僕のヒーローアカデミア短編集   作:113(いちいちさん)

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僕のヒーローアカデミア

 呉蘭君が地面に叩き付けられるのを、僕はただ見ている事しかできなかった。

 あの一瞬で相澤先生を救出し、脳無にダメージを与えたのを見て、一瞬でも勝てるんじゃないかと思ってしまったのが僕の間違いだった。

 

「お、おい緑谷・・・呉蘭のヤツ・・・もしかして・・・」

「ケロォ・・・」

 

 一緒にいた峰田(みねた)君や、何時も冷静沈着な蛙吹(あすい)さんですら、目の前の光景に言葉が出なかった。

 

「ん?此奴まだ生きてるのか、頑丈な奴だな」

 

 死柄木の言葉を聞いて呉蘭君をよく見ると、まだ微かに息があった。

 

「脳無、とどめを刺せ」

 

 死柄木に命令された脳無がとどめを刺そうと腕を振り上げた、その時・・・

 

「やめろおおおおお!!」

 

 僕は脳無に向けて飛び出していた。そして右腕を振りかぶり・・・

 

「SMASH!!」

ドゴオォン!!!

 

 脳無にパンチが当たり、衝撃で砂煙が上がった。そして、いつもなら力に耐えきれず折れてしまう筈の右腕は、土壇場で調整が効いたのか無事だった。

 

「(折れてない!?力の調整がこんな時に!とにかく今の内に呉蘭君を・・・!?)」

 

 しかしそこには、()()()脳無が立っていた。

 

「SMASHって、オールマイトのフォロワーかい?まあ、いいや君」

 

 そう言うと脳無は突き出していた緑谷の腕を掴み上げた。そして個性を使おうと死柄木が掌を近づけ・・・

 緑谷の顔を掴んだ・・・しかし

 

「ほんとカッコいいぜ、イレイザーヘッド」

 

 尾白に体を支えられた相澤先生が、死柄木の手に触れたものを崩壊させる個性を消していた。

 その時突然、USJの出入り口の扉が吹き飛んだ。そして、煙の中から一人の男が歩いてきた。

 

「もう大丈夫・・・私が来た

 

 その男、平和の象徴、№1ヒーロー・オールマイトは、普段の明るい笑顔ではなく、険しい顔でそう言った。

 

 

「授業の後半から参加する予定で向かっていたら、飯田少年とすれ違ってね。何が起きているかあらまし聞いた」

 

 歩きながら、傷を負った13号とイレイザーヘッド、そして、血を流し倒れている呉蘭を見て、歯を食いしばる。

 

「(全く己に腹が立つ。子供らがどれだけ怖かったか、後輩らがどれだけ頑張ったか、呉蘭少年がどれだけ痛い思いをしたか・・・しかし、だからこそ胸を張って言わねばいかんのだ)」

「もう大丈夫、私が来た!!」

「「「「オールマイト!!」」」」

「待ったよヒーロー・・・社会のゴミめ」

 

 オールマイトは広場全体を見渡し、体を屈めた。次の瞬間・・・

 

「「「「おわあああああああ!!!」」」」

 

 死柄木を含む視界に入る全ての敵が宙に舞った。そして、緑谷達を少し離れた位置にいた尾白と相澤先生の所へ運び、最後に呉蘭を優しく地面に降ろした。

 

「えっ!?何が?」

「皆、入口へ、相澤君と呉蘭少年を頼んだ。少年は意識がない、早く!」

「は、はい!」

「オールマイト・・・」

「大丈夫、まだ時間はある」

 

あぁ・・・駄目だ・・・駄目だ、御免なさい・・・お父さん・・・・・・はぁ・・・」

 

 死柄木は何かを呟きながら地面に落ちた手を拾うと、再び顔に張り付けた。

 

「助けるついでに殴られた、国家公認の暴力だ。流石に速いや、目で追えない・・・でも思ったほどじゃない。本当だったんだ、()()()()って話」

「オールマイト!あの脳みそ敵、多分ショック吸収と再生系の複合個性を持ってる!正直オールマイトでも・・・」

「緑谷少年・・・大丈夫!」

 

 そう言ってVサインを作った後、脳無に向かって走り出した。

 

「CAROLINA!!SMASH!!」

 

 オールマイトは脳無に向かって技を繰り出した。しかし、やはり衝撃が吸収されるようにかき消された。

 

「マジで全然効いて無いなぁ!・・・なら!!」

 

 オールマイトは敵の攻撃を躱し、顔面を続けざまに殴った。しかし。

 

「顔面も効かないか!!」

「効かないのはショック吸収だからだ、いくら殴ろうが無駄・・・なに?」

 

 最初は全く効果がなかったオールマイトの攻撃に、脳無が段々と押され始めていた。

 

「馬鹿な・・・ッ!イレイザーヘッドォ!!」

 

 尾白に担がれた相澤先生が、脳無の個性を消していたのだ。

 

「ありがとう、相澤君!・・・君の援護、無駄にはしない!!」

 

 そう言ってオールマイトは一瞬弱った脳無に対して目にも留まらぬ速さで突きを繰り出した。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――――

「ウィリヤァ!!ゥォオララララララララァ!!!」

――――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 

そして、最後に大きく振りかぶり――――

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!!!」

ドゴオオオォォォォン!!!

 

――――脳無は天井を突き破り、遥か彼方に飛ばされていった

 

「全盛期なら、5発打てば十分だったろうに・・・150発以上打ってしまった・・・(まだ動ける、相澤君と彼のお陰だな)さてと敵、決着を着けるとしようか!」

「・・・おいおい、どういう事だ・・・イレイザーヘッドの野郎が邪魔したとはいえ・・・全然弱ってねぇじゃねぇか!!」

「落ち着いてください死柄木弔!ここは一旦下がって・・・」

 

 黒霧が撤退を促そうとした、その時。

 

 パン!パン!パン!パン!

