続き書けたで候。
5月14日に金色のガッシュ!!2の三話目が配信されますね。
興味のある方はぜひ読んでみましょう。
それでは、どうぞ∠( ゚д゚)/
清麿がCクラスの暴君、龍園翔と邂逅した翌日、その日も清麿はいつも通り、一之瀬帆波との日課の朝のランニングをこなしていた。
しかし、隣を走る帆波はランニングに集中できないでいた。
彼女は仕切りに清麿の方へと視線を向ける。
帆波はモヤモヤしていた。
(昨日何があったのか、滅茶苦茶気になるよぅ……)
帆波は昨日の放課後、清麿がCクラスのリーダーと会うことは既に聞いていた。
その前日に清麿がCクラスの連中に罠に嵌められたことも、その際にたった一人で撃退してしまったことも、神崎や浜口から聞いている。
だからこそ、彼女は心配であった。
清麿がいざというとき、無茶をしてしまうのではないかと。
帆波は既に、清麿に全幅の信頼を寄せている。
それはたった一ヶ月とはいえ、特に清麿と過ごすことが多かった彼女からしてみれば、清麿は信頼するに足る人物であったからだ。
帆波は丁度走り終えたタイミングを見計らい、意を決して清麿に話しかける。
「あの、清麿君……昨日の放課後の……Cクラスのリーダーとの話し合いはどうだったの?」
「あー……実はな」
そして話し掛けられた清麿はというと、どこか気まずそうに事の顛末を話す。
Cクラスのまとめ役である龍園翔との話し合いで、清麿は龍園にある
一昨日にCクラスの面々が起こした出来事を記録したボイスレコーダーと、USBメモリーを破棄する代わりに、Cクラスはしばらくの間、Aクラスに手を出さないという
そして清麿と龍園による
それは椎名ひよりの件について。
清麿が龍園に勝てば【ひよりとの交流】を認め、逆に龍園が清麿に勝てば【ひよりを犯す】というもの。
勝負の内容としては問題しかないが、その勝負自体は清麿の勝利で決着がついた。
「……ってな具合だ。だが龍園はひよりに手を出すつもりは全くなかったらしい。あいつの目的は、
清麿の話を帆波は真剣に聞いていた。
「……そのことをひよりちゃんは知ってたの?」
「ああ。龍園の様子から、最初から嘘だと気付いてたみたいだ」
「そうだったんだ……」
帆波と清麿はスポーツドリンクを口に含む。
喉が少しだけ潤う。
「でも清麿君に怪我がなくて良かったよ……」
「心配かけて悪いな……」
「本当だよ!こういうのは、これっきりにしてほしいなあ……」
「……善処する」
「そこは嘘でも約束するって言ってほしかったよ!!」
二人は公園のベンチに座る。
帆波はまだ気になることがあるのか、清麿へ再度質問する。
「……でも清麿君、そのボイスレコーダーとUSBメモリー……本当に破棄して良かったの?いくらその龍園君が約束するって言っても、口約束だけじゃ守る保証なんてどこにもないよ?」
「その点は問題ない。
「えっ!?でもさっき、バックアップはとってないって言ったって……」
「確かに……
清麿の言いたいことを理解した帆波は項垂れる。
「へ、屁理屈だよぅ……」
「最低限の保険はかけておくべきだ」
清麿は嘘は言っていない。
清麿自身がバックアップを取っていないだけで、
今回清麿が龍園との話し合いに望んだのは、龍園の人柄と考え方を知るためだ。
そして、
龍園が約束をちゃんと守るのであれば、清麿としても事を荒立てるつもりは全くない。
「いいか帆波?この学校では情報は武器だ。
「最悪の事態?」
「ああ。この場合、Cクラスからの妨害だ。Aクラスの皆は優しすぎる。それ故に、精神的に脆い危険性を
「あ、だからCクラスをできるだけ刺激しないようにしてるんだね?」
「ああ。それにBクラスや、Dクラスといった他クラスにも隙を曝すことになる。穏便に済むならそれに越したことはない」
帆波はほへぇ〜と納得しながら、清麿の話を聞いていた。
清麿は端末を取り出し、時間を確認すると立ち上がる。
「少し話し込んじまったな。今日はここまでにしておこうか。もう良い時間だしな」
「うん、分かった」
そして清麿と帆波は、急ぎ足で寮へと戻っていった。
◆◆◆
清麿がテレビを見ながら朝ごはんを食べていると、あるCMが流れてきた。
『遂に映画化!あの正義のヒーロー、カマキリジョーがスクリーンに帰ってくる!!』
