうよ」

 

 

『……まさかこの俺と直接会いたいとはな。度胸のある野郎だ。伊吹、その高嶺に伝えろ。首洗って待っとけってな。どうせ連絡先は交換してるんだろ?』

 

 

「……してるけど」

 

 

『なら早目に送っとけ』

 

 

「分かったわよ……あ、あと『Aクラスの生徒にも危害を加えたら覚悟しとけ』とも言ってたわよ」

 

 

『……なるほどな。今回の件を利用して俺の動きを完全に抑制しようって腹積もりか。おもしれぇ!面白いじゃねえか!!高嶺清麿!!!』

 

 

そうして龍園は、ますます楽しそうに笑う。

 

その姿が楽に想像できる伊吹であった。

 

とりあえず彼女は電話をしながら無様に寝転がる五人組を強引に起こし始めるのだった。




次回は清麿と龍園がいよいよ対面。

では、また( `・∀・´)ノ

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