クリストファーにパンとスープを   作:社畜新兵

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丘には砲撃陣地があり、そこから攻撃される。
そんなお話。


第二章:あの丘をとれ!

ハンナは夢を見ていた、かつて故郷が平和だったころ、母親の膝を枕にして昼寝をしていたころの夢だ、もう母の顔はほとんど覚えていないが、ハンナは自分を撫でるやさしい手や、

木漏れ日の暖かさは鮮明に覚えている。ゆっくりと進む、幸せな時間。

けれどそれは、唐突に鳴り響いた声で、はじけてしまった。

「起きろ!ハンナ!ハンナ准尉!」

夜が白み始めた頃、シュタイナーがハンナの枕元に立って叫ぶ。

「ん~いや~お日様が昇までねるの~」

ハンナは甘えた声で駄々をこね、シュタイナーが肩をゆすっても、シーツを頭まで深くかぶり、一向に起きようとしない。

「はぁ~仕方ない」

シュタイナーは腰に手を当てて少し考えた後、あまり気乗りしない様子で。

「お前の大好きな攻勢なんだがな」

ハンナの耳もとに手を当てひそひそという。

「攻勢!!攻勢って言った!?」

ハンナは勢いよく飛び起き、危うくシュタイナーに頭をうぶけそうになる。ハンナをよけた反動で、シュタイナーは転びそうになりながらも、早口で話し始める。

「急に起きるな、皆は外で待機しているぞ。急ぎ準備をして、司令部テントに来い。」

「え?準備?私みんなに置いてかれたの?」

ハンナは寝ぼけたまま目をぱちくりとさせながら、ハンナは周囲を見回す、周りにはシュタイナーしかおらず、ほかのウィッチは出払っているようだ。

「それと、女の子なんだからそんな恰好で寝ないの。」

シュタイナーが額に手を当てながら、ため息交じりに言う。ふと自分の恰好に目をやると、下着だけになっていた、ハンナはシュタイナーにだらしない姿を見られたのが恥ずかしくてたまらないようで、顔を真っ赤にしながらも、とっさにシーツで体を隠しながら言った。

「中隊長!私のことジロジロ見ないでくださいよ!」

「別にお前のタイラムネじゃムラムラしねぇよ!」

冗談交じりに言ってしまったが、自分の言動にデリカシーがなさ過ぎたことに気付く。 シュタイナーはバツが悪そうに、軍帽を深く被りながらテントを出て行った。

「誰がタイラムネだ、腹立つな」

ハンナは自分の胸を見た後、ムッと頬を膨らましたあと、着替えを始める。ようやく頭が巡りだし、自分達の状況を思い出したり、先ほどのシュタイナーのやり取りを思い出して、また恥ずかしくなりと、バタバタと忙しく準備を整える。

「よし!バッチリ!行こう!!」

 

 

ボサボサだった髪をとかし、戦闘服を着てテントをハンナは出る。いつの間にか差し込んだ。朝日に目を細めながら、周囲を見回すと。外には小隊の皆が装備を整えて集合していた。

ナイフを研ぐ者もいれば、銃の薬室に泥が詰まっていないか、入念にチェック者、のんきにKパンをかじる者もいたが、みな一様に顔を強張らせ、辺りには緊張の糸がピンと張っているようだった。ハンナは親友のエイミーの姿がその中にないことに気づく。

