とある葦毛のウマ娘   作:乾燥海藻類

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第05話 アクシデント

タマモクロスの現在成績は2戦2勝。勝ち方も悪くない。どちらも快勝と言っていいだろう。

 

「いけるか……GⅠ」

 

高松も欲が出ていたのだろう。GⅢやGⅡではなくGⅠを期待した。

ジュニアクラスのGⅠレースは3つある。

 

朝日杯フューチュリティステークス

阪神ジュベナイルフィリーズ

ホープフルステークス

 

どれも格付けは同じだが、来年をどのルートで進むかで出走するレースも変わってくる。

クラシックロードを進むのなら、皐月賞と同じコース、同じ距離のホープフルステークスがいいだろう。

トリプルティアラを目指すなら、桜花賞と同じコース、同じ距離の朝日杯FSか阪神JFが選択肢となる。

 

「この辺りは一度話し合うか。それよりも、一度差しの経験を積んでおくべきだな」

 

この2戦は先行で勝ってきた。時代の主流が先行ということもあるし、高松自身の好みだったというのもある。だが先行一辺倒ではいずれ対策される。手札は多い方がいい。

 

「10月に1度走って、12月にGⅠへ出す」

 

高松はそう方向性を決めた。

 

 

 

 

 

高松が選んだのは、10月初週に中山レース場で開催される芙蓉ステークスだった。

 

「3週ぶりやなぁ、中山くん」

 

中山のターフをポンポンとたたく。前回は1600mと物足りなかったが、今日は2000mも走れる。

最近は調子もいいし、タマモクロスは負ける気がしなかった。

 

高松がこのレースを選んだのには色々と理由があるが、ひとつに逃げウマ娘がいないということだった。

レースで大逃げが出ると、差しや追い込みのウマ娘が仕掛けどころを見失うケースが往々にしてある。その辺りは状況把握力がものをいうのだが、それを期待するにはまだまだ経験が浅すぎる。

 

高松の予想通り、レースはほぼ一団となって進んでいった。

現在タマモクロスは8人中内側の6番手。

第1コーナーを回って第2コーナーへ。ポジションの大きな変更はない。

向こう正面の坂を下って、その勢いがついたまま第3コーナーへ突入する。

そこで事件は起こった。

 

外側を走っていたウマ娘が遠心力に負けまいと身体を内側に傾けた。その時に足を滑らせ、内側に向かって勢いよく倒れ込んだ。

 

「――ッ!?」

 

仕掛け時を考え、前の状況ばかりを窺っていたタマモクロスは外側の異常に気づくのに遅れた。

肩に衝撃が走り、小柄な身体は簡単に吹き飛ばされた。内ラチがぐにゃりと曲がる。痛みに顔を歪めるが、それ以上に事態は深刻だった。

浮いている。そう自覚した時には、すでに芝の青さが瞳いっぱいに広がっていた。

 

(頭……守らな!)

 

咄嗟の判断で両手を頭に持っていく。直後に訪れた、全身を叩きつけられる痛み。

 

「――カハッ!!」

 

肺から空気が押し出される。

そこでタマモクロスの意識は暗転した。

 

 

 

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