高嶺清麿の実力至上主義の教室   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第六十八話 閉じられる選択肢

清麿の携帯に、鈴音から連絡が届いた。

 

『残る一人の確認も終わったわ。今、回答を送ったそうよ』

 

程なくして、学校からグループ終了の通知が届く。

 

清麿はAクラスの優待者本人にも確認を取り、携帯を置いた。

 

「こちらの三人は、全員Dが回答した」

 

「……とりあえず、予定していたことは出来たね」

 

帆波の言葉に、清麿は頷く。

 

猿グループで高円寺が正解しているなら、Aが失うクラスポイントは合計百五十。

 

同じだけ、Dクラスが得ることになる。

 

BCへ渡すよりはいい。

 

だが、それで今回の試験が終わるわけではなかった。

 

テーブルの上には、各グループの終了状況を書き込んだメモ帳が置かれている。

 

清麿は、先程印をつけた二つのグループを見下ろした。

 

「神崎。回答した生徒について、何か分かったか?」

 

「最初の方は、Cクラスの生徒が送信したところを見た者がいる。もう一つも、Bクラスの生徒が回答したという話で一致している」

 

「答えた名前は?」

 

「そこまでは分からないそうだ」

 

清麿は腕を組む。

 

学校から届く通知は、グループの試験が終了したことしか伝えていない。

 

回答が正しかったのか、間違っていたのか。

 

誰が何ポイント得て、誰が失ったのか。

 

それは最終発表まで分からない。

 

しかし、二つのグループで優待者の所属クラスが異なることは分かっていた。

 

「……正解でも、不正解でも同じか」

 

「高嶺?」

 

神崎が顔を上げる。

 

清麿はメモ帳に、BとCの文字を書いた。

 

「Bの優待者がいるグループでCが正解すれば、Bが五十失ってCが五十得る。別のCの優待者をBが当てれば、その逆だ」

 

「差し引きはゼロですね」

 

浜口が頷く。

 

「だが、両方とも誤回答だった場合も同じだ。最初はBが五十得てCが五十失う。次にCが五十得てBが五十失う」

 

「……結局、二つ合わせれば変わらないのね」

 

姫野がメモ帳を覗き込む。

 

「ああ。回答方法がどちらでも、BCのクラスポイントは変わらない。そして、その二つのグループは終了する」

 

清麿は二つの名前に線を引いた。

 

「オレ達は、もうそこから得点できない」

 

帆波の表情が曇る。

 

「自分達の優待者を、先にお互いで……」

 

「ああ。自分達で終わらせることにしたんだろう」

 

「でも、それって私達がAの優待者をDに教えたのと似てない?」

 

姫野の問いに、清麿は頷いた。

 

「やっていることは近い。ただ、向こうはBCの間で損失を相殺できる」

 

清麿達は、Aの得点をDへ移すことを選んだ。

 

坂柳と龍園は、互いに得点と失点を引き受け、ADに取られる前にグループを閉じている。

 

「……それなら、残りも来るぞ」

 

神崎が携帯を手にした。

 

その直後だった。

 

テーブルの上の携帯が、ほぼ一斉に震える。

 

一通。

 

続いて、もう一通。

 

清麿は通知を開き、グループ名を確かめた。

 

Bクラスの優待者がいるグループ。

 

そして、Cクラスの優待者がいるグループ。

 

「また、BとCだ」

 

浜口が低い声で呟く。

 

清麿は鈴音へ電話をかけた。

 

『……高嶺君。今の通知、あなたも見たわね?』

 

「ああ。BCが互いの優待者を回答している可能性が高い」

 

『こちらでも、そういう話が出ているわ』

 

「Dの優待者については、どうなっている?」

 

『平田君に確認してもらっているところよ。櫛田さん以外の二人は、本人から報告が来ている』

 

「なら、その二つをAが回答する」

 

電話の向こうで、鈴音が黙った。

 

清麿は説明を続ける。

 

「Dが失うことには変わりない。だが、BCに得点させるよりはいい。こちらのグループの生徒には、オレから連絡する」

 

『……今度は、私達があなた達へ渡すわけね』

 

「ああ。先程の得点を減らすことになる。だが、BCがこちらの優待者を残しているなら、最後に狙うのはDだ」

 