「カマキリジョー?」
清麿がバタートーストを
このカマキリジョーは子供達の間で人気のヒーローであり、デパートの上でもヒーローショーがよく行われている。
強くて格好いいカマキリジョーに、魔界に帰ったガッシュも夢中であった。
CMは続く。
『カマキリジョーに敵対する悪の組織の最強の幹部がいよいよ動き出す!!』
怪人と思わしき敵が映る。
『ジョーに立ち塞がる最強の敵……その名も、ザリガニトオル!!』
ジョーとトオルが戦うシーンが流れる。
『しかし、トオルの強力な
トオルの鋏にジョーの鎌が敗れる。
『果たしてジョーはこの強敵に打ち勝つことができるのか!?子供達の夢を守ることは出来るのか!?負けるな!立て!立つんだジョー!!』
そして映画のタイトルが告げられる。
『劇場版【カマキリジョー!最強最悪の敵、ザリガニトオル襲来!!】、ゴールデンウィーク……運命の闘いが始まる!!』
それを見ていた清麿は呟いた。
「……面白いのかこれ?」
どこか腑に落ちない感じで朝食を食べ終わると、食器を洗う。
今はゴールデンウィークに入ったため、学校は休みなのだ。
初めてのまとまった休みに、清麿はどう過ごそうか悩む。
中間テストまで残り約二週間と四日。
ゴールデンウィーク中もクラスで集まって勉強会を考えたが、貴重な休日に勉強をしてもモチベーションはそれほど上がらないだろうという神崎の意見を採用し、各自の自主勉強に任せている。
清麿も同意見であり、本格的な勉強は休み明けから考えている。
「映画か……」
食器を洗い終えた清麿は、端末で映画の上映時間を調べてみる。
「約30分後か。暇だし……ちょっと行ってみるか」
清麿は部屋着から私服へ手早く着換え、準備を終える。
そして部屋から出ると、丁度隣の住人も出るところであった。
Dクラスに所属する茶髪の少年、綾小路清隆だ。
「おはよう、綾小路。どこか出掛けるのか?」
「おはよう、高嶺。暇だから映画でも見ようかと思ってな」
「そうなのか?オレも映画を見に行こうと思ってたんだが……」
「そうだったのか。ちなみに何を見る予定なんだ?」
綾小路の質問に、清麿は視線を逸しながら答える。
「カ、カマキリジョー……」
「カマキリジョー?」
綾小路はカマキリジョーを聞いたことがないのか、首を傾げる。
「特撮映画……みたいなものだ」
「特撮映画か」
綾小路は一瞬考えると、ある提案を出す。
「良かったらその映画、オレも一緒に見ていいか?」
「……べ、別に構わんが」
「そうか、良かった」
清麿は驚くものの、了承する。
二人はそのまま一緒にケヤキモールへ向かうことに。
「特撮映画はまだ見たことがなかったからな。どんなものか興味がある」
「普段はどんな映画を見てるんだ?」
「特にこれと言ったジャンルはないな。休みの日に面白そうな物があれば見てるって感じだ」
平日は基本的に二人の出る時間は被ることが多く、一緒に登校することも比較的多い。
なので、こうして二人で話すことも特別珍しくはなかった。
清麿と綾小路はエレベーターに乗る。
その際に、今度は清麿から話し掛けた。
「Dクラスの様子はどうなんだ?」
綾小路は淡々と答える。
「ひどいの一言に尽きる。ポイントが0だからな。全員、阿鼻叫喚だ」
「それはなんというか……」
「まあ、自業自得だな。そういえばオレ達の担任、茶柱先生が高嶺のことを褒めてたぞ。入学二日目で既にこの学校の秘密に気付いてたって」
「……そんなことを言ってたのか?」
「ああ。多分他クラスでも同じように言われてるんじゃないか?」
「そ、そうなのか……」
清麿は少し項垂れる。
まさか教師陣から名前を上げられているとは思わなかったからだ。
「Aクラスの方はどうなんだ?」
綾小路からも質問がされる。
「そうだな……休み明けに中間テストに向けて、本格的に勉強会を開く予定だ」
別に隠すことでもないので、清麿はこれからの予定を簡潔に説明する。
「基本的には、放課後に図書館で集まってやる感じになるだろうな」
「そうか。やっぱり、どのクラスも似たような感じになるな」
(まあ、気になることは他にもあるが……)
清麿は担任である星之宮の、ある発言を思い出していた。
