高嶺清麿の実力至上主義の教室   作:Gussan0

70 / 70
どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第七十話 敵同士の昼食

翌日の昼。

 

清麿がカフェテリアへ入ると、橋本は既に窓際の席に座っていた。

 

こちらに気付くと、片手を上げる。

 

「よう、高嶺。こっちだ」

 

清麿は向かいの椅子へ鞄を置いた。

 

「早いな」

 

「呼び出された側だからな。待たせたら、何を言われるか分かんねぇし」

 

「人を何だと思ってるんだ」

 

「飯を食いながら、相手の腹の中まで調べようとする奴」

 

「……注文する前から帰りたくなってきたぞ」

 

橋本が笑う。

 

清麿はメニューを手に取った。

 

昼時のカフェテリアは、生徒達で賑わっている。

 

試験の結果を話題にしている者もいれば、残る船旅をどう過ごすか相談している者もいた。

 

清麿は日替わりの定食を注文する。

 

橋本は既に、肉料理のセットを頼んでいた。

 

「随分、食うな」

 

「考え事すると腹が減るんだよ」

 

「その理屈なら、オレも大盛りにするべきだったか」

 

「まだ間に合うぜ?」

 

「いや、これでいい」

 

清麿はメニューを戻すと、その顔を見た。

 

「まずは、今回の試験についてだ」

 

「……もう本題かよ」

 

「そのために誘ったんだからな」

 

「少しは世間話しようぜ?」

 

「今朝の天気は晴れだ。以上」

 

「雑すぎるだろ」

 

清麿も、水を一口飲んだ。

 

「BとCが互いに誤回答する策。いつ決まった?」

 

橋本の笑みが、少しだけ薄くなる。

 

「そこから聞くのか」

 

「ああ」

 

「……細かい時間までは言えねぇよ。ただ、お前らが動き始めた時には、回答する連中は決まってた」

 

「やはりな」

 

清麿は頷いた。

 

実際に届いた報告からも、それは予想していた。

 

BCの生徒達は、指示が来てから答えを考え、相談していたのではない。

 

既に決められた名前を送るだけだった。

 

「互いに間違えることを、よく了承したな」

 

「最初に失点する方が、後から相手に逃げられたら損するからか?」

 

「そうだ」

 

「その辺は、うちのお姫様と龍園が詰めてたよ。少なくとも、俺一人で決めた話じゃねぇ」

 

橋本はグラスを置いた。

 

「お前も分かってるだろ。あの二人、仲が良いから組んでるわけじゃない」

 

「ああ。今回、組む利益があった」

 

「そういうこと」

 

清麿は背もたれへ身体を預けた。

 

それぞれが、自分のクラスを上へ進めたい。

 

そのために、今回だけは得点と失点を引き受け合った。

 

清麿がAの優待者をDへ渡したように、坂柳と龍園にも、自分達にとって都合のいい配分があった。

 

「……それで? 竜グループの方は?」

 

橋本から話題を振られ、清麿は視線を戻した。

 

「櫛田と、どんな取り引きをした?」

 

橋本の指が、グラスの縁で止まった。

 

「随分、はっきり聞くな」

 

「回りくどく聞いても、お前ははぐらかすだろう」

 

「今だって、はぐらかすかもしれねぇぞ?」

 

「そうだろうな」

 

清麿は、そこを否定しなかった。

 

「ただ、オレ達が今夜中に回答するつもりだと伝えた直後に、櫛田は電話へ出た。その後、お前が回答した」

 

「それだけで、俺と櫛田ちゃんが繋がってるって?」

 

「お前が優待者を知っていたことと、回答する時間を選んだことは別だ」

 

橋本は黙った。

 

「優待者の名前を知るだけなら、法則を解けばいい。だが、オレ達がいつ動くかは、法則からは分からん」

 

ちょうどその時、店員が料理を運んできた。

 

清麿の前へ定食が置かれ、橋本の前にも皿が並ぶ。

 

二人は一旦話を止め、店員を見送った。

 

橋本はフォークを手に取る。

 

