高嶺清麿の実力至上主義の教室   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

続き書けたで候。

5月14日に金色のガッシュ!!2の三話目が配信されますね。

興味のある方はぜひ読んでみましょう。

それでは、どうぞ∠( ゚д゚)/


第二十五話 中間テストに向けて

清麿がCクラスの暴君、龍園翔と邂逅した翌日、その日も清麿はいつも通り、一之瀬帆波との日課の朝のランニングをこなしていた。

 

しかし、隣を走る帆波はランニングに集中できないでいた。

 

彼女は仕切りに清麿の方へと視線を向ける。

 

帆波はモヤモヤしていた。

 

 

(昨日何があったのか、滅茶苦茶気になるよぅ……)

 

 

帆波は昨日の放課後、清麿がCクラスのリーダーと会うことは既に聞いていた。

 

その前日に清麿がCクラスの連中に罠に嵌められたことも、その際にたった一人で撃退してしまったことも、神崎や浜口から聞いている。

 

だからこそ、彼女は心配であった。

 

清麿がいざというとき、無茶をしてしまうのではないかと。

 

帆波は既に、清麿に全幅の信頼を寄せている。

 

それはたった一ヶ月とはいえ、特に清麿と過ごすことが多かった彼女からしてみれば、清麿は信頼するに足る人物であったからだ。

 

帆波は丁度走り終えたタイミングを見計らい、意を決して清麿に話しかける。

 

 

「あの、清麿君……昨日の放課後の……Cクラスのリーダーとの話し合いはどうだったの?」

 

 

「あー……実はな」

 

 

そして話し掛けられた清麿はというと、どこか気まずそうに事の顛末を話す。

 

Cクラスのまとめ役である龍園翔との話し合いで、清麿は龍園にある()()を取り付けた。

 

一昨日にCクラスの面々が起こした出来事を記録したボイスレコーダーと、USBメモリーを破棄する代わりに、Cクラスはしばらくの間、Aクラスに手を出さないという()()である。

 

そして清麿と龍園による()()()()()も行われた。

 

それは椎名ひよりの件について。

 

清麿が龍園に勝てば【ひよりとの交流】を認め、逆に龍園が清麿に勝てば【ひよりを犯す】というもの。

 

勝負の内容としては問題しかないが、その勝負自体は清麿の勝利で決着がついた。

 

 

「……ってな具合だ。だが龍園はひよりに手を出すつもりは全くなかったらしい。あいつの目的は、(はな)っから全力のオレとやり合うことだったんだ。ひよりはそのためだけに巻き込まれた形になる……」

 

 

清麿の話を帆波は真剣に聞いていた。

 

 

「……そのことをひよりちゃんは知ってたの?」

 

 

「ああ。龍園の様子から、最初から嘘だと気付いてたみたいだ」

 

 

「そうだったんだ……」

 

 

帆波と清麿はスポーツドリンクを口に含む。

 

喉が少しだけ潤う。

 

 

「でも清麿君に怪我がなくて良かったよ……」

 

 

「心配かけて悪いな……」

 

 

「本当だよ!こういうのは、これっきりにしてほしいなあ……」

 

 

「……善処する」

 

 

「そこは嘘でも約束するって言ってほしかったよ!!」

 

 

二人は公園のベンチに座る。

 

帆波はまだ気になることがあるのか、清麿へ再度質問する。

 

 

「……でも清麿君、そのボイスレコーダーとUSBメモリー……本当に破棄して良かったの?いくらその龍園君が約束するって言っても、口約束だけじゃ守る保証なんてどこにもないよ?」

 

 

「その点は問題ない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。龍園が約束を反故し、Aクラスへなんらかの危害を加えてきたら、躊躇なくそれらを学校側へ提出するつもりだ」

 

 

「えっ!?でもさっき、バックアップはとってないって言ったって……」

 

 

「確かに……()()()()()バックアップはとってない」

 

 

清麿の言いたいことを理解した帆波は項垂れる。

 

 

「へ、屁理屈だよぅ……」

 

