季節は巡り、雄英高校入学式当日。
雄英高校の制服に身を包んだ呉蘭は、何時もの様にビニール袋片手に教室を目指して歩いていた。
「1‐A、ここか・・・デカいドアだな」
異形型個性でも出入りできるよう設計された巨大なドアに圧倒されるもすぐに気を取り直して教室に入る。
教室には既に何人かの生徒がいて、入ってきたばかりの呉蘭に視線が集中する。すると試験説明の際、質問をしていた眼鏡で長身の少年が近づいてきた。
「君!登校中に買い食いとは非常識じゃないか!それに飲食物を校内に持ち込むとは言語道断!」
初対面での一言目がいきなり説教とは、やはり生真面目な人間なのだなと呉蘭は思った。
「すまない、こいつは個性の関係上必要なものなんだ。ちゃんと申請もしている」
「む、そうだったのか・・・失礼なことをした!ぼ、俺は私立聡明中学校出身の
「呉蘭有様だ。よろしく」
「こちらこそよろしく頼む。この三年間共に勉学に励もう!」
やはり真面目で善良な人間のようだ。堅物すぎるのが玉に瑕だが・・・
周りを見渡してみると実技試験の時にいた両耳からイヤホンの端子のようなものを生やした少女と、全身が角ばった大柄の少年がいた。二人は此方を見ると何やら会話をして(少年の方は何故かジェスチャーだが)意見がまとまったのか此方に近づいてきた。
「アンタ、実技の時に助けに来てくれた人だよね?」
自分の姿が見えたのは一瞬だったので向こうは忘れていると思っていたが、どうやら覚えてくれていた様だ。
「あの時はありがとう。ウチは
「d(^-^)」
そして少女の隣に居た大柄な少年がジェスチャーで答えた。
「俺は呉蘭有様だ。二人とも受かっていて何よりだ」
そう言って袋からハンバーガーを取り出すと二人に手渡した。
「え、なにこれ・・・」
「入学祝だ、そいつを分けてやる」
「お、おう・・・ありがと」
「d(-_-;)」
「お、何だそれ?ハンバーガーか!いいなぁ」
「誰!?」
すると突然横から金髪ツンツンヘアーの少年が話しかけてきた。
「何だ好きなのか?ならお前にも分けてやる」
「おっサンキュー!俺は
その後、上鳴を含めた4人で入学試験の事などの話をした。ちなみにクラスの皆からは「呉蘭=ハンバーガーくれる人」と認識されるようになった。
「お友達ごっこがしたいなら余所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
飯田がまるで絵に描いたような不良と口論したり、何度か見かけた緑髪の少年と丸顔の少女と話をしていると、寝袋に入った明らかに不審者な男がゼリー飲料を一瞬で飲み干しつつそう言った。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」
そう言いつつ男は寝袋から出て来た。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
「「「「(教師に見えねぇ!!)」」」」
クラスの大半がそう思った。
「早速だが、
「「「「個性把握テストォ!?」」」」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローに成るなら、そんな悠長な行事出る時間無いよ」
体操服に着替えてグラウンドに集合すると、いきなりそう言われた。雄英は自由な校風が売り文句であり、それは教師側も当てはまるらしい。
長話を聴くのは苦手だし、まあいいかと思った呉蘭であった。
「実技入試成績トップは
「67m」
「じゃあ、個性を使ってやってみろ」
そう言うと爆豪と呼ばれた不良っぽい少年はボールを持ちラインの内側に入っていった。
そして――――
ドゴオオ『死ねェ!!』オオォォォン!!!
――――爆風に乗せられたボールは遥か彼方に飛んで行った
暫くして相澤先生が持つ携帯端末に705.2mと記録が表示される。
「705mってマジかよ・・・」
「なにこれ面白そう!」
「個性思いっきり使えんだ!流石ヒーロー科!」
周りの生徒から様々な声が上がる。すると・・・
「面白そうか・・・ヒーローになる三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「「「「はあああぁぁぁぁぁああ!?」」」」
「生徒の如何は教師の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
こうして個性把握テストは始まった。
「3秒04!彼奴速ぇな!」
最初の種目50m走では個性"エンジン"の飯田が3秒台という高記録を出していた。
「(3秒、確かに普通ならすごい記録だが・・・)」
しかし彼からすれば遅すぎると言ってもよい。
「(俺の個性が最も活かせる種目だな、じゃあ、本気でやるか)」
心の中でそう思いながらスタートラインに立つ。そして・・・
「位置ニツイテ、ヨーイ」
パンッ!
