続き書けたで候。
遅くなってすいません。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
「……まずは、猿グループの状況を確認する」
清麿は携帯を手にしたまま、鈴音へ告げた。
「高円寺君が回答したことは分かっているわ。それ以上は、本人に聞かないと……」
「いや。Aクラスの方で確認する」
鈴音が顔を上げる。
清麿はクラスのチャットに届いていた連絡を開き、そのうちの一人へ電話をかけた。
数回の呼び出し音の後、相手が応じる。
「オレだ。今、少し話せるか?」
『ああ。ちょうど連絡しようと思ってた』
「猿グループが終了した。高円寺が回答したらしいが、何か心当たりはあるか?」
『……多分、俺だと思う』
清麿は黙って続きを待った。
『話し合いが終わった後、少し話しかけられたんだよ。別にメールを見せたわけじゃないんだけど……』
「何を聞かれた?」
相手がやり取りを説明する。
その内容を聞き終えると、清麿は小さく息を吐いた。
「分かった。教えてくれて助かった」
『悪い。俺がもっと気をつけていれば……』
「謝るのはまだ早い。結果は発表されていないし、法則を見つければ、お前と話さなくても答えには辿り着ける」
清麿は一度、鈴音を見る。
「それに、Dクラスが取ったなら、こちらとしても都合がいい」
『……どういうことだ?』
「これから皆に説明する。お前もチャットを確認してくれ」
電話を切ると、鈴音が口を開いた。
「猿グループの優待者は、あなた達のクラスだったのね」
「ああ。高円寺が正解していれば、Aが五十失って、Dが五十得る」
「……図らずも、あなたの提案と同じ結果になったわけね」
「そうなるな。ただ、あいつがオレ達の事情を考えて動いたわけじゃないだろう」
思い返すのは、無人島で追い回された時のこと。
清麿は余計な記憶を振り払うように、軽く首を振った。
「残る二つも、手配を進めたい。堀北、そのグループにいるDクラスの生徒と連絡を取れるか?」
「取れるわ。ただ、私からの指示だけで動いてくれるかは別だけれど」
「平田にも協力してもらってくれ。回答する生徒には、Aの優待者本人から確認を取れるようにする」
「法則だけで判断させるつもりはないのね」
「わざわざこちらから渡すんだ。疑う余地は減らしておきたい」
鈴音は頷くと、携帯を操作し始めた。
清麿も帆波へ連絡を入れる。
『清麿君? 猿グループのこと、何か分かった?』
「ああ。その件も含めて話したい。今、神崎達と一緒か?」
『うん。ユキちゃんと浜口君もいるよ』
「なら、オレもそっちへ行く。場所を送ってくれ」
『分かった。でも……何かあったの?』
清麿は、机の上に置かれたメモ帳を見下ろす。
そこには、十二のグループと、優待者の名前が並んでいた。
「Aクラスの方針を決めたい」
◆◆◆
清麿が指定されたラウンジへ向かうと、帆波達は奥の席に集まっていた。
「高嶺。猿グループの件は?」
座るより先に、神崎が尋ねる。
「高円寺がうちの優待者を見抜いて、回答した可能性が高い」
「……そうか」
神崎が眉を寄せる横で、姫野は携帯から顔を上げた。
「で? 他のグループはどうするの?」
「その話をしに来た」
清麿は椅子に腰を下ろすと、四人を見渡した。
「残るAクラスの優待者も、Dクラスに回答してもらおうと思っている」
一瞬、誰も声を発しなかった。
最初に口を開いたのは浜口だった。
「……それは、BとCに取られる前に、ということでしょうか?」
「ああ」
清麿は頷く。
「第二回の話し合いで、有栖と龍園の動きはかなり揃っていた。二人共、櫛田が優待者だと分かっている様子だった。少なくとも、竜グループの答えは共有していると考えていい」
「他のグループも、法則で把握しているかもしれない……か」