 

「最低限の保険はかけておくべきだ」

 

 

清麿は嘘は言っていない。

 

清麿自身がバックアップを取っていないだけで、()()()()()()()()がしっかりとボイスレコーダーと、USBメモリーのバックアップとっているからだ。

 

今回清麿が龍園との話し合いに望んだのは、龍園の人柄と考え方を知るためだ。

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()も兼ねている。

 

龍園が約束をちゃんと守るのであれば、清麿としても事を荒立てるつもりは全くない。

 

 

「いいか帆波?この学校では情報は武器だ。()()()()()、常に最悪の事態は想定しておかなきゃならない」

 

 

「最悪の事態?」

 

 

「ああ。この場合、Cクラスからの妨害だ。Aクラスの皆は優しすぎる。それ故に、精神的に脆い危険性を(はら)んでる。ただでさえ中間テスト前でピリピリしている状態なのに、他クラスから妨害なんてされてみろ。今のAクラスじゃ、途端に崩壊する。それで調子を崩して退学になりましたじゃ、目も当てられない」

 

 

「あ、だからCクラスをできるだけ刺激しないようにしてるんだね?」

 

 

「ああ。それにBクラスや、Dクラスといった他クラスにも隙を曝すことになる。穏便に済むならそれに越したことはない」

 

 

帆波はほへぇ〜と納得しながら、清麿の話を聞いていた。

 

清麿は端末を取り出し、時間を確認すると立ち上がる。

 

 

「少し話し込んじまったな。今日はここまでにしておこうか。もう良い時間だしな」

 

 

「うん、分かった」

 

 

そして清麿と帆波は、急ぎ足で寮へと戻っていった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

清麿がテレビを見ながら朝ごはんを食べていると、あるCMが流れてきた。

 

 

『遂に映画化!あの正義のヒーロー、カマキリジョーがスクリーンに帰ってくる!!』

 

 

「カマキリジョー?」

 

 

清麿がバタートーストを(かじ)っていると、カマキリの格好をした金髪の男性が怪人らしきモノと戦っていた。

 

このカマキリジョーは子供達の間で人気のヒーローであり、デパートの上でもヒーローショーがよく行われている。

 

強くて格好いいカマキリジョーに、魔界に帰ったガッシュも夢中であった。

 

CMは続く。

 

 

『カマキリジョーに敵対する悪の組織の最強の幹部がいよいよ動き出す!!』

 

 

怪人と思わしき敵が映る。

 

 

『ジョーに立ち塞がる最強の敵……その名も、ザリガニトオル!!』

 

 

ジョーとトオルが戦うシーンが流れる。

 

 

『しかし、トオルの強力な(はさみ)攻撃にジョーは為す術なくやられてしまう!!』

 

 

トオルの鋏にジョーの鎌が敗れる。

 

 

『果たしてジョーはこの強敵に打ち勝つことができるのか!?子供達の夢を守ることは出来るのか!?負けるな!立て!立つんだジョー!!』

 

 

そして映画のタイトルが告げられる。

 

 

『劇場版【カマキリジョー!最強最悪の敵、ザリガニトオル襲来!!】、ゴールデンウィーク……運命の闘いが始まる!!』

 

 

それを見ていた清麿は呟いた。

 

 

「……面白いのかこれ?」

 

 

どこか腑に落ちない感じで朝食を食べ終わると、食器を洗う。

 

今はゴールデンウィークに入ったため、学校は休みなのだ。

 

初めてのまとまった休みに、清麿はどう過ごそうか悩む。

 

中間テストまで残り約二週間と四日。

 

ゴールデンウィーク中もクラスで集まって勉強会を考えたが、貴重な休日に勉強をしてもモチベーションはそれほど上がらないだろうという神崎の意見を採用し、各自の自主勉強に任せている。

 

清麿も同意見であり、本格的な勉強は休み明けから考えている。

 

 

「映画か……」

 

 

食器を洗い終えた清麿は、端末で映画の上映時間を調べてみる。

 

 

