「あれは・・・
相澤先生の言葉で、クラス全員に緊張が走る。
「13号にイレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトが此処にいる筈なのですが。」
「何処だよ、せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさぁ・・・オールマイト、平和の象徴。いないなんて・・・子どもを殺せば来るのかな?」
黒い靄のような男と、顔に手を貼り付けた男がそう言った。
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか!」
「はぁ!?ヴィラン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
「先生!侵入者用センサーは!」
『もちろんありますが・・・』
「何にせよセンサーが反応してねぇのなら、向こうにそういう事が出来るヤツがいるって事だな。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割。バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
「13号、避難開始。学校に連絡試せ。センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系のヤツが妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ」
「・・・う、ウッス!」
「先生は!?一人で戦うんですか!?」
イレイザーヘッドの個性は性質上、一対多の正面戦闘は得意としない。しかし。
「一芸だけじゃあヒーローは務まらん。任せた、13号」
そう言うと相澤先生は敵達に向かって走り出した。
相澤先生は近づいてきた3人の敵の個性を消すと、捕縛武器で絡め捕りまとめて地面に叩きつけた。そして個性を消せない異形型個性からの攻撃を巧みに躱し、カウンターで仕留める。
「凄い、多対一こそ先生の得意分野だったんだ!」
「いや違う。俺達を逃がすためにあえて敵に突っ込んだんだ」
「えっ呉蘭君?」
「時間が経つほど相澤先生の方が不利になっていく。さっさと逃げるぞ緑谷」
「う、うん!」
「させませんよ」
皆が走り出した先に、黒い靄のような敵が現れた。
「初めまして、我々はヴィラン連合。僭越ながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは・・・平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」
何と、ヴィラン連合と呼ばれる者たちの目的はオールマイトの殺害だと言う。
すると突然、
ボゴォン!!!
「その前に俺達にやられる事は考えなかったか!」
しかし・・・
「危ない危ない」
「!!」
「そう、生徒といえど優秀な金の卵」
『駄目だ!退きなさい二人共!』
「私の役目は、貴方達を散らして嬲り殺す!!」
そう言った瞬間、黒い靄が生徒たちを飲み込んだ。
靄に包まれた呉蘭は、突然燃え盛る街に放り出された。
「よっと・・・ここは?」
「あっ呉蘭君!」
「尾白か、他の皆は?」
「わからない、どうやら俺達だけみたいだ」
「そうか。恐らく此処はUSJの火災ゾーンだ」
「分散されたとすると、皆は他のゾーンに飛ばされたと見るのが正解かな?」
「恐らくな・・・ッ!」
すると何処からか数人の敵が姿を現した。
「何だよ、折角張り切ってたのにガキ二人だけかよ」
「これじゃあ楽しめねぇじゃねえか」
「どうする呉蘭君?」
「とりあえず倒すしかないだろ。行けるよな?」
「もちろん!」
「話は済んだか?ああ!!」
そう言うと二人の敵が襲い掛かってきた。
「遅い」
「ガアッ!・・・あばばばば!!」
「ふんっ!」
「ぐはあっ!!」
しかし、二人はそれを躱し、呉蘭は相手を組み伏せた後スタンガンで気絶させ、尾白は尻尾で相手を地面に叩きつけた。
「何やってんだ彼奴ら!こんなガキに!」
「油断しやがって!」
「どうやらそこらのチンピラとあまり変わらないみたいだな」
