クリストファーにパンとスープを   作:社畜新兵

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今は耐えるのだ!
必ず私たちは勝利する!!!!


第四章:丘での勝利

「止んだか、被害報告!」

 砲撃が止み、シュタイナーはゆっくりと頭を上げた後、振り向きながら言った。

「ぐぁぁぁぁ!足が!俺の足が!」

 シュタイナーの10m後方で叫び声が聞こえた。新兵がのたうち回っている。右足には砲弾の破片が刺さっていた。彼は砲撃のさなか、丘の下へ逃げようとしたのだ。

「ジッとして!止血するから!叫ばないの!!男の子でしょ」

 エイミーが素早く駆け寄り治癒魔法をかけ始める。破片の一つが右太ももの動脈に突き刺さており、かなり危険な状態だ。

「クソ!一人やられた!シェリダン!煙幕を頼む」

「Ja!煙幕弾!投射します!」

 シェリダンが両腕をまっすぐ前に突き出すと、そこから小さな球が10個ほど打ち出された。球はすぐに煙幕を発生させ、目の前に「煙の遮蔽物」が出来上がる。

「クルツ!そちらに被害は!」

 シュタイナーは斜め後ろにいるクルツたちの方を向き叫ぶ。

「こちらは被害ありません!攻撃を続けますか?中隊長!」

 自分の隊を見回していたクルツがすぐに気づき、シュタイナーに判断を仰ぐ。

「どうするか。負傷者は1人、重傷だがまだいけるか?」

 シュタイナーは一人でブツブツと呟く。

「よし!攻撃を続ける!そこのお前!負傷者を担いでエイミーと一緒に丘を下れ!エイミー!丘を下って塹壕の中に!ここよりは安全だ!そこで治療を続けてくれ」

 シュタイナーは矢継ぎ早に、次々と的確な命令を下す。

「Ja!塹壕で負傷者の治療をします!」

 エイミーは復唱し、駆けつけた兵士に細かい指示を出した後、丘を下る。

「諸君!ここが正念場だ!1秒でも多く耐え忍ぶ!」

 シュタイナーは後ろの新兵に檄を飛ばす。しかし兵士たちの顔は不安げだ。

「この音を聞け!ハンナの別動隊が奇襲を始めた!勝てるぞ!この丘は取れる!」

 遠くで轟音が聞こえる。

 ハンナは叫ぶ!!

「カサパノス!投げ込んで!爆薬も!ありったけ!」

 ハンナの号令で導火線が付いた爆薬と弾頭が大きな手榴弾が投げ込まれる。棒つき手榴弾に爆薬を括り付けた代物だ。

「頭を下げろ!爆発するぞ!耳塞いで口開けろ!」

 シェリダンが気を乗り出していたウィッチの頭を無理やり抑えた。そう後すぐに、ゴォォン!と重たい音が響く。トーチカは大きくえぐられ、ぽっかりと穴が開いている。どうやら中の弾薬に誘爆したようだ。

「よし!制圧したね!ここから侵入するよ!」

「隊長!死にかけの奴が何匹かいます!」

「結構多いね、テル!火炎放射で焼いといて!」

 ハンナがガスマスクをした少女にそう言うと、早々とトーチカを後にした。

「はい!お任せを!」

 彼女はテル・ミト上等兵だ、固有魔法は「火炎放射」で、指先から炎を出すことができた。ネウロイを焼くことを史上の喜びとしている。まもなくして、子ヤギを絞め殺したような、断末魔が聞こえる。死にかけのシュピネが焼かれているのだ。

「よし!奇襲成功!じゃ段取り通り、野砲陣地よろしくチャーフィー!」

「Ja!ケン、テグ、いつものように静にいくぞ。」

 チャーフィーは短く返事をすると、固有魔法を全開で発動する。そして3人はその場から姿を消した。次の瞬間、野砲陣地が次々に爆発していった。隠し持っていたカサパノスを、山のように積まれていた弾薬に仕掛けたのだ。

「すごい!」

 ハンナは3人の華麗な活躍に、一瞬、目を奪われる。

「ハンナ隊長。トーチカの掃除が終わりました。」

 いつの間にかハンナのそばにいたテル上等兵がそっと言った。

「そう、じゃあ、あっちも全部、掃除しようか」

 ハンナは5m先の機関銃陣地を指さして言う。

「ヤーッ!掃除は大好きです!」

 テルは嬉しそうに復唱し、「掃除」の続きをする。

「ネス?大丈夫?出来る?」

 ハンナは隣で怯えていた、小柄な少女の顔を覗き込む。暗めの茶髪で髪と同じ色の瞳をしている。名はネス・フリング二等兵。戦場で常に怯えており、今もハンナの左腕に無意識にしがみついている。

「だっ!大丈夫です!出来ます!攻撃します!」

 ネスはハンナの腕を放し、まっすぐハンナを見返した。やる気になったようだ。

「いいねぇ!じゃあ、一緒に攻撃しよう!せーの!」

 またハンナが勢いよく飛び出し、そばにいたシュピネを3匹片づけた。

「あ!隊長。行っちゃった。いいのかなぁ。エイッ!」

 ネスが両手を突き出すと、地面に魔法陣が現れ、刺がいくつも付いた巨大な球体がそこから現れる。その球体は中世の騎士が使っていた。モーニングスターによく似ていた。やがて「球体」がひとりでに動き回る。「球体」はどこまでも転がり、ネウロイを次々となぎ倒していく。

「いいよ、いい調子だよ!パンジャン!ああっ!こっち来ないで!」

 このパンジャンという球体は、ネスにまっすぐ向かっていったかと思うと、彼女の足元にいたシュピネを潰した。

「ありがとう、パンジャン」

 驚いて尻餅をついたネスが呆然としながら言う、それを聞くとパンジャンはまた回りだす。ネスはこの固有魔法をあまり使わない。パンジャンはだれにも止められないからだ。

 




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