「エイミーは?」

 あたりをキョロキョロと見まわしながら何の気なしに聞くハンナ。

「救護テントに行きましたよ、負傷者の護送を手伝うようです。

それにしても、ずいぶんとおめかしに時間を掛けましたね。中隊長」

ルビーを溶かしたような、美しい赤毛の少女がハンナに毒づく。長髪を二つに束ね、深々と鉄兜を被っている。美人だが近寄りがたい雰囲気を出している。

「わかったよ、わかったから、怒らないでシェリダン曹長」

ハンナは一瞬体を強張らせ、おずおずと答える。赤毛の少女はシェリダン・メイヤー、

ラーデンバー小隊の副長で、ハンナの右腕なのだが、口から出る言葉一つ一つにトゲがある。ハンナは彼女のことが苦手だ。

「別に怒ってません。中尉がお待ちです。早く司令部テントに行きましょう」

 ハンナとはいっさい目を合わさずに、シェリダンはつかつかと歩き出す。

「行きます、行きますから、もう、何で怒ってるの?」

 シェリダンに置いて行かれそうになり慌てて走り出そうとするハンナ。だが皆に指示を出してないことに気づき、慌てて戻る。

「皆はこの場で待機ね!すぐ戻るから!!」

ハンナは足踏みをしながら早口で待機命令を出し、すぐにシェリダンの後を追った。

ハンナとシェリダンが去った瞬間、小隊皆の緊張の糸が、ぷつんと切れたようで。

皆が一斉にしゃべり始める。その多くはシェリダン曹長に対してだった。

「ようやく行ったか。鬼シェリダン」

「シッ!まだ近くにいるかもよ」

「もう大丈夫でしょ。それにしても夜明け前に、スクランブル待機とはね。」

「いきなり叩き起こされて、敵襲かと思ったよ!」

「でもあれだけ曹長にひっぱたかれて、起きない小隊長って」

「そうとう神経太いよね。大物だよ、小隊長は」

 辺りはドッと笑いに包まれる。この小隊ではハンナは皆に好かれているようで、それに対して副長のシェリダンは相当嫌われているようだ。

「第4装甲騎兵小隊、隊長!ハンナ・ラーデンバー!ただいま出頭いたしました!!」

勢いよく司令部テントに入りつつ、敬礼をしながらハンナは声高らかに言う。

「同じく副長、シェリダン・メイヤー出頭しました」

ハンナに続いてシェリダンは、ゆっくりと静かに敬礼しつつ、まっすぐと立っている。

「楽にしろ、作戦を説明する」

入ってきた二人を一瞬見た後、シュタイナーはすぐに机の上の地図に目を落とす。

司令部テントには各小隊長たちが集まっており、皆シュタイナーの作戦を待っていて、ハンナと比べれば落ち着いているが、皆一様に緊張の表情を浮かべている。

「よし!全員集まったな。今回の作戦目標はH19高地だ、ネウロイはあそこを砲撃の観測所にしている。今まで2回攻撃し2回とも撃退されたが、今度こそあの丘を取る!!」

シュタイナーは地図で赤く囲われたH19の文字をたたきながら、皆に檄を飛ばす。彼はこの丘を重要視しているようだ。

「何か策があるんですか?丘のネウロイは攻撃のたび、奴らは消耗するばかりか頑強になるばかり、連日の砲撃で、兵達の疲労もピークです。ここは陣地放棄し撤退すべきでは?」

