高嶺清麿の実力至上主義の教室   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

続きかけたで候。

では、どうぞ( ゚∀゚)o彡°

後書きに清麿の評価載せてます。


第一章 入学編
第二話 高度育成高等学校


窓から朝日が差し込むと同時に、ベッド上の棚に置かれた目覚ましが鳴り響く。

 

清麿はあくびをしながら、ベッドからモゾモゾと起き上がり目覚ましをとめる。

 

 

「ふわああぁ〜もう朝か……」

 

 

今日から高校生として新生活が始まるため、早起きをしなければならないのだ。

 

清麿はなんとか睡魔を振り払い、新制服に袖を通す。

 

 

「中学は青いブレザーだったが、高校は赤いブレザーか。慣れるまでしばらくかかりそうだな……」

 

 

ネクタイを締めると準備完了だ。

 

 

「おはよう、清麿」

 

 

「おはよう、お袋」

 

 

清麿が一階へ降り、キッチンへ入ると、母親の(はな)が朝食の準備をしていた。

 

当然のことだが、今この場にガッシュの姿はない。

 

ある種の寂しさという感情が彼の心の中に渦巻いていく。

 

ガッシュが魔界に帰ってそろそろ三週間ばかりが経とうとしているが、やはり寂しいものは寂しい。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

清麿は思い出に浸りながら、もう一度あくびをする。

 

 

「コラ、シャンとしなさい。今日から高校生でしょ?」

 

 

「へいへい」

 

 

温和な口調の華のお小言をもらう。

 

清麿はとりあえずテーブルの上の朝刊を手に取ると、コーヒーを含みながら紙面に目を通す。

 

清麿の通う高校についての記事が書かれていた。

 

 

「希望する就職、進学先にほぼ100%応える全国屈指の名門校……ね」

 

 

高度育成高等学校。

 

東京の埋立地にある、日本政府が作り上げた未来を支える人材を育成することを目的とした全国屈指の名門校であり、希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校と言われている。

 

しかし、三年間外部との連絡が断たれる上に学校の敷地内から出ることも禁止されている。

 

基本的に寮生活となるが、敷地内は60万平米を超えるため、いわゆる小さな街となっており、何一つ不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校だと、世間では言われている。

 

朝食を食べながら流し目で朝刊を読み終えると、丁度登校時間が迫っていた。

 

 

「ほら、そろそろ出ないと遅刻するわよ」

 

 

「わかってるよ」

 

 

最後にコーヒーを飲みほすと、清麿は鞄を取りに一度自室へと引き返す。

 

今日から三年間、彼は家に帰って来ない。

 

高校の寮に住むからだ。

 

母を一人にすることに不安に思った清麿であったが、肝心の華が『貴方のやりたいと思うことを精一杯やってきなさい』と、むしろ勢いよく息子の背中を押してくる始末だ。

 

そんな母の気遣いに内心感謝しながら、彼は鞄を手に取る。

 

そのとき、ふと思い出したのか、机の引き出しを開ける。

 

そこには奇怪な顔が描かれたお菓子の箱と割りばしで出来た簡素なおもちゃ、バルカン300があった。

 

彼は懐かしそうにそれを手に取ると、再び引き出しの中へと戻す。

 

そして、机の上に置かれている写真立てに目を向ける。

 

そこには高嶺家の面々とガッシュ、ウマゴンで撮った()()()()があった。

 

 

「行ってくるぜ、ガッシュ」

 

 

清麿は写真にそう告げると部屋を出ていく。

 

玄関には華が既に待機しており、息子を見送るためにスタンバイしていた。

 

 

「忘れ物はない?」

 

 

「大丈夫だよ。寝る前に何度も確認したし」

 

 

「身体には気をつけるのよ?あと食べ過ぎにも注意しなさい。あとは……」

 

 

「だああああ!何度も言わなくても分かってるよ!!」

 

 

清麿は靴をはき、扉に手をかける。

 

そして向き直り、ぶっきらぼうに言った。

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

 

「ええ、いってらっしゃい」

 

 

華はそれを笑顔で見送った。

 

清麿が出て行くのを確認すると、華は一言呟いた。

 

 

「この家もまた広くなるわねぇ……」

 

 

その顔には少しばかりの寂しさが滲み出ていた。

 

 

「久しぶりにお父さんに電話してみようかしら……」

 

 

そして華は今日も主婦業を頑張る。

 

 

「よし、メソメソするの終わり!今日も一日頑張りますか!!」

 

 

息子がいつ帰ってきてもいいように、家を守るのが彼女の役目なのだから。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