「……高嶺。俺から、お前らのクラスの相談内容を教えろって言われたら、教えるか?」

 

「内容による」

 

「大事な作戦なら?」

 

「教えない」

 

「俺も同じだよ」

 

橋本は、料理へ目を落とした。

 

「答えると、次に誰かと話をする時、困ることがあるんでね」

 

清麿は箸を取った。

 

「そうか」

 

問い詰めれば、何かが出てくるかもしれない。

 

だが、食事へ呼び出しただけで、橋本に取り引きの全容を明かす義務が生じるわけではない。

 

ましてや、ここは審議の場でもなかった。

 

それでも、確認しておきたいことはある。

 

「お前が回答したことで、Dは五十失った」

 

「……ああ」

 

「同時に、オレ達も五十を得る機会を失った」

 

橋本が顔を上げる。

 

清麿は、真っ直ぐに相手を見た。

 

「情報の売買をする相手として、お前を信用するかどうか。その判断には、今回のことも含める」

 

橋本は一度だけ瞬きをした。

 

そして、小さく笑った。

 

「もう俺からは買わない、ってことか?」

 

「そこまでは言っていない。必要な情報なら、話を聞く」

 

「じゃあ、何が変わる?」

 

「何をお前へ話すかだ」

 

橋本の笑みが止まる。

 

清麿は、定食の味噌汁を一口飲んだ。

 

「情報を持っている相手と、何でも相談できる相手は違う。今回で、その区別はついた」

 

「……なるほどね」

 

橋本は椅子へ深く座り直す。

 

責められる。

 

怒鳴られる。

 

櫛田との取り引きを認めるまで、追及される。

 

そうした可能性は考えていた。

 

しかし、清麿はそれ以上、質問を重ねなかった。

 

橋本は少し考えてから、フォークを置く。

 

「一つだけ、言っとく」

 

清麿が顔を上げた。

 

「竜で俺が送ったのは、櫛田ちゃんの名前だ。そこは、お前の考えてる通り」

 

「……ああ」

 

「あと、あの回答は俺が選んだ。誰かに無理やり送らされたわけじゃねぇ」

 

清麿は数秒、橋本を見つめた。

 

「それは分かっている」

 

短く返し、箸を動かす。

 

橋本も、再び食事を始めた。

 

しばらく、二人の間には食器の音だけが続いた。

 

◆◆◆

 

「それにしてもさ」

 

食事が半分ほど進んだ頃、橋本が口を開いた。

 

「Aクラスがあそこまで早く、Dへポイントを渡すとは思ってなかった」

 

清麿が目を向ける。

 

「オレ達の方針は、見抜いてたんだろう?」

 

「方向はな。けど、優待者本人を納得させて、D側の回答者も決めてってなると、もう少しかかると思ってた」

 

「皆が協力してくれたからな」

 

「そういうところは、羨ましいよ」

 

橋本は、珍しく茶化さずに言った。

 

清麿は箸を止める。

 

「Bクラスも、今回は纏まって動いたじゃないか」

 

「今回の件は、な」

 

それ以上、橋本は続けなかった。

 

葛城と坂柳。

 

Bクラスを率いる二人が、いつも同じ考えでいるわけではない。

 

今回の試験で協力できたからといって、その問題まで消えたわけではないのだろう。

 

清麿は、そこを聞かなかった。

 

「……神崎達が、昨日言ってくれたんだ」

 

代わりに、自分の話をした。

 

「負けた時だけ、一人で決めたことにするなってな」

 

「へぇ」

 

「オレも、相談して決めたはずなのに、結果が悪いと、自分の判断として話していた」

 

橋本は黙って聞く。

 

「だから、次は相談する時に、待つ条件や、動く条件まで決めておこうと思ってる」

 

「それ、俺に話していいのか?」

 

清麿は一瞬止まり、橋本を見た。

 

「……今のは、作戦ではなく反省だ」

 

「ははっ。分かってるよ」

 

橋本が笑う。

 

清麿は少しだけ顔をしかめてから、残る料理へ箸を伸ばした。

 

◆◆◆

 