青い瞳をした若い男が口を開く、歳は26、シュタイナーはより少し若く、整った顔をしており、背が高くすらりとしている。彼はクルツ・ハウザー少尉、中隊の副官であり、

シュタイナーの右腕である。性格は明るいが冷静沈着、兵達からよく慕われている。

「策はある、部隊を二分して、一方が陽動、もう片方が側面から攻撃を行う」

 シュタイナーは確かな自信を手にしているようで、及び腰なクルツの前に拳を突き出し、

指で1と2を作りながら言った。

「はい!はい!はい!側面攻撃はラーデンバー小隊がやります!やらせてください!!」

 ハンナは興奮した様子で手を挙げる。攻撃と聞いて彼女がジッとしているはずがない。

横にいるシェリダンは腕組みをしながら冷ややかな目線を向ける。またかと言いたそうだ。

「もちろん、ウィッチ隊には攻撃を担当してもらう。そのための切り札なのだからな」

 ハンナの興奮にこたえるように、シュタイナーは満足げに頷く。

「待ってください、陽動の部隊はたったの2個小隊ですよ!奴らに擦りつぶされます」

 クルツはすがるように叫んだ。それに対してシュタイナーは少し驚いた顔をする。

「ウィッチ隊を援護に回してください!消耗した我々では耐えきれません」

 続けざまにクルツをシュタイナーに詰め寄る。彼はこれ以上仲間を失いたくないのだ。

「私の分隊と、エイミー伍長の隊を割きましょう。構いませんか?ハンナ准尉」

 沈黙を貫いていたシェリダンがゆっくりと口を開く。

「小隊の半数じゃない!ダメ!エイミーはともかくシェリダンは抜けちゃだめだよ!」

 驚いたハンナは目を丸くしつつ、手を口の前でバタバタと振って答える。

「あら、半数じゃ無理ですか。ハンナ隊長でも無理なんですかぁ、私は半数でも成功すると思うんですけどねぇ」

 シェリダンは口に手を当てわざとらしく驚いたふりをする。

「それとも准尉は自分の小隊が大事なのですか?ウィッチがいない本隊は全滅ですよ?」

 顎に人差し指を当てながら、またわざとらしく首をかしげるシェリダン。

「分かった、やる!やるよ!半数でも出来ますぅ!!」

 やけになったハンナが喚き散らすように答える。

「決まりだな、ハンナの隊は丘の制圧。シェリダンとエイミーの隊は本隊の援護だ。」

 深くため息をついた後、シュタイナーは皆の様子を見た後、作戦をまとめた。

「感謝します。シェリダン曹長。ハンナ准尉もよく決断してくれました」

 クルツは少し疲れたように笑いながら、二人に礼を言う。

「私はただ、最適解を選んだだけです」

 少し恥ずかしそうに俯きながら、シェリダンは髪の先を指でいじる。

「今日はシェリダンに乗せられてあげる」

 面白くなさそうに唇をとがらせながら、ハンナはシェリダンと共にテントを後にする。

「またいじけたか。クルツ、作戦の詳細を決めよう。もう少し残ってくれ」

 何度目かのため息を吐いた後、シュタイナーは指揮官の顔になる。

「勿論です。私に案があります。陽動部隊をさらに二分するのはどうでしょう」

 戦術を説明し始めるクルツ。その顔には生気が戻り、勝利への野心が宿っていた。

「二分した部隊で交互に攻撃すれば、数的不利を補えるな。よし!それで行くぞ!!」

 そこには苦悩する指揮官の姿も、疲れ切った将校の姿もなかった。薄暗い暗闇に包まれたテントで、二人は狐を追い回す狩人のように不敵な笑みを浮かべていた。

「それで、何であんたが隣にいるの?チャーフィー」

 ハンナは心底うっとうしそうに、チャーフィーのほうを見る。

「ほかの分隊長は本隊の援護ですからね。それに私の固有魔法は奇襲の役立ちますよ」

 いつものように悪戯っぽく笑うチャーフィーは、ハンナの隣で嬉しそうにしている。

二人が率いるウィッチ2分隊は、攻撃目標の丘な頂を敵に捕捉されないよう、慎重に登っていく。彼女たちの歩く道は、獣道のような有様だったが、その足取りは力強い。

「なんだっけ?あんたの固有魔法?」

 ハンナは興味なく口を開く。

「迷彩です!!皆が周囲の光景に溶け込んで、見つかりにくくなるんです!!」

 チャーフィーは声を抑えつつ、けれども必死にハンナに訴える。

「へっ、地味な固有魔法だな」

 ハンナはまた興味がなさそうに鼻で笑う。

「なっ、私たちが敵に捕捉されてないのは、私の魔法のおかげなんですよ!たぶん」

 ハンナの態度に絶句した後、必死に食い下がるチャーフィー。

「ふーん、うちのウィッチってさぁ、固有魔法が地味だよね。シェリダンは煙幕でしょ、エイミーは治癒魔法、あんたは迷彩でしょ。やっぱり優秀なのは空を飛んでるのかね」

 ハンナは指折りをしながら退屈そうにしゃべる。

「確かに、あなたの固有魔法に比べれば、私たちの固有魔法は地味かもしれません」