鈴音が短く息を吐く。

 

『分かった。平田君にも伝えるわ』

 

「オレもすぐ動く」

 

通話を終え、清麿は二人のクラスメートへ連絡を入れた。

 

グループ名。

 

回答する生徒の名前。

 

法則から導いた答えと、Dクラス側で本人確認が取れていること。

 

必要な内容を簡潔に伝える。

 

一人からは、すぐに返事が来た。

 

『分かった。今から送る』

 

もう一人から返信が届くより先に、学校の通知が画面の上へ表示された。

 

清麿の指が止まる。

 

終了したのは、今まさに連絡を取っていたグループだった。

 

『悪い高嶺。送ろうとしたところで終了の通知が来た』

 

続いて、別の連絡が入る。

 

『Cの奴が、回答したって言ってる』

 

清麿は携帯を握り直した。

 

「……一つ、先を越された」

 

誰もすぐには言葉を返さなかった。

 

その間にも、もう一人のクラスメートから連絡が届く。

 

『送信した。言われた名前で間違いない』

 

学校からの終了通知も、後を追うように届いた。

 

こちらは、間に合った。

 

清麿は報告を返してくれた生徒へ礼を伝え、鈴音にも状況を送る。

 

「一つはAが回答できた。もう一つは、Cが回答したらしい」

 

神崎が、机の上のメモ帳へ視線を落とした。

 

「……残るBCのグループも、時間の問題だろうな」

 

「ああ」

 

清麿は頷いた。

 

相手がこちらの動きを見てから、その都度手配しているわけではない。

 

回答する者と、対象。

 

動く順番。

 

少なくとも、それらは既に決められていたのだろう。

 

こちらが作戦を切り替えた時には、向こうの生徒達は送信できる状態にあった。

 

清麿は、まだ線を引いていないグループ名を見つめる。

 

その中に、竜の文字が残っていた。

 

◆◆◆

 

鈴音と平田は、竜グループの部屋の前で清麿を待っていた。

 

「他の二人については、本人にも状況を伝えたよ」

 

平田が携帯をしまいながら言った。

 

「Aクラスが回答した方も、学校から終了の通知が届いている。もう一つは……Cクラスの生徒が回答したと聞いた」

 

「こちらの連絡が、間に合わなかった」

 

清麿が告げると、平田は首を横に振った。

 

「高嶺君だけの問題じゃないよ。僕達も、もっと早く共有しておくべきだった」

 

鈴音は扉へ視線を向ける。

 

「櫛田さんは中にいるわ。私達が話をしたいと伝えたら、待っていてくれた」

 

「……そうか」

 

清麿は扉を開けた。

 

円卓の一角に、櫛田が座っている。

 

携帯を両手で持ち、画面を眺めていた彼女は、三人に気付くと顔を上げた。

 

「ごめんね。こんな時間に、集まってもらっちゃって」

 

「こちらから呼んだのよ」

 

鈴音が向かいに座る。

 

平田もその隣へ腰を下ろした。

 

清麿は、櫛田から二つ席を空けた位置へ座った。

 

「櫛田。まず確認したい」

 

「……何かな?」

 

「お前は、このグループの優待者か?」

 

櫛田の指が、携帯の縁を撫でた。

 

それでも、顔の表情は変わらない。

 

「どうして、そう思うの?」

 

「干支の順番と、グループの生徒を名字順に並べた時の位置が一致している。Aの優待者三人で確かめた」

 

清麿はメモ帳を円卓へ置く。

 

「このグループでは、五番目がお前だ」

 

櫛田は、書き込まれた名前を見下ろした。

 

「あ……それが、椎名さんの言っていた法則?」

 

「ああ」

 

「櫛田さん。もし優待者なら、教えてほしい」

 

平田が穏やかに言った。

 

「他のグループが次々に終わっている。僕達も、方針を決めないといけないんだ」

 

櫛田は少し迷うように目を伏せた。

 

そして、携帯を机へ置く。

 

画面には、学校から届いたメールが表示されていた。

 

「……うん。私が優待者だよ」

 

鈴音が画面を確認する。

 

清麿も、席を立たずに表示された文面へ目を通した。

 

予想通りだった。

 

しかし、確認できたことを喜ぶ気にはなれなかった。

 