清麿は最寄り駅であるモチノキ駅から電車で東京駅へと向かう。

 

何度か乗り継ぐことで、目的の駅へと到着する。

 

そして駅から高度育成高等学校へと発車されるバスに乗り込む。

 

まだ早い時間帯なためか、中はガラガラであった。

 

清麿は空いていた席に座ると、暇つぶしに持ってきた小説に目を通す。

 

彼は最近ミステリー小説にはまっており、とりあえず有名どころは一通り読んでいた。

 

しばらく読書をしていると、人が少しずつ入ってきたのか、バスの席が埋まり始めた。

 

見ればサラリーマンや女子高生、子連れの母親にお年寄りなど、座りながら物珍しそうに清麿に視線を向けてくる。

 

当然、その視線には清麿も気付いていた。

 

 

(まあ、珍しいっちゃ珍しいか……)

 

 

高度育成高等学校は世間でもかなり有名だ。

 

その制服を着ている生徒がいるのだ。

 

嫌でも目立つに決まっている。

 

気にせず読書をしていると、突然肩をチョンチョンと叩かれたので、清麿は顔を上げる。

 

彼の目の前には、銀髪をなびかせた、ふわふわした雰囲気の美少女が立っていた。

 

 

「あの……お隣よろしいでしょうか?」

 

 

周りを見渡せば既に席は埋まっており、空いているのは清麿の隣だけであった。

 

 

「ああ、どうぞ」

 

 

すると銀髪の美少女は清麿に話しかけてきた。

 

 

「ありがとうございます。あの、私、椎名(しいな)ひよりと言います。同じ新入生同士、仲良く出来たら嬉しいです」

 

 

清麿は椎名ひよりと名乗った少女の自己紹介に目を丸くする。

 

 

(彼女の雰囲気からして大人しめの子だと思ったんだが……意外と積極的なんだな)

 

 

「オレは高嶺清麿。よろしく椎名さん」

 

 

「はい。よろしくお願いします高嶺君」

 

 

何を思ったのか、ひよりは清麿が読んでいる小説を覗き込む。

 

清麿はというと、突然の彼女の行動に驚きつつも、表情には出さず、気丈に振る舞う。

 

その際に彼女の髪から良い匂いがしたのは、清麿だけの秘密である。

 

 

「それはアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』ですね。高嶺君はミステリー小説がお好きなんですか?」

 

 

「ああ。最近はまってね。とりあえず有名どころは一通り読んでるよ。トリックが明かされる前のドキドキとか、明かされた後の驚きとスッキリした感じが好きでな」

 

 

「そうなんですか。実は、私もミステリー小説が好きなんです」

 

 

すると彼女は鞄から『ABC殺人事件』を取り出す。

 

しかしそれは和訳された物ではなく、英語で書かれた本であった。

 

 

「凄いな。英語のやつじゃないか」

 

 

いわゆるガチ勢というやつだ。

 

 

「オレもこれは読んだけど、和訳されたやつだからな」

 

 

「高嶺君もこれを読んでいたんですね」

 

 

二人はミステリー小説談義で花を咲かせる。

 

気が付けば目的の停留所に着いていた。

 

ひよりが立ち上がって降りていくので、清麿もそれに続く形でバスから降りる。

 

他にも同じ制服を着た生徒達が次々と降りていた。

 

バスから降りると天然石を連結加工した門が彼らを待ち構えていた。

 

門はかなり立派なものであるのか、新入生と思われる生徒達は思わず息を呑む。

 

清麿はひよりに視線を向ける。

 

彼女は特に緊張していないようだった。

 

 

「高嶺君、途中まで一緒に行きませんか?」

 

 

「ああ、別に構わないぞ」

 

 

そして二人は門をくぐって中へと入っていく。

 

しばらくすると生徒が沢山集まっている箇所があった。

 

大きな掲示板が張り出されていることから、クラス分けの紙が張り出されているのだろう。

 

二人は自分のクラスを確かめる。

 

 

「高嶺……高嶺……あ、あった。オレはBだな。椎名さんはどうだ?」

 

 

「私は……Cですね。うぅ……高嶺君と同じクラスじゃないのは残念です……」

 

 

ひよりはズーンという効果音が見えるほどに落ち込む。

 

このとき清麿はひよりが本気で悔しがっているのを見て確信する。

 

 

(素で言ってるんだろうなあ……)

 

 

清麿は遠い目をしながら、ある天然の友人を思い出していた。

 

水野鈴芽(みずのすずめ)

 

中学時代の清麿の友人であり、かなりの天然ボケであるが、清麿の良き理解者でもある少女である。

 

 