 チャーフィーは唇をへの字にまげて答える。

「あたしの魔法は最強だからね!地味じゃないし。銃を持たなくても..」

「ピ――――――!!!!」

 ハンナが得意げに話す中、シュタイナーのホイッスルの、甲高い音が響き渡る。攻撃開始の合図だ。

「急ぎましょう、小隊長」

 チャーフィーはその表情を硬くし、はっきりという。

「小隊各位!駆け足!急ぐよ!見つからないよう慎重にね」

 ハンナは素早く振り向きつつ、あとの続くウィッチたちに短く命令を告げる。皆の表情が硬くなり、その足取りに緊張が走る。丘への攻撃が、始まろうとしていた。

 時間は少し巻き戻る。シュタイナー率いる本隊は深く掘った塹壕に息をひそめ、誰もが丘の敵陣を見上げていた。

「コーヒーを沸かしてくれ。我々が朝食をとっていると奴らに教える」

近くの新兵にシュタイナーは短く命令する。新兵は命令の意味が分からないようで。

「何でコーヒーなんて沸かすのです?攻撃前に飲みたいのですか?」

「コーヒーを沸かすと奴らが攻撃してくる。そこを待ち伏せるのだ。早く手を動かせ!」

 命令を聞き返され、シュタイナーは思わず怒鳴る。新兵は慌てて走り出した。

「あまりピリピリしないでください。兵たちが浮足だちます」

 殺気立っているシュタイナーをクルツがたしなめる。立ち上がるコーヒーの煙が一瞬辺りを包み込む。熟練兵達は一様に表情を硬くし、塹壕に深く身をひそめた。

 突如、シューと長い音が鳴り、陣地の奥が爆炎に包まれる。砲撃が始まったのだ。

「アハトゥンク!アハトゥンク!試射が始まった。効力射が来るぞ!塹壕に入れ!」

 数秒後、砲撃が容赦なく降り注ぐ。砲弾が炸裂し、あらゆる物をえぐり取る。建てられていたテントは吹き飛ばされ、空が黒煙に覆われる。砲撃を前に出来ることは塹壕に深く身をかがめながら、神に祈ることしかない。やがて砲撃が止み、視界が晴れる。

「ようやく止んだか、ウィッチ隊がシールドを張らなければ危なかったな。被害報告!」

 体中に付いた土を振り払いながら慎重に身を起こし、シュタイナーは辺りを見回す。

「新兵がやられました。逃げ遅れたんです。それ以外には被害なし!まだ戦えますよ」

 下士官のホブス軍曹が短く報告する。コーヒーを沸かした新兵は運が無かった。最初の一発が逃げ遅れた彼の体を引き裂いたのだ。塹壕にいた本隊が無傷だったのは、ウィッチ隊が塹壕に傘をさすようにシールドを張り、皆を砲撃から守っていたおかげだ。

「各位警戒を怠るな!すぐに連中が攻めてくるぞ!」

 クルツが素早く檄を飛ばす。ネウロイが、山津波のような勢いで丘を素早く降りてくる。その姿は蜘蛛によく似ていた。高さは人間の腰ぐらい。体の形はひし形で、そこから鋭い足が生えている。シュピネと呼ばれている。人に飛びつき、鋭い足でがっしりと体に纏わり付くと、杭のような物を打ち込んで串刺しにする、達に悪いネウロイだ。

「クルツ、埋めておいた地雷は?」

 双眼鏡で眼前のネウロイの群れを捉えつつ、シュタイナーは短く確認する。

「あのあたりに砲撃は落ちていません。仕掛けがうまく動いてくれればいいのですが」

 塹壕少しだけ顔を出し、クルツは50m先の地雷原を確認する。砲撃は陣地奥のテントに集中しており。シュタイナーたちのいる陣地や地雷原にはあまり落ちていないようだ。

プチン!とワイヤーが切られる音がする。突如、地面が大きくえぐれ、轟音が鳴り響き、

ネウロイの群れが跡形もなく消し飛んだ。これがクルツの「仕掛け」だ。地面に埋めた砲弾にワイヤーを括り付けた、単純な代物だが、ネウロイにはこれがよく効いた。

「よし!連中、足を止めたぞ。機銃掃射!薙ぎ払え!奴らに腹いっぱいぶち込め!」

 シュタイナーの号令と共に、マキシム重機関銃がダ!ダ!ダ!ダ!ダ!と規則正しい銃声を上げ、ネウロイの群れを絵筆で塗りつぶすように、丁寧に!丁寧に掃射していく。

「撃ち方やめ!クルツ、敵に動きは?」

 短く命令を下した後、シュタイナーはクルツに確認する。

「今のところ動きはありません。作戦の第一段階は成功しましたね」

 クルツは双眼鏡を覗きながら、息絶えたネウロイの群れを一瞥し、丘の上を確認する。

「よし、諸君!少しだけ休め!すぐに反撃を開始する!」

 シュタイナーは愛銃のウェブリーリボルバーの撃鉄を起こし、叫ぶ。

「また攻撃か、どうせ負ける。もう疲れた」

 一人の新兵が塹壕に座り込んでぼやく。

「疲れたのか新兵?おれもだ。だが今度は負けないさ。中隊長に付いていけばな!」

 ホブス軍曹は少年のような笑顔を浮かべ、新兵の肩をたたく。二つある小隊のうち、 ホブスが率いる第2小隊は補充兵ばかりだ。ホブスの言葉で第2小隊の新兵たちは少しだけ元気を取り戻す。それを見てクルツは、自分も気の利いた事を言おうと口を開く。