「どうして、今まで黙っていたの?」

 

鈴音の問いに、櫛田は小さく肩を落とす。

 

「怖かったんだ。誰かに話したら、そこから他のクラスにも知られちゃうかもしれないでしょ?」

 

「僕達に相談してくれれば、一緒に考えられたよ」

 

「……うん。ごめんね、平田君」

 

平田はそれ以上責めなかった。

 

鈴音も、一度息を吐いてから話を進める。

 

「今は、残る試験をどう終わらせるかを考えましょう」

 

清麿は櫛田を見る。

 

「BとCの生徒から、何か接触はあったか?」

 

「接触?」

 

「あの二人は、話し合いの時からお前を見ていた。グループの外でも、優待者について何か聞かれなかったか?」

 

櫛田は一瞬だけ、鈴音へ視線を向けた。

 

「……坂柳さんとは、少し話したよ。龍園君にも、優待者は大変だなって言われた」

 

「橋本は?」

 

「橋本君?」

 

今度は、問い返すまでに僅かな間があった。

 

「どうして、橋本君の名前が出るの?」

 

「同じグループだからな。あいつも、かなり周りを見ていた」

 

「……少し話しただけだよ。みんなが疑い合ってて大変だね、って」

 

清麿は頷いた。

 

それ以上、質問を重ねることはしない。

 

代わりに、メモ帳を閉じた。

 

「今夜、このグループをAから回答する準備はしておく」

 

櫛田の目が、僅かに動いた。

 

「……高嶺君が?」

 

「オレ達の誰かが、だ。BCに取られる前に終わらせたい」

 

「だったら、Dクラスは……」

 

「五十失う。その代わり、Aが五十得る」

 

鈴音が答えた。

 

「Aクラスから得たポイントの一部を戻す形になるわ。BCに渡すよりは、同盟の中に残した方がいい」

 

「……そっか」

 

櫛田は机の携帯を引き寄せた。

 

「じゃあ、もう決まったんだね」

 

「平田にも、確認しておきたかった」

 

清麿が言うと、平田は頷いた。

 

「僕も、その方がいいと思う。櫛田さんの報酬については、別に相談させてほしいけれど」

 

「ううん。クラスのためなら……」

 

そこで、櫛田の携帯が震えた。

 

彼女の視線が画面へ落ちる。

 

すぐに伏せられたため、内容までは見えなかった。

 

だが、清麿はその動きを見ていた。

 

「……誰からだ?」

 

「クラスの友達。試験のことが気になってるみたい」

 

櫛田は立ち上がった。

 

「ごめん。少しだけ、電話してきてもいいかな?」

 

鈴音が眉を寄せる。

 

「今?」

 

「すぐ戻るから」

 

「櫛田さん。その友達にも、今は独断で回答しないよう伝えてくれるかな」

 

平田の言葉に、櫛田は頷いた。

 

「うん。分かった」

 

扉が閉じる。

 

鈴音が、清麿を見た。

 

「……何か気になるの?」

 

「まだ、断定できることはない」

 

清麿は自分の携帯を開く。

 

回答先のアドレス。

 

そして、櫛田桔梗の名前。

 

「だが、準備はしておく」

 

◆◆◆

 

櫛田は廊下の角を曲がり、人影がないことを確かめてから携帯を耳へ当てた。

 

「……今、話した通り。高嶺君達、今夜中に終わらせるつもりだって」

 

『へぇ。なら、のんびりしてる場合じゃないな』

 

橋本の声は、いつもと変わらず軽かった。

 

それが、今は少し腹立たしい。

 

「約束、忘れてないよね?」

 

『忘れてねぇよ。俺が回答して、報酬の半分を渡す』

 

「坂柳さん達にも話してるの?」

 

『俺が回答することはな』

 

櫛田は壁へ背中を預けた。

 

「……私のことまで、話してないでしょうね」

 

『その辺は安心していい。俺だって、情報源をいちいち明かすほど親切じゃない』

 

櫛田は唇を噛む。

 

清麿達に従えば、橋本との契約は実行されない。

 

Aクラスの誰かが回答して、Dが失点する。

 

それなら、橋本に回答させてもDの損失は同じだった。

 

少なくとも自分には、約束した報酬が残る。

 