(なんというか椎名さんって水野と雰囲気がそっくりなんだよなぁ。天然ボケのところなんぞ特に)

 

 

清麿は落ち込むひよりをフォローするように言う。

 

 

「まあ、こればっかりは仕方ないさ。それに隣のクラスなんだし、いつでも会えるさ」

 

 

「そうですね……。あの、暇な時に会いにいってもいいでしょうか?本好きの方と会うのは……その、とても貴重なので……」

 

 

「オレはいつでいいぞ。というか、別にそんな遠慮しなくていいからな?()()()()()()()()()?」

 

 

「友……達……?」

 

 

清麿の何気なく言った言葉に、ひよりは驚いたように目を見開く。

 

そして目を輝かせながら清麿の手を握る。

 

 

「は、はい!私達は友達です!!」

 

 

「お、おう。とりあえず椎名さん、落ち着け。あと近い」

 

 

「高嶺君!私のことはどうぞひよりと呼んでください!あと、さん付けもいりません!!」

 

 

「わ、分かった。分かったから、とりあえず落ち着け、ひより」

 

 

「あの、できればその、私も清麿君と下の名前で呼ばせてほしいです!!」

 

 

「ええい!だから少し落ち着けと言っとろーに!!」

 

 

清麿が周りを見渡すと、多くの生徒達がこちらを興味深そうに見ていた。

 

とりあえず一刻も早くここから離れるべきだと判断した清麿は、ひよりを連れて校舎内へと向かうことにした。

 

 

「ひより!ひとまずここから移動するぞ!!」

 

 

「は、はい!お供します!!」

 

 

そして手を繋いだまま、二人は早足で移動する。

 

人気(ひとけ)がない所まで移動すると、清麿は繋いでいた手を離す。

 

このとき少しばかり残念そうにするひよりの表情に、彼は気付かなかった。

 

 

「はぁ……とりあえずここまで来れば安心か……」

 

 

「あの……高嶺君?」

 

 

「ん?ああ、すまない。別に下の名前で呼んでもらっても、全然大丈夫だぞ」

 

 

「本当ですか!?ありがとうございます!清麿君!!」

 

 

ひよりは実に嬉しそうに微笑む。

 

清麿はひよりの表情に一瞬見惚れるものの、すぐに咳払いし、気を引き締める。

 

 

「とりあえずひより、お前には少し言っておかなければならんことがある」

 

 

「はい。なんでしょうか?」

 

 

ひよりは首を傾げる。

 

そんなひよりを前に、清麿は心を鬼にして言う。

 

 

「ひより、お前は何かに熱中すると周りがよく見えなくなるタイプだろ?」

 

 

「は、はい。読書に熱中すると、よく時間が過ぎていることが多いです」

 

 

「別にそれが悪いことだとは言わん。だがもう少し周りを見て、冷静に状況判断できるようになった方がいい。……()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

清麿は優しげな口調でひよりへと話す。

 

ひよりは清麿の言いたいことを理解したのか、顔を伏せる。

 

 

「はい……()()()()()……ですよね?」

 

 

「ああ。あのときオレ達の周りには、まだ大勢の新入生がいた。それに()()()()()()のは、お前の望むところでもないだろ?」

 

 

「はい。清麿君の言いたいこと、良く分かりました。その、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした……」

 

 

そう言うと、ひよりは清麿に頭を下げる。

 

清麿は苦笑する。

 

 

「こちらこそ説教染みたこと言ってしまってすまない。お詫びと言ってはなんだが、ひよりさえ良ければ、入学式が終わったら、何かご馳走させてくれないか?」

 

 

「……よいのですか?」

 

 

「ああ」

 

 

「では、ご一緒させて下さい」

 

 

「分かった。じゃあ放課後に合流しようか」

 

 

「はい!」

 

 

放課後、会う約束をした二人はとりあえず自分の教室へと向かうことに。

 

しばらくすると一年クラスの教室が見えてきた。

 

進行方向上、1年C組の教室が先にあるため、ひよりとは一端、ここでお別れとなる。

 

 

「じゃ、また後でな、ひより」

 

 

「はい。また後で」

 

 

「おう」

 

 

清麿はひよりと別れ、B組の教室へ向かう。

 

中を見れば、ほとんどの生徒達が揃っており、既に何人かで固まっておしゃべりしている者達もいた。

 

とりあえず清麿は自分の席を探す。

 

清麿の席は真ん中の中央部分であった。

 

つまり丁度中心部である。

 

 

(ど真ん中とは……ついてないな)

 

 

荷物を置き、席に座る。

 

すると隣の人物が話しかけてきた。

 

 