「・・・え?」
「何が起こった?」
「ケロッ、見えなかったわ・・・」
気づいた時には既にゴールラインを越えて足でブレーキを掛けつつ減速する呉蘭の姿があった。
「ま、当然だろうな」
相澤先生が持つ携帯端末には0.12秒と記録が表示されている。
「呉蘭、アンタ凄いな!そんなに速く動けたのか!」
「(≧◇≦)」
呉蘭の下に走り終わった耳郎と口田が寄ってきた。二人共、彼の動きは実技試験の際に少しだけ見たことはあったが此処までの速度だとは思っていなかったらしく、一緒に走った口田に至っては身振り手振りで興奮を表していた。
「ああ、これが
その後何人かの生徒に話しかけられたり、緑髪の少年が何やらブツブツ喋っていたりしたが気にせず次の種目に向かった。
第五種目のソフトボール投げ。丸顔の少女(名は
周りの話を聞くにどうやら無個性らしい(実際、現時点では特に目立った記録も無い)が入試時に何やらやらかしたらしい。しかし、このままでは最下位は免れない。
そして、覚悟を決めた顔でボールを握り締め・・・
投げた――――
――――が
「46m」
「な・・・今、確かに使おうって・・・」
「個性を消した」
髪が逆立ち鋭い眼をした相澤先生がそう言った。
「つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」
「消した・・・あのゴーグル、そうか!」
「
呉蘭は聞いたことがなかったが、アングラ系ヒーローというものらしい。
「個性は戻した。ボール投げは2回だ、とっとと済ませな」
相澤先生から指導を受けた後、緑谷は解放された。緑谷はブツブツと何か喋った後、決意した顔でボールを握り締め・・・
そして――――
ドシュウ『SMASH!!』ウウウゥゥゥゥ!!!
――――ボールは遥か彼方に飛んで行き、携帯端末には705.3mと表示された
「先生・・・まだ、動けます!」
緑谷は変色した人差し指を握り締め、涙目になりながらも強く言い切った。
「(俺と同じ増強系の個性。だがあの様子じゃまるで・・・)」
「どーいうことだ・・・ワケを言え!デクてめぇ!」
呉蘭が個性について考え込んでいると不良少年(名は
相澤先生が伸ばした包帯のようなもので絡め捕られた。
「炭素繊維に特殊合金を混ぜ込んだ捕縛武器だ。ったく、何度も個性使わすなよ・・・俺は
「「「「(個性凄いのに勿体ない!!)」」」」
「時間がもったいない、次、準備しろ」
こうして個性把握テストは進んでいった。
「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する」
テスト終了後、全員の結果が発表された。呉蘭は2位であり、1位は
「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「「はあああぁぁぁぁぁああ!?」」」」
除籍は嘘だったらしい。緑谷を見ると燃え尽きたように真っ白になっていた。
下校時間。呉蘭はバーガーを齧りつつ耳郎、口田と三人で歩いていた。
「そういえばウチ、気になることがあるんだけど」
「何だ?」
「持久走の時、最初は普通に走ってたよね?何で最初から個性使わなかったの?」
実は持久走の時、4週目までは個性を使わず普通に走っていたのだ。
「個性無しでも息切れ一つせずに結構な速さで走ってたのは驚いたけど、それなら最初から個性を使ってもよかったんじゃない?」
「(_ _)(-_-)(_ _)(-_-)」
「ああ、あれか・・・腹が減ってた」
「・・・え?」
「( ゚Д゚)?」
「俺の個性は見てわかるように高速移動だ」
「うん」
「言葉通りただ
「あ、だから今ハンバーガー食べてるの?」
「あの時は既に何回も個性使ってたし、栄養補給もできなかったから温存したんだ。走りすぎると身体中が筋肉痛になるし栄養失調気味になるしで大変なんだよ」
「へぇ、どんな個性にもデメリットはあるんだね」
「初めて個性を使った時は死にかけた」
「それは、大変だったね・・・」
「(-_-;)」
こうして入学初日は無事に終わったのである。
アニメ二期の耳郎&口田コンビがとても好きなので登場回数が多くなりました。