それに、今から取り引きを反故にすれば、橋本が何を口にするか分からない。

 

「……じゃあ、早くして」

 

『了解』

 

通話が切れる。

 

櫛田は携帯を握ったまま、しばらくその場を動かなかった。

 

やがて、画面へ学校からの通知が届く。

 

竜グループの試験が終了したことを知らせるメールだった。

 

◆◆◆

 

清麿の携帯にも、同じ通知が届いていた。

 

送信するために開いていた画面の上へ、グループ終了の文字が表示される。

 

鈴音が椅子から立ち上がった。

 

「……誰が?」

 

平田も携帯を確かめる。

 

「僕達は、まだ送っていないよね?」

 

「ああ」

 

清麿は画面を閉じた。

 

既に答えを知っていた者が、他にもいる。

 

それは分かっていた。

 

だからこそ、櫛田本人の確認を取った後、長く待つつもりはなかった。

 

それでも、間に合わなかった。

 

扉が開く。

 

戻ってきた櫛田は、三人の顔を順に見た。

 

「……終わっちゃったね」

 

鈴音が彼女へ向き直る。

 

「今、誰と話していたの?」

 

「クラスの友達だよ。さっき言ったでしょ?」

 

「なら、その人が回答したの?」

 

「え? 同じクラスの人が答えても、無効なんじゃ……」

 

鈴音の口が止まる。

 

清麿は席を立った。

 

「その通りだ。Dの生徒が答えたわけじゃない」

 

「……高嶺君?」

 

「結果は、発表を待つ。ただ、こちらの予定通りには終わらなかった」

 

清麿は携帯をポケットへしまった。

 

そこへ、もう一通の連絡が届く。

 

学校からではない。

 

橋本正義からだった。

 

『竜、俺が回答したぜ。あとは結果待ちだな』

 

清麿は短い文章を読み終えると、櫛田へ視線を向けた。

 

彼女は鈴音と話している。

 

困ったような顔で、先程の電話は関係ないと説明していた。

 

清麿は返信を打った。

 

『そうか。結果が出たら、少し話そう』

 

すぐに返事が来る。

 

『お手柔らかに頼むぜ』

 

清麿は画面を閉じた。

 

鈴音と相談していた、情報を渡した相手の動きを見るというやり方。

 

今夜中にAが回答するという予定を、この場で初めて伝えた。

 

櫛田が席を外し、その直後に橋本が回答した。

 

偶然で片付けるには、あまりにも早い。

 

だが、それだけで取り引きの内容まで分かるわけではない。

 

ましてや、終わった試験を戻すこともできなかった。

 

「……平田。Dクラスの他のグループの結果も、確認しておいてくれ」

 

清麿が告げると、平田は頷いた。

 

「分かった。高嶺君達の方も、何か分かったら教えてほしい」

 

「ああ」

 

鈴音は、櫛田から清麿へ視線を移した。

 

「私も、確認することがあるわ」

 

その声は、先程より低かった。

 

清麿は一度だけ頷く。

 

そして、閉じたメモ帳を手に、部屋を後にした。

 

◆◆◆

 

「間に合ったか」

 

電話越しに、龍園が笑う。

 

橋本はベッドへ腰を下ろし、携帯を耳へ当てた。

 

「ああ。高嶺達も動いてたみたいだけどな」

 

『Dの一つは、Aに取られた。残りの一つはこっちだ』

 

「なら、竜はBが取ったってことで」

 

『約束通りだ。文句はねぇよ』

 

橋本は、手元の画面へ目を向けた。

 

櫛田から、短いメッセージが届いている。

 

『結果が出たら、ちゃんと払ってね』

 

その下に、先程清麿へ送った文章が残っていた。

 

『竜、俺が回答したぜ。あとは結果待ちだな』

 

橋本は小さく笑う。

 

高嶺清麿が、これで黙っているとは思えない。

 

だが、今夜の回答は既に受理された。

 

彼がどこまで辿り着いたとしても、竜グループの試験は終わっている。

 

橋本は龍園との通話を切ると、櫛田へ返信した。

 

『契約通り。結果が出たら渡す』

 

送信を終え、携帯を枕元へ置く。

 

残るのは、学校からの最終発表だった。




今日中にまた投稿します。

では、また∠( ゚д゚)
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