 

 銃弾が死柄木の四肢を撃ち抜いた。

 

「御免よ皆、遅くなったね。直ぐ動ける者をかき集めてきた!」

「1Aクラス委員長!飯田天哉!只今戻りました!!」

 

 入口には根津(ねづ)校長を先頭に、飯田が呼んで来たプロヒーロー達がいた。死柄木はスナイプの個性"ホーミング"による銃撃を受けたのだ。

 

「クッ・・・ヤロー!!」

 

 広場に残っていた敵達がヒーロー達に一斉に向かっていった。すると。

 

「すぅー・・・YEAHHHHHHHHHH!!!!」

 

 プレゼント・マイクが個性"ヴォイス"の特大音波で敵を吹き飛ばした。そして。エクトプラズムが個性"分身"により散らばった敵を無力化していく。逃げようとした敵はセメントスの個性"セメント"によりコンクリートの壁に阻まれた。

 

「クッ!死柄木弔!」

「させるか!」

 

 黒霧が咄嗟にワープゲートで死柄木を逃がそうとする。オールマイトが止めようとするが、ゲートで無理やり飛ばしてきた下っ端敵を盾に使われ、あと一歩のところで逃がしてしまった。

 

 

 山岳ゾーン。そこでは上鳴、耳郎、八百万の三人が窮地に陥っていた。

 八百万が絶縁体シートを作り出し、上鳴の全方位放電により敵の大軍を無力化したまでは良かったのだが、伏兵が潜んでおり、油断している隙に(放電のし過ぎで脳がショートし一時的にアホになった)上鳴を人質に取られたのだ。しかも最初の方で倒された一部の敵達の意識が戻りつつあった。

 

「手を上げろ、個性を使えばこいつを殺す」

「ウェーイ・・・」

「クッ・・・」

「待ちたまえ諸君」

 

 その時、崖の上から声が聞こえた。声のした方を向くと、赤いコートにシルクハットを被った男がいた。

 

「誰だお前は!」

「ただの雇われマジシャンさ。君たちの相手は私がしよう」

「何だと?人質がどうなってもいいのか!」

「人質とは彼の事かい?」

「ウェーイ!」

 

 そう言うと男の背後から捕まっていた筈の上鳴が姿を現した。

 

「何!?いつの間に!?」

 

 そこで初めて自分の手から人質がいなくなった事に気づいた敵は声を上げた。

 

「観客の目が一か所に集まっている内にこっそり移動させる、マジックの基本だよ?」

「此奴、舐めやがって!」

 

 すると敵はシルクハットの男目掛けて電撃を放った。しかし、それはまるで吸い込まれるように男の体に消えていった。男はシルクハットを取ると、何処からか取り出したステッキで帽子のつばをトントンと叩く。その瞬間、シルクハットの中から先程の電撃が放たれ、敵の後ろにいた他の敵達に当たり再び気絶した。

 

「不思議だろ?」

「お、お前は一体何なんだ!?」

「言ったろ、私はマジシャンなんだよ。種も仕掛けも無い本物のね」

 

 そう言いつつガハッ手に持ったステッキにハンカチを被せる。そしてハンカチを取ると、何とステッキがショットガンになっていた。そしてそのまま敵を撃ち抜いた。

 

「ガハッ!」

「対敵用の()()()だ。死ぬほど痛いけど、死なないから安心してくれ」

 

 そう言って残った敵を無力化した。

 

「大丈夫だったかい?お嬢さん方」

「あ、はい!大丈夫です!」

「助けていただいて、ありがとうございます!あの、もしかしてかの有名な「マジックヒーロー・オーガスト7(セブン)様ですか?」

「おや、貴女のようなお嬢さんに知って頂けているとは光栄です」

 

 そう言って手元から1本のバラを取り出した。

 

 

「・・・17、18、19。左手の指を骨折した彼と、重傷の彼を除いてほぼ全員無事か」

 

 USJ入口で生徒の人数を確認していた塚内直正(つかうちなおまさ)刑事は、全員の安否を確認し終えるとそう言った。

 

「とりあえず、生徒たちは教室に戻ってもらおう」

「刑事さん、呉蘭ちゃんと相澤先生は?」

 

 蛙吹が塚内刑事に聞くと、彼は携帯を取り出し病院に連絡を入れた。

 

『相澤さんは右腕を粉砕骨折、頭蓋骨にひびが入っていましたが、命に別状はありません。しかし、呉蘭さんは右足と頭蓋骨を骨折、特に鼻骨から前頭骨辺りまでが酷く、顔面には複数のガラス片が刺さっており、幸い眼球は無事でしたが恐らく傷痕が残るでしょう。また、頭部に強い衝撃を受けたことで、脳に何らかの後遺症が残る可能性があります。正直に言うと、ヘルメットがなければ即死でした』

「・・・だそうだ」 

「ケロォ・・・」

「そんなぁ・・・」

「クッ・・・」

 

 彼らの怪我を間近で見ていた蛙吹、峰田、尾白はクラスの中でも大きくショックを受けた。

 

「13号先生は!?」

「治療は終わってる。背中から上腕にかけての裂傷が酷いが、命に別状は無し。緑谷君も、リカバリーガールの治癒で無事、完治したらしいよ」

「よかったぁ・・・」

「さ、教室へ戻って」

「「「「はい!」」」」

 

 こうして雄英生活4日目は、死者さえ出なかったものの、最悪な結果で終わったのである。

 

 

 

 

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