「約30分後か。暇だし……ちょっと行ってみるか」

 

 

清麿は部屋着から私服へ手早く着換え、準備を終える。

 

そして部屋から出ると、丁度隣の住人も出るところであった。

 

Dクラスに所属する茶髪の少年、綾小路清隆だ。

 

 

「おはよう、綾小路。どこか出掛けるのか?」

 

 

「おはよう、高嶺。暇だから映画でも見ようかと思ってな」

 

 

「そうなのか?オレも映画を見に行こうと思ってたんだが……」

 

 

「そうだったのか。ちなみに何を見る予定なんだ?」

 

 

綾小路の質問に、清麿は視線を逸しながら答える。

 

 

「カ、カマキリジョー……」

 

 

「カマキリジョー?」

 

 

綾小路はカマキリジョーを聞いたことがないのか、首を傾げる。

 

 

「特撮映画……みたいなものだ」

 

 

「特撮映画か」

 

 

綾小路は一瞬考えると、ある提案を出す。

 

 

「良かったらその映画、オレも一緒に見ていいか?」

 

 

「……べ、別に構わんが」

 

 

「そうか、良かった」

 

 

清麿は驚くものの、了承する。

 

二人はそのまま一緒にケヤキモールへ向かうことに。

 

 

「特撮映画はまだ見たことがなかったからな。どんなものか興味がある」

 

 

「普段はどんな映画を見てるんだ?」

 

 

「特にこれと言ったジャンルはないな。休みの日に面白そうな物があれば見てるって感じだ」

 

 

平日は基本的に二人の出る時間は被ることが多く、一緒に登校することも比較的多い。

 

なので、こうして二人で話すことも特別珍しくはなかった。

 

清麿と綾小路はエレベーターに乗る。

 

その際に、今度は清麿から話し掛けた。

 

 

「Dクラスの様子はどうなんだ?」

 

 

綾小路は淡々と答える。

 

 

「ひどいの一言に尽きる。ポイントが0だからな。全員、阿鼻叫喚だ」

 

 

「それはなんというか……」

 

 

「まあ、自業自得だな。そういえばオレ達の担任、茶柱先生が高嶺のことを褒めてたぞ。入学二日目で既にこの学校の秘密に気付いてたって」

 

 

「……そんなことを言ってたのか?」

 

 

「ああ。多分他クラスでも同じように言われてるんじゃないか?」

 

 

「そ、そうなのか……」

 

 

清麿は少し項垂れる。

 

まさか教師陣から名前を上げられているとは思わなかったからだ。

 

 

「Aクラスの方はどうなんだ?」

 

 

綾小路からも質問がされる。

 

 

「そうだな……休み明けに中間テストに向けて、本格的に勉強会を開く予定だ」

 

 

別に隠すことでもないので、清麿はこれからの予定を簡潔に説明する。

 

 

「基本的には、放課後に図書館で集まってやる感じになるだろうな」

 

 

「そうか。やっぱり、どのクラスも似たような感じになるな」

 

 

(まあ、気になることは他にもあるが……)

 

 

清麿は担任である星之宮の、ある発言を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

『私は皆なら必ず乗り切れるって確信してるから』

 

 

 

 

 

 

それは星之宮が、5月1日の朝のSHRで言っていた言葉である。

 

 

(あれは、退学者を出さずに乗り切れる方法があると、確信を持って話していた。だとすれば、()()()()()()()()()()()()()()ということになる……)

 

 

この休み中にそれを探るつもりである清麿であった。

 

そして二人は世間話をしながら、ケヤキモールの中にある映画館へとたどり着く。

 

勿論、映画鑑賞でもポイントは使われる。

 

二人は受付で観る映画と時間を指定すると、座席表の載ったラミネート加工されたシートを差し出される。

 

ほとんどの座席が空いており、二人は後方の中央部分を選ぶ。

 

開始10分前であったため、そのまま入場する。

 

後列の真ん中に座り、上映の開始を大人しく待つ。

 

しばらくすると、スクリーンに近日公開予定の映画が紹介される。

 