『私は皆なら必ず乗り切れるって確信してるから』
それは星之宮が、5月1日の朝のSHRで言っていた言葉である。
(あれは、退学者を出さずに乗り切れる方法があると、確信を持って話していた。だとすれば、
この休み中にそれを探るつもりである清麿であった。
そして二人は世間話をしながら、ケヤキモールの中にある映画館へとたどり着く。
勿論、映画鑑賞でもポイントは使われる。
二人は受付で観る映画と時間を指定すると、座席表の載ったラミネート加工されたシートを差し出される。
ほとんどの座席が空いており、二人は後方の中央部分を選ぶ。
開始10分前であったため、そのまま入場する。
後列の真ん中に座り、上映の開始を大人しく待つ。
しばらくすると、スクリーンに近日公開予定の映画が紹介される。
清麿は隣に座る綾小路にチラッと視線を向ける。
綾小路は基本的に無表情であるが、その目はワクワクしているように見えた。
そして始まるカマキリジョーの映画。
結果としては、意外と面白かったというのが清麿の本音であった。
特に最後のジョーとトオルの一騎打ちでは、思わず手に汗握って見ていた。
綾小路も同じらしく、「最後に覚醒した黄金のジョー、ゴールデンジョーには度肝を抜かれた」と言っていた程だ。
清麿と綾小路は、そのままケヤキモールにある定食屋で昼ごはんを食べてから解散となった。
◆◆◆
綾小路と別れてから、清麿は当てもなくブラブラとしていた。
そのとき、前方に見覚えのある男がいることに気付く。
Cクラスのリーダー、龍園翔であった。
「よお、昨日振りだな高嶺」
「龍園……」
「そう警戒するんじゃねえよ。今日、お前を見掛けたのは偶々だ。だが、呼び出す手間が省けたのは正直ラッキーだ」
龍園は話す。
「テメェに伝えておく。昨日言った通り、CクラスはしばらくAクラスに手出しはしねぇ。勿論、ひよりとの交流だって認めてやる」
龍園は懐から一枚の紙を取り出し、清麿に見せつける。
それは契約書であった。
「これは昨日の条件を書き記した契約書だ。さっさと目を通せ」
「確かに……こっちの条件は、ちゃんと書き記してあるな」
清麿は少し警戒しつつも、龍園から契約書を受け取ると、内容を確認する。
「さっさとサインしろ。こういうのは当人がしねぇと意味がねえんだ」
「……分かった」
清麿は契約書の内容を何度も確認し、こちらに不利な条件が書かれてないかを確かめるが、特に変な条件は書かれていなかった。
清麿がサインすると、龍園は不敵に笑う。
「これで晴れて、俺のCクラスとお前のAクラスは契約を交わしたって訳だ。だがその代わり、AクラスもCクラスに手出しはできねぇ。テメェがもしこれらの契約を違反、又はそれと思わしき行動を取った場合、当然契約は無効とし……俺はすぐにでもテメェらAクラスに牙を剥く」
「ああ」
「それとクラス間の特別試験や、イベントに関しても、この契約は無効の対象とする。あくまで普段の日常生活に限らせてもらう。そしてテメェらが一度でもクラスを降格すれば、この契約も破棄だ」
「当然だな……期限はどうするつもりだ?」
「クク……そうだな。今年一杯ってことにしといてやるよ。せいぜい追われる気持ちってやつに恐怖するんだな」
「抜かせ」
清麿は龍園と契約をした。
これで今年一年は、Cクラスからの表立った妨害等はないと思っていいだろう。
(だがそれはこちらにも言えることだ。少なくとも、これでボイスレコーダーと、USBメモリーは使えなくなった)
そしてそれが龍園の狙いでもあった。
契約書と言う形に残る物に残すことで、清麿の動きを抑制することに成功していたのだ。
(抜け目のない奴だ……龍園翔)
龍園は清麿と相対することで、恐怖という感情を知った。
だが龍園はそれでも清麿に対して、不敵な態度を崩さない。
恐れながらも前に進むだけのポテンシャルを秘めていた。
「それじゃ、俺はこれで帰らせてもらうぜ。用はもう済んだからな」
そして龍園は去っていく。
清麿はその背中が見えなくなるまで、ジッと見送っていた。
次回は中間テストに向けて、いよいよ本格的に動き出した清麿達Aクラスの面々。
しかしBクラス坂柳有栖が突如教室にやってきて、ある提案を清麿へとする。
では、また( `・∀・´)ノ