「よっ!俺は柴田楓(しばたそう)!よろしくな!!」

 

 

「あ、ああ。オレは高嶺清麿。こちらこそよろしく頼む」

 

 

すると柴田はにやつきながら清麿に話を振る。

 

 

「それにしても入学早々、やるな高嶺〜」

 

 

「な、なんのことだ柴田……」

 

 

清麿は頬を引きつらせながら答える。

 

 

「あんだけ目立ってたのにとぼけても無駄だって。銀髪の美少女に迫られてたじゃねえか」

 

 

「いや、お前の思ってることは断じて違うからな?ひよりはただの友達だっての」

 

 

「お前、初日からあんな美少女と、もう名前で呼び合ってんのかよ!?」

 

 

「名前で呼んでくれって言われたんだよ……」

 

 

清麿と柴田がギャーギャーと騒いでいると、入り口から担任と思われる女性が入ってきた。

 

 

「はーい!皆、席に着いてー!!」

 

 

女性は生徒達を見渡すと自己紹介を始めた。

 

 

「1-Bの担任になった星之宮知恵(ほしのみやちえ)です!皆これからよろしくね~」

 

 

(女の先生か……三年になったら第二形態に変身するとかないよな……)

 

 

清麿の中学時代の担任、中田秀寿(なかたひでとし)は三年の担当となるとTM・リーという第二形態に変身し、性格や見た目が変わる性質を持っていたのだ。

 

その他にも清麿の中学時代の教師は個性的な存在の者が多かったので、清麿としては案外油断できない問題となっている。

 

 

「まず皆に最初に言っておきたいんだけど、この学校にはクラス替えが存在しません!三年間ずっと私が皆の担任になるので改めてよろしくね!!」

 

 

星之宮は生徒達にウィンクすると、男子達は顔を赤くする。

 

それを見た星之宮は満足したのか、説明を始めた。

 

 

「とりあえず入学式の前にこの学校の特殊なルールについて説明するから、このプリントを後ろへ配ってね〜」

 

 

前から回ってきたプリントを清麿は受け取り、後ろへと回す。

 

プリントの内容は以下の通りとなる。

 

①寮での学校生活の義務化

 

②外部との連絡の一切を禁止(たとえ肉親であっても学校側から許可なく連絡するのは禁止)

 

③学校の寮から出るのは禁止。

 

 

(ふむ。入学案内と内容はそう変わらないな)

 

 

星之宮は話を続ける。

 

 

「じゃあ最後に、今から配る学生証カードについて説明するね~。これを使えば、施設内にある全ての施設の利用、売店での商品購入が出来るよ。ただ、使うたびに所持ポイントを使うから使い過ぎに注意してね。簡単に言えばクレジットカードのようなものかな?()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()〜」

 

 

(ん?なんだ……今の含みのある言い方は……?)

 

 

清麿は星之宮の説明の仕方に違和感を抱く。

 

 

(学校内で買えないものはない……何でも購入可能……なぜわざわざ2回も同じようなことを言うんだ?オレの考えすぎか?)

 

 

清麿は疑問に思いながらも、ひとまず話に集中することに。

 

 

「施設では機械にこの学生証を通すか提示するかで使用できるよ。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっているから計画的に使うようにね。ちなみに1ポイントにつき1円の価値があるよ。このクラス全員、既に10万ポイントの支給がされているからね~」

 

 

(つまり10万円の支給か……ただの学生に普通ここまでするか?)

 

 

クラスの皆が騒いでいる中、清麿は端末から振り込まれたポイントを確認するふりをしながら周囲の確認を行う。

 

すると、ある一人の少女と目が合う。

 

その少女も周囲の状況を確認していたのか、清麿と目が合うとあからさまに驚いていた。

 

とりあえず清麿は会釈だけしつつ、再び周りを見渡す。

 

すると彼はある事に気付いた。

 

 

(あれは……監視カメラ?)

 

 

天井付近にカメラがついていたのだ。

 

その間にも説明は続く。

 

 

「ポイントの支給額の多さに皆びっくりしたかな?この学校は実力で生徒を測るからね。それはこの学校に入学できた皆に、それだけの可能性と価値があるってことなんだよ。だからポイントは遠慮なく使ってね!あと、このポイントは卒業後に学校側が全て回収することになってるから、ポイントを現金化することはできないよ。卒業間近に沢山持っていても得はないから、その時は誰かにあげちゃっても問題ないよ〜。ポイントを譲渡することは可能だからね。あ、でも無理矢理カツアゲとかはしちゃ駄目だからね。学校はいじめ問題とかにも結構敏感だから」