神崎の言葉に、清麿は再び頷いた。
「こちらの優待者を守り切るのは難しい。なら、BCに得点させるより、同盟相手のDへ渡したい」
「三人とも当てられたら、私達は百五十ポイント失うんだよね?」
帆波が尋ねる。
「ああ。高円寺が正解しているなら、残りは百だ」
「……小さくはないね」
帆波は手元の携帯へ視線を落とした。
清麿達の連絡を待つ、クラスメートの名前が画面に並んでいる。
無人島で皆が積み上げたポイントだ。
簡単に手放していいものではない。
「高嶺。BCの優待者をこちらから回答することは?」
神崎が問う。
「それも選択肢にはある。だから、これまでの様子見は終わりにする」
清麿はメモ帳を開いた。
「Dに渡す分の手配を済ませたら、残るグループの状況を確認する。BCが既に動いているなら、こちらも必要なところでは回答する」
「全部取るわけではない、と」
「最初から全てを取るつもりはない。だが、相手が得点しようとしているのに、何もせず見ている理由もないからな」
そこで姫野が、頬杖をついたまま口を挟んだ。
「その案、優待者の三人は納得してるの?」
清麿の視線が彼女へ向く。
「クラスのためだからって言われたら、断りづらいでしょ。自分だけ報酬をもらえなくなるんだし」
「……そうだな」
清麿は携帯を手に取った。
「そこは、ちゃんと話さないといけない」
「私からも話すよ」
帆波が顔を上げる。
「あと、回答するDクラスの人達とも相談できないかな。私達の優待者を教えるんだから、報酬の一部を分けてもらうとか」
「それなら、相手にも利益を残したうえで交渉できますね」
浜口が頷く。
「堀北に伝えてみる。まずは本人達に、この案を説明しよう」
清麿がチャットへ文章を打ち込む横で、神崎も携帯を取り出した。
「俺は他のグループの状況を確認する。何か動きがあった者には、すぐに報告するよう伝えておく」
「お願いします」
浜口も、自分のグループの連絡先を開く。
その様子を見ながら、姫野が小さく息を吐いた。
「……ま、決めるなら早い方がいいんじゃない」
「さっきは、急いで決めなくていいと言ってなかったか?」
清麿が尋ねると、姫野はジト目を向けた。
「状況が変わったでしょ。もう一個終わってんのよ?」
「確かにな」
清麿は苦笑すると、鈴音へ連絡を入れた。
◆◆◆
十数分後。
清麿の携帯に、鈴音から連絡が届いた。
『一つ目、回答を送ったそうよ』
続いて、Aクラスの優待者からも連絡が来る。
『確認終わった。向こうの奴、ちゃんと話聞いてくれたよ』
『報酬の件も了承してくれた。俺はこれで大丈夫』
清麿は画面を読み、返信する。
『協力してくれてありがとう。結果が出たら、改めて話そう』
程なくして、学校からグループ終了の通知が届いた。
ほぼ同時に、テーブルの上に置かれた携帯が次々と震える。
「終わったね」
帆波が画面を確かめる。
「ああ」
回答を送ったDクラスの生徒からは、送信した名前の確認も届いていた。
Aクラスの優待者本人が、その内容に間違いはないと返している。
少なくとも、このグループでは手配した通りに進んだ。
「残りの方も、今、確認しているところだそうだ」
清麿が伝えると、神崎が頷いた。
「こちらも特に混乱はない。だが、Cクラスの生徒が、急に携帯を確認し始めたという報告が来ている」
「Cが?」
「ああ。別のグループでも同じ様子らしい」
清麿は開いたメモ帳へ視線を落とす。
龍園が、クラスへ何か指示を出したのか。
それとも、既に出していた指示を実行する時刻が来たのか。
その時、再び携帯が震えた。
清麿はすぐに通知を開く。
だが、それは待っていたグループのものではなかった。
「……別のところが終わった」
浜口が呟いた。