「うん、あまり大した事無いみたいだ!」
「舐めるなよ!!」
そう言うと一人の敵から触手のような物が飛び出し、二人に迫って来た。
「はっ!」
「ふっ!」
二人はそれぞれ警棒と尻尾でそれをはらうと、呉蘭の個性で一気に回り込みスタンガンで気絶させた。
「何だよ、全然強ぇじゃねぇか!」
「話と違うぞ!」
「よし、行くぞ!」
「うん!」
二人の手により、残りの敵も鎮圧された。
「よし、これで片付いたな」
「うん、正直俺一人じゃ厳しかったと思う」
「そうか?まあいい、出口に向かうぞ」
そう言って呉蘭が走り出そうとした時。
「ッ!!危ない!」
尾白が尻尾で呉蘭を引き寄せると、さっきまで立っていた場所に突然大きな黒い球体が出現した。
球体は萎んで消えて行き、そこだけがまるで削り取られたように地面や建物の一部が無くなっていた。
その光景に唖然としていると、削られた建物の影から褐色肌のガタイの良い男が歩いてきた。男は二人と目が合うと、徐に手を掲げた。すると掌からあの黒い球体を出現させた。
「不味い!」
呉蘭が個性を使われる前に倒すべく動こうとした瞬間、体が突然浮き上がった。
「何っ!」
「あ、呉蘭君あれ!」
首だけで振り向くと今度はサングラスを掛けた細身の男が反対側から歩いてきた。
「不味い!」
「クッ!」
呉蘭は咄嗟に、細身の男に向けて個性を使って警棒を投げた。すると男は反射的に腕で顔を守ったが、高速で飛んできた警棒が鈍い音を立てて腕に当たると小さな悲鳴を上げた。
個性の効果が切れて自由になるのと、もう一人の男が球体を投げるのは同時だった。
「フッ・・・何っ!?」
しかし、寸前で躱していた尾白が尻尾を使って男を殴り気絶させた。その後ろでは呉蘭がもう一人をスタンガンで気絶させていた。
「強力な個性だったね」
「ああ、相手の油断がなかったらやられていたかもしれない」
そう言って二人は走り出した。
二人は火災ゾーンから抜け、広場まで戻って来た。そこで二人が目にしたものは・・・
脳がむき出しになった大男に右腕を折られ、地面に叩きつけられた血塗れの相澤先生だった。
「こ、これは・・・」
「ッ!!(不味い、マジに不味いぞ!)」
気が付くと呉蘭は走り出していた。
「個性を消せる、素敵だけどなんてことないね。圧倒的な力の前ではつまりただの無個性だもの・・・ッ!!」
手の男がそう言って個性を使う相澤先生を見下ろしていると、突然突風が吹き、気が付くと
「呉蘭、お前!?・・・ウッ・・・」
「尾白、相澤先生を頼む」
「ま、待て呉蘭君!」
高速移動で相澤先生を尾白の所に運んだ呉蘭は、脳無に向かって再び走り出した。
「もう一本」
今度は脳無の左腕を蹴った。しかし今度は折れず、まるで衝撃が吸収されるような感覚がした。
呉蘭は脳無から一旦距離を取り、相手を観察することにした。
「何だよあのガキ、速ぇな。オールマイトのちょっと下ぐらいか」
「・・・何!?」
すると突然、折れたはずの右腕が音を立てて治り始めた。
「衝撃を吸収する個性じゃないのかよ、って顔だな?ハハッ!」
「
「・・・13号はやったのか?」
「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして・・・一名逃げられました」
「は?・・・・
黒霧と呼ばれた靄のような男の話を聞いた死柄木という男は、突然首元を掻き毟りだしたと思ったら、急に冷静になりそう言った。
「そうだ、おい脳無。帰るついでにそいつを殺せ」
死柄木がそう言うと、脳無は呉蘭に向けて走り出した。
「クッ、速い!(奴には普通の攻撃は効かない。なら、手加減抜きの全力で!!)」
呉蘭は脳無の攻撃を躱すと、頭に向けて個性を使った手加減無しの全力の蹴りを浴びせた。しかし。
「何!?」
「無駄だって、やれ脳無」
常人では死ぬであろう蹴りを受けておきながら、脳無は無傷だった。そしてそのまま蹴りを入れた右足を掴み、思い切り振り上げた。
「(クッ・・・個性に頼り、相手との実力差を見誤った俺の失態か・・・)」
呉蘭はまるでスローモーションのように動く景色を見ながら、自身の失態を悟り。
グシャリ
頭から地面に叩きつけられ、ガラス片と血飛沫を上げた。