「しょっ!諸君!もうすぐ我々は反撃に出る。えっと」

言葉に詰まるクルツを見かね、シェリダンがライフルをいじりながら遮るように言う。「慣れないことはしないことですよ。クルツ少尉」

「え?あっうんそうだね!みんな頑張ろう!」

「プッ!頑張ろうって、もう少し気の利いた事言ってください!少尉どの」

「いや、クルツらしくていいじゃないか!頑張ろうぜ!第1小隊!」

 クルツの「間抜けな演説で」小隊の緊張の糸が切れたのか、隊員たちが一斉に吹き出し笑う。彼が率いている小隊は、長く戦場に身を置いた、熟練兵で構成されている。ゆえに若い将校である、クルツのことを自分たちの息子ように可愛がっているのだ。

「小休止は終わりだ!気を引き締めてくれ」

 ことの一部始終を見守っていたシュタイナーが口を開く

「ウィッチ隊を各小隊に付ける。シェリダンの隊は第1小隊、クルツを助けてやってくれ。エイミーの隊は私とホブスの第2小隊だ。新兵のおもりだが、よろしく頼む」

「忘れないでほしい!我々の目的は陽動だ。丘の確保はハンナたちに任せる」

 シュタイナーは静かにしかし全員が聞き漏らさないよう、はっきりと簡潔に命令する。

命令を聞いた兵士たちは、素早く正確に動き始める。特に第1小隊は早かった。

「陣形を組むぞ!シェリダン曹長、ウィッチを横に配置してくれ。なるべく等間隔に」

「横に?昨日と同じクサビ形じゃないのか?」

シェリダンはクルツの奇妙な命令に訝しんだ。

「部隊を扇方に展開する。これで銃撃にしばらくは耐えれるはずだ」

「なるほど、横に並べ!両手がぶつからないように、間隔を開けろ!」

ようやく命令の意図を理解したシェリダンは素早く分隊員を動かす。

「よし!前列はウィッチの後に2人付け!残りは後列だ!」

 そうシェリダンが言うと、ものの数秒でウィッチ隊7人の後ろに、前列14人後列6人の扇形の陣形が出来上がる。

「シュタイナー中隊長!第1小隊準備完了です!いつでもいけます」

「おっ速いな!すまんが少し待ってくれ、こちらはもう少しかかる」

「ヤーボール、では我々は丘の上を警戒しておきます。構いませんね?」

「あぁ助かるよ、おいそこ!横に広がるな!クサビ形だ!何度言ったらわかる。」

第2小隊が遅れて歪なクサビ形の陣形を完成させる。

「よし!クルツ準備完了だ。敵の様子は?」

「奴さん、こちらに気づいたみたいですよ!すぐに攻撃開始を!」

「そうか!では初めよう」

「ピーッ!!Los!!我々に勝利を!」

 シュタイナーの笛を合図に2つの小隊が前進を始める。シュタイナーの第1小隊が先行する形で、第二小隊が斜め後ろから追従する。丘の中腹に差し掛かろうという所で、ポン!ポン!ポン!と軽い音が3回少し遠くから聞こえた。それを聞いたシュタイナーが叫ぶ。

「迫撃砲だ!!防御態勢!急げ!」

 それを聞いてエイミーのウィッチ隊は素早くシールドを張った。そして小隊をすっぽりと収める、大きなシールドのドームができる。

「この中から出ないで!」

 エイミーは身を乗り出そうとしている新兵を見てシールド張りながら叫んだ。

「第2小隊ウィッチの後ろに並べ!」

 最前列のシェリダン達は、横長のシールドを張り、それを繋げて壁を作る。クルツ達はウィッチ達の後ろに前倣え、の形でまっすぐに並ぶ。

「頼むぞ、シェリダン。あんたは俺達の女神様だ。」

シェリダンの右肩をクルツが左手でつかんで、耳のもとでそっと言った。

「バカ。」

 シェリダンは一瞬、顔を赤らめた後、すぐに集中し元の顔に戻る。周りは二人にやり取りに気付いていない。皆が落ちてくる砲弾に恐怖していたからだ。

ボンッと音が鳴り、土が巻き上げられる。兵士たちは砲撃が止むまで、身をかがめて待つしかない。その時間を永遠に感じながら、神に祈る。当たらないでくれ、早く終わってくれと。

 




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