清麿は通知に記されたグループ名を確認する。
法則通りなら、優待者はBクラスの生徒だ。
「神崎。このグループの様子を聞いてくれ」
「分かった」
清麿はメモ帳の該当箇所へ、小さく印をつける。
数分も経たないうちに、もう一通、終了通知が届いた。
今度の優待者は、Cクラス。
「……続きますね」
浜口の声に、清麿は答えなかった。
二つのグループを見比べる。
どちらにもAとDの生徒はいる。
しかし、こちらから回答するよう指示は出していない。
高円寺のように、誰かが独断で動いた可能性もある。
それでも――。
「高嶺。最初のグループだが、Cクラスの生徒が回答したと言っているそうだ」
神崎が報告する。
「本人がそう言ったのか?」
「ああ。ただ、誰を回答したかまでは明かしていない」
続いて、浜口の携帯にも連絡が届く。
「こちらのグループでは、Bクラスの生徒が送信したと言っているようです」
清麿は二つの印を見つめた。
Bの優待者がいるグループで、Cが回答。
Cの優待者がいるグループで、Bが回答。
仮に、双方が正解していたなら。
「……互いに、取らせたのか?」
神崎もメモ帳へ視線を落とす。
「それなら、二つ合わせたBCの増減はゼロだ。だが、こちらはどちらにも回答できなくなる」
「そうですね。ADに取られる前に終わらせた、と考えれば……」
浜口が言葉を継ぐ。
清麿は携帯を持ち直した。
「終了していないグループの状況を今すぐ集めよう」
帆波が頷き、連絡を取り始める。
清麿は鈴音への文章を打ちながら、先程までの話し合いを思い返していた。
有栖の穏やかな声。
龍園の挑発。
そして、終了間際に櫛田が口にした質問。
『もし……誰かが間違った告発をしたら、どうなるんだっけ?』
打ち込んでいた指が、一瞬止まった。
正解して終わらせたとは限らない。
そう考えても、BCの収支は同じになる。
清麿は二つのグループ名を、もう一度確かめた。
◆◆◆
「届きましたね」
船内のラウンジで、有栖は携帯を伏せた。
向かいに座る龍園が、口元を歪める。
「こっちも終わった。指示通り、別の名前を送らせたぜ」
「こちらもです」
Bの優待者がいるグループでは、Cの生徒が誤回答した。
Cの優待者がいるグループでは、Bの生徒が誤回答した。
最終発表で結果が確定すれば、互いに五十を得て、五十を失う。
クラスポイントの収支は変わらない。
その代わり、二つのグループは既に試験から外れた。
「高嶺が気付くまで、どれくらいだと思う?」
龍園の問いに、有栖は微笑んだ。
「もう、疑っているかもしれませんね」
「なら、もっと早くやっとくべきだったんじゃねぇのか?」
「早く終わらせすぎれば、清麿君も早く方針を変えます。こちらの準備が揃う前に動かれては困りますから」
「ククッ。散々協力だの信頼だの言って、こっちを見させてたわけか」
「あなたも随分、楽しそうに付き合ってくださったでしょう?」
龍園は否定せず、携帯を手に取った。
その画面を、有栖が横目で見る。
「残る分も、予定通りに?」
「ああ。ただ、Aの優待者はDに取られ始めてる」
「橋本君の見立て通りですね」
「そっちは止めねぇのか?」
有栖は少し考えてから、首を横に振った。
「今から競って、こちらの手配を乱す必要はありません。Aクラスが失点することには変わりませんし」
「Dには得点させる、と」
「その分、残るところで取りましょう」
龍園が短く笑った。
「なら、次はそっちの番だな」
有栖は携帯を開き、一人の名前を選ぶ。
橋本正義。
送る文章は短かった。
『こちらは予定通りです。竜グループの件、状況を教えてください』
送信を終えると、有栖はカップを持ち上げた。
その向かいで、龍園も別の相手へ指示を出していた。
また今日中に投稿します、はい。
では、また∠( ゚д゚)