食事を終えた二人は、席を立ってカフェテリアを出た。

 

通路へ出ると、橋本が軽く手を上げる。

 

「じゃあな、高嶺。また情報が要る時は声かけてくれよ」

 

「ああ。内容と値段次第だがな」

 

「今度は友達価格で」

 

「前も聞いたぞ、それ」

 

「常連サービスだって」

 

橋本は笑いながら、客室へ続く通路を歩いていった。

 

清麿はその背中を見送り、小さく息を吐く。

 

取り引きの詳細までは聞けなかった。

 

だが、橋本がどう答え、どこを答えなかったかは分かった。

 

それも、今後を考えるための情報になる。

 

清麿が踵を返そうとした時、横合いから声がかかった。

 

「お昼ご飯、もう済ませちゃいましたか?」

 

振り向くと、ひよりが立っていた。

 

片手には、一冊の本がある。

 

「ひより。ああ、今食べ終わったところだ」

 

「そうでしたか」

 

彼女は橋本が去った方へ、少しだけ視線を向けた。

 

「橋本君と、一緒だったんですね」

 

「試験のことで、話をしてた」

 

「……なるほど」

 

ひよりは頷いた。

 

それから、清麿の顔を見上げる。

 

「この後、お時間はありますか?」

 

「ああ。特に予定はないが」

 

「それなら、少しだけお付き合いしていただけませんか?」

 

◆◆◆

 

二人は、船内の本を借りられるスペースへ移動した。

 

ひよりは持っていた本を返却し、清麿と並んで書棚を眺める。

 

「……今回は、私達のクラスが得点できました」

 

棚から一冊抜きながら、ひよりが言った。

 

「そうだな」

 

清麿は頷く。

 

「おめでとう」

 

ひよりが、こちらを向いた。

 

「……ありがとうございます」

 

「何だ、その顔は」

 

「いえ。少し、言いづらかったので」

 

「オレが負けたからか?」

 

ひよりは小さく頷いた。

 

清麿は苦笑する。

 

「悔しいのは確かだが、お前が自分のクラスの結果を喜ぶのは普通だろう」

 

「そう言っていただけると、助かります」

 

ひよりの肩から、僅かに力が抜けた。

 

清麿は棚へ視線を戻す。

 

「法則についても、自分で考えてたんだな」

 

「はい。もっとも、清麿君は私が発言した時には、もう分かっていたんでしょう?」

 

「ああ」

 

「やっぱり」

 

ひよりは少し笑い、それから手元の本へ目を落とした。

 

「私、最初は迷っていたんです。あの場で、法則のことを話していいのか」

 

「皆が優待者を探し始めるからか?」

 

「それもあります。でも、黙っていたら、分かっている人達だけで話が進んでしまう気がして」

 

清麿は、その言葉を聞きながら彼女を見た。

 

ひよりは本を棚へ戻す。

 

「龍園君と有栖ちゃんが協力していることも、最初から詳しく教えてもらっていたわけではありません」

 

「……そうか」

 

「だから、自分で考えて、話に入れるようになりたかったんです」

 

穏やかな声だった。

 

清麿との友人関係を大切にしている。

 

それでも、彼女はCクラスの生徒でもある。

 

自分のクラスが競争に参加している以上、いつまでも外から眺めていたくはなかったのだろう。

 

「その後、龍園には話したのか?」

 

「はい。考えたことをまとめて、伝えました」

 

「何て言われた?」

 

「『分かってんなら、黙って見てねぇで手伝え』って」

 

清麿は、思わず笑った。

 

「言いそうだな」

 

「ええ。随分な言い方だと思いました」

 

ひよりも、少しだけ口元を緩める。

 

「それで、他のグループから届いた報告を整理しました。回答を終えたかどうか、連絡が抜けていないか、確認するくらいでしたけど」

 

「それは助かるだろう。人数が増えると、そこが大変になるからな」

 

「……はい」

 

ひよりは頷いた。

 

その表情には、小さな満足が見えた。

 

清麿は一冊の本を手に取る。

 

「だったら、今回はお前にも負けたわけだ」

 

ひよりが顔を上げる。

 