 

 

すると説明は終わったのか、星之宮が生徒達を見回す。

 

 

「じゃあ説明はここまで!皆、入学式には遅れないようにね~!!」

 

 

そう言うと星之宮はそのまま教室から退室した。

 

教室内は帰りにショッピングにいこうか、好きな物を食べに行こうと盛り上がっていた。

 

 

「すげぇよな高嶺!いきなり10万円ももらえるなんてさ!!」

 

 

柴田が清麿にテンション高く話しかける。

 

清麿は呆れたように返す。

 

 

「まあな。ただ柴田よ、あんまり羽目を外しすぎて使い過ぎるなよ?」

 

 

「大丈夫だって!毎月もらえるんだから多少贅沢しても問題ないって!!」

 

 

「……だといいけどな」

 

 

(大半の生徒は毎月10万円もらえると思ってるみたいだな……)

 

 

そのとき教壇へと足を進めている女子生徒、先程目の合ったストロベリーブロンドヘアーの女の子が前に立った。

 

 

「みんな〜!ちゅう~も〜く〜!!」

 

 

女の子の声につられ、クラス全員の視線が教壇へと集まる。

 

 

「皆、初めまして!私、一之瀬帆波(いちのせほなみ)って言います!皆と三年間仲良く出来たら嬉しいです!それでさっそくなんだけど、仲を深める意味も込めて、今から皆で自己紹介なんてどうかな?」

 

 

一之瀬の提案に生徒達が賛同する。

 

清麿はそれを感心したように見る。

 

 

(ほう。大したもんだ。初日からクラスをまとめようとするとは……なかなか出来ることじゃない)

 

 

清麿もその気になれば出来ないこともないが、自分からそういうことを積極的にする気にはなれなかった。

 

それはガッシュとの別れが未だに彼の心に強く根付いているということもある。

 

そしてクラスメイト達が順番に自己紹介していくと、遂に清麿の番が回ってきた。

 

 

「初めまして。モチノキ第二中学出身、高嶺清麿です。趣味は読書、特技はツッコミ。皆と仲良く出来たら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします」

 

 

よろしく〜とクラスメイト達が反応する。

 

何人かは清麿の特技に首を傾げていたが、後に彼の特技が火を吹くことになるのをこの時の彼らはまだ知る由もない。

 

そして自己紹介が終わり、入学式も恙無く終了すると放課後の時間帯となる。

 

各々がこれからどうしようかという声が聞こえてくるなか、一人の生徒が清麿へと話しかけた。

 

 

「あ、ちょっといい高嶺君?」

 

 

「ん?君は確か、一之瀬さんだったか?」

 

 

清麿が帰りの用意をしていると、一之瀬が声をかけてきたのだ。

 

ちなみに一部の男子と女子は清麿のことを羨ましそうに見ていたりする。

 

 

「うん。改めて一之瀬帆波です。三年間よろしくね」

 

 

「高嶺清麿だ。オレの方こそよろしく。それでどうかしたのか?」

 

 

「うん、実は高嶺君に聞きたいことがあって……「高嶺清麿君はいらっしゃいますか?」……ありゃ?」

 

 

そのとき教室の入り口の方を見ると、銀髪の美少女、椎名ひよりが立っていた。

 

ひよりは清麿に気付くと、嬉しそうに声をかける。

 

 

「あ、清麿君!良ければ一緒に校内を見て回りましょう!!」

 

 

そのとき、清麿はビクリと背中を震わせる。

 

恐る恐る後ろを見ると、嫉妬にまみれた男の視線で溢れていた。

 

ひとまず清麿は、この場から離れることを決めると、さっそく一之瀬とひよりに声をかけるのだった。




高度育成高等学校学生データベース

氏名:高嶺清麿
クラス:1年Bクラス
学籍番号:S01T004668
誕生日:9月18日

評価
学力:A+
知性:A+
判断力:A
身体能力:A-
協調性:A-

面接官からのコメント
非常に高いポテンシャルを持っている。面接時の対応は丁寧で完璧であり、満点を取る。それだけでなく、筆記試験も全教科満点という史上初の快挙を成し遂げた。試験の結果から見てもAクラスに匹敵する能力を持っていることは明らかである。しかし中学時代に長期間の欠席などもあったため、様子見としてBクラス配属とする。

担任メモ
頭も良く、身体能力も高い完璧な男の子。そのうえ協調性もあって一之瀬さんと同じくB組の中心となりつつある子です。しかし自分のことを顧みずに無理をする場面が多々見られるので、ちょっと心配なところもある子です。自分の限界をしっかりと見極めてほしいかな。

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