清麿は隣に座る綾小路にチラッと視線を向ける。

 

綾小路は基本的に無表情であるが、その目はワクワクしているように見えた。

 

そして始まるカマキリジョーの映画。

 

結果としては、意外と面白かったというのが清麿の本音であった。

 

特に最後のジョーとトオルの一騎打ちでは、思わず手に汗握って見ていた。

 

綾小路も同じらしく、「最後に覚醒した黄金のジョー、ゴールデンジョーには度肝を抜かれた」と言っていた程だ。

 

清麿と綾小路は、そのままケヤキモールにある定食屋で昼ごはんを食べてから解散となった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

綾小路と別れてから、清麿は当てもなくブラブラとしていた。

 

そのとき、前方に見覚えのある男がいることに気付く。

 

Cクラスのリーダー、龍園翔であった。

 

 

「よお、昨日振りだな高嶺」

 

 

「龍園……」

 

 

「そう警戒するんじゃねえよ。今日、お前を見掛けたのは偶々だ。だが、呼び出す手間が省けたのは正直ラッキーだ」

 

 

龍園は話す。

 

 

「テメェに伝えておく。昨日言った通り、CクラスはしばらくAクラスに手出しはしねぇ。勿論、ひよりとの交流だって認めてやる」

 

 

龍園は懐から一枚の紙を取り出し、清麿に見せつける。

 

それは契約書であった。

 

 

「これは昨日の条件を書き記した契約書だ。さっさと目を通せ」

 

 

「確かに……こっちの条件は、ちゃんと書き記してあるな」

 

 

清麿は少し警戒しつつも、龍園から契約書を受け取ると、内容を確認する。

 

 

「さっさとサインしろ。こういうのは当人がしねぇと意味がねえんだ」

 

 

「……分かった」

 

 

清麿は契約書の内容を何度も確認し、こちらに不利な条件が書かれてないかを確かめるが、特に変な条件は書かれていなかった。

 

清麿がサインすると、龍園は不敵に笑う。

 

 

「これで晴れて、俺のCクラスとお前のAクラスは契約を交わしたって訳だ。だがその代わり、AクラスもCクラスに手出しはできねぇ。テメェがもしこれらの契約を違反、又はそれと思わしき行動を取った場合、当然契約は無効とし……俺はすぐにでもテメェらAクラスに牙を剥く」

 

 

「ああ」

 

 

「それとクラス間の特別試験や、イベントに関しても、この契約は無効の対象とする。あくまで普段の日常生活に限らせてもらう。そしてテメェらが一度でもクラスを降格すれば、この契約も破棄だ」

 

 

「当然だな……期限はどうするつもりだ?」

 

 

「クク……そうだな。今年一杯ってことにしといてやるよ。せいぜい追われる気持ちってやつに恐怖するんだな」

 

 

「抜かせ」

 

 

清麿は龍園と契約をした。

 

これで今年一年は、Cクラスからの表立った妨害等はないと思っていいだろう。

 

 

(だがそれはこちらにも言えることだ。少なくとも、これでボイスレコーダーと、USBメモリーは使えなくなった)

 

 

そしてそれが龍園の狙いでもあった。

 

契約書と言う形に残る物に残すことで、清麿の動きを抑制することに成功していたのだ。

 

 

(抜け目のない奴だ……龍園翔)

 

 

龍園は清麿と相対することで、恐怖という感情を知った。

 

だが龍園はそれでも清麿に対して、不敵な態度を崩さない。

 

恐れながらも前に進むだけのポテンシャルを秘めていた。

 

 

「それじゃ、俺はこれで帰らせてもらうぜ。用はもう済んだからな」

 

 

そして龍園は去っていく。

 

清麿はその背中が見えなくなるまで、ジッと見送っていた。




次回は中間テストに向けて、いよいよ本格的に動き出した清麿達Aクラスの面々。

しかしBクラス坂柳有栖が突如教室にやってきて、ある提案を清麿へとする。

では、また( `・∀・´)ノ

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