「次は、そう簡単には取らせんぞ」

 

一瞬驚いた後、ひよりは笑った。

 

「私も、簡単に取られるつもりはありません」

 

「おう」

 

清麿も笑って返した。

 

ひよりは再び書棚へ向き直り、別の本を抜き取る。

 

「あ、それ、前に読みました」

 

「どんな話だ?」

 

「最後を知ってしまうと面白さが減るので、説明は少し難しいですね」

 

「じゃあ、読むか」

 

「読み終わったら、感想を聞かせてください」

 

清麿は本を開き、最初の数行へ目を通した。

 

隣では、ひよりが借りる本を選んでいる。

 

やがて二人は窓際の席へ移動し、それぞれの本を広げた。

 

しばらくすると、清麿の携帯が震える。

 

帆波からだった。

 

『ユキちゃんが、おやつ食べに行こうって。清麿君も来る?』

 

清麿は画面を読み、ひよりへ顔を向ける。

 

「この後、帆波達がカフェに行くらしい。お前もどうだ?」

 

「私も、ご一緒していいんですか?」

 

「ああ。聞いてみる」

 

清麿が返信すると、すぐに返事が届いた。

 

『もちろん!ひよりちゃんも一緒に来て!』

 

その下へ、姫野のメッセージが続く。

 

『あんた、昼食べてたでしょ。来ても私のケーキ取らないでよ』

 

清麿は眉を寄せた。

 

「……オレはどういう扱いなんだ」

 

「どうしました?」

 

「いや。気にするな」

 

ひよりが不思議そうに首を傾げる。

 

清麿は本へしおりを挟むと、携帯へ返信した。

 

『取らん。自分の分を頼む』

 

ひよりも本を閉じ、二人で返却台とは反対の通路へ向かった。




また投稿しますー。

では、また∠( ゚д゚)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ようこそペルソナ的人間模様が繰り広げられる教室へ(作者:行天)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

かつて日本を救った怪盗団のリーダーが、己が欲望のためにハッピーエンドの世界から並行世界の過去に飛ばされて、東京都高度育成高等学校に進学してしまったところから物語は始まる。▼注意書き(たくさん)▼※自分が読みたいと思ったから書いたリハビリ二次創作です。▼※P5は一回ちゃんとクリアした程度なので、設定ガバガバです。▼※キャラ崩壊がすごいので熱狂的な原作ファンの方…


総合評価:11607/評価:8.95/連載:41話/更新日時:2023年02月15日(水) 22:30 小説情報

ようこそ未熟者がいく教室へ(作者:7778)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

色々とぶっちぎったオリ主をⅮクラスに入れて暴れさせたい、ただそれだけの二次小説です。


総合評価:15731/評価:8.47/連載:227話/更新日時:2024年05月06日(月) 21:10 小説情報

南雲雅?俺じゃん。(作者:ざったなっつ)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

南雲雅に転生したオリ主が、全然傲慢じゃない南雲雅になっていくお話。▼※挿絵のあるお話には☆マークをつけております!▼新表紙▼【挿絵表示】▼旧表紙▼【挿絵表示】▼


総合評価:9996/評価:8.53/連載:40話/更新日時:2026年07月10日(金) 23:17 小説情報

非凡な少年はこの学校で何を考えるのか(旧:ようこそ凡人がいく実力至上主義の教室へ)(作者:神威 )(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

変人(天才)達に育てられた凡才の少年が実力至上主義の教室で学校生活を送る話 。


総合評価:2794/評価:7.68/連載:42話/更新日時:2026年08月20日(木) 14:33 小説情報

よう実世界に転生した畜生系主人公が神室真澄に心を打ち抜かれる話(作者:サンディエゴ)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

タイトルそのままの内容です▼AI挿絵も気が向いたら投稿▼AI挿絵有りの話には★マークがつきます▼[無人島試験編の神室]▼【挿絵表示】▼[無人島試験編の坂柳]▼【挿絵表示】▼


総合評価:17773/評価:9.08/連載:72話/更新日時:2026年07月28日